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RD潜脳調査室 久島×老波留

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R/D/潜/脳/調/査/室 久/島×老/波/留。
電脳設定はかなり想像+捏造。

 彼の検査結果には、異常は見られなかった。作業が終わった医療用アンドロイド達が私に一礼をし、室内から出てゆく。
 ほぼ彼のための医療ルームとなっているこの来賓施設の一室には、私と、ベッドに横たわる彼とが、残された。
「――これで僕は大丈夫だと言う事が、君にも納得出来たかな?」
 ベッドに全身を預けた白髪の老人は、微笑んで私を見上げて言った。
「検査上はな。しかし無茶はするなと常々言っているだろう」
 涼しい顔の彼に、私は小言を言い募る。今回だってそうだ。いくら他の未帰還者を救うためとは言え、自分もそこに飛び込むなどどうかしている。
「でも上手く行ってるじゃないか。いつも」
「君には結果オーライな行動が多過ぎる。それこそ50年前から」
「良く判ってるじゃないか」
「…お前な」
 私は呆れた。この男、確信犯か。
 ふと、機動音がする。見ると彼のベッドがゆっくりと起き上がってきていた。電脳制御により、彼が自分で操作しているらしい。
 彼はベッドに上体を起こす格好になる。彼の動かない脚はシーツを掛けられたままで覆われていた。
「君はすぐに僕を叱るが、それも50年前のままだな」
 彼の視点が私の隣に移動する。彼は私を見て、懐かしむように言ってきた。全くそうだ。彼が突っ走り、私がその後ろから調べる。我々はそう言う関係だった。
 50年前からそうなのだから、今更矯正は出来ないだろう。むしろその要素がなくなったら、彼ではなくなるのかもしれない。だから私は諭すのを今回は諦めた。

 溜息をつく。私は彼の顔を見ながら、ベッドに腰を下ろす。彼の横顔が隣にあった。
「いつも君が無事だと決まっているなら、私も心配などしないさ」
 言いながら私は手を伸ばす。彼の頬に、軽く触れた。全身義体である私の手に備わっている感覚点が、彼の肌の感触を生脳に伝えてくる。
 皺が刻まれ、瑞々しさも失われてしまっている老いた頬。それは50年前とは変わってしまった感触だが、今も当時と同じように彼に触れる事が出来るのが、心底嬉しい。
 彼はまるで猫のように目を細めていた。私の姿は義体として当時の姿を留めている。
 彼が私から感じる感触は、50年前と同じなのだろうか。だとしたら義体にした甲斐があるのだが。
 不意に彼は身じろぎをした。その手を胸元にやる。そこは検査のためにシャツを大きく開いたままになっていた。
「どうした?」
「何だか寒くなったよ」
 私が問うと、彼は苦笑気味にそう答えた。来賓施設である以上空調は快適な温度に設定されているが、肌を露出していては流石に少々寒いかもしれない。
 彼は指をシャツの下の方にあるボタンとそのホールに持って行き、合わせる。自分で前を閉めようとしていた。私はその様子を見ていて――不意に、感情が動いた。
「待て」
 私は短く言い、彼の手を押し留めた。
「え?」
 怪訝そうな声が上がる。彼の手が止まり、私を見た。
 私はもう片方の手では、彼の頬に触れたままだった。その頬を撫で上げ、自らの顔を近付けてゆく。
 不思議そうに私を見る瞳が視界に入り――私は彼の唇に、自分のそれを重ね合わせた。

