オリジ 後輩×病み系先輩
更新日: 2011-05-04 (水) 12:48:18
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
攻が後半まで出てきません。
もともと面倒事は大嫌いだけど、時々息をするのすら面倒くさい時がある。息を止めるのも面倒くさいから生きているだけの怠惰な生き物になり果てる時が。
ここ数日も俺はそんな感じで、ベッドの上で寝転んで過ごしていた。水すら飲むのが面倒くさいのに食べるなんてもってのほかで、空腹を過ぎて何も感じなくなった。
狭くてボロいアパートの一室はただでさえ小さな窓の横に新しくマンションが建って、昼でも薄暗い。
今なら、殺人犯がきても猛獣がきても、すんなり殺されてやれそうな気がする。
「カモン殺人鬼!」
言ってはみたものの、空しく一人きりの部屋に溶けただけで、代わりに無機質な音楽が鳴った。
腕の重さにうんざりしながら音源である携帯を取ると、のディスプレイには『グラサン』と表示されていた。親友からの電話とあれば無視するわけにもいかない。俺は通話ボタンを押した。
「ハロー?ユキタカちゃんでっす!」
「ハローじゃねえよ頭湧いてんのかテメェ。何してやがる」
ドスのきいた声に混じった少しの心配を感じて、殊勝にも罪悪感を感じた。
「イヤン、怖ーい。おうちにいるよー。」
「またアレか。サプリぐらい飲んでんだろうな?」
以前同じような状態に陥ったとき、食わないというよりは食えないのだと知ったグラサンは俺に大量のサプリを押しつけた。
その次にこの状態になったとき、俺はその存在をすっかり忘れていて、こっぴどく叱られて次は絶対にサプリは飲むと誓わされた。
「飲んでるよー」
今回も俺はすっかり忘れていたけど、怒ったグラサンの怖さをよく知っていたのでそう言った。目は散らかった室内を彷徨って、サプリを仕舞い込んだ箱を探した。
「……本当だろうな?」
「イエース。それよりなぁに、用事じゃないのー?」
疑うような声色に、さりげなく話題を逸らすとそうだった、とグラサンは言った。
その間に俺はベッドから降りてサプリの箱を、脱いでそのまま床に放ってあったシャツの下から救出した。
「丹波がぼやいてたぞ。明日ガッコに来なかったらお前んチ行くってよ」
「ええー!ナオちゃんが?やだなぁ、面倒くさいなぁ、ソレ」
CaだとかFeだとか書かれたボトルから適当に取り出して、冷蔵庫にあったポカリで流し込んだ。
「だったらガッコ来いよ。出席日数足りなくなんぞ。」
「ううー、面倒くさい……」
「でも丹波が来んのはもっと面倒くさいだろ?」
たぶんグラサンは携帯の向こうでにやけた顔をしている。なんだかムカついて、電源ボタンを押してやった。
だるい体で学校への道を歩く途中、鞄を忘れたことに気付いた。今更戻るのも面倒くさくて、そのまま手ぶらで教室へ入るとグラサンに呆れた顔をされた。
「お前、何しにガッコ来てんだ」
「んー?グラサンに会いに?」
「いい加減グラサンってのに飽きろ」
グラサンは何もグラサンをしてるって訳じゃない。タモツという名前だからか、たもっさんだとかたもさんだとか呼ばれていたのを聞いて、某有名芸能人を連想して俺がつけたあだ名だ。
他の奴が呼べばその普段でも十分恐ろしい顔を更に恐ろしくさせて睨むものだから、呼ぶのは俺だけだけど。
「ったく。ほらよ、食っとけ」
差し出されたのはチュッパ。
「ヤッター!何味?むいてー」
溜息をつきながら口に入れられた飴はプリン味。つくづくグラサンは俺に甘いと思う。ヤクザのような顔をして、実は優しいだなんてマンガの中のヒトみたいだ。
「ナオちゃんにアイサツしてくるー」
「真田も心配してたぞ。篠原先輩、大丈夫ですかねーって」
「じゃあトモくんにも顔見せとく。俺ってば愛されてるーゥ」
「まったくだ。忘れんなよ。あと、顔見せたら余計心配されるかもだぞ、すげー顔。」
あらー、と笑って教室を出た。チュッパを舐めながら廊下を行くと、熊とあだ名される我らが担任がいた。
「ナオちゃーん、おっはよー」
ひらひらと手を振ってみせると、ナオちゃんは物凄く凶悪な顔をした。
「丹波先生と呼べっつってんだろが、せめて尚也先生だ」
「イヤン、俺とナオちゃんの仲じゃない」
「俺はお前と生徒と教師以外の関係になった覚えはねえ。無断欠席続けた後にそんな顔で登校しやがって、学校嘗めてんのか」
俺の長い前髪を毛むくじゃらの手で上にあげて、ナオちゃんはますます顔を凶悪にした。
「グラサンにも言われた。俺、そんなひどいカオしてるー?」
ちゃんと顔は洗ってきたのにな。
「グラサン?黒宮のことか。ひどいっつか、今にも死にそうだぞ。クマとか顔色とか」
眠れないんだから仕方ない。睡眠薬の予備はきれてたし、買いに行くのも面倒くさかった。
「とりあえず、もうすぐ授業だから戻れ……って篠原!」
途端走り出した俺の後ろをナオちゃんの声が追ってきた。走るのは面倒くさいけど、授業も十分面倒くさい。
「ナオちゃんゴメンねぇー、俺鞄忘れてきちった!」
「てめぇやっと登校したと思ったらソレか!待ちやがれ!」
