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武/装/錬/金 ハ゜ピ力ズハ゜ピIII

武/装/錬/金力ズパピ >>48-57の続き。

前回シリアルNo.の位置間違えた上、襲い受とリバの違いがよく判っておらず
中途半端に改題した為、かえってサブタイに偽りあり状態にorz
もうコロコロ変えるのもアレなのでこのまま行きますが、実質当初通りの襲い受です。平にご容赦。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )エロハ モウアキラメタ!

 ――終わった。
 深い脱力と共にその一言が力ズキの全身を占めていた。
 色々な意味で終わった、というか、何か大切なものを売り飛ばしてしまった気がするのは
多分気のせいだ、と思いたい。思わせてほしい。後ろの貞操は無事なのだし。
 誤魔化しきれない力ズキの喪失感など知らぬげに、ハ゜ピヨンはあくまで尊大だ。
「開発の余地は多々あるが、貧困な経験の割にはまあ見込みありだ。及第点をくれてやろう」
 褒められてもこれっぽっちも嬉しくない寸評だった。何の見込みなのかは訊くまい。
 ――ひとの気も知らないで……コイツは。

 声の方向を恨めしげに一瞥した力ズキの心臓――の代用の黒い核鉄――が、大きく跳ねた。

 ハ゜ピヨンが、力ズキの先走りで汚れた手を美味そうに舐めている。
 貴族的な造りの白い指をすっぽりと咥えた薄い唇から、赤い舌がちらつく光景が変に艶めかしい。
 先ほどまでの出来事が生々しく肌身に再生され、力ズキはいたたまれなくなって目を逸らす。
 その耳に、ちゅく、と、唾液の音がやけに鮮明に届いた。

「さて、と――武/藤」
 まるで見透かされたかのようなタイミングで呼ばれ、力ズキはぎくりと我に返った。
 いけない。この男が支配する異常な空間に、自分はあてられている。
 今日はもう帰って休もう、と自らに言い聞かせる。悪い夢は忘れよう。
「時間が許せばもっと念入りに調教してやりたいが、あいにくとそうも言ってられん」
 聞き捨てならない単語に突っ込む暇もなく、次の一言に力ズキは凍りついた。

「オードブルはこのへんで終了だ。小休止も済んだことだし、そろそろメインを頂くぞ」

「……な」
 何て言った。咄嗟に声が出ないまま、力ズキは悪夢の続きを聞く。
「まさかあれしきで足りると思ってたわけじゃないだろうな?さっきのは利子分のほんの一部だ。
貴様、今までどれだけ俺から奪ったと思ってる」
「う……で、でもオマエ、確かオレに体調管理がどうとか……」
 散々喘がされた喉から、自分のものとも思えない嗄れた声が出る。
「だからこそ、なおさら、だ。余剰分のエネルギーを俺に戻すべきじゃないか」
「余剰なんてもう」
 あるわけないだろう、と固辞しようとした力ズキは、ハ゜ピヨンの指す先を目で追い――
放出したばかりの自身が、最初の状態に逆戻りしていることを知って愕然とした。
 
「というワケで、イタダキます」
「…や…ッ!…」
 妙に礼儀正しい挨拶が下肢の間に降り、できることなら記憶から消去したかった感覚が再び力ズキを襲う。
 まさしく略奪だった。
 ――殺される。
 大戦士ヴィク夕ーとの対峙でも感じなかったほどの恐怖に力ズキは陥った。
 この男は本気で自分を搾り殺す気かもしれない。
 黒い核鉄の力で自己修復する肉体が耐えられたとしても、精神の方は早々に崩壊を起こすだろう。
 身体と心は竦みきり、武装/錬金を発動するという考えはちらとも浮かばなかった。

 ――斗/貴/子さん、ま/ひろ、六/舛、岡/倉、大/浜……色々とあったけど今まで楽しかった……
 大切な人々の走馬灯を力ズキが幻視しかけたとき、異変は起こった。

 どこか恍惚と力ズキのものを口に含んでいたハ゜ピヨンが突如、えずくような動きを見せる。
 力ズキを突き飛ばすように素早く飛び退き――

 大量の、血を吐いた。

 菫色の床を、赤黒く生臭い液体が侵食してゆく。
 舌打ちと共に手の甲で口元を拭い、おもむろに服を脱ぎ始める男を力ズキは呆然と見つめた。
 目前の身体が、ぐらり、とわずかに傾く。
 「蝶/野……オマエ」
 今さらのように力ズキは悟る。略奪していたのは、やはり自分だ。
 先のハ゜ピヨンの台詞には一片の誇張もなかった。
 度重なるエネルギードレインで、激しく疲弊していたのだ。この男は。
 生体の治癒を促進する核鉄でも、持病の発作を抑えきれないほどに。

