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ア/ス/ガ/ル/ド 95鬼畜短髪鞭賊×91長髪ダガー賊4

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  └──────│犬になりました。
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「…首輪…?」
それは、動物を繋ぎとめておくための、首輪がはめられていた。
 ディースがにやりと笑った。
冷たく、悪魔のような笑い方に、背筋が冷たくなる。思わず、ジンは眉をしかめた。
その首輪から出た鎖を手にしているのは、彼だった。
「俺の、犬だ」
「…犬だと?」
 喉の奥が乾く。
ジンは自分で気づいてないのだろうが、今、彼はディースを見据える目は、侮蔑を帯びたまなざしだった。
「まあ、駄目よ!可哀想に。ベッドに寝かせてあげなさいよ」
 ネイヴィーは部屋のランプに火をつけ、状況を確認すると、慌ててアイルに駆け寄った。
「床で良い。言っただろ」
ディースは冷たく言い放った。
 ネイヴィーは、少しむっとしながら、持っていたものを床に置き、身をかがめる。
固い床に寝転がされたアイルを抱き起こすと、もっていた毛皮を床に敷こうとしていた。
 だが、細身とはいえ男の体は重い。ジンは、アイルが身動きできない状態にあり、意識もない事を確認すると、彼女に代わってアイルを持ち上げた。
 間近でみるアイルの顔は、思ったよりも女性的だった。
髪型のせいもあるのかもしれない。
少し幼さをのこしているが、年齢的にはディースとあまり違わないのだろうと、彼は思った。

(アイル、と、呼ばれていたか)
 火山での記憶が蘇る。
最高衣服の『あの戦士』は、仲間を傷つけられたことに憤りと焦りを感じていた。
 仲間を逃がそうと、そして彼らが無事に逃げきれると確認するまでは、盾になるつもりだったのだろうか。
結局、油断していたアイルはシナモンのクロスモノボルトによって、気絶してしまった。
 同じくその一撃でもう一人も怪我を負い、人数的にも自分たちの状況があまりに不利と判断して、仲間を残して逃げた戦士。
それは、ジンも同じ状況に置かれたら同じ事をしていただろう。
(奴は、私に気づいたか?)
それはわからない。だが、一度ジンを見て、顔色を変えた様に思った。
(あいつに可愛がられていたか)
ジンは、ぼんやりと思った。表情は、哀愁を漂わせていた。
「ジン、できたわ、彼をここに」
 その言葉に、現実に引き戻される。
 先ほど彼が寝かされていた床は、毛皮を数枚重ね、さらにその上に毛布を敷かれた寝床に変わっていた。
 そこにアイルを寝かせると、ジンは問う。
「同居でもするのか?」
「言ったろ。犬だ、『飼育』するんだよ」
「飼育…?」
理解しがたい。
 敵対相手、捕虜とはいえ、それに首輪をつけて鎖でつないで、犬とは。
地下でいったい何をしていたのか、それはジンにはわからなかったが、それ以上問うようなことをしても、それは無駄だろうと判断した。
 実際、そこまでアイルについて興味が湧かなかった。
そのまま本当に犬とするのか、それとも殺してしまうのか、もしかしたら…、アイルが自力で逃げ出すのか。

 逃げ出されては面倒なことになる可能性は高いが、ジンはそこまで気にとめることはないと感じた。
「面倒は、起こすなよ」
ぽん、と、ディースの肩を軽くたたいた。
ディースは軽く笑った。

 アイルが捕らえられて半日が過ぎた。
木の葉に彩られたミルレスの、それも奥のほう。スコルピオのアジトが見た目ただの民家と変わらないように、リンドブルムのアジトも一見するとそれとはわからないようになっていた。
 だがそこは冒険者の出入りが激しいので、慣れた者にはわかるだろうが。
名のあるギルドなら、アジトなんていくらでもある。それは町の中であったり、森の中であったりと、さまざまであるから、見つけにくいといえば見つけにくい。
そのリンドブルムのアジトには、主要メンバーが集まっていた。
 アイルを除いたオフィサーと、マスターのジーク。そしてロア。
ロアの怪我は、傷が意外にも浅く、そして聖職者の治癒と自らの体力の高さによって、今はかなり回復していた。
机を囲み、ジークを中心として座る。
 そこでジークは、机に腕をつき、しきりに舌を鳴らしていた。
それは誰が見てもわかるように、焦りを感じているものだった。
その隣、ロアも、いつもの陽気な表情から一変、険しい表情をしていた。
焦っているのだ。
「…ちっ…」
ジークが、腕を組みなおしてため息をついた。
「ディース達につかまったって、それじゃあどうなるの?」
ギルドメンバーの一人が、不安げに、つぶやいた。
「…、ジーク、早く何とかしないと、アイルの命が危ない」
ロアが、ジークに言った。
「…わかってるさ、相手が相手だ…」
「なら、行動に出ようぜ!いっそ、スコルピオ潰すとか!」
 自分で言ってても、ずいぶんと無理なことを言っているのはわかった。
スコルピオに属す人間の数は、以前聞いただけでも、今のリンドブルムの二倍は軽くいた。それも当てにならないうわさではあるが、スコルピオは普通じゃない人間の集まり。

