たいち→やじま
更新日: 2011-05-03 (火) 23:37:27
やまだたいちのミラクル
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└─────│たいち→やじま TVに向ってやじばさん連呼し過ぎな理由。
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オールスターゲームまでに・・・・・・、オールスターゲームまでに・・・・・・。
そう思いながら太一は、木にバッドを打ち続ける。矢島に言われたとおり手首を鍛える為に。
「ぃでっ!!」
太一は木に跳ね飛ばされ尻もちをつき、バットがころころと手放した方向に転がる。立ち上がってバットを取ろうと思ったが、痛い手首で支えられなく、腰が上がらなかった。
太一は顔を歪ませる。
太一は矢島に言われてから毎日練習をしているが、まだ一度もバットを木に固定できた事はなかった。頑張ってはいるが、もともと弱点の部分だったためか、なかなか強化できないでいた。
思わず涙が出そうになり、急いで顔を上げた。そうしたら、木々の枝の間から月が顔を覗かせていた。太一はきょろきょろと辺りを見回す。
既に夜だった事に今更ながら気づいた。何時もの事だが、練習していると時間の概念が無くなる。
そう言えばろくに食事もしていない。チームメイトの平田か誰かが呼びに来たような気がするが、よく覚えていなかった。
木々の暗闇の中、注意深く目を配せると、近くの木立にオニギリと水筒があった。誰か置いておいてくれたのだろう。
太一は手首を上手く庇い、そこまでハイハイで移動すると、お皿に掛っているラップを外し、オニギリを頬張った。
水筒のお茶を飲んで一息吐く。何気なく強化途中の手首を見て、矢島の事を思った。
―――やじまさんなら、練習止めさして、ご飯一緒に食べてくれるだけどな。矢島には入院以来会っていない。
お見舞いに行きたかったが、手術まで絶対安静のようで、お見舞いに行ける時間や人数が制限されていた。それに、試合や訓練等で忙しい太一には難しかった。
太一は寂しくなって、もう一度泣きそうになりながら鼻水を啜った。
矢島は太一に対しての練習や訓練を、丁度良い感じでコントロールしてくれる。平田なんかも調整はしてくれるが、平田は要のキャッチャーとしてチーム全体を見ていたりするので、ほぼ太一専属コーチと化している矢島とまでとは行かなかった。
それは仕方がない事だし、自分が好きで練習しているから恨み事は思いつかないが、矢島が居ないとこんなに違うものかと思った。
「会いたいなー。」
太一はぽつりと声に出して思いを呟いた。
それと同時に、そんな事を思う自分にびっくりした。弟の泰二以外に、傍に誰か居て欲しいと思ったのは始めてかもしれない。
太一は野球が絡まなければ結構人見知りだった。弟の泰二以外の人間と一緒に何かしたいと思ったのは、監督の三原だけだ。アストロズを優勝させるという誓い。でも、これは泰二も絡んでいるので、一概にそうとも言い切れない。太一は首をひねった。
そして矢島を思い出す。怖い顔一つしないで、何時でも微笑んでいる。
自分の話を良く聞いてくれて、協力してくれて、とても褒めてくれる。
あの大きな手で、頭を撫でらるれるのがすごく好き。
―――やじまさんに撫でて欲しいなー。痛い手首を摩って欲しいなー。
太一は少し赤くなりながら、いつもの白昼夢よろしく妄想の世界に旅立とうとした。
しかし、手首が痛いのを思い出し我に帰る。
今、矢島は自分の傍に居ない。
―――もしも、もしもずっと居なくなったら?
ふと思った事に、白昼夢の妄想で赤らめた顔が一瞬で青くなった。
『おまえは矢島にビョーキをうつして殺そうとしてるんだ』
前に矢島の友人で、タイガースの相原が言っていた言葉を思いだした。
アストロズのみんなは太一に対して、矢島の病気は少し心臓が悪いだけで、手術をすれば治ると言っていた。しかし、本当はもの凄く死にそうなくらいに悪いのではないか?それも自分のせいで?
太一は震えだした。
―――手首、まだ出来ていない。
アストロズを優勝させるには不可欠だと矢島は言った。自分と泰二と三原監督で、アストロズを優勝させると誓った。だから今は訓練して、練習しないとダメだ。
―――でもどうしよう、、、おれのせいで死んじゃったら、死んじゃうの?
太一はぽろぽろと涙が出てきた。
―――今度の試合はいつ?手首が出来るのはいつ?
これが一番大切な筈なのに、太一はそれよりも矢島の事を考えていた。
―――手術はいつ?矢島が帰ってくるのはいつ?