 ハ゜ピヨンは無言でスーツを脱ぎ捨て――
 力ズキは今度こそ絶句した。
 一見人間と何ら変わらぬ色素の薄い裸身に、本来あってはならないものがあった。
 引き締まった脇腹にうっすらと走る、ひとすじの硬質な亀裂。

 何てことだ。この男はまだ、癒えていなかったのか。あのときの傷が。
 腕が千切れ、腹に巨大な風穴が開いた彼の姿を力ズキは思い出す。

                *   

 二ヵ月半前、LXE創始者であるかつての高祖父・バタフライとこの男は戦って、勝った。
 捨て身の自爆が原因らしい負傷は、確かに人間なら間違いなく即死の重傷だった。

 だが、おかしい。いくら何でも治りが遅すぎる。
 不治の病に侵された不完全体とはいえ、ハ゜ピヨンは高い自己修復力を持つホムンクルスだ。
まして錬金術師でもある彼はその肉体構造も熟知している。
 この男なら、今日までの間に自身を完治させることは難しくなかったはず――
 そこまで考えた瞬間、これまで見聞きしたいくつかの情報の断片が音を立てて繋がった。
 事の真相に思い至った力ズキの顔からみるみる血の気が引いていった。

 LXEとの戦いから二ヵ月後、錬金/戦団はヴィク夕ーIII・武/藤力ズキ再/殺の決定を下した。

 それを知った桜/花がハ゜ピヨンの助力を得るためこの秘密拠点に赴いたとき、彼は
フラスコ内で身体を癒しつつ黒い核鉄を研究していた――確かそう桜/花は言っていた。
 その後、逃避行中の力ズキと別れた斗/貴/子がハ゜ピヨンと合流した際、彼は人間の食物を
大量摂取していたという。病み上がりの体力を補おうとしていた、らしい。

 つまり力ズキに協力するために、この男は回復半ばの身を引っ張り出された形になる。

 間もなくひとりの屈強な再/殺/部隊の戦士と遭遇した力ズキは、彼との戦闘で精根を使い果たし
人事不省に陥ったハ゜ピヨンの姿を見た。
 背筋が寒くなった――殺されたのか、と。
 この男が、あんな姿を晒すなんて。どれだけの死闘だったのか。
 完調にほど遠い身体で武装/錬金を酷使しては、食事での微々たる回復などご破算になったはずだ。

 あの後すぐ力ズキ自身ブラボ-との対決があり、この男とは有耶無耶のうちに別れたが、
一日と間を置かずニュートン/アップル/女学院で再会したときはもう、彼は普段の飄々とした姿だった。
 元気そうでよかった、と力ズキは無邪気に安堵し――それきり、彼の怪我のことなど忘れていた。

 自身を殴りつけてやりたい衝動に駆られる。

 学院で力ズキを人間に戻す白い核鉄の情報を得てすぐ、彼はこの場所に篭り研究に没頭していた。
 力ズキの要請に応じて以降は、新型フラスコ開発に寸刻を惜しむ日々を送り、連日のように
生命力のドレインに次ぐドレインに晒され――
 現在こうして、血を吐く彼がいる。

 己の迂闊さに力ズキは唇を噛む。
 そうそう他人に弱みを見せる男ではないと、自分は知っていたはずなのに。

 桜/花を避難させるどころの話ではない。
 本来ならこの男こそが、修復フラスコに入り安静でいなければならない身だったのだ。
 怪物化しつつある己のことで精一杯だった力ズキは、今までこんな大事なことにも気づかなかった。
 他ならぬ、この、自分ではないか。
 ハ゜ピヨンが自らを回復させる余裕もなくここまで消耗した、全ての元凶は。

                *

「――ダメだ、蝶/野ッ!」
 最後の一枚に手をかけたハ゜ピヨンに、たまらず力ズキは叫んだ。
 どれだけ悔やんでも足りない。
 誰よりも、自分が察しなければいけなかった。この男の変調を。
「うるさい」苦痛を押し殺す声は、しかしどこまでも平静を装う。「今さらやめるのはなしだ」
「バカ!それじゃオマエの身体が――」
「黙れ。貴様に馬鹿と言われる筋合いはない」
「蝶/野!」
 制止も空しく、際どいデザインの下着が床に放り捨てられる。
 カラン、と乾いたその音を、力ズキは絶望的な思いで聞いた。――核鉄がハ゜ピヨンの身体を離れる音。
 ハ゜ピヨンは獣に似た指爪を引っ込めると、フラスコ充填液で自らの後ろを躊躇いなく解し始めた。
 手慣れたその痴態を前に、力ズキは言葉を失う。
 