 私の行為に驚いたらしく、一瞬彼の体が震えた。やんわりと彼の両手が私の両肩に触れ、軽く押してくる。しかし私は構わない。それを無視し、舌先で彼の唇を抉じ開ける。
 頬を撫でつつももう片方の手を彼の顎に当てる。軽く彼の顎を引き、口を開かせた。柔らかく熱い感触がする。私は彼の口腔に深く舌を差し込んだ。口を吸い上げ、中で彷徨っている彼の舌を捉えて絡め取る。
 ふと気付いた時には、彼の両手は私の肩に置かれるままとなっていた。ともすれば私の身体を軽く引き寄せようかと言う感じにも思える。
 私は僅かに顔を傾けると、彼もそれに付き合ってくる。軽く息をついた後にまた私がその唇を奪っても、彼は抵抗せずに応じた。
 唇の感触を楽しみながら、私は片手を伸ばす。手探りに首筋に触れ、そのまま辿り喉元を撫で、鎖骨をなぞる。彼のシャツは胸元で大きく開いたままだったため、私の手はそのまま入り込んで肩のラインを撫でた。
 露出した肌からは若干冷えた感触がする。やはり寒いと言うのは錯覚ではなかったようだ。そう思いながら私は手を更に進める。肩口から胸元に掛けて大きく存在する彼の傷痕をなぞり、そして胸の突起を探り当てた。
 それをそっと押し潰すように触ると、彼は塞がったままの口から軽く息を漏らした。微かに首を振ろうとしていた。とりあえずは充分に彼の唇を堪能した私は、ゆっくりと口を離した。

 離れた瞬間、彼は息をつく。全身義体の私には呼吸の必要がないので、今となっては判らない感覚だ。彼の濡れた口元が半開きになりそこから吐息が漏れている。半身を起き上がらせているベッドに身体を預け、彼は顔を振った。
 そんな中だが、彼の胸元に潜り込んだままの私の手は、更に悪さをする。2本の指で突起を摘み上げ、軽く力を込める。すると彼は眉を寄せた。
「…何をしているんだ君は」
 掠れた声が聴こえた。そこに非難めいた響きはない。軽く呆れているような声だった。だから私は少し笑う。片手では相変わらず頬を撫でてやりつつ、言う。
「私に言わせるのか?」
「僕はもうこんな身体だぞ。そう言う事は出来ないだろう」
「50年前はしていた事じゃないか」
「だから、今は…――」
 私が彼の頬を舐め上げた事により、彼の言葉は中断する。頬からは強張った感触が伝わってきた。私はそこに軽く口付ける。
 そして私は一旦身体を剥がし、靴を脱いだ。ジャケットを脱ぎ捨て、サイドテーブルに放る。そしてベッドに上がり、膝を立てて彼の身体を跨いだ。
「君の身体に負担を掛けるような事はしないよ」
 私がそう笑い掛けても、彼は未だ釈然としない表情のままだった。まあ、いいか。強硬に嫌がる訳でもないのだから。
 ゆっくりと彼の身体に被さる。私は彼の首筋に唇を落とした。白く細い首筋。私はそこに舌を走らせる。
 最中に再び手を胸元に差し込んだ。弄りいじる。首筋から鎖骨へと舌を進め、それから傷痕を舌先でなぞった。
 ベッドに身体を預けたままの彼が、首を傾ける。私から顔を背けるような角度で、深い息をついた。

