太陽と海の教室 「おとが、きこえる。」
更新日: 2011-04-29 (金) 15:44:44
げつくsun&seaより
水泳部のサーファーイケメン→(?)→貧乏イケメン風味な話。
本編前の捏造、貧乏イケメンが陰険金持ち達に強請られてる妄想でした。
稚拙な上に鉄板。勢いと萌えと熱帯夜って怖いな。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
夏真っ盛り。
当然水泳部としては部活に身の入る時期だ。それだというのに。
(くっそー…プリントの仕分けなんかに時間取られるとは…)
貴重な部活の時間を教師に押しつけられた雑務で奪われた藻一は不機嫌だった。
更衣室に入れば当然誰もいない。
静まり返った空間があるだけだ。置いて行かれた気分がして空しい。
ちゃっちゃと着替えるべく、自分のロッカーに手をかけた。
その時、室内に雑音が響きわたる。
思わず「ひっ」と情けない声をあげてしまった。息がつまるかと思った。
自分以外誰もいないはずだという認識は間違っていたのだろうか?
あたりを見渡すと、やけに大きな音を立てて床で震えているのは弘樹の携帯電話だ。
ロッカーの扉も細く開いているし、どうやら滑り落ちでもしたらしい。
「んだよ…ちゃんとしまっとけっつの」
誰もいなかったとはいえ、携帯ごときにビビった自分が気恥ずかしい。
何気無く手に取ったものの、携帯はまだバイブ機能をフル稼動させてメールが届いたことを知らせている。
ー―人をおちょくってんのかコイツ。
苛ついた藻一はそれを止めようと、罪悪感のかけらも持たずメールボックスを開いた。
(添付画像?)
ー―今度こそ息がつまるかと思った。
その添付された不鮮明な写メに模一は一瞬訳が分からず目を細め、そしてそれが何かを認識して今度は目を見開いた。
【淫乱☆(笑)】なんてふざけた文字を入れて加工してあるその写メには、人間が複数写っている。
だが個人を特定できるだけの情報は一人以外写っていない。
うまく顔が写らない角度で撮られているし、服装での区別もつかない。
写メの中の彼らは全員同じ制服を着ていた。
しかもそれはライバル西校のものであったが、藻一はその事実に気付けない。
視線はただ、写メの中央にいる人物に向けられた。
少々ブレた画像の中にあっても、間違えるはずのない顔。
弘樹だ。
(…な…なんだよコレ!)
写メの中の弘樹は制服の前ボタンを全て外していて、シャツは長い腕に絡まっていて、
その腕は頭の上で結わえられていた。
彼の体を押さえつける複数の手。
手前の男に抱えあげられた彼の生足。
そして何よりも、その表情が。
ひたすらに耐えるように目をぎゅっと瞑っていて、頬はのぼせたように紅潮しきっている。
覆い被さる男のせいで口元は隠れているが、そのせいで逆に脳内では音声が勝手に再生を始める。
時が止まったように動けなかった。
ガタン、と更衣室のドアが開く音でようやく我に帰る。
(コレ、ちょ、まずいって!)
慌てて本文も差出人も確認せずにそのメールを消去した。
「あれ、藻一」
「…弘樹!」
「遅かったじゃん、プリント仕分けって結構面倒なんだ?」
なんともいえないタイミングでやってきたのは弘樹だった。
彼は軽く笑いながら、忘れ物しちゃって、と何事も無いように自身のロッカーに手を掛け、
中からタオルとストップウォッチを取り出していた。
藻一はその一連の動作を凝視する。
背中を、肩を、首筋を、手首を、
そしてその時、初めて彼のリストバンドの存在に気付いてしまって、
背筋をかけ上がる何かにせっつかれるように声を出した。
「あ…、弘樹、コレ落ちてたぜ」
ずっと握り締めていた携帯を手渡す。
「え?ああ、ありが「俺、」
「じゃ、俺、今日帰るから、後よろしく」
「え? ・・・ちょ、藻一!?」
弘樹の横をすり抜けて、藻一は逃げるように走った。
後ろで不思議そうに彼を呼ぶ声を聞いていたくなかった。
(ー―見間違いだ)
勢いよく駆け出したはいいが結局行く場所も思い当たらず、
藻一はプールサイドから死角になる壁に凭れ、必死になって自己暗示をかけた。
ー―まさか、弘樹が。そんなまさか。
ー―有り得ない。
網膜に焼け付くように残る映像。見たこともない親友の顔。
自分の頬が勝手に熱くなるのが分かる。
ー―…どうしたらいいんだよ…
水を叩く爽やかな音は、藻一を素通りする。
脳内に響く、聞いたことのないはずの声に耐え兼ねて、頭を抱え、その場に蹲った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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