 何を考えているのだ、この男は。
 半不老不死の肉体といえど、今の彼にこれ以上の無理は自殺行為に等しい。
 それに、これでは話がまるきり逆ではないか。
 最初にハ゜ピヨンは、力ズキからのエネルギー補給が目的だと言っていたはずだ。
 なのに今この男は核鉄を捨ててまで、己の身体にさらなる負担を強いようとしている。
 まるで自虐だ。彼の行動が力ズキには理解できない。

 どうしたらこの男を止められる?焦燥と共に力ズキは自問する。
 言って聞く男ではない。言葉ではこの男を止められない。
 では力ずくで?不可能だ。核鉄を手放してもハ゜ピヨンはホムンクルスだ。腕力では敵わない。
 かといって自分だけが武装/錬金を使えば、さらに彼を傷つけることは火を見るより明白だ。
 このプライドの高い男は、己の行動を束縛しようとする暴力に対して全力で抗うだろう。
 ならば――自分の取る道はひとつしかない。
 力ズキは胸の痛みを捻じ伏せ、覚悟を決める。

「――フン。ようやっと観念したか」
 力ズキの表情の変化を見取ったハ゜ピヨンが、脂汗の滲んだ顔で不敵に笑う。
 仮面越しの瞳は、容易に窺い知れない感情の奥に確かな意志を宿していた。
「ああ」力ズキはそれを正面から見つめ返し、頷いた。「――続きを、しよう。蝶/野」

 疲労困憊のハ゜ピヨンが、これほどまでに行為の続行を望む真意は判らない。
 が、こうなったらとことんつき合ってやろう。この男の気の済むまで。
 その果てに自分がどうにかなるなら、そのときはそのとき。
 自分が今この男に報い、応えてやれることはそれだけだ。力ズキは腹を括った。

 覚悟していたとはいえ、手加減やいたわりの許される生易しい相手ではなかった。
 元より経験に大きな開きがあるうえ相手の身体を気遣って遠慮が抜けない力ズキに、最初こそ
あれこれ注文――主により激しさを求める内容だった――をつけていたハ゜ピヨンは、やがて
業を煮やしたのか、言葉より実践とばかりに自ら振る舞い始めた。
 翻弄され、内部の煮え滾る熱に炙られて意識が眩みそうになりながら、しかし力ズキの心の
一部分は不思議と冷静に眼前の男への違和感を捉えていた。

 ――まただ。
 向かい合う今の体勢になってから、力ズキは彼の視線をいやがうえにも感じざるを得ない。
 かつて“ドブ川が腐ったよう”だと斗/貴/子が評し、彼が力ズキを見据えるとき、宇宙の深淵の
ような吸引力を感じて時々空恐ろしくなるほどの、目。
 今、その昏く深い瞳がふとした拍子に、不可解な揺らぎを垣間見せている。

「痛ッ……!」
「…、気を散らすな、と言ったはずだぞ」
 肩口に爪を立てられ、意識の彷徨いかけていた力ズキは改めて正面の瞳に焦点を合わせ直した。
 やはり微かにだが、常にない感情の色を湛えている。
「まだあの女のことでも考えていたのか?往生際の悪い奴だな」
「――んッ…、…いや。……オマエのこと、考えてた、蝶/野……ッうぁ!?」

 いきなり恐ろしい力で締めつけられ、力ズキは局部の痛みで危うく達しそうになった。
「……ッ…、蝶/野?」
「……、……貴様という奴は」
 目を伏せて顔を背けるハ゜ピヨンに、何か悪いことを言ったのかと訝しむ。
「蝶/野……オレに何か、言いたいことがあるなら――」
「ない」
 ぴしゃりと遮った男に上半身を乱暴に突き倒され、力ズキは背後のフラスコに後頭部をしたたかに打ちつけた。
 ほぼ馬乗り状態になったハ゜ピヨンは、もはや力ズキの動きなどかえって邪魔だと言わんばかりに
一方的な追い上げを再開し、それきり会話らしい会話は失われた。

 どうにも、この男らしくない。
 皮肉にも頭の痛みが少しばかり脳を覚醒させ、力ズキは募る違和感に思いを巡らせる時間ができた。
 
 この男は体調の他にも何かを隠している。間違いない。
 それも多分、よくないことだ。
 隠蔽しきれない内面の揺らぎが今もさざ波となって両眼に表出し、力ズキを不安にさせる。
 それが、らしくない、と思う。
 この男が嘘や隠しごとをするなら、狡猾かつ周到に、呼吸するように平然とやってのける。
 言いたいことは、そこまで露出しなくてもいいのにと思うぐらい歯に衣着せない男だ。
 覆面と、目的のため自爆も辞さない強固な意志でも隠せないほど、この男は何に揺れているのか。
 迷い?恐れ?――不安?
 ハ゜ピヨンの心情を量りかねたまま、力ズキの意識は再び彼の作る荒波に呑まれていった。

