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変わらないもの 前編

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ注意。
某「百-一」色の犬盤度。
四弦×唄と若四弦×若唄で、唄が襲い受け風。
エロ注意。

 いい年したおじさんが若いときの格好なんてしたら、笑われるだけかと思っていたのに。
 青春時代の姿に変身した俺達を見て、お客さんたちは興ざめするどころかやんややんやとほめそやした。
 俺達もその勢いにつられて、つい身体の年齢も忘れてあちこち走り回ったり、叫んだりしてしまった。
 妙に頭がぽうっとして、身軽になった気分だった。
 ステージに立っている間だけ、俺達は、はちきれそうなエネルギーを抱えた、20歳の若者でいられた。
 
 魔法のような若返りコーナーが終わり、俺達は現在の心と体に還った。
 今では懐かしい響きさえする『ハタチ』。あのころのようながむしゃらさは、残念ながら今の俺達には無い。
 さびしいけれど、時間の波は俺達を弄んで、知らない間に予想外の方向へと流していく。
 気づいたときには、俺達はもう以前の俺達がいた地点から遠く引き離されてしまっているのだ。
 だけど、今の俺達にしかできないことも、それこそ『ハタチ』のころしか無かったものと同じくらいあるはず。
 40年モノの器に戻った俺達は、誠心誠意、今の音を奏でた。

「――で」 
 ホテルの部屋の中、ベッドに腰掛けた多村は腕を組んで俺を見た。「どうして、お前は、自分の部屋に、帰らないの?」
 まるで耳の遠いおじいちゃんにでも話しかけるみたいに、いちいち区切りながらゆっくりと言う。
 失礼だ。俺だってまだそこまで老けちゃいない。
「いや、実はさ、多村の部屋、……が出るって聞いたから」 眉をひそめて深刻な表情をつくる俺に、多村はそれはそれは冷たい視線を投げかけてくる。
「多村が、怖がって夜眠れないんじゃないかなーって思って……」
「大きなお世話だ」 最後まで聞くのが面倒だとばかりに、彼はぴしゃりと言った。そして、改めて俺の顔を見上げてくる。
「で、本当の理由は何なの?」
 そう言って多村はちょっとだけ身をよじり、自分の横のスペースを手で叩いた。
 いつまでも壁にもたれて突っ立ってる俺への配慮だろう。俺は心の中でにんまりほくそ笑んだ。

 彼の隣に腰掛けると、シングルベッドがぎしり、と音を立てた。
「最近ずっと、若いときのカッコしてるでしょ」
「企画でな」
「俺達にもハタチのときがあったんだよね」
「まあな」 多村は何を当然な、と言いたげな顔をした。俺は笑い、パジャマのボタンを指でいじりながら、不自然な咳をした。
「なんか、もう一回あの頃みたいにやってみたいと思った」
「何を?」 多村は目を真ん丸にした。「ライブなら、既にやってるけど」
「そーじゃなくて」 やっぱり遠まわしな言い方では伝わらないのだろうか。
 それでも、もろに言ってしまうことが気恥ずかしくて、俺は意味ありげにチラチラと目配せを送ることしか出来ない。
 多村は、頭上に無数の?マークが浮かんでいそうな顔で俺をじっと見ている。
 無言と視線の攻撃に耐え切れなくて、俺は思い切って彼の体に飛びかかった。
 彼は小さく叫び声をあげて、ベッドの上に倒れこんだ。俺は、彼に馬乗りになるような体勢になった。
「な、何?」多村の声には驚きと非難が混ざっていた。依然として事態が飲み込めていないようだ。
「……うるさい。いーかげんに、分かれ」
 耳元に顔を寄せ、馬鹿、と小さく毒づいた。文句を言われる前に、その柔らかそうな耳たぶに咬みついた。
 いくら鈍感な多村でも、ここまでくると流石に俺の意図が読めただろう。おそるおそる「マジ?」と呟き、俺の顔を見た。俺はうなずいた。