きゃー、襲われるー、とか言いながら追いかけられていたら前方にタクシーを発見した。
見知った広い背中に飛びつくと、ぅお、という声と共に背中はよろけて、それでもすぐに持ち直した。
「トモくん、走れー!」
「え、篠原先輩?って、ギャー!熊先!」
「誰が熊だ真田コラ!篠原渡せ!」
ナオちゃんの形相に怯えたのか何なのか、トモくんは走り出してくれた。チャイムが鳴る。
俺をおぶったトモくんが手近の空き教室に入るとナオちゃんは俺達を見失ったようだった。
まったく、という風にトモくんが息を吐いたから、俺を腹に抱えたトモくんを見上げた。恐らくは準備室の部類だろう部屋は窓がなく埃っぽくて、少し俺のアパートに似ていた。
「サキちゃんがびっくりして見てたよ」
「そうですか」
「あれ?そっけないね」
「……別れましたよォ」
情けない声にケタケタと笑うと、抗議するみたいに髪を引っ張られた。ふとトモくんが真剣な目をした。
「先輩、軽すぎですよ」
「そう?」
おぶさっている間手に持っていたチュッパを口に入れながらもごもごと言うと、トモくんは一層深く息をついた。
「身長はあんま変わんないじゃない。あ、でもまたちょっと伸びた?180いった?」
「先輩は肉がなさすぎます。また痩せたでしょう。何してたんですか、ここ数日」
「んー、寝てたよ」
「それにしては随分なクマですね」
キレイな顔を歪めて俺を見るもんだから、俺は自分がすごく醜いものに思えてしまう。実際、それは真実なんだけど。
「あんま自分いじめないで下さい。食べないうえに寝ないなんて消極的な自殺みたい」
「グラサンが言ったの?」
「見ればわかります」
ふうん、と顔を逸らしてチュッパを噛んだ。腹にあるトモくんの手は熱くて、制服越しにも熱を伝えた。
「ごめんね」
しばらくの沈黙のあと言うと、尋ねるように手に力が入った。
「さぼらせちゃった」
「そんなこと」
また沈黙。でも全然不快じゃなかった。
「あ、寝れそう」
呟くと、どうぞ、と声が降ってきた。この後輩も俺に甘い。
「あのねぇ、トモくん」
「はい」
「俺は自殺なんてしないけどさぁ、」
面倒くさいもの、そう言うとトモくんは静かに笑った。とろとろとした空気は俺には少しむず痒い。
「たぶん今殺されかけても抵抗しない」
なぜそんなことを言ったのかわからない。理由なんかなかったと思う。それは、少なくとも俺にとっては、自然な会話の流れだった。
だからトモくんが俺の体をひっくり返して床に背中を押しつけたとき、数日ぶりの眠気が一瞬にして吹っ飛ぶくらいに驚いた。
驚いたのはその行為よりもトモくんの表情で、可愛い後輩は怒ってるのか悲しんでるのかわからない、でも確実に好意的ではない表情をしていた。
「なに、それ」
低く絞り出された声は俺の知らない声色で、背筋が少し寒くなった。手にあったはずのチュッパの棒は奪われて、床に放り投げられた。
「なに、って?」
「ふざけるのも大概にしてください。俺がいったいどんだけ、」
ああもう、いいや、とトモくんは言って、俺の首筋に噛みついた。まるで俺がチュッパに噛みついたみたいに。
俺は驚きから解放されて、やっと自分の状況を把握した。トモくんは俺のシャツのボタンをはずして、浮いた肋骨をなぞっている。
何が楽しくてこんな骨と皮しかないような体を撫でるんだろうと思った。
「抵抗してください」
一向に力の入らない、自分の抑えた俺の腕に苛立ったのかトモくんは言った。手は解放されたけど俺は動かなかった。
「また面倒くさいとか、言うんですか。それで誰か辛くなるとか考えないんですか。どうしてそんなに消極的なんです」
トモくんは俺の好きなキレイな顔を泣きそうに歪めて、俺はやっぱり自分の醜さを確認する。思わず笑ってしまった。だって馬鹿げてる。
俺は極度の面倒くさがりで、こんな面倒くさい状況に抵抗なんて面倒くさいことをすると思ってるんだろうか。そうだ、俺はまた、面倒くさいと言うよ。
「だって面倒くさいもの」
鈍い音がして、遅れて口の中に鉄の味がひろがった。殴られたとわかったけど、だからといってどうしようという気も起らなかった。
「トモくんこそ、なんでそんなに必死そうなの」
笑ってみせるとトモくんは絶望したような表情で、いよいよ俺は醜かった。
ナオちゃんに家を訪ねられる方が面倒くさいことがわかったから、俺は学校に来た。今、抵抗しないほうが面倒くさくなるとわかっていた。
それでも俺は抵抗しようという気にならなかった。この意味を、知ってる?
食らいつくようなキスの先で、このまま骨の欠片ひとつ、髪の毛の一筋すら残さずに食べられてしまえればいいのにと思いながらトモくんの背中に手をまわした。
ここで、俺ってば愛されてるーゥ、なんて言えばまた殴られるんだろうなと、内心で溜息をつきながら。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
薄暗くってごめんなさい。
あと、自分掃除屋の話書いた奴ですが、前にレスくれたひとありがとう。
掃除屋の続きじゃなくてごめんなさい。
お目汚し失礼しました!
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