 無機質な研究室に、二人分の荒い息遣いと湿った音、そして自分の喘ぎ声だけが響く。

 ――甘かった。
 朦朧と霞む頭で、今や力ズキは自身の選択をはっきりと後悔していた。
 あのとき、武装/錬金を使ってでも振り切って帰る、という選択肢が浮かばなかったのが悔やまれる。
 相手がいなければ彼とて、これほど痛々しい行為を続けようもなかったのだから。

 白磁の肌に浮かぶ冷たい汗の珠が雫となって力ズキの上に落ちる。
 時折苦しげな呼吸を途切らせ何かを飲み下す喉の動きは、生唾ではなく吐血を堪えているに違いない。
 決して小さくはない力ズキの雄を呑み込んだ結合部からは、耳を塞ぎたくなるような音が間断なく漏れる。
 既に幾度も強制的に絶頂に導かれた力ズキの根元を、白と赤の入り混じった大量の液体が汚していた。
 飲ませろと言った張本人のハ゜ピヨンはその素振りも見せず、力ズキを咥え込んだまま休む気配もない。
 とっくに体力の限界を迎えているはずだった。

「…ッ、まだだ…、寝るな。…全てを、出し尽くせ。…あの晩の、貴様の槍のようにだ……!」
 たまに発する言葉は専ら力ズキを煽り叱咤するためだけのもので、双方向の意志の疎通をする気は
さらさらないようだった。先ほどの会話を最後に頑なな拒否の空気を纏っている。
 もっとも、意味ある言葉を返すだけの余力はもう力ズキにも残っていない。
 疲労で気を失うことさえ力ズキには許されなかった。
 吐精して意識を飛ばしそうになるや否や、爪による攻撃と性器への新たな刺激で覚醒させられる。
 ハ゜ピヨンは憑かれたかのごとく動き、自らと力ズキの双方を苛み続ける。

 身体が熱に浮かされては倦怠を増すほどに、力ズキの心はうそ寒く冷えてゆく。

 この男が判らない。
 ハ゜ピヨン自身が望んだ行為のはずなのに、今の彼には快楽や苦痛に溺れている様子は微塵も
見受けられない。それどころか苦行のような忍耐すら感じる。
 何か秘密があるならそれでもいい。あえて問い詰めようとは思わない。
 こちらの身体だけなら、傷つけるなり弄ぶなりされても仕方ない。この男にはその権利がある。
 でもこんな訳の判らないまま、傷つけさせられるのはあまりに不条理だ。
 せめて、何か自分に思うところがあるのなら、言ってくれれば。

 彼が一度も達していないことに思い至り、力ズキは腹の上に揺れる彼自身に目を向けた。
 発作で一時萎えていたそこは昂ぶりを取り戻し、先ほどまでの力ズキに劣らぬほど張り詰めている。
 ――つらそうだ。
 楽にしてやりたい一心で、彼が息を継いだ間を見計らって無理な体勢から伸ばした力ズキの手は、
届く直前で意図を察したハ゜ピヨンによって慌てたように払い除けられた。
 ひたすら腰を上下させ、回し、自らを痛めつけながら、ハ゜ピヨンは心を閉ざして律動し続ける。
 そのためだけの機械と化したかのような彼に、力ズキはなす術なく射精へと追い上げられていった。

 ――やっぱり、こんなのは、嫌だ。蝶/野――

 判らない。
 この男が、遠い。
 この苦痛に満ちた空虚な行為を続けて、彼に何の実りがあるというのだろう。

 心も身体も空っぽになった力ズキの中に、なぜ、という思いだけが堆積してゆく。
 人が狂い始めるときは、もしかしたらこんな奇妙に醒めた心地なのかもしれない。

                *
                
「いつまで、無害な愛玩動物の顔をしている――」
 力ズキの左胸に手を突いたハ゜ピヨンが五指の爪を、ぎり、と突き立てる。
 地の底から響くような声は脅迫者のそれだった。

「――貴様の、……本性を、見せろ……!」
 
 覆面の奥、全ての感情の動揺を殺しきった理性の凍てつく闇は狂気すら孕んでいた。
 脇腹に開いた傷口から滲み出す鮮烈な赤。

 ――ドクン。

 力ズキの胸の奥底で、黒い獣が身じろいだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )マグロ×遅漏 ツヅク!
色々と申し訳ありせんでした。

次回辺りで一応は落ちるはず。
なお今さらの注記ですが、ホムやヴィクター化の設定は
原作をかなり夢見がちに歪曲、もしくは捏造した部分を含みます。
身体スペックの違いその他はご了承ください。


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