蛍火
更新日: 2011-05-03 (火) 21:39:51
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| 封誇示、量真×桐風邪 。
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 原作、実際、個人的設定混ざってスマソ。
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| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
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その部屋の襖を開けると、男の後姿が見えた。
夜の闇に包まれた中庭の方を向き、ピンと背筋を伸ばした正座。実に彼らしい。おそらく
精神集中、眠る前の習慣、瞑想の時間だ。部屋の外から声をかけても返事が無かった。だ
から怪訝に思って襖を開けてしまった。よく考えればわかることだ。なのに今の自分の愚
かさはどうだろう。彼の習慣すら忘れてこの時間に訪れてしまったのは、明らかに自分が
平常心を失っている証拠。霧を操るその青年は自分の失態を恥じ、音もなくその場を立ち
去ろうとした。
「どうした」
男の背中が尋ねた。
「入れ。もう終わった」
ゆっくりと男がこちらを向く。畳を擦る音が静かに響く。ひとつだけの眼が、彼の表情を
見止めて小さく笑った。
「気にするな。座れ。夜風がちょうどいい頃だ」
「………失礼。邪魔をする」
穏やかな笑みに少しホッとしながら、彼は襖を後ろ手で閉じると男と並ぶようにして座っ
た。暗闇の中を小さな光がひとつ、ふたつ。
「蛍か」
「ああ、この部屋からよく見える。お前の部屋からは見えないか?」
「生憎、見飽きるくらいの緑の木立ばかりだ。いい部屋をもらったんだな」
「年長者の特権かな」
冗談めかしてまた笑う。
「さて、話を聞こうか」
年長者は躊躇っている彼にきっかけを与えた。そうでもしなければ彼は、自分の本心を語
らない。幼い頃からの変化をわかっているからこそ、手を差し伸べた。
「自分の不安定さが許せないか?」
彼は応えない。
「あいつが俺に聞いてきたんだ。金魚が死んだ時、墓にアイスの棒を立てなかったか?っ
て。尋ねたら、お前が冷たいって話だった」
彼は答えられない。
「あいつに問いつめられて、何も答えられなかったそうだな。霧にまぎれて逃げたと」
「あいつは子供すぎる」
「その子供に真実を突かれて、答えられずに逃げ出したお前はもっと中途半端だ」
一番の核心を突かれ、膝の上の拳を握った。
「俺はある程度割り切ることが出来る。あいつは割り切ることが出来ないと自覚している。
多分そのまま自分らしく生きるんだろう。だがお前は外見は冷静を装いながら、心の中で
は揺れている。違うか?」
「……………」
「言葉にすることも出来ず、態度に表すことも出来ず、隠れてアイスの棒の墓参りか」
思わず目を閉じた。閉じた瞼の裏に、まだ蛍の残像が揺れている。ひとつ、ふたつ、ふわ
り、ふわり。虚空の闇を揺れている。
「………お前は、そのままでいい」
静かな声が聞こえた。
「きっと誰にも割り切ることなど出来ん。お前は俺の右腕という立場上、冷静沈着である
ことを求められている。ここまでよく務め上げてくれている。今のままで充分だ」
そっと男の手が伸びる。
「お前が誰よりも優しいことは、この俺が一番よく知っている」
節くれだった大きな手が、彼の頭を撫でる。けれど彼は頭を振り、その手を払った。
「でも私は……!私の弱さのせいであの時お前の左眼を……!」
ようやく目を開き、訴えるようにその男の顔を見た。
「私の割り切れない感情のせいでお前の眼を傷つけた。だからこそ、私は割り切らなくて
はいけないことを学んだんだ。優しさなんてとうに捨てた。感情なんていらない。ただ与
えられた任務を遂行し、闇に身を潜めるのが我らの役割。私は……!」
ふいに男の手が彼の口を塞いだ。彼は驚いて目を見開く。
「……もういい。お前の考えはよく知っているつもりだ。だが俺はお前の本心もよく知っ