太一は慌てて立ち上がり、夜の闇に駈け出した。
夜、夜中。
矢島の病院まで来た太一は、やっとの思いで来たのにどうしたら良いか困った。
外来正面入り口は当然閉まって入れない。夜間受付はあるだろうが、太一の頭には無かった。
外から病院を見上げる。病室は覚えていた。入院の帰りに見上げたら、一緒に来ていた平田が教えてくれた。
―――お外から昇ろう。
太一は至極単純に考えた。危ないという考えは無かった。石田と崖を登ったそれがあるので、なんとかなるだろうと。
ちょっと怖い思いをしたが、なんとか矢島の病室の窓に辿り着いた。個人部屋だからか幸いに、室外機置き用に狭いベランダが付いた。太一は手すりに座り窓を覗く。カーテンが閉まっていて中の様子は伺えない。取り合えず軽く窓を叩いてみた。
当然中から反応は無いだろうと、太一は何故だか冷静に思った。
ここまで勢いで来てしまったが、もう時間が時間だし、矢島が起きているわけがない。やっぱり反応は無いので太一は溜息を吐く。
そして来たルートを戻ろうと手すりに立ち上がり、壁伝いに下ろうとしたら、いきなり矢島の部屋のカーテンが開いた。
最初、矢島は目の前の外の景色として月を見たが、それを少し隠すように小さい人影があった。
いや、何か居ると思ってカーテンを開けたから、居るのは驚かなかったが、居るのが太一だったので解った瞬間、心底驚いた。
「やじまさん!!」
にわかに信じがたかったが、太一の大きな声がした。ホンモノだ。
「―――た、たい―――!?」
太一が手すりでぴょんぴょんジャンプしたから、驚く以前に心臓に悪すぎる。「やじまさん!やじま、わぁ!!」
「!!」
矢島が慌てて窓を開けたら、太一は手すりから足を踏み外した。
太一が落ちる寸前、矢島の手が太一を掴んで引き寄せた。太一の身体の小ささと矢島の腕力で助かった。矢島は太一を掴んでぶら下げたまま、窓辺からベランダに身を乗り出した格好で溜息を吐いた。
「どうしたんだ太一?どこから来たんだ?」
矢島は太一を部屋に入れるとちょっと困った顔をして太一に訪ねた。しかし、太一は顔を真っ赤にして矢島の足にしがみ付いていて、自分の名前を呼ぶばかりだった。
これはどうしたものかと思いながらも、太一が来てくれたのは正直嬉しかった。入院以来、全く会っていなかった。
だから、久しぶりに矢島は太一の頭を優しく撫でる。そうすると太一は矢島の名前を呼ぶのを止め、矢島の方を見上げた。
太一は頭の上を撫でられるより、額から髪を掻き揚げるように撫でられる方が好きだ。矢島は何の躊躇も無くそうしてやると、太一は普段大きな眼を珍しく細めて気持ちよさそうにする。
―――猫みたいだな。
矢島はよくそう思う。
太一はあまりの気持ちよさに、そのまま身を預けそうになったが、撫でられていて思い出した。
「あ!やじまさん!おれ、おれ、、、大丈夫?ビョウキ平気?手術いつなの?オールスターゲームでれる?」
太一は矢継ぎ早に質問した。焦って質問する太一を矢島は静かに見つめる。
「もしかしてダメ?なの?ビョウキおれのせい?どうしよう、、、おれ、おれ、、、。」
太一は不安になって泣き出す。鼻水を垂らして、先ほどとは違い、大きい目をめいいっぱい広げてぼろぼろと涙をこぼした。
「おれのせい、、、おでのせいで、、、やじばさん、死んじゃうー。」
矢島は本当に困った。
太一の質問、矢島の病気は簡単なモノでは無い。オールスターゲームどころか、手術してもこの世に居られるかどうかも解らない。
「死ぬかもしれないが、太一のせいじゃない。」
矢島は太一を見つめて静かに言った。太一は衝撃的な矢島の言葉に驚く。
「死、ぬの?」
太一は音にならない言葉をなんとか取り出して口に出した。
「解らない。死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。」
矢島は答えれる正しい答えを言う。太一には自分の事で嘘を吐きたくないと思った。
「何で?何で?何で?おれどうしたらいい?何したらやじまさん大丈夫になる?」
太一は矢島の顔を見て必死に聞いた。しかし、矢島はにっこり笑って答えなかった。
「死なないよね?」
太一はゆっくりもう一度聞いてみた。矢島はそれにも答えない。
「指きりのやくそく、うそ?」
答えてくれない矢島に、太一は更に聞く。
「それは嘘じゃない。」
矢島は返した。
今度は矢島が、太一とは正反対に冷静に質問してきた。
「・・・太一、強い手首はできたか?」
太一は慌てて答える。
「うわ!ごめんなさい。手首、、、まだ。」
