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VOCALOID カイト→マスターの恋人

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

某カロイド
カイト→マスターの恋人というアウトっぽい話

 俺と預かりものに嘘を吐き、大切な人は逝ってしまった。
「マスターから、連絡ありましたか?」
 仕事から帰り、着替えを済ませると、アイツからの預かりもの──カイト──が俺に声をかけた。
「……いや、無いよ」
 郵便物を確認するふりをして、カイトに笑顔を向ける。
「そうですか」
 明らかに残念そうな表情で、カイトはため息を吐いた。
「まだ一年じゃねぇか、アイツも忙しいんだろ」
 海外に長期出張だなんて嘘を吐いて、俺の恋人は病院へ行った。苦しむ姿は見せたくないからと、俺とカイトの前からいなくなったのだ。
 それから半年後、アイツが死んだと知らされて、俺は一日家を空けた。次の日帰ると、カイトは寝ずに待っていたらしく白い顔で迎えられ、少し後悔した。
 アイツから預かった大事なボーカロイド。
「歌いたいなぁ」
 カイトが呟いたその言葉に、俺はパソコンを起動させる。アイツから預かったものはカイトだけじゃなく、アイツがカイトに作った曲全て。

「歌ってみろよ、聞きたい」
 適当に曲を選んで再生させてやると、カイトは嬉しそうに微笑み、背筋を伸ばし、そっと目を閉じる。
「    」
 柔らかいメロディーと、少し高くて透明感のある声が綺麗で、俺は聞き惚れる。アイツらしい、少し夢見がちな歌詞も手伝って、昔を思い出してしまった。
「……なんで、泣いてるんですか?」
 気付くと頬に涙が伝っていた。溢れ出す気持ちを止められなくて、俺は思わず顔を両手で覆い隠す。
「──」
 名前を呼ばれ、その声の近さに驚いて顔を上げると、困ったような、泣きそうな、そんな表情をしたカイトが目の前に居て、俺の涙を指で拭ってくれた。
「あなたは、マスターの大事な人です。だから僕にとっても大事な人です。あなたはマスターと一緒にいるとずっと笑顔だったのに、僕がそばにいたら、辛いですか? 僕がいたら、悲しいですか?」
 カイトが俺の両頬を包み、唇にキスされる。アイツみたいに、俺を慰めた。

「……僕じゃ、ダメですか?」
 頬にあてられたままの手に、俺の手を重ねる。どんな意味で言っているのか、カイトの考えが幼稚なものならば、俺は笑ってこの手にキスをしよう。
 もしも、恋人の真似事をしたいという意味ならば、俺は……どうしたらいいのだろうか。
「カイト、俺とアイツの関係って、わかるか?」
 青い瞳が揺れる。眉が寄り、綺麗な唇がへの字に歪んだ。
 頬から手のひらが離れ、俺はカイトの指を掴んだ。
「恋人だと聞きました」
「わかって、聞いたのか?」
 そのまま、カイトは俯く。
「好きなんです、あなたが」
 掴んでいた指先が、俺の指に絡んで離れない。
「マスターは……もう帰って来ないのでしょう?」
 その言葉に、いつから、とか、なぜ騙されたふりをしていたのか、とか、聞きたかったけどそれは後にして。
「……うん、もう会えない」
 カイトはしばらく黙って、ゆっくりと俺に抱きついてきた。

「マスターは、僕の気持ちを知っていました。僕があなたに好意を持っている事、知っていてあなたに託したんです」
 騙されていたのは、俺の方だったのだと、その時気付いた。
 カイトの温もりと、思い出にあるアイツの温もりが重なる。アイツが育てたボーカロイドなんだ、アイツの分身みたいなカイトが、アイツみたいに俺に惚れるなんて、おかしくは無いのかもしれない。
「なぁ、カイト……俺はまだ、アイツが好きだよ。アイツ以外考えられないくらい」
 離れそうになる体に腕をまわし、言葉を続ける。
「でもアイツはもういない。いない人間を想うのって、辛いけど……忘れる事はしたくない。だから、待ってくれないか? 俺がアイツと別れられる日まで」
 肩にあるカイトの頭が頷いた。
「待ちます、ずっと、ずっと……」
 強く抱きしめられると、なぜだかまた涙が出てきて、そのままカイトの腕の中で泣かせてもらった。
 うそつきな恋人が残したものは、目に見えないものばかりで、俺はその大きさを把握してないけど、いつかその向こう側に行けると信じて生きていく。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

やっぱりアウトかな?w


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