 実力もかなりのものが集まってるという。
「…無茶言うな…」
そんな事をすれば、アイルの命だけではすまない。
当然、ジークとしては、アイルを無事に助け出したいし、それでいてスコルピオとこれ以上関係を冷ましたくはなかった。
完全に敵に回したくはなかった。
「けど、アイルが…、あいつらは、簡単に人間を殺すような奴らだろ?アイルの命が、…」
 命だけ?命だけですむのかな?
ふと、ロアはそんな事を思った。
「命だけですむのか?」
ロアが、ぽつりと言った。それは表情のない顔で。
「…ロア?」
「なあ、もしも、アイルがここの事を喋ったらどうなるんだ?」
 アジトのこと、リンドブルムの情報、それらについてを全て話してしまったら?
 今こそ、スコルピオに完全に目をつけられていないからこそ、リンドブルムもここまで続いてるようなものだ。
 だが、もしもそれらを知られて、目をつけられてしまったら?
「ロア!」
ジークが、噛み付きそうな勢いで大声をあげた。
 びくっ、と、皆は目を丸くした。
「ごめん…、でも、俺も心配でさ…、アイルのことも、ここのことも」
「ロア、落ち着け、ディースはわからないが…、スコルピオのギルドマスターはそんな奴じゃない。むやみに命は奪おうとはしないはずだ」
ジークが、落ち着かせようと優しく言葉をかけた。
「え?」
 ロアは、その言葉に何か違和感を感じた。

同時に、ジークも、自分の言葉に驚いていた。

場所はレビア、スコルピオのアジト。
 外は雪が降り積もり、レビアの外は完全な吹雪だった。
 吹雪と雪のせいで、いっそう夜は冷え込んだ。
だが町は明るい。町の中心から外れたこのアジトからも、その明るさはよくわかった。
 二階のディースの部屋はどうなっているか?
相変わらず、物が乱雑に置かれた部屋の中、ランプがひとつだけ明かりを灯されて吊り下げられている。
 黒い人影が、二つあった。
一人はディース。一人は、アイル。
アイルは、ネイヴィーによって作られた寝床の上、体を丸めて蹲っていた。
首輪をつけられて、その鎖がディースのベッドの足につながっている。
 アイルが動くたび、ジャラジャラと重い音を立てた。
 ディースを見つめるその目は、恐怖の色を浮かべていた。
殴られたのか蹴られたのか、彼の頬や額にはあざがあり、その拍子に口内をきったのか。
口の端に血がにじんでいた。
 わずかに肩が震えているが、それを抑えようと必死なのだろう。
縄の痕のついた手で、肩を抑えていた。
「首輪を外そうとしやがったな!」
 アイルの胸倉をつかんだ。
ディースの怒り狂った顔があまりにも近くて、今にもかみつかれそうである。アイルはぎゅっと目を瞑った。
 起きたら、知らない部屋にいて、一人きりだった。
首には首輪がはめられていて、そこから重い鎖がベッドに向かって伸びていた。
手首には何もなかったが、今まで縄をはめられていたのか、痕がついていてひりひりと痛んだ。
生理的に、首輪をはめられるのは嫌だった。外せるものなら外したい、そうして首輪をいじっていたときに、ディースが入ってきたのだ。
「お前は犬だ、その犬である証を、とろうとしたな!」
 バシッ!と、乾いた音が部屋に響く。それが何度も、何度も。
アイルを殴る音はやまず、そのたびに彼は小さくうめいた。
「うぐっ!!ご…ごめんなさ…」
 おびえる彼の顎をすくうと、目をまっすぐと見つめて、ディースは言う。
「良いか?何故お前がここにいると思う?お前は捕まったんだ」
呆然と、その言葉をただ聞いている。

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