ている。俺の眼の怪我は俺の未熟にすぎん。気にするな」
男の手がゆっくりと彼の頬を撫でる。親指で、濡れ始めた彼の目元を拭った。
「繰り返し言う。これが最後だ。俺の眼のことはもう気にするな。お前は今のままでいい。
感情が揺れる、それこそ人間の証だ。人間で無くなったら善悪の判断も出来ん」
「命令を受けたら、善悪の判断など必要ない」
「いつかは必要になる。ただ独りになった時に」
「…………独り?」
「そう、例えば、俺がいなくなった時に」
「お前が………いなくなる?」
いつかは起こるかもしれない、けれど考えたくはない状況を提示され、彼はまた唇を噛み
締める。幼い頃からずっと自分を見守ってくれていた存在が消える。そんなはずはない。
けれど………
スッと男の腕が伸びる。そのまま優しく抱きしめられた。幼い頃からこの胸に抱きしめら
れると、それまでの不安が綺麗に消えていった。だが今は、この両腕の強さに別の意味が
こめられていることも知っている。
「………あまり単独行動はするな」
「………約束は出来ない」
「今回の敵は強い。特にあの、長い木刀を持つ男………」
「大丈夫。この私の術にかかれば……」
「あいつを甘く見るな」
そのまま畳の上に押し倒される。鋭い眼が彼を見下ろした。
「今回ばかりは俺の言うことを聞け。あいつはただ者じゃない。今までの奴らとは違う何
かを持っている。これは忠告ではない。命令だ。あの男は、全てが違う」
男の目は真剣だった。ただ真っ直ぐに彼の目を見つめていた。その色合いに、ようやく彼
もその言葉の重さを知った。
「………わかった。無理はしない」
「どの程度の無理か、わかったものではないがな」
男がまた小さく笑い、そのまま顔を寄せた。少し厚ぼったい唇が、彼の唇を覆った。
「り、りょう……」
「どうした?」
「戻る。部屋に戻る。邪魔をしてすまなかった」
慌てて体を起こそうとする。だが男は簡単に彼の動きを封じ込む。
「気にするな。ちょうど俺もお前を心配していたんだ。少し付き合え」
言いながら、片手で縁側の障子を閉めた。
「だ、駄目だ」
「何が駄目なんだ?こうやって過ごすのも久し振りだろう?」
「人が……隣の部屋にいるだろう」
「あいつらならもう寝ている。心配ならお前が声を上げなきゃいい」
そのまま男の手が彼の学ランの下へと潜り込む。久々の肌に触れられる感覚に彼は小さく
息を飲んだ。
「お前は………俺だけのものだ」
ボタンを外し、ベルトを緩める。
「お前は、俺のそばにいればいい」
シャツの前をはだける。
「俺のそばを離れたら、お前は………」
昔から感じ取っていたこと。時々夢に見る風景。霧の中へと消えてゆくその姿。雪の如く
白い頬に口元から鮮血を流し、彼の腕の中でこと切れる。ただその名を叫ぶことしか出来
ない無力な自分。仲間の死に対して冷静になれるはずの自分が激しく取り乱し、その骸を
強く抱きしめ何度もその名を泣き叫ぶ。それらがただの夢、幻であってくれれば。
(そんなことは、決して起こさせない)
自分に強く言い聞かせ、彼の唇を中指でなぞる。膝を使って白い足を少し開かせる。彼が
少しだけ抵抗した。大人しくさせる為に、彼の前を強く握った。
「んあっ!」
思わず声が上がった。その声に自分でも驚いたのか、彼は慌てて両手で口を抑えた。男は
また少し強めに彼を愛撫する。また息苦しそうなくぐもった声が上がった。
男にのしかかられたままギュッと目を閉じていた彼が、うっすらと目を開ける。そしてま
だ自分の腕にまとわりついているシャツから白いハンカチを取り出し、自分の口に咥えた。
ゆっくりと男の指が入ってくる。言葉はない。静かな空間に、ただ微かな彼の息遣いと、
時折庭から聞こえる虫の音と、畳を擦る音だけがある。
言葉など、すぐに消えてしまうものはいらない。その大きな手が彼の頬を優しく包み込む。
そのぬくもりが何より確かなものだ。指が増える。男の唇が彼の肌に落ちる。彼は畳に爪
を立てる。男の長い髪が肌をくすぐる。ふと彼は目を開いた。
「………灯りを」
「ん?」
男が体を起こす。
「………灯りを………消してくれ」
「消したらお前が見えない」