******

 初めて組み敷かれたのはいつのことだっただろう。とても暑い日だったのを覚えている。
 あの頃の俺達は若かった。来る日も来る日も、泉のように欲望と好奇心が溢れ出てきていた。そして、明らかにそれを持て余していた。
 体内でうねる訳のわからないエネルギーのはけ口が見つからず、率直に言って悶々としていた。
 俺達にとって、その行為にはセンチメンタルな要素など付随していなかった。
 言ってしまえば、俺達のやってることは、子どもが危険な遊びにこわごわと、それでも目を輝かせながら耽ってしまうのと同じ感じだったのだ。

 あの日俺はいつものように、あいつの部屋に入り浸っていた。
 夏の日に、狭い部屋で、男2人が篭ってるのだからそれはもう気の遠くなるような暑さだった。
 窓を開け放し、吹き込んでくる生ぬるい風に額を当てる。
 いつもはぞろぞろとお出ましになる野良猫たちも、今日に限ってやってこない。
 猫が入れて、ここより涼しい場所なんていくらでもあるのだ。
 俺はクラクラしながら、この部屋でゲームをし続けるのと、猫になって避暑地を捜し求めるのとどっちが素敵だろうと考えていた。
 多村はゲームをしていた。コントローラーを握る手はじっとりと汗ばんでいた。
 テレビ画面を見つめる横顔も、こめかみから汗の筋が流れていた。
 俺は彼の真ん丸い眼鏡がうっとうしいと思った。こんな暑い日にわざわざ眼鏡をかけなければできないようなことをするなんて、馬鹿みたいじゃないか。
 温かくなってしまった缶ビールをすすりながら、俺はコントローラーの交代をせがむこともやめて、彼の姿をぼんやり見ていた。
「多村ー」
「なに」
「この部屋暑い。なんとかしてよ」
「お前がいるから暑いんだろ。イヤなら出ていけ」 
 まったくその通りだ。そばに人がいるだけで暑苦しいというのに、大の男ならなおさらだ。
「やだ。動くのめんどい」
「モノグサだな」
 俺は缶ビールをぐいっと喉に流し込んだ。ぬるい。苦味だけが口の中に微妙に残って気持ち悪い。
 多村は俺の方なんて見向きもせずにゲームを続けている。
 体中に次々と浮かび上がってくる汗の滴を拭いもせず、石像みたいにじっと同じ体勢でいる。
 そんな姿を見ていると、なぜか無性にいらいらしてきた。
 暑さと酔いと、その他もろもろの要素が、俺をおかしくさせた。
 この閉ざされた空間の中で、俺の思考はゼラチンみたいにふやけ、輪郭を失っていた。

「ねえ」
「なんだ」
「多村って、女と付き合ったこと無いの?」
 ボタンを押す指の動きが止まった。画面だけを見つめていた目が、ちらりとこちらを向いた。
「だからなんだよ」
「別に。知りたいだけ」
 多村はフンと鼻を鳴らし、ぼそりと「無いよ」と言った。
「ふーん」
 多村の目はまた画面に戻る。俺は缶ビールを近くの机に置く。
「じゃあさ」
 俺は多村の顎をつかみ、無理矢理こっちを向かせた。汗で手がすべりそうになった。
「何?」多村は怪訝な顔をする。俺はにじり寄って、鼻先が触れ合いそうなほど彼の顔に近づいた。
「女の子とこんくらい近くで話したことも、無いの?」
 多村は眉をひそめる。眉間から鼻筋につうっと汗が下りる。
「ねえよ」
「ふーん」
 俺は鼻で笑った。彼はむっとしたように唇をとがらせた。
「それが悪いか?」
「ううん。ぜーんぜん」
 おおげさに首を振ると、俺は両手で多村の顔を包んだ。黒い瞳が一瞬揺らいだ気がした。
 そのまま耳まで手を伸ばし、眼鏡をそっと外した。余計なものが無くなると、彼の顔は幾分スッキリしたように見えた。
「じゃあ……さ」 俺はささやき、手を彼の顔に固定したままゆっくりと近づいた。
 わけもわからず呆けていた多村が、ようやくはっとした表情を見せた。
 でも、もう遅い。
 気づいたときには、彼の厚い唇は、俺の薄いそれと重なり合っていた。

