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花照れ日

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
※プロやきう、北のきう団
※ローカルテレビ穴と二/塁/手です。

きっかけは自分がパーソナリティを勤める番組の一企画だった。
夕方の奥様向け情報番組なのに、むさい男二人で街を散策、女性向けの何かお得な情報があるわけでもなく、
いわば彼のプロモーション活動に付き合う内容。
「だったら女性がナビゲートしたほうが良いんじゃないですか? 彼独身なんですよね? 大体札/幌案内っていっても、そもそも僕自体が兵/庫出身だし」
なんてディレクターに不満を言うことも出来ず(なにしろ僕は和を重んじるA型だ)、それでも渋っている態度が尖がった口に出ていたらしい。
番組の中心となる女性パーソナリティに「グダグダ言わない! 独身だから女性と行くと波風立つんでしょ! こんな機会もないと出歩かないんだから!」と
ぴしゃりと企画書を押しつけられてしまって……つまりはあまり乗り気ではない企画だったのだ。
実際僕はスポーツ観戦以外では出無精で、特に人ゴミは大嫌い、目的もなく街を歩くなんか考えられなかった。
渋っていたのはこの寒い時期に外のロケだから、そんな単純な理由だったが、社会人としてそんな我が儘が通る訳もない。
お相手するのが憧れの野/球選手じゃなかったら、うまいこと理由をつけて断っていただろう。

待ち合わせ場所は札/幌駅前。曇天に寒風吹きすさぶ憂鬱な空の下、縮こまって彼は立っていた。
綺麗な青色のマフラーにまず目がいった。その僕に気が付いて「似合いますか?」とはにかんだ笑顔に視線を奪われた。
恥ずかしい話だが、その一瞬でときめいた、んだと、思う。
断言できないのは、未だに頭が付いていっていないからだ。
自分はストレートな、はず、だ。これも断言できないのは、完全に彼にのめりこんでいる自覚も、同時にあるからで。
「こないだファッションショーで全身コーディネートされたんです」「イメージカラーを今年は変えようと思って」なんて
彼のファンにとって重要であろうやり取りも、上の空で聞いてしまうし、車内では何故か視線を合わせにくかったし……。
やたら笑顔を振りまいてくれる、その斜め後ろらへんを見るようにしている自分がいた。

それにしても、その、近い。密着してくる。いや、密着取/材なんだから、それでいいんだけど(あれ、密着取材だったっけ?)、
まぁア/ナウンサーとしては身長に恵まれている僕は、野/球選/手としてはそう大きくもない彼に、自然と見上げられる形になってしまうわけで。
最初は車内やエレベーターのように狭い空間だからと思っていたけれど、どうやら違う。これはまずい。素直に照れてしまう。
いや待て、見上げられて照れている時点でおかしい。
そんな自問自答を繰り返している自分を知ってか知らずか、二重の意味で彼との距離は縮んでいった。
なんだかフワフワした気持ちのままロケは終わってしまい、名残惜しいような演技をして冗談めかして笑っていた僕らだったが、
カメラが止まった次の瞬間だった。
「今度美味しいオーガニック料理のお店紹介してくださいね」と新人アイドルも真っ青な誘い文句を、彼は腕を掴んで耳打ちしてきたのだった。
……撃沈である。まさに試/合を決める一発というやつだ。
自慢ではないが、僕だって女性にそういうモーションをかけられたことの1回や2回はある。
しかしこれほどズドンと景色が揺れる感覚を覚えたのは初めてだった。

ロケから局/内の報/道部にある自分のデスクに戻ってきた自分は、寒さで風邪でも引いたのかと心配されるほどぼんやりと上気した顔つきだったらしい。
いつのまにか交換されていた携帯のアドレスに、すぐにお礼のメールなんかがきたりして、そういうのもいちいち僕を動揺させ、弱いトコロを擽り……。
大量にプリントアウトされた「隠れ家的グルメスポット」の束で顔を仰いで、熱をやり過ごすしか出来なかった僕が、
迂闊にも一線を越えてしまうのは、また別の話である。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
彼、実家が米農家らしいし、嫁にいけば毎日オーガニックだと思うんだ。


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