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弟子2vs弟子4

麻銅鑼 地理と手陳。
世間の流れをまったく読まずに、弟子2→シショ←弟子4。
ただの兄弟ケンカ・・・。
カプなしエロなしですスマソ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「師匠、お出かけですか?」
昼下がり、稽古が終わり兄弟子の早玄にお茶を淹れていた早々は、廊下をやってきて縁側から庭に出た早雀に
声をかけた。
「あぁ、今度の高座のとこにな、ちょっと挨拶行ってくるわ」
「ほな俺もお供します」
次いで自分のお茶を淹れたばかりの早々は、熱い湯気を立ち上らせる湯のみには目もくれず、さっさと立ち
上がって早雀の後について庭に下りた。その背中に冷ややかな声がかけられる。
「ええですよ、草々兄さん。僕が行きますから」
見ると、早雀の上着を持って小奇麗に身支度を整えた弟弟子の椎早が下りてきたところだった。そのまま早々を
通り越し、す、と早雀の隣に並ぶ。その一連の動作が何か小憎らしく、早々は眉間に縦皺を刻みつつ聞いた。
「なんや椎早、なんでお前が行くねん」
「なんでも何も、師匠がついて来い言わはったんです」
「うん、今度のとこな?椎早上がるん初めてやろ。挨拶がてら顔見せしとこ思てなぁ」
早々の睨みなどまったく効いてない涼しい顔で、何でもない事のように椎早は言った。早々がちら、と視線を
送ると早雀も軽く答えた。

理由として一部の隙も無い回答に、一旦は引き下がろうと思いかけた早々だが、師匠の隣に立っている椎早が
勝ち誇ったような顔をしている気がして、つい食い下がってしまう。
「ほな俺も一緒行きます」
「何で「ほな」やねん。お前は今回演らへんとこや。別に顔見せせんかてええやないか」
「それに、そない大勢で押し掛けたら、先方に迷惑ですよ」
勢いのみで言ってくる早々に早雀は苦笑いしながら答えた。更に椎早がごく模範的な補足で嗜めてくるので、
早々はますますムキになって言い募った。
「じゃ椎早、お前が残れ」
「頭大丈夫ですか?話聞いてますか?僕が挨拶行かな意味ないでしょ」
大仰にため息をついて、心底呆れたように首を振りながら椎早は早々を見上げた。口べたなのは知っているが、
ここまで無茶な事を言い出すとは思わなかった。どの道、口ゲンカで自分に勝った試しはないというのに、学習
しない兄弟子だ。

「お、まーたやっとるわ早々のやつ」
師匠を除き険悪な雰囲気が漂いつつある庭先の光景を、特にする事もなく眺めていた早玄の前に、胡早雀が
ひょいと腰を下ろした。目の前にある早々のお茶を勝手に飲んでいる。
「"兄さん"つけなあかんで、胡早雀。しっかしあいつも成長せんなぁ。師匠追っかけ回すの」
「四六時中探しよりますからね、親父を。もう病気や」
兄弟子に対する態度を窘められても、大して気にしてない風で菓子鉢のかりんとうをつまんでいる胡早雀に、
仕様が無いと小さく笑って早玄もかりんとうに手を伸ばした。
「椎早も気の毒にな、あれじゃどっちが弟かわかれへん。早々はちっとは弟弟子に譲るいうんを覚えんとな」
「そら無理でしょ。あいつアホやし」
「まぁなぁ、アホやもんなぁ」
どうしようもあれへんなぁ、と揃って口に出して、お茶をすすった。

「そもそも今日は僕が師匠に呼ばれてんです。兄さんは関係ないんです」
「関係ないてなんや!」
切り捨てるような椎早の言葉に早々が声を荒げると、静かに早雀が諌めた。
「早々ー、聞き分けないこと言いな。今日は残っとき」
「師匠…せやかて」
「師匠、行きましょう。遅なります」
話は終わったと見なした椎早が早雀に声をかけて門へ向かう。寂しそうに自分を見る早々に、早雀はちょっと
笑いかけて、椎早の後に続いた。その背中を見た途端、たまらず早々の口から言葉が飛び出した。
「俺、師匠の側に居りたいんです!」