「――私のせいだな。この傷は」
「…そうじゃない」
 無残な傷痕を見ていると、罪悪感を感じた。呟くように言った私の言葉に、呼吸の合間に躊躇いがちな声が返ってくる。
 舌先が胸の突起に辿り着き、突付き、舐め上げた。軽く甘噛みすると、上からくっと堪えるような声がした。
 片方も相変わらず指先でいじり続けている。戯れつつ視線を落とすと、彼の手がシーツを強く掴んでいた。
 私は手での責めを中断した。その手で脇腹を撫で下ろす。そのまま片手で彼のベルトを緩めに掛かった。
「…おい。ちょっと待て」
「何だ」
「それはどうなんだ」
 彼は相変わらずベッドに身を任せてはいるが、微かに上気して来ている様子だった。気だるい感じで私にそう言う。
 私の手はそのまま潜り込む。そのまま握り掴んでいた。
「厭ではないのだろう?」
 言いながら私はゆっくりと根元から先端までを擦り上げる。
 何かを言おうとした彼の口を、私はまた口付けて塞いだ。圧し掛かるように身体を押し付けつつ、少々強引に舌を絡める。
 絡ませた指を上下させ、刺激を与えてやると、彼は息を詰まらせた。何か声のようなものを上げようとしているが、私はそれすら飲み込んだ。唇の隙間から吐息が漏れる。
 暫く続けた後に、口を離すと彼は大きく息をつく。そこに、私は強く先端を擦り上げる。彼の身体が跳ね上がるように動いた。掠れた喘ぎが口から漏れる。強い刺激が来たらしい。
 彼が顔を振ると、後ろで纏められている白髪が揺れる。細い喉が反り返った。瞼を閉じて何かに耐えている様子だが、顔が上気してきている。
 手から伝わる感触も変わってきていた。徐々に硬く大きくなりつつあるような感触。更に、指に絡んでくる粘液。
「我慢するのは身体に悪いぞ?」
 私は耳元で囁き、口に含む。彼は微かに震えていた。
「――僕は」
 短い声がした。目許を潤ませている。身体を揺らしているのは堪えているのか、それとも求めているのか。
 そして彼の口元から短い呻きが漏れ――私の手の中で白濁が勢い良く弾けた。

 濡れた唇から荒い息を漏らしている。頬を紅く染め上げ、目許からは涙を流していた。顔を動かし、ベッドに押し付ける。
 私はそれらの表情を全て見ていた。凄まじい色気だと思う。これに私は50年前からやられていたのだったか。姿は変わってしまっても、昔も今も、彼は美しい。私は自らの首に自由な片手をやり、ネクタイを少し緩めた。シャツのボタンを上からいくつか外す。
「――それで、君は…どうするんだ…」
 荒い呼吸の合間に、彼の口からそんな言葉が紡ぎ出される。掠れた調子になってしまっていた。
「私はそんな君を見ているだけでいいんだ」
「…随分と大人しくなったものだな…」
「50年前と違うのは、メ夕ルが存在し、私は全身義体であるという事だ。脳内に適当なプログラムがあるから、私は君を抱いて射精に至らずとも絶頂感を得る事は出来る」
 彼のこんな仕草から得られる衝動を水増しし、性的快感を増幅させる。それでいて義体の性器への回路を遮断し、絶頂の結果である射精には至らないようにする。現在ではそう言う事が簡単に可能だった。
 私が用意しているプログラムは、挿入行為がなくとも男は充分な絶頂感を得る事が出来る。そのために女性には負担を掛けないセックスが可能となり、また射精を伴わないために汚して後始末に困るような事もない。
 便利なものだ。だから、私は彼との行為に至った時のために、負担を掛けないようにしようとこのプログラムを用意していた。
 今はまだそのプログラムを走らせてはいない。最初からそう言うものには頼りたくないから、いよいよ切羽詰まった時に初めて施行するつもりだった。
「…こう言う事でも、用意がいいんだな」
 その声には若干、呆れの成分が含まれていた。
「まあな。突っ走る君の相手をして来ると、自然に用意周到になるものだよ」
 私はそう答える。中に潜り込んでいた指を解き、手を引き抜いた。顔の前に持ってくる。白濁に濡れ、べとつく手。粘り気を指先で広げ、その指先を1本、軽く口に含んだ。
 苦い味が口に広がる。全身義体である私は、成分的に食料となり得るようなものをあんまり口にしない方がいいのだが、味を感じる程度ならば構わないだろう。

