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かたわの虎

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        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 連日すみません
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 27スレの【めくらの竜】続編です
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政宗殿が戦に負け、豊臣軍に捕まったと聞いておれは動揺した。
まさか、あの強い政宗殿が負けるはずがない、おれとの決着はどうなるというのだ。
敗軍の将を生かしておくほど、半兵衛殿は甘くはないとわかっている。
すぐにでも行って、おれとの決着がついていないのを言い訳に助け出したかった。
それなのに佐助が止める。

「もうどうにもならないよ。竜の旦那が仕掛けて負けたんだから」

そのような事はおれには関係ない。
ただおれは政宗殿と決着をつけたいだけなのだ。
勝敗が決まった後は好きにするがいい。
どれだけ主張しても佐助は譲らなかった。
違うでしょう、旦那は竜の旦那を助けたいんだ。
連れて帰りたいんだ。許さないからね、そんな事。
いくら言い合っても埒があかぬ。おれは佐助の制止を振り切って、城を飛び出した。

ひたすらに馬を走らせて稲葉山へ向かう。
ようやく着いたころにはおれも馬もへとへとに疲れていた。
けれど休むことは出来ない。こうしている今も、政宗殿は何をされているのかわからないのだ。
馬を連れて、半兵衛殿を探す。少し歩くと、荷車が見えた。
そのそばには半兵衛殿がいて、荷車の上には縛られた政宗殿が転がされていた。
傷だらけの姿に血の気が引くのを感じながら、おれはゆっくりと近づいていく。

「…おや、珍しいね。どうしたんだい、真田幸村」

半兵衛殿が笑う。いや、哂う。政宗殿は驚いたようにおれを見ていた。
おれは小さく音を立てて息を吸い込むと、一礼した。
そしてここに着くまでに考えていた言葉を吐く。

「政宗殿をお譲りいただきたい」

突拍子もないおれの願いを一笑し、半兵衛殿は荷車に乗る兵士に合図をした。
同時に、馬がゆっくりと歩き出す。

「お断りするよ。あれは見せしめに殺すんだ」

半兵衛殿がおれを見て哂う。ぎり、と歯軋りをして双槍を握る手に力をこめた。
がらがらと車輪が土を擦る音の合間、突然、政宗殿の声が響いた。

「愛してたぜ、真田幸村ァ!」

…愛していた?いったい何を、政宗殿、と叫んで後を追おうとする。
それを遮ったのは半兵衛殿の剣。おれは吼えて、半兵衛殿に向かって突っ込んだ。

散々斬り合った挙句、突然半兵衛殿が引いた。
熱くなるあまり失念していたが、おれの目的は半兵衛殿を倒す事ではなかったと気づく。
けれどそれは遅かった。半兵衛殿が笑う。

「もう今から追っても間に合わない。好きにするがいいさ」

力をこめて半兵衛殿をにらみ、荷車が去っていた方へと走る。
轍を追い、体力が尽きようとも全力で。
追いついてきた佐助が、おれの隣を走りながら言った。

「もう諦めなよ旦那、行かない方がいい」

おれは答えもせず、ひたすらに走る。
段々と何か、鳥の鳴き声のようなものが聞こえ始めた。
…ちがう、これは。

「政宗殿!」

叫んだつもりの声は驚くほど掠れていた。
聞こえてくるのは政宗殿の笑い声。壊れたように高く大きく、時々途切れながら。
その声をあてに、そこへ辿り着いたときにはもう声はしていなかった。
地に突き立てられた木、それに縛りつけられぐったりとしている政宗殿と、群がる獣。
己を失くしたように叫び、獣をすべて切り伏せた。
あちこちを食いちぎられ、ぴくりとも動かない政宗殿の頬に触れたところまでは、覚えている。

おれは何故気づかなかったのだろう。
おれが政宗殿に対し、政宗殿がおれに対して抱いていた感情は何だったのかを。
どうして気づかなかったのだろう。もう、あの人は、いない。
おれはかたわの虎と同じだ。威勢だけはよいのに何一つ出来ぬ。
政宗殿ではなく、おれが死ねばよかったと、ひっそり泣いた。

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