居間の方から何か噴き出すような音がしたが、早々には聞こえてなかった。

「……ぶわっははははは!!」
静寂を蹴散らしたのは、早雀の大笑いだった。門柱に寄りかかり腹を抱えて笑っている。
「え!?なんで笑うんですか師匠!?」
予想したあらゆるリアクションから完璧に逸脱した早雀の大爆笑に驚いた早々は、笑いの波に呑まれている
早雀を呆然と見ていた。ふとその隣で、こちらも負けずに呆然と自分を見ている椎早の顔が、心なしか赤らんで
いるのに気付いて更に驚いてしまった。
あの万年鉄面皮がこんな普通の人間みたいな表情するなんて。
「…って椎早、お前は何赤うなってんねん?」
早々に指摘されて我に返った椎早は、すぐに顔を逸らして隠すように片手で口元を覆った。
不意打ちとはいえ、普段から本心で思っている事だけに、まるで自分が師匠に告白してしまったような気がして
無性に焦った。声に出して聞くとかなり恥ずかしい。しかもその顔を見られてしまった。痛恨だ。
「…なってませんよ。それより、大声で恥ずかしい事言わんといてください」
「ぶっ、…くっくっくっく」
不機嫌に眉根を寄せて吐き捨てる椎早の顔はもう普段どおりの顔色だったが、そのセリフの直後に隣の早雀が
新たな笑いの発作に襲われ、少々バツの悪い顔で早雀を横目で見ている。

早々はといえば、自分たちのやりとりの何が早雀のツボにはまっているのかまったく見当もつかないので、
とりあえず当面の敵である弟弟子の相手をすることに決めた。
「何がや。俺は師匠が好きやからいっつも側に居りたい言うただけや」
「好きとか勝手に足さんといてくれますか。ほんまに恥ずかしい人ですね」
「お前に言うたんちゃうわボケ!俺は師匠に言うたんや!」
「はっはっは…早々、お前はほんっっまにアホやなぁ」
そこまで聞いて、未だ笑いが収まらない早雀が、満面の笑みでしみじみと言い放って早々の頭をわしゃわしゃ
撫でまわした。早雀のそのくせが大好きな早々は椎早へ噛み付く事も忘れ、つられてへらへらと笑っている。
理由は何でも良い、師匠が自分に笑ってくれるのが嬉しい。いつも側にいたい。
居間から呆れて眺めている兄弟子と弟弟子には、千切れそうにぶんぶん振り回される尻尾が早々の尻の辺りから
生えているのが見えた、ような気がした。

師弟がほのぼのと笑いあうその横から、椎早が声をかけた。赤面顔など最初から表情として持ってない、と言わ
んばかりに冷徹な眼差しで早々を睨み上げている。
今日は師匠が自分に付き合ってくれるはずなのに、何故初っ端からこんなこっぱずかしい邪魔をされなければ
いけないのか。被害を被ったのは自分だけで、本人はノーダメージなのがまた腹が立つ。これだから脊髄反射で
生きてるアホは嫌いなんだ。
「師匠、こんなどアホなんかほっといて行きましょう」
「ん、いこか椎早」
促された早雀もあっさり早々から手を離し、二人は連れ立って門を潜っていった。
「え?あ、ちょ…師匠!」
残された早々は手を振る後姿が鳥居の角に消えていくのを見送るしかなかった。
渋々居間に戻る間、自分は師匠に「ほんっっまにアホ」と笑顔で返されるような事は言ってないはずだが、と
思い出し首を傾げていた。

「…あれ、お前の兄弟子やで胡早雀」
「…あれ、あんたの弟弟子ですよ早玄兄さん」
腑に落ちない表情でのそのそと歩いてくる早々を見て、早玄と胡早雀は疲れたように苦笑し、微妙に生温く
なったお茶をすすった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ヤマなしオチなしイミなしで正直スマンかった。早々がアホの子すぎたなぁ・・。


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