LOVELESS
更新日: 2011-05-04 (水) 13:02:53
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| 人称がややブレ気味だお。
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| えっちはないよ。
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
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ふと。
専用の鍋で溶かした膠の粗熱が取れたところで、広口のビンに移しながら、草灯はかすかな耳鳴りのような違和感を覚えた。
「・・・」
そばで何をするでもなく好き勝手なことをしゃべっていたキオが、突然手を止めた草灯をいぶかしげに見た。
「どしたの、草ちゃん?熱かった?」
「・・・いや」
立夏、だ。
「用があるから帰る」
鍋を置いて立ち上がった草灯を、キオが瞬間、ぼんやりと見つめた。
「え?」
キオがその言葉の意味を理解する前に、草灯はまるで煙草を吸いに出るような気軽さで部屋を出ようとしている。
「ちょ、草ちゃん。膠は?ほっといたら腐るよ!」
「キオにやるよ。使って」
右手をノブにかけ、ちょっと斜めに振り向いた横顔が、かすかに笑みをふくんでキオを見やる。
「使ってって・・・おい!」
キオの声を軽く聞き流して、草灯の長身がドアの向こうへするりと消えた。
「あのガキだな」
鍋のふちから落ちそうな膠のしずくを人差し指でぬぐいながら、キオはひとりごちる。
「ったく・・・」
丁寧にとかされた膠はきれいに透き通って、掬い上げたキオの指先からさえも滴り落ちようとしている。
やっと清明とか言う奴がいなくなって、草灯は自由になれたのに、今度はその弟が現れた。
実際のところ清明と草灯の関係がどういったものだったのか、その弟の立夏と草灯との関係がどういうものなのか、その違いがどうなのか、よくはわからないけれど・・・
「まだあのガキのほうがましかもなぁ」
指先から膠のしずくが落ちるのを、目を細めて眺めながら思う。
立ち去り際、振り向いた草灯の表情を思い返す。
清明の元へ行くときの草灯はああではなかった。
振り返りもせず、張り詰めた表情で、無言のまま部屋を後にしたはずだ。
そう、相手が清明ならば。
まだ夕暮れは薄ら寒いというのに、立夏の部屋の窓は開け放たれていた。
待っていた、とでもいうように。
「立夏・・・・?」
ベッドの上、シーツに包まってにうずくまる小さな塊に声をかける。
「そうび・・・?」
しわくちゃのシーツの隙間から、怯えたような瞳がのぞく。
「どうしたの?」
立ったまま、問いかける草灯に立夏は目を伏せて
「どうもしないよ、勝手に入ってくんなっていつも言ってるだろ?」
ふてくされたように言うと、ベッドの上にひざを抱えるように座る。
ベッドについたままの右手のそばには開かれたままの携帯電話。
跪いて、頭からシーツをはがすと、草灯は立夏の小さな顔を覗き込んだ。
まだ草灯の目線のほうが高い。見上げようとしてためらい、右に視線をそらす立夏の仕草があどけないくせに、なまめかしく見えるのは、たぶん・・・
そっと、柔らかな髪を右手でかき上げて確かめる。
左頬の端、耳のそばに、赤から紫に変わりかけている、痣、のせいだろう。
草灯の視線に気づいて、立夏は乱暴に左手で草灯の手を振り払った。
「なんだよ、触るな」
甲にも無数の小さな傷のある、白いその手をつかんで、くちづけて。
「やめろよ」
「うそつきだね、立夏」
草灯は小さく笑う。
「立夏、俺を、呼んだでしょう・・・?」
「ばっ、何言ってんだよ、呼んでなんか・・・」
「だめですよ、立夏。偽りのスペルにはどんな力も宿らない。そんな風に空っぽの言葉を使うと、感性が磨り減りますよ。立夏は俺を呼んでいたでしょう? 今、傍にいてほしいっておもってたでしょう?」
ぐっと詰まる。
「・・・なら、草灯はいつも本当のことを言ってるっていうのかよ」
ぴんとミミを立てて、見上げる挑むような視線。
「もちろん」
「俺のことを好きだって言うのも、本当だって言えるのか?」
「もちろんですよ、立夏。愛しています。電話など必要ないくらいに。立夏が、俺に会いたいと、そう思うだけで、こんな風に傍へ飛んでくるくらいに、俺は立夏に縛られている、繋がれている」
平然と言う草灯のまなざしから、真っ赤になった頬を、俯いて隠す仕草で、
