いつかの予感
更新日: 2011-05-03 (火) 18:01:41
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| | |> PLAY. | |
| | | | ∧_∧ 半ナマ? 日曜朝・単車乗リ
| | | | ピッ (・∀・ ) 熊←不運主人公? 微妙に死にネタ注意
| | | | ◇⊂ ) __ 予告の爆弾に触発されました。
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「いやだっ……いやだ!!」
金色と黒の体が崩れていく。色と形をなくしていく。
崩れた砂をかき集めて、かき集め続けて、指の皮が剥けて滲んだ血で湿っても、それが元に戻ることはない。繰り返される摩擦に耐えかね、爪も既に削れ始めている。
それでも、青年はその行為をやめようとしなかった。
「いやだ、いやだ、いやだ……っ!」
うわごとのようにそれだけを繰り返し、必死に自分の名を呼ぶ青年の姿に、情に厚い彼は何を思ったのだろう。
ただ優しく微笑み(とは言ってもその仮面のような顔かたちから表情を読み取るのは簡単なことではないのだが)、崩れかけた手を伸ばし、そっと青年の頬をなでた。
「ええ……もうええ。それ以上やったら、お前の手が」
どこまでも自分を気遣う気配をその声に感じ、青年は否定しようとした。が、首を振れば、少しでも彼に触れてしまえば、崩壊を早める。あとはもう、彼に触れないように、けれどその薄れゆく体温を感じられる距離を保ったまま、再び砂集めに没頭する。
いつか別れなければならないのは知っていた。けれど、でも、まだだ。まだ、今ではないはずだ。
いつか戦いを終えて、これでよかったのだと彼らが笑って、やっと覚悟を定めた自分も泣き笑いで彼らを見送って。そうして、別れるのだと思っていた。
それなのに。
何故、今。彼だけが先に逝く。
何故、とても優しい、彼だけが。
横たわった身体は傷だらけだった。
自分を庇ったのだと、青年にとって自身を責める理由はそれだけで充分だった。
常日頃から、自分の命は恩人である青年のものだと公言して憚らなかった彼だから、いつかこうなることは覚悟していたのかもしれない。
だが、それは彼だけだ。
足先から崩れ始めたのを知った時、青年はもう間に合わないと悟り。
けれど、手を止めることは出来ず。
それは即ち、彼との別れを認めることになると。
他の居間人たちが、必死にとめてくれようとしているのを感じ、しかし青年はその声を拒絶する。
ああ、まだ繋がっている部分から、彼の、口に出さない叫びが聞こえる。
不器用で優しい赤鬼よ、激情秘るしたたかな詐欺師よ、真っ直ぐに純粋な幼子よ。どうかとめてくれ。自分達の主を。これ以上傷付けたくない。どうか、どうか。
血以外のものが、砂を湿らせた。それが汗なのか涙なのかすら、彼にはもう判らない。けれど青年が泣いているだろうことは容易に想像できた。
心根の優しい彼は、きっと自分のために涙を流してくれている。嬉しいが、やはり笑っていてほしかった。
最期の最期に、お前を傷つけてしまう。それだけを許して欲しい。そして、自分が去ったなら、いつかまた笑えるように。
遠のいてゆく感覚の中、彼はそれだけを願った。
崩壊が胸元まで進み、崩れた砂もほとんどが時間の流れの中に消えた。それでも形を留めようとし続ける青年の手指は、既にずたずたに裂けている。
「……すまんな、最期まで迷惑かけてしもて」
揺れる遠い声に、青年の肩が跳ねる。
「俺はお前の手、好きやったで。優しいし、強い。ほんまに、お前そのものや」
優しくて強いのは君だよ、と、青年は震える声で返した。
「――ほんまにおおきにな、リョウ」
ざあっ
ほんの一瞬だった。
青年の名を呼びかけた彼の声が途切れ、身体が、崩壊した。
残ったのは一抱えほどの冷たい砂。けれどそれもすぐに時間の流れが運び去る。
青年の手には何も残らない。あるのは、裂けて血が滲む指と、削れて肉が見える爪と、頬を伝う雫。
「――っ……、あぁぁ――――!!」
聞くに堪えない慟哭だ、とどこか遠くで意識し。
それが己の発するものだと青年が気付いたのは、息が切れて意識を失う直前だった。
「……――郎、おい、起きろって!!」
強く揺さぶられて、はっと目を開ける。
背中が汗で冷えて気持ち悪い。額に張り付く前髪をかきあげると、赤と青の人影が自分を覗き込んでいるのが見えた。
「物凄い魘され様だったから起こしたんだけど、大丈夫?」
「っ……、あ……うん……大丈夫」
「大丈夫じゃねーだろ。息あがってんぞ」
硬い椅子に足をかけ、赤鬼が頭を撫でてくれる。その感触に先ほどの悪夢を拭われたような気がして、青年は大きく息をついた。
「……すごく、嫌な夢を見たんだ……怖くて、哀しい夢」
大丈夫。だって自分の指は裂けていない。あれはただの悪夢だ。
赤鬼はそーか、と呟いたが、しばらく手を止めるつもりはないらしい。頭を撫で続けてくれている。青亀がカウンターで貰ってきてくれたタオルとコップを受け取り、コップの中の水をあおった。
「……ねえ」
「うん?」
ふと気付いて、金色の彼はどこかと尋ねる。
いつもすぐそばで居眠りをしている巨体が見当たらない。
赤鬼と青亀は互いに顔を見合わせると、きょとんとして言った。
「誰だ、それ」
がばっ、と身を起こす。心臓が鞠のように跳ねている。
はー……と深い溜息をついて、青年は額に手を当てた。
よりにもよって二段構えとは、どれだけ手の込んだ悪夢なのだろう。
これも夢だろうか。一応手指に傷は見当たらないが。
見回せばいつもの食堂車だ。遠くで三人がぎゃいぎゃいと騒いでいるのが聞こえるから、大方風呂にでも行っているのだろう。添乗員のあの子は買出しだろうか。
そして気付いたのは、下腹部に回されている逞しい腕。
腕をたどって背後を見遣ると、自分を抱え込むようにして舟を漕いでいる、金色と黒の人影があった。
彼をみつけた途端、目頭に迫る熱を止められず、体をひねって彼の胸元の飾りに顔を押し当てる。
大丈夫、ちゃんと暖かい。彼は確かに、ここに居る。
「……なんや、泣いとるんか?」
肩を震わせる気配に目覚めたのか、彼は青年に声をかける。
じっとしがみついて離れようとしない青年に只ならぬ気配を感じたのだろう、青年を抱え込んでいた腕でその華奢な背中をさすり始めた。
「悪い夢でも見たんか……もう心配あらへん。俺がついとる」
な、と労わるように頭を撫でられ、青年の脳裏を、力加減を知らずに物を壊す彼の姿がよぎった。人間への加減はわかるのか。
ただ、すべてを包んでくれるような暖かさに、喉の奥が引きつった。涙腺の崩壊に拍車がかかり、もうどうすることもできない。
胸の底の嫌な予感にすら目を瞑り、青年は彼の腕の中に己を委ねた。
今はただ、このぬくもりが幻ではないことを祈りながら。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 放映前にどうしても投下したかったんだ
| | | | ピッ (・∀・;)最初のAAずれたっつーか浮いた。スマソ
| | | | ◇⊂ ) __ みんなが幸せな最終回になってほしい……
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | 金ちゃん愛してる……!
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
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