鍛えている手首を握りしめ、もう片方の手で手首を抑えた。
「そうか。大丈夫、強くなるまで根気強くやれば良い。」
矢島はゆっくりそう言うと、太一をベッドに腰かけさせ、自分も隣に腰をかける。そして太一の鍛えている手首を取り、優しく撫でる。
太一は幸せな気持ちになる。矢島は自分がして欲しい事を、して欲しい時にちゃんとしてくれる。
「太一、俺は約束したよな?一緒に優勝するって。」
「うん、うん。」
うっとりしはじめた太一に、矢島は話し始めた。
「俺が教えたこと、おまえは正しく守って、それが出来ている。この手首もそうだろう?訓練はちゃんとしているだろう?」
「うん!やってるよ!」
「俺が教えている事全て、お前が叶えてくれる。だから、一緒に戦っているのと同じなんだ。解るか?」
太一はコクコクと頷いた。
「太一が今よりもっと強くなることで、アストロズは必ず優勝できる。、、、俺がその場に居なくても、俺と一緒に優勝したのと同じなんだ。」
そう言って矢島はまた、にっこり微笑んで太一の頭を撫でた。
それとは反対に、太一は顔を歪ませ叫んだ。
「嫌だ!!」
矢島は驚く。
「嫌だ嫌だ!やじまさん居なくなったら嫌だ!一緒に優勝しないと嫌だ!」
太一は矢島に抱きついた。
「おれ、おで、、、やじばさん居ないと、練習とか優勝、出来ない。一緒に、傍に居でぐれないど、、、ずっと一緒に、、、。」
太一はまた、わあわあと泣き出した。
太一の言葉に、矢島はなんとも言えない気持ちになり、思わず太一を抱きしめた。強く、強く抱きしめる。
「やじばざん?」
太一は涙を止め、苦しい隙間からどうしたのだろうと矢島を呼ぶ。しかし、矢島は答えない。しばらくして、矢島は絞り出すように声を出した。
「俺も、太一とずっと一緒に居たい。」
それを聞いた太一は、嬉しくてドキドキしてきた。
「うん!うん!ずーっと一緒に居よう。それで、一緒にアストロズ優勝させよう!」
こんどは太一の方が強く矢島の首に抱きついた。
「だから、だから矢島さん居なくならないよね?死なないよね?」
太一は矢島の首から離れ、矢島の顔を見る。抱きしめられているので近いので、矢島の額に太一の額が付く。
「やくそく、守るよね?」
太一は矢島の目を見据えてそっと聞く。
太一の潤む瞳や、普段聞かない、切なく、囁くような問いかけをする唇が愛おしいと矢島は思った。自分はこれを失いたくない。
「おれにできること、ない?」
太一の問いに、矢島は静かに微笑んで、ひとつのお願いをした。
「約束は守る。だから、太一にひとつお願いしたい。俺がもし、もし死にそうになったら、太一の大きい声で、俺の名前を呼んでくれないか?」
何時でも元気が良い、太一の大きな声が矢島は大好きだった。
「太一の口から出る元気の良い声が聞こえると、手術もがんばれる。必ず約束も守れる。」
その矢島の言葉に、太一は顔をぱっと輝かせて頷く。
「うん!うん!おれ!かなーりよくわかった!やじまさんのおねがい、必ずまもるよー。」
太一は嬉しくて、また矢島の首に強く抱きつく。
「おれの声聞いたら元気になるよね?元気いくらでもあげる!やじまさん大好き!」
太一は高まる自分の気持ちをどう表現しようかと思ったが、考えより先に行動に出ていた。
大好きと言い終わった瞬間、太一は矢島の唇に、自分の唇を押しあてていた。矢島は何が起こったのか解らず、そのまま硬直した。
「やじまさん、絶対、ぜーったいやくそくね!手術がんばって、オールスターゲーム一緒にでようね?優勝しようね?ずーっと一緒に居ようね?」
太一は唇を離し、捲くし立てるように矢島に言った。矢島は何をされた考えが及ばず、コクコクとびっくり眼で頷くしかできなかった。
「よし!おれ、がんばって強い手首作るもんねー!」
太一は矢島から降り、入って来た窓を開けてよじ登った。
「おれ帰るよやじまさん!おれもがんばる!やじまさんもがんばってね!」
太一はそう言って、もと来た道を去って行った。
矢島は太一が目の前から居なくなってしばらくして、慌てて窓の外を見まわしたが、太一の姿は何所にも無かった。
矢島は今更ながら顔を真っ赤にし、妄想だか現実だか解らない出来事を胸に、遅い夜のベッドに入って眼を閉じた。
おしまい
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◇,,(∀・; ) テンプレ展開、正直スマンカッタ。
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