「清明に言われたからだろうっ」
「そうです」
「!」
艶やかな黒髪の陰で、紅潮していた頬がさっと青ざめる。
わかりやすい、かわいい立夏。
ほら、そんな風に簡単に傷つくから、だから切なくなる。
その弱さが、俺を追い詰める。
「清明に、俺の戦闘機になれって、そう命令されたから、だから俺のそばにいるんだ」
「そうです」
「俺の戦闘機になるのと、俺を好きになるのは同じことなのか?」
答えを聞けばわざと傷つくような問いを無心にぶつけてくる立夏の、力なく垂れたミミをいとおしむように、そっと撫でる。
薄暗がりに沈んだ部屋の中、微かに残った光の中で艶を増したように見える、極上の手触りのミミ。
「大好き、立夏。俺のすべてが立夏のものだ、いつもそう言っているのに」
試すのは、弱いから。尋ねるのも、弱いから。
清明は違った。当然のように草灯を支配し、屈服させ、その領域すべてを侵しつくした。
草灯の献身など、蛇口をひねれば出る水のように平然と消費して、そのまなざしひとつで、草灯のなにもかもを余さず意のままにした。
完全な支配。
それがどれほど甘美なものか、俺は知っている。
確かにそれを知っている。
「信じて、立夏」
抱きしめる、熱い体。子供は体温が高い。頼りなく、小さく震えている。
「信じて」
おずおずと抱きしめ返す力が少しずつ強くなって行くのを感じながら、草灯は目を閉じる。
この力がもっと強くなって、このまま自分を絞め殺すほどになればいい。
飢餓感にも似た、欲望。
首に巻いた包帯が、ぎりぎりと締め上げられるような錯覚。
その先を、握っているのは・・・
草灯は目を開いて、幻想を振り払う。
立夏。
立夏。
早く大きくなって。
大きく、強くなって。
俺を足下に踏まえて平然と見下ろすほどに。
そのとき立夏はどれほど美しいだろうか。
息もできないくらいに、俺を縛り付ける立夏を、見たい。
BELOVEDを切り刻んで、その上からLOVELESSを刻み付けるほど、俺を、求めて。
求めるその力が、返す刃となって血を流させるほどに、俺を求めて。
「俺に、命じて、立夏。自分のものになれって。そう言って・・・?」
ねだるささやき声は、罠と見わけ難い甘さで。
「そんなのいやだ! 命令して好かれるなんて、そんなのは違う」
どう違うというのだろう? される側がこれほどに望んでいるというのに。
「だって信じないでしょう? 立夏は。俺がどんなに立夏を愛しているといっても、信じられないんだから」
細い指先が、草灯のシャツを握り締めたまま震えている。
「信じられるわけないだろう! 清明の命令なんだから!」
「清明の命令を信じなくて、何を信じるというの?」
この肌にはまだ、BELOVEDの刻印が消えずにある。
名に背くたび、血を流すほど、まだ清明に縛り付けられている草灯を放置しているのは立夏だ。
草灯の目にかすかに漂う冷ややかさを、立夏が感じていることを草灯は知っていてどうしてやることもできない。
胸にすがりついたまま、草灯を見上げる立夏の瞳が揺らぐ。
信じさせて、信じさせて、信じさせて。
清明が自分を守ってくれたみたいに、草灯が守ってくれるって。
清明みたいに俺をわかって、草灯が本当は立夏じゃないかもしれない俺を許して、愛してくれるって。
信じさせて。
立夏の瞳が必死でそう訴えかけているのがわかる
けれど、それは立夏が自分の力で手に入れなければならないものだ。
立夏が俺を自分で「自分のもの」にしてくれなければ、完全ではない。
俺が立夏に差し出せるものは、もう差し出している。
あとは自分の意思で、俺を支配して、立夏。
「立夏、俺はLOVELESSの戦闘機だ」
LOVELESS
愛なき者。
立夏は気づかない。
まだ、気づいていない。
俺たちが、ここにはいない一人の男を抱きしめるようにして、お互いに抱き合っていることに。
立夏がそれに気づいたとき、初めて俺たちはひとつのLOVELESSになれるのかもしれない。
BELOVED
愛されし者。
その不在。
立夏。
早く気づいて。
俺たちをここから連れ出してくれ。
やわらかな立夏の唇にそっとくちづけながら、草灯は自分が今抱いているのが、絶望なのか希望なのか見極めようとして目を見開いていた。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ お目汚し失礼しました。
| | | | ピッ (・∀・ )
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