 そんな事をしていると、不意に彼の手が伸びた。私のその手首を掴む。そして、彼はそれを自分の方へと引いた。私は不思議に思うが、されるがままだった。
 彼は濡れた私の手を、自分の顔の前に持ってくる。伏目がちの目がそれを見ているらしい。そのまま手を口元まで近付けて――舌先が覗いた。赤い舌が軽く、私の指先を舐め上げた。
「――おい」
 私は少し驚いた。舌先に粘り気のある白い液体が絡め取られるのを見やった。そんな私の顔を、彼は上目遣いでちらりと見上げる。
 何だか瞳に含まれている成分に、悪戯っぽいものがあるように感じられた。彼は手の甲に口付けてから、言う。
「今の僕には、この位の事しか出来ないからね」
 そう言って再び口を私の指に付ける。唇で指を先端から根元までなぞり、それから舌で大きく舐めて来た。
 手首を掴む角度を変え、上手い具合にあちこちを舌を走らせる。付着していた白濁が舐め取られ、彼の口元で唾液と絡んで唇から覗く。
 唐突に彼は私の指を1本、口に含んだ。熱い口内の感触が私の人差し指を包み込む。そして舌が絡んでくる。吸い上げられる感触。
 ――プログラムは走らせているのか?
 不意に私の脳に彼の声が響いた。電通だった。口が塞がっていても会話が出来る。これも50年前とは違う点か。
「いや、まだだ。しかしこの分ではそろそろ準備しておくべきかな」
 言いながらも私は彼の顔を見ていた。目を伏せて私の指を口に含み、舐め、口付ける。その度に湿り気のある音が立つ。白濁を舐め取りつつも指には唾液が纏わり付く。流石に苦いのか、少し眉を寄せていた。

 私に奉仕してくる様子。確かに私の身体に何かを訴えかけてくる。
 義手に備わっている感覚点はそれ程多くはない。だから、生身程に私に対する入力はない。しかし視覚でそれを補っている。まるで手元で感じているかのように、脳で錯覚している――のでなければ、私はここまで興奮に襲われていないだろう。
 更に、私には過去の記憶がある。お互いに若い頃、彼と寝てきた記憶が。今の彼は身体が老い、両脚が不自由なので、あまり無理は出来ない。
 しかし昔はそれこそ色々とやってくれたものだった。それと今の光景が重ね合わされる。
 私は息をついた。身体が熱い。そろそろまずいようだ。脳内でプログラムを探査しつつ、前に倒れ込む。彼に身体を預けた。
 顔を彼の肩口に潜り込ませる。彼の表情を楽しんでおいて何だが、私自身はそう言う表情を見せたくはない。
 彼は私の行動に驚いたらしい。手を舐める作業が停まる。
 プログラムを施行した途端、いきなり衝動が来る。息が詰まる感覚がする。私は瞠目した。反射的に、目の前に見える首筋に噛み付いた。強く吸い付き、音を立てる。
 これは合法プログラムであり、義体だけではなく生身の人間にとってもメジャーな代物であるはずだった。なのにここまで来るとは。
 今までは使う相手がいなかったので、私にとっては初めて使った事になる。その刺激が強いのかもしれない。
 衝動に私は突き動かされる。濡れた手がそのまま彼の手を掴む。がしりと指を絡ませ、強く手を合わせ――。
「――うわ、何を――!」
 次の瞬間、悲鳴にも似た怯んだ声が私の肩越しに聴こえた。一気にその細い喉が反り返る。荒く大きな息がその口から漏れた。息を求めるように呼吸している。

