コ.ー.セ.ル.テ.ル.の.竜.術.士 風×暗
更新日: 2011-05-03 (火) 13:44:47
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
コ.ー.セ.ル.テ.ル.の.竜.術.士で風(次兄)×暗(長兄)→主人公
本編から数年後設定というパラレルなので捏造注意
プラトニック萌え
ずいぶん久しぶりだというのに、幼少を過ごした家は昔とまったく変わっていなかった。
柔らかな木漏れ日の影にある屋根と、壁に寄り添う蔓草、その周囲を取り巻く懐かしい空気。帰郷した風竜は、体中で感じる心地の良い匂いに酔っていた。
しいて変わったことを挙げるとするなら、この家の主が少し年を重ねたことだ。サータはそれでも優しい笑顔のマシェルに、何年かぶりの抱擁で自分の喜びを伝えた。
マシェルもそれに答えて彼の背に手を回す。随分大きくなってしまったね、と育ての親が言う台詞に、サータは愉快そうに笑った。
「どうして笑うんだい、サータ」
「だって、マシェル。凄く意外そうな顔だもの」
あの無駄に伸びた兄がずっと側にいたのに。弟の俺だって成長してるに決まってるじゃないか。
そんな事を言ってサータがマシェルの向こうを指差す。そこにはナータがいた。別れた日と変わることのない仏頂面で立っている。
サータがマシェルの背を追い抜いたのと同じように、ナータもまた肉薄していた。
マシェルはちょっと頬を膨らませる。その仕草にサータは感慨を覚えた。それは恥じ入るとき、反論するときのマシェルの癖だった。
「ナータは普通より特別大きいと思ってたんだ。だってこれでまだ少年竜だよ?まさかサータまでこんなに大きいなんて」
マシェルの言うようにナータは縦にこそ大きかったが、顔立ちや筋肉のつき方は未だ幼さを残していて、一見はサータより年下のように思えた。
その矛盾は竜の里に帰っていったサータ、そして他の兄弟とは違い、ナータがマシェルと共に過ごしてきたという証拠であった。
コーセルテルで過ごすうちは、竜は少年のまま永遠の時を生きる。そのためにナータの声もまた、透き通った夏の風のように昔と変わらなかった。
「マシェル、サータ。家に入って話さないか」
食事の支度の途中だろう、と促すその声の懐かしさにサータの心は弾んだ。
あのころは毎日がこうだった。昼間外で走り回って、帰ってくると必ずこの二人がいた。そして兄弟たちで集まって、彼らの周りをよく囲んだものだ。
「マシェルの料理久しぶりだ~!俺も手伝おうかなぁ」
発奮して袖を捲くるサータだったが、マシェルは家に入ると彼に椅子をすすめた。
「今日のサータはお客さんだからね。座っておいでよ。風竜の里から飛び続けで疲れただろ?」
母親の口調で労うマシェル。サータはそんなところも昔のままだなと思った。
この家は誰かが遊びに来るときはいつも、歓迎の準備に忙しかった。そして主の彼は相手の喜ぶ顔を見るためにいつも張り切っていた。
マシェルが台所に立つと、その少し後ろにはナータがいて彼の背中を見ている。 サータ自身はこうしてテーブルの側で待っているか、
時々作業中の二人の間に入っては、皿を割るかアータと揉め始めるかのどちらかだった気がする。
ぼうっと思い出に浸るうちにいい匂いが漂ってきた。
たちまちご馳走が並んでテーブルを埋め尽くす。子供の時は大きく見えたテーブルも、大人2人と少年が座ればお互いが意外に近かった。
「うわぁ、すごいな。美味しそうだ」
心からそう言ってサータはフォークを握った。しばらく無言で口を動かす。
相変わらずマシェルの料理は温かく、身体の内から彼を満たしてくれた。一旦空腹が落ち着くと、食事をしながら料理の感想や兄弟の近況を二人に話し始める。
「カータが、俺がここに帰るって言ったら羨ましがってたよ。あいつは遊びにこないの?」
一番下の弟について語れば、どちらも顔を見合わせて笑った。
ナータに関してはそれこそサータのように、近しい者でなくてはわからないくらいの微妙さだったが。
「逆だ。あれが一番よくここに来ている」
ナータの苦笑に、この前来たのは3週間前だよとマシェルの補足。
サータも思わず笑った。光竜の里(月)からここまでそんなに頻繁に訪ねて来るとは、甘えん坊だったあいつらしい。
逆に一番疎遠なのはマータのようで、彼女の話になるとマシェルは色々とサータに質問をした。
サータもマータと同じように、ここを出てからずっと帰っていなかったのだが、連絡だけは地味に続けていたせいか彼女ほど心配されてはいなかったと見える。
こうして過ごすうちに、皿の上はすっかり空になった。
ほとんどサータ一人が食べたようなものだが、マシェルもナータも食が細い方なので最初からそれを当てに作ったらしい。
食後に黄金色の蜜菓子と合わせ、苦味が出るほどに葉を開ききった、色の強い茶を熱い湯で割る。
