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オリジナル 『傷だらけの犬のはなし。』

オリジ。ノベルゲーム作ろうとして挫折したブツです。
※動物虐待描写あり
※背景とか効果で補おうとしていたため、文章が描写不足です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 餓えた狼の前に瀕死の小鹿がいれば、狼は間違いなく小鹿を喰らうだろう。
 自分だって狼の末裔だ。目が回る程の空腹。今すぐ目の前の獲物の柔らかい肉で腹を満たし、甘い血で喉を潤したい。
 それがもし咎められるのなら言ってやろう。
『じゃあオレは、生きるためにどうしたらよかったんだ』と。
 オレは悪くない。罰されるべきは、唐突にオレを置いて消えてしまったあいつら。生きるためには仕方ない事だ。
 …そうやって喰らう覚悟を決めたはずなのに、何故かオレは未だ空腹のまま。

▼ ▼ ▼

 目の前の光景がぐらぐらと歪む。倒れそうになる度、四肢にぐっと力を込め直す。

――このバカ!石投げるしか能のない意気地無し連中!オレを攻撃すんなら近付いてこい!

 力を振り絞ってそう吠えると、オレを遠巻きに取り囲んでいた連中は怯えた表情を浮かべて数歩後ずさった。
 ああ、オレ、今どんな顔してんだろ。
 オレが公園へ散歩に行けば、ヒトの子供たちが笑顔を浮かべてオレに駆け寄ってきたものなのに。
『こんな優しい顔と性格じゃ番犬にはならないわね』と苦笑したオカアサン。
 回らない舌でたどたどしくオレの名を呼び、『大好き!』と首元にしがみついてきたコージ…。

 どすん、と脇腹に鈍い痛みで思考が中断される。足元に転がる石。それが合図だったかのように、次々とオレを目掛けて投げ付けられる様々なモノ。
 足元のものを守るように身を伏せる。もうこの繰り返しは何度目だろう。痛みも徐々に感じなくなってきた。
 少しでも力を抜けば倒れそうになる足を踏ん張り、遠い空に向けて吠える。
――誰か、助けて。
――誰か、こいつを助けてくれ!

「お前ら、何してる!」

 怒鳴り声がした。遠くから駆け寄ってくる青い服のヒト。慌てて逃げ出す連中。
 青い服のヒトはこっちを見て、驚いたようにオレの名前を呼んだ。
 …誰だっけ。ああそうだ、『コノチクノオマワリサン』だ。昔、散歩の途中でオカアサンが教えてくれたっけ。大きな手でまだ子犬だったオレを撫でてくれた。
 このヒトなら大丈夫。赤ん坊だったコージの事を最高の笑顔で抱っこしていたのを覚えてる。きっとこいつの事も笑顔で抱っこして助けてくれる。
 安心した途端、ふっと目の前が暗くなる。全身がずきずきと痛みだす。足から力が抜ける。
――ああ、ダメダメ。このままオレが上に倒れ込んだたら、こいつ、息ができなくなる。
 最期の力で足を動かし、少しずれた場所へ倒れ込む。
 走ってくる音。慌てたようにオレの名前を呼ぶオマワリサンの声。
 …そして、弱々しいけど、しっかりと泣く赤ん坊の声。

――遅いよ。もっと早くそうやって泣いてりゃ、オレなんかが見つける前に拾ってもらえたのに。

 ゆっくり目を閉じてため息をつくと、何となく体の痛みが和らいだ気がした。とりとめなく、大好きだったヒトたちの笑顔を思い出す。
 …これが『死ぬ』って事か。寝るのとあんまり変わんないな。
 最後の最後にオレが考えたのはそんな事だった。

▼ ▼ ▼

「ばかないぬ!」
 べしっ、といきなり鼻面を叩かれた。
「さっさとたべて、にげちゃえばよかったんだ」
「うん。けど、色々考えちゃって食べられなかったんだ」
「おれならすぐにたべたよ」
「そっか」
「けど、おれはちっちゃいし、くちもちっちゃいからからむり」
「そうだな」
 前足を子猫の頭にぽん、と乗せてみる。本当にちっちゃい。オレの前足の裏よりも少し大きいくらいだ。
「はーなーせー!ばかいぬー!」
 ふしゃー、と一丁前に威嚇する姿もちっちゃくてかわいい。
「おれはおまえとちがって、にんげんなんかだいっきらいだ!」
「そっか」
「だから、つぎは『とら』になるんだ!にんげんよりつよいんだぞ!」
「凄いな」
「だから、にんげんのところにはおまえがいけ!」
「え?」
 理解に困って、助けを求めるように子猫の隣の天使を見た。天使も困ったように子猫を見ている。
「…この子猫は、人間の夫婦の赤ん坊として転生先が決まっているのです。それを貴方に譲る、と…」
「おれは、うまれてすぐここにきたからなんにもない。ばかないぬはちがう。いま、おれのかわりにいけば、まだまにあう。いいたいこと、いいたいやつにいえる」
「良いのですか?ようやく傷も癒えて、希望通りの転生ができるようになったのに」
「いい!おれはとらになる!」
 がおー!と四肢を踏ん張って精一杯口を開く姿にオレも天使も思わず笑みを漏らした。子猫は「なにがおかしい!こわがれ!」とオレの鼻先に必死でネコパンチをしてくる。

「不可能ではありませんし、転生先は貴方の住んでいた場所の近くで好条件ではありますが…通常ならこの子猫のように数年かけて傷を癒してから転生するのです。貴方のその傷は、転生しても身体に残ってしまうでしょう」
「だいじょぶ!あのふたり、ちまみれでぼろぼろできったなくてしにそうなこねこひろって、ひっしでかんびょうして、こねこがしんだらおおなきするおひとよしだもん!こどものきずなんてきにしない!」
 何故か子猫が胸を張って自慢げに言う…何が「人間なんて大嫌い」だ。この意地っ張りな嘘つきめ。
 自分の身体を見る。毛に覆われて見えないが、痣や切り傷だらけなのは死ぬ間際の痛みで想像がついた。
 これが人間になっても全て残ってしまうとなると、きっと人前に素肌は晒せなくなるだろう。

 …それでも。
 あのオマワリサンにお礼が言いたい。コージにもう一度会いたい。あの赤ん坊がどう生きるのかを見守ってみたい。
「…お願いします」
 目を閉じて頭を垂れ、そう答えた。

 天使に促されてこの世界を後にする前に、一度だけ振り返って子猫に声をかけた。
「『弟か妹が欲しい』ってワガママ言ってやるから、それまでここで待ってろよ」
「なっ…!お、おれはとらになるっていってるだろー!」
 みゃー!という、おおよそ虎には聞こえないかわいい悲鳴を上げながら逃げ去った子猫を見送り、再び前を向く。

 一番会いたいのは?一番言葉を伝えたいのは誰?
 生まれ変わっても忘れぬよう、しっかりと心にその存在を刻みつけ、オレはゆっくりと歩き出した。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ちなみにここの選択肢で5つぐらいルート分岐する予定でした。


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