 私は掌を合わせ電通し、自ら感じている快楽を彼にも横流ししたのだ。突然来た衝動のせいか、彼は手を振りほどこうとするが、私がしっかりと指を絡めたためにそれは適わない。
 掌を介して私の快楽を横流しし、更にプログラムを開放して彼にも働き掛けるように仕向ける。
 確実に彼をプログラムの影響下に置きたいのならば彼の電脳をハックする必要があるだろうが、そんな大袈裟な事はしない。私と同じような快楽に苛まれている今ならば、彼はすぐそこで施行されているプログラムの影響を受けるはずだった。
 そのうちに、喘ぐ声が彼の口から漏れてくる。荒い呼吸を伴っているために、言葉としては判然としない。その身体を捩じらせる。
 私自身も上気して来ている。顔を肩口から上げ、彼の顔に接近させた。そのまま荒々しく唇を奪う。彼の声を飲み込んだ。
 空いている片手で彼の頭を掴む。撫で回すうちに彼の白髪に指が入り込み、梳る。後ろで纏めているために感触がもどかしい。
 もっと彼を感じたくなる。身体をもっと重ね合わせたくなり、私は電脳経由でベッドを操作した。起き上がっていた上部がゆっくりと倒れてゆく。
 そこに身体を預けていた彼と、私は、そのまま倒れ込んだ。勢い任せに身体が押し付けられ、ベッドが軽く軋んだ。私はそのまま彼を強く抱いた。脚を割り込ませ、全身を密着させる。
 彼の自由な腕が彷徨い、私の身体に伸ばされた。強く回される。肩の辺りを掴む手に力が入っているのが判る。
 深く口付け続ける最中、彼は私を求めるように舌を差し出してきていて、私もそれに応じた。互いに唇を貪りつつも、電通で彼は私の名を呼んでいる。縋るような、切ない声が脳内に響く。
 プログラムにより増幅された快楽は一定の度合いで保たれているはずなのだが、我々はそれ以上を自力で得ているようだった。私は彼の全てを感じながら、強い衝動に突き動かされる。
 シナプスに電流が走るようなイメージがする。眉間が痛み、呼吸の必要がない私だと言うのに、息が詰まる。脳内で何かが弾け、それが身体に広がってゆく。熱い感情が身体を支配し、そして不意に身体が弛緩した。ゆっくりと彼に被さる格好になる。
 それを受け容れる彼の身体も、くたりと力を失った。どうやら互いに絶頂を迎えたようだった。

 互いにプログラムの影響を受けた格好になるために、絶頂を迎えても射精に至っていないのは私だけではない。生身の彼もそうだった。
 私の下でぐったりとしている体が熱い。身じろぎしている体が纏うシャツの胸元から覗く白い肌はほんのり紅く色付いている。
 繋がったままの掌からは、彼の感覚が未だに伝わってくる。どうやら共有状態にしてくれているらしい。それともプログラムが強制的に働き掛けているのだろうか。
 これは今後はあまり使わない方がいいのかもしれない――少なくとも彼に電通して横流しするのは止めよう。
 しかし今の感覚は確かに素晴らしいものだった。合法プログラムでさえこうなのか。庶民の技術も捨てたものではない。
 妙な感慨を抱きつつ、私は重なったままだった手を解いた。名残惜しく指が彷徨う。色々なものでべとついた感触はまだ残っていた。
 私は頭を軽く振った。行為の後に来る気だるい感覚は昔と変わらない。ゆっくりと腕をベッドにつく。彼に被さった身体を引き剥がしにかかった。
 ふと、視線が彼の首筋に行く。私はそれを見て、気付いた事があった。
「…どうかしたのか?」
 動きを止めた私の様子を怪訝に思ったのだろう。彼はそう訊いてきた。心なしか、声の調子はぼんやりとしている。
 私は素直に事実を告げ、詫びる事とした。
「すまない、首に痕を残してしまった」
「何だって?」
 途端、慌てた声がする。彼の手が首筋に伸び、私が見ている箇所を探るように触る。しかし当然だが、触った感触で判るようなものではない。
「目立つ所じゃないだろうな」
 非難めいた視線が私に突き刺さる。さっき噛み付いた時につけてしまったのだろう。白い肌に赤い痕が映えてしまっている。
「襟でぎりぎり隠れるかと言う箇所だ。君のその白い肌では目立つかもな」
「ばれたらまずいじゃないか」
 それは、あの少女の事を思っての発言なのだろうか。教育的措置か、それとも――…何だ?私は彼女に嫉妬でもしているのか?彼と深い所で繋がり合っている彼女に。