これが薄いのがタータで、濃いのがハータだった。
本当に昔と同じように過ごすと、当時にかえったような気になる。そうなるとやはりアレも再現してみたくて、サータはカップの縁に口を付けたまま提案した。
「ナータ、今日大部屋で一緒に寝ようよ」
相手のきょとんとした顔にサータは頷く。
部屋分けされる前に兄弟で使っていた7台のベッド。それを繋げてシーツで覆えば二人くらいは眠れると主張した。
「な、いいだろ」
ナータはやはりというか何というか引け腰で、最初は渋っていた。
「だが……マシェルは」
チラチラと隣に視線を運ぶ。さみしがりやのマシェルを一人にしていいものかと悩んでいる様子だ。
当の本人はというと別段気にした様子もなく、サータの発言に手を叩いて明るい表情だ。
「いいじゃないナータ、兄弟水入らずで」
「マシェル」
彼が引き止めてくれるのを期待していたのか、ナータは肩を落とした。露骨な仕草にサータは吹き出してその背に飛びつく。
「ほらほら、俺で我慢しなよ。マシェルとはいつでも一緒に眠れるだろ」
するとナータは急に神妙な顔つきになった。
サータも自身の発言に思うところがあったのか、ナータの顔を覗き込んだまま固まってしまう。抱え込んだ背と己の胸のうちにある、ナータの黒い翼がざわめいた。
一瞬の静寂。マシェルがそんな二人に呟いた。
「まだ一日あるから、明日は僕も入れてね?」
それでようやく二人は離れたのだ。
***************** †
陽が落ちて闇が降りてくる。マシェルの寝静まったところを確認して、サータは隣のナータに声をかけた。
直ぐに返事が返ってきたのは、きっと相手も同じことを考えているからに違いなかった。
二人は起き上がってベッドの上に座り込んでいたが、どちらも切り出せずにただ時が過ぎた。
お互いの姿を暗闇の中に見て、その変貌に改めて驚く。とくにサータは長兄の彼が自分よりも背が低いのだと思って、小さな違和感に首を傾けた。
夜目のきくナータはそんな小さな表情の変化を鮮明に感じ取り、弟の長く伸びた髪に離れていた月日を見た。
口火を切ったのはナータだった。
「こうしていると、昔を思い出す」
サータは頷いて彼の台詞の続きを待った。
「覚えているか。マシェルが遠出をして、この家に自分達だけになった数日があった」
「……うん、覚えてるよ。3日目には皆眠れなくなって、こうやって起きていたんだ」
あのときは確か、アータが中心になって本を読んでいた。
「ロッタルクの冒険記だな」
「そ、人間のお嫁さんが"いなくなった"くだりでカータがおお泣きして……つられてハータまで泣き出してさ、皆怖くなった」
マシェルがこのまま帰ってこなかったら、どうしよう。そんな不安でいっぱいの夜。
もちろんサータとナータも例外ではなかったが。
ナータが遠い目で当時を振り返った。
「あのとき……お前と自分だけは、皆と違う事を考えていたように思う」
そうだ、とサータは指を握った。"いなくなった"というのは子供向けの読み物によくある比喩だ。
竜と人間の刻のずれ、それを端的に表す一言だった。
マシェルがコーセルテルの外へ出て行ったら。弟たちはそう思って泣いていた。
けれどナータがそうは思っていないことに、サータはあの時気づいたのだ。
暗闇の中でもはっきりと分かるほどに青ざめたその顔に、サータ自身も血の気が引いた。
「お前に酷い事を言った」
現在のナータが目を逸らした。過去のナータも、サータと目が合うと顔を背けた。それが心苦しくて、サータは彼の手をつかまえてこう言ったのだった。
『マシェルがいなくなっても、おれがいるよ』と。
ナータは激昂してその手を振り払った。そして叫んだ。
「お前とマシェルは違う……」
その大声に、耐えていた妹たちまでもが泣き出して、収集がつかなくなったのを覚えている。
ナータはその時とまったく同じ台詞を呟いたが、表情は穏やかだった。受け止めたサータも、今では納得して落ち着いていられた。
「すまない。ずっと気がかりだった。お前を軽視して言ったのではなかったんだ」
わかってるよ、とサータは苦笑する。ナータにとっての唯一が、マシェルだということはずっと知っていた。
「謝ってるけど、今も変わらないだろ?俺がマシェルのかわりになれないのは」
ナータは素直に首を垂れた。
「マシェルのかわりは誰もいない。……お前にはいるのか」
「俺にもいない。変なこと言うなよ」
わざと怒ったような口調で言うと、ナータはそうだなと溜息をついた。
再び静寂がやってくる。けれどそれは先程の重い空気ではなかった。その心地よさを壊すことを恐れて、二人はしばらく口を噤んでいた。
今度はサータからだった。
「……ナータ。マシェルが、いなくなったらどうする?」
帰る場所のない暗竜。ただ一人と決めた相手が消えた後も、このコーセルテルで過ごしたいのかと。
ナータはのろのろと顔を上げた。暗い瞳で、それでもまっすぐにサータを見つめて。