 唇を離すと、彼のまぶたはパチパチせわしなく上下した。まばたきするごとに、額やこめかみからスルスル汗が流れ落ちた。俺は笑った。
「多村は、こういうこともしたこと無いんだ?」
「おま……え」多村の声はかすれていた。「今……なに、した?」
「わかんないの?」俺はニッと笑い、わざとらしく首をかしげる。そして、両手を彼の腕にすべらせた。
「教えてあげよっか、これ以外にも、いろんなこと」
 彼の腕をつかみ、ぐっと引いた。俺と彼の体が、畳に向かってグラリと揺れた。
「句差野!」
 多村が叫んだ。
 次の瞬間、ガツンと派手な音がした。脳みその位置がずれるんじゃないかってくらいの衝撃が起こった。
 俺の後頭部は、机の角にみごと直撃していた。
「……いってええぇ……」
 あまりの痛さに、思わず目に涙が滲む。薄情なことに、多村は頭を抱える俺を見てげらげら笑う。
「笑うなよぉ」
「バッカだなあ、お前」
「うるせぇ」
 彼は俺を指差しながら、ひいひい息苦しそうにする。そして、俺の目を見て意地悪く言い放つ。
「お前、教えてやるって言えるほど、経験無いだろ?」
 図星を突かれた。確かに俺は、偉そうに人に伝授できるほどの経験は積んでいない。
 自分の顔がボッと熱くなるのを感じた。多村は憎たらしいくらいのしたり顔をした。
「バッカだなあ、ほんと」
 痛いし笑われるしで、俺は自分がすっかりみじめな奴になってしまった気がした。ここから逃げ出したい気分だった。
 ところが、多村は笑いながらコントローラーを手に取り、ぽちりとボタンを押したのだ。
 魔王の城を目指していたはずの勇者が、森の中でピタリと立ち止まった。
「そんじゃあ」彼は振り返り、頭をさする俺に向かって言った。
「せっかくだし、いろいろ教えてもらおっか、センセ?」

 俺は彼の髪を撫でながら、顔のあらゆるところに唇を下ろす。彼はまだ戸惑い気味に、俺の肩を両手で押さえる。
「まだ、ツ/ア/ー中……だろ……」
「これからしばらくは、ラ/イ/ブも無いよ」
「だからって……」
 彼の首筋に顔をうずめ、ぺろりと舐める。かすかに彼の息が上がる。
「こんなときに、なに、盛ってんだよ……」
 こいつは昔のことなんて忘れたんだろうか。あの頃は俺も多村も、呆れるくらい元気だったんだけどな。
「いいじゃん。久しぶりなんだし」 彼のシャツの裾に手を入れ、煽るように指を動かす。
「昔みたいにやってみようよ」
 上目遣いで彼を見る。困ったような彼の目と、俺の目が合わさる。
 そんなとき、ドアをノックする音が聞こえた。
 俺達はハッとしてドアの方を向いた。
「多村ぁー」
「――鉄哉だ」俺は呟いた。
「多村ー、もう寝たのー?」コンコンとドアを叩く音が続く。
「どうする、多村?」俺は小声で多村にささやいた。ドアを見ていた彼の顔が、ゆっくりとこっちを向く。
 次の瞬間、腕が伸びた。
 きつく抱きかかえられ、息も止まるようなキスをされた。
「まさか柾棟連れてきたりしてないよなー。変な事したら許さねーぞー」
 鉄哉の呑気な声がとても遠くで響く。舌を深く絡ませられて、息継ぎする暇も無い。
 苦しくて、めまいがしそうになったころ、鉄哉の去っていく足音が聞こえた。
 そこでようやく、唇が離れた。
「……なんだ」 肩で息をしながら、俺はニヤッと笑った。
「お前も結構、盛ってんじゃん」
 濡れた口を拭いながら、彼はうるせぇ、と恥ずかしそうに言った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

唄は今も昔も襲い(誘い)受けだといいなと思います
スルーされた六弦は太鼓に慰めてもらってるといいよ
続きは後日投下します。今度こそ失敗しないようにしたいorz

書き込めない原因は自己解決しました……すみませんでした。


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