「アンドロイド達なら余計な事は考えないだろうし、事前にその件について問わないように命令しておけばいい。あのお嬢さんは、中学生だろう?まだこんな事、判らないさ」
 私の部下で最近彼の部下ともなった青年については――まあ、大人なのだから、察してくれるだろう。相手は誰なのかとかは、置いておいて。
 私はそう言い募ると、彼は眉を寄せた。不機嫌そうな顔。しかし先程までの性の感覚を漂わせたままの陰影を持つ表情。
 私は笑ってその頬に唇を落とした。年甲斐もなく、もっとじゃれ合いたい気分だった。
「――さて」
 しばし彼に触れた後、私はベッドから下りた。床に脱ぎ捨てていた靴を履き直す。
 そして横たわった彼に両手を伸ばし、シャツのボタンに手を掛ける。胸元が開く程度までボタンは開けられていたが、更にそれを進めた。
 全てを外してしまい、私は彼の腕を取る。袖口のボタンも外してやり、そのまま腕をシャツから引き抜いた。
 彼はされるがままに、私に脱がされる。色素が薄い肌が露になる。私はシャツを脱がせてしまい、その上から覆うようにシーツを被せた。脚から胸までにシーツが掛かる格好になる。
「…どうするんだ?」
「君はこのままでは帰宅出来ないだろう。私が洗ってやるよ」
 私は笑った。自らのシャツの袖を捲り上げ、肘より上に来るようにする。
 この部屋は来賓施設だけあって、バスルームも備え付けてある。とりあえず電脳制御で浴槽にお湯でも張り始める事としよう。
「…君がか?」
「アンドロイドにも見せたくない姿だろう?」
「洗いながらまた変な事を始めないだろうな」
「君の裸身に欲情しない保証はしかねるな」
 臆面もなく言い放った私に、彼はうんざりしたような顔をして溜息をついた。
「何だ?昔は良くやったじゃないか」
「まあ、そうだけどさ…」
 50年前はむしろ彼の方が喜んで私に色々してきたものだったが、変わったものだ。人間とは更生出来るものなのかと私は思いつつ、上体を曲げた。
 腕をそれぞれ、彼の膝の下と首の下に差し込む。そのまま抱き上げようとした。

 すると、彼の腕が伸びた。私の首の後ろに回る。軽い力で私はそのまま引き寄せられた。顔が近い。彼は私を見ていた。
 不意に彼の手に力が入り、私の顔を更に引き寄せた。同時に彼も少しだけ伸び上がる。
 彼は私の唇に、軽くキスをくれた。
 私は少し驚いた。表情にも出ていただろう。力はすぐに抜かれ、私は顔を少し離して彼の顔を見た。そこには楽しそうな表情がある。
「――君が望むなら、仕方ないかな」
 彼はそんな事を言った。その台詞を認め、私は少し笑った。
 軽く頷き、私はそのまま腕に力を込めて、一気に上体を上げて立ち上がった。昔とは較べ物にならない程に軽くなった彼の身体を抱き上げる。
 あの事故を経て50年を一瞬で見送った彼は老い、その50年を待った私は全身義体として当時の姿を維持する事と引き換えに人間ではなくなった。お互い、50年前とはあまりに違ってしまっている。
 しかし、内面はそれ程変わってはいない。少なくとも、あの当時のように繋がる事が出来る。
 この50年は確かに辛かった。体験しないに越した事はなかった。しかし、今の状況はそれ程悪いものではない。
 ――私はそう思うが、彼もそう思ってくれているだろうか?
 私は彼を抱き上げたまま、部屋の向こうにあるバスルームへと向かう。
 腕の中に居る彼は身体から力を抜き、私に従っている。目を細めて私を見上げていた。私はそんな彼に笑いかけた。
 これから、取り返せるものは、取り返せばいい。私はそう思いながら歩みを進めていった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
連投規制に思いっきり巻き込まれまくってすいません。
ストレッチャーの上で胸をはだけて上体を起こすエロス溢れる爺に悩殺された勢いのまま書いたが、後悔はしていない。


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