「マシェルがいなくては、生きていけない」
か細い声だった。サータは「ああ」と意味のない音を喉から洩らす。
ナータの心が意外に脆く、思うよりずっと頼りないのは、サータだけが知っている事実だった。もしかするとタータあたりは感づいていたのかもしれないが、それでもナータが感情を吐露できる相手は一人だけだった。
マシェルではなく、サータに。いや、マシェルだからこそ言えないことがある。
悲しいから、きっと狂ってしまうから、死なないでくれなどとは。
言えるわけがない。
「正直、どうなってしまうのか自分でもわからない。泣き叫んで終わるのならいいが、もしかしたらこの地の一つや二つ崩壊させるのかもしれない」
ナータは自嘲ぎみの笑みを浮かべたが、実際コーセルテルを吹き飛ばそうとした前科があるために、サータはまったく笑えなかった。
自らの身体を抱くナータに腕を伸ばす。振り払われることはなかった。手の平の下の強張る肩。そのままサータは相手を引き寄せる。
薄い背中に手をやって探ると、予想通りに彼の翼は大きく広がっていた。不安の象徴であるそれをつまんでみる。軽く引っぱるとナータは顔をしかめた。
ナータが抗議の声をあげる前に、サータは力強い口調で宣言した。
「もし、そうなったら、殴ってでも止めてやる」
鼻先が触れ合うほどに顔を近づける。
「ナータを最後の竜王みたいにはさせない。……悲しくて皆の事忘れても、俺がきっと気づかせてやる。
その後ずっと一緒にいる。俺が竜王の竜術士の娘になればいいんだ」
サータの熱い視線をナータは逃げることなく受け止めた。
「よせ、お前を縛るなど自分はしたくない」
「ナータがやらせるわけじゃないから、束縛じゃあないよ」
「……止める前に死んだらどうする」
「大丈夫。自信があるから」
「根拠もないくせに、お前のそういうところが嫌いだよ」
「俺はナータのこと好きだけど」
「…………自分の一番は何があってもマシェルだ」
「それでもいい」
ナータは肩を震わせた。感動ではなく怒りのために。そのままナータは自分を抱きしめているサータを突き飛ばした。
「この……っ!」
いきなり力を込められたのでサータはころりとシーツにダイブした。
何故ナータが怒りだしたのか理解できずに目を白黒させる。下から見上げる彼は肩で息をしていた。
起き上がってもう一度近づこうとすると今度は後ずさられた。
「ナータ」
「お前は馬鹿か。風竜の里で、お前にはお前の役目がある。一族の分だけお前には必要とする者がいる。
己の一族の子も残せない暗竜などに、お前の未来を費やしてどうするんだ」
サータは反射的に言い返した。
「やめろよ、そういう言い方。俺は俺、ナータはナータだろ」
自虐的な台詞を咎めて睨む。ナータは唇を噛んだ。
サータは種族など関係なくナータや他の兄弟を慕っていたので、今の言葉には落胆した。
ナータもそう思ってくれているといい、そんなふうに考えていたために反動も大きかった。
何度目かの沈黙にサータは頭をかく。
責めているように聞こえぬよう、なるべく優しい声を出した。
「あのさ、俺はこの家がすごく好きだよ。この家で過ごした思い出が一番大切で、一族には悪いけどそのうちここに戻りたいと思ってる。
きっと何年たっても……マシェルがいなくなった後も気持ちは変わらない」
ナータは黙って聞いている。サータは続けた。
「マシェルのいない家で、最初は寂しいだろうけどさ。そこに昔とおんなじように、ナータがいてくれたら俺はつらくないよ。俺たち兄弟だもの。ナータはそう思わないの?」
真摯な呼びかけにナータは逃げていた身体を戻した。言いづらそうに口を何度か歪ませる。
根気強く待つサータに聞かせられたのは、まず謝罪だった。
「悪かった……、我ながら卑屈だったよ」
「いいよ、もう言わないなら」
二人して困った顔のまま笑い合う。穏やかになった月光の中、ナータは伝えた。
「本当は、お前がいてくれたら嬉しい」
「!……ほんと?」
「ああ」
サータは思わず身を乗り出した。ナータが照れているのか顔を隠す仕草をする。
そんなことをしなくてもサータに彼の顔色までは見えないのだが。自分が闇を通してもサータの様子がよくわかるためか、ナータは少し仰け反った。
「……数年ぶりにお前に会って、気づいたことがある」
「何?」
「お前が自分の家族だということ」
意外すぎる告白にサータは拍子抜けした。そんな今更、とも思ったが好意的な感情なのだから悪くはないかと考え直す。
するとナータが小さな声で「もうひとつあるが」と呟いた。
「え?聞きたい聞きたい」
「…………」
嫌そうな顔をする相手を揺さぶる。何回か催促するとナータは渋々といった感じでこう言った。
ちょっと区切ります
連投規制故携帯から
グダグダでスマソ
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