「頼む………消してくれ………今の自分を見られたくない」
悩み、揺れて、支えられる姿を見られなくないのだろう。男は彼の気持ちを汲み取った。
「薄明かりでは駄目か?真っ暗にしてしまったら、少々都合が悪い」
「…………出来るだけ、暗く」
彼も男の想いを汲み取った。彼とても、愛しい男の優しい眼差しを見るのが好きだった。
部屋の灯りが消される。小さな行灯ひとつが灯された。それはかろうじて彼らの顔を照ら
した。静かに彼の足が開かされる。そこに男の体が割り込む。
「………いいか」
ゆっくりと、男が彼の中へと入ってくる。ガリ、と畳を爪で引っ掻く音がした。
「大丈夫か?」
普段は感じ取れないような優しさで、男が彼を気遣う。彼は返事の代わりに両腕を男の背
中へと回した。その腕に導かれるようにして、男は更に体を進めた。小さく彼の顎が上が
り、白い喉がのけぞった。
「……動くぞ」
最後の平常心でそう告げると、男は腰を揺らし始めた。そのたびに彼の小さな呻き声が咥
えたハンカチにくぐもる。
「………っ……あ………はっ………」
少しずつ、男の動きが激しくなる。彼はその動きを受け留めながら、いつも見る幻を感じ
ていた。
この男はきっと嵐さえも征する者。尋常ならぬサイキックという力を持ち、我ら一族を導
く者となるだろう。
その時、自分はそこにいるだろうか。
この男のそばにいられるだろうか。
忍びは人知れず生き、戦いの中で死ぬ。その骸は土の上に倒れ、風雨に晒され、弔われる
ことなく朽ち果てる。自分もこの世に生を受けた時からその宿命を負っている。
だが。
もしたったひとつの願いを叶えられるなら。
忍びとして生まれた以上、何ひとつ望むことなど無い自分だが、たったひとつ。
死ぬ時は、せめて愛するこの男のそばで。
男の動きが更に激しくなり叩きつけるようにして彼の体を突き上げる。しがみつく彼の腕
にも力がこもる。
「…………っ!」
小さな呻き声と共に、彼の中に熱い迸りが流れ込む。そして彼自身も導かれるようにして
自らの熱を吐き出した。
静かな空間に、二人の荒い息遣いだけが聞こえる。涙を滲ませた目をゆっくりと開いた。
「…………あ…………」
暗闇の中、小さな光がふたつ。ゆらり、ゆらりと揺れている。
「………蛍………」
庭から入って来て出られなくなってしまったのだろう。二匹の蛍が勝手気ままに部屋の中
をつかず離れず揺れている。彼が光を指差すと、男もそちらを見て、静かに微笑んだ。
「どっかの誰かみたいだな」
唇に、唇が重なる。まだ離れていない互いの体に、再び熱を感じた。
「………もう一度、いいか?」
耳元で囁かれる。彼とて、許されるならこの時間をもっと過ごしたい。小さくうなずいた。
背中に腕を差し込まれ、強い力で抱き起こされる。そのまま男の膝の上に座らされ、向か
い合う形になる。男の手が彼を支えるようにして抱きしめる。彼は男の両の頬を、白魚の
ような指で優しく包み込み、微笑んで見下ろした。男もまた笑みを返す。
「…………お前が、私を作ってしまったんだ」
幸せな告白。
「…………お前が、私の体を、作ってしまったんだ」
どうかこのひと時を、いつまでも忘れることなく。
「…………お前、だけが」
死へ旅立つ時も、どうかこんな気持ちを抱いて。
「その通り。お前は、俺のものだ。死してもなお、俺はお前を忘れない」
再び吐息が乱れてゆく。彼の上げる小さな声に男も駆り立てられる。
明日をも知れぬ命だからこそ、柔らかな髪を振り乱す。
互いの肌のぬくもりだけが、真実を伝えていた。
終
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ オシマイ
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
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子供の頃に萌えというものを教えてくれたカプ……
久々にこのジャンルに戻ってオフ活動しようかな……雀100まで踊り忘れずw
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