Top/30-56

掘り欄

               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 聖地(英訳)でシンショもの
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ショゴが何年くらい塀の中に
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~ いなきゃいけないか分からないから
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 成人済み設定にしてみますた。
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"

39度を越える熱を出すのはいつ以来だろう。重い頭でぼんやりと考える。
どれだけ寝ても体は眠りを求めるから瞼も重いけど、俺はもう眠らずに、
右手に収めたままのケータイを、何度も目の前にかざして見ていた。
『さみしー』
そんなメールを飛ばしたのは、午前8時を回った頃だったか。
昼ごろに『は?』とだけ返ってきた。
『熱出たから大学もバイトも休んだ。ママとパパは法事でイナカ。
ユーはガッコ。さみしーぼく』
今頃仕込みをしている頃だろう。ティーンをやってた頃はママさんに
半ば強制的にやらされていた店の手伝いも、今では本格的な修業になり、
以前から店の――正確にはママさんのファンだという、舌の肥えた
常連さえも納得させる品を、ちょこちょこ作れるようになってきたらしい。
生来根が真面目な努力型だから、店を閉めてから何時間も練習したりしてる。
バイトで遅くなった日に、からかってやるつもりで店に顔を出した時、
味見してくれと出された出汁巻き卵は、言葉にならないほど美味かった。
素直にウマイウマイと言ったのに、「お前が言うとウソ臭い」なんて
唇尖らせたから、「嫁に欲しいくらいだ」って言ったら殴られた。
真っ赤な顔して、嬉しいくせに素直にならないのは、10代の頃から
ちっとも変わらない。

「ショーゴー…」
そんなことを思い出してたら、ますます寂しくなってきた。人間ってのは
相変わらず、病むと人恋しくなるようにできている。
思わず、メールの返事をくれない相手の名前を、口に出して呼んでみた。
「…玄関くらい閉めて寝ろよ、無用心だな」

仰向いて寝たまま、顔の前にかざしていたケータイを取り落としたのは、
本気で驚いたからだ。
冷却シートの上からとはいえ、額にまともに落ちてきたのに「痛い」と
言うのも忘れるほどにびっくりした。
「俺だったから良かったようなものの……ああ、台所勝手に借りたからな」
ショーゴは銀色の盆を抱えたまま足でドアを開閉し、俺のベッドの横に座る。
俺は思わずベッドの上、上半身を起こした。
「え、え、なんで、」
やっと出たのは、間の抜けた声だった。ショーゴは何言ってんだと言いたげに
太い眉を跳ね上げる。
「お前が熱出して寝てるっつったら、お袋が見舞いに行ってこいって
休憩くれたから。簡単なもんだけど、作ったから食え。どうせ何も
食ってねんだろ?」
「だって、食欲ねーし、いや、てか、何で、ここ、いんの?」
「何だよ、来いっつったの、お前だろうが」
「え、俺?俺、ゆった?」
「言っただろ?」
「………え?」
「………あ?」

顔を見合わせたまま二人してしばし呆け、それから思い出したように同時に
自分のケータイで送受信メールの確認をした。俺の送信ボックスの中には、
「来て」という内容のメールはひとつもない。
ショーゴの受信ボックスの中にも、そんな言葉の入ったメールはなかった
らしいことが、見る見るうちに赤くなった頬で分かった。
いつもなら、顔が赤いのも含めてからかうところだ。
だけど今は、ばつが悪そうに目を逸らし、怒ったようにナベの中身を小皿に
取り分けでいるショーゴがやたらに愛しかった。
「そのお粥、お前が作ってくれたの?」
「……………病人には、これだろ…」
耳まで、いや、首まで赤い。ナベから小皿に、ぽとんと落とされた梅干くらい赤い。
俺がじっと見ていることに耐え切れなくなったのか、ショーゴは怒った顔のまま、
ぶっきらぼうに小皿とスプーンを差し出してきた。
「病人には、これ、だろ?」
俺はそれを受け取らず、重い瞼の片方だけを閉じて笑ってみせる。
何だよ、と口の中でもごもごと返すショーゴの方へと身を乗り出し、
俺は「あーん」と声に出して口を開けた。
途端にショーゴの眉根が寄る。

「あっ、甘えてんじゃねえ!気持ち悪ィんだよ、バカッ!」
受け取ろうとしない俺に、ショーゴは尚も小皿とスプーンをぐいぐいと
突き出してくる。俺がそれでもそれを受け取らず、口を開けたまま
もう少し体を寄せると、今度は困ったように眉尻を下げた。
「シ、シン…!バカ、この…ッ」
どうやら本気で困り始めたようだ。照れくさくて恥ずかしいのが半分、
もう半分は本当にどうしていいのか分からないんだろう、黒目がちの目が
あちこちに泳ぎだした。
「―――ざーんねん」
からかうつもりじゃなくて本当に甘やかして欲しいところだったけど、
照れた顔はともかく、困った顔が見たいわけじゃない。
俺は降参するように両手を軽く上げてみせてから、ショーゴの手から小皿と
スプーンを取り上げた。
ショーゴは何もなくなっても、俺に向かって上げていた手をしばらく下ろせずに
固まっていたが、俺がお粥を食べて「うま」、と声に出した時、ほ、と安心した
ようなため息と共にうつむいて下ろした。
「うまいよ、ショーゴ」
うつむいた頭をスプーンを持つ手でぽんぽんと撫で叩くと、ショーゴは前髪の
隙間から目だけを上げて俺を見る。
「来てくれて、マジさんきゅ」
その目を覗き込むように少し首を傾げて言うと、ショーゴはふとはにかんで笑った。

キスするにはちょっと遠いな、とベッドの上で両手がふさがっている状態の
自分を思って、残念な気持ちになった。
熱がなければ、思い切り抱きしめられたのにな。そんなことを考えつつ、
こぼれそうになったため息を、ほっこりと温かいお粥と共に飲み込む。
おかゆは、ほのかに甘い味がした。

「シン、」
呼ばれて目を上げると、すぐそばにショーゴの照れ隠しの不機嫌そうな顔があった。
あ、この距離なら触れられそう―――そう思ったのと、もう効力の薄まってきている
額の冷却シートの上から、さっきケータイの降ってきた辺りにやわらかいものが
そっと触れていったのは、ほぼ同時だった。
「風邪は、もらってやれねーけど……明日はちゃんと、授業出られるよーに…」
ショーゴは内緒話をするように、耳元で低く囁く。
俺は突然のことに、さっきショーゴが現れた時と同じくらい驚いて、全機能が
フリーズしてしまっていた。
「じゃあ、お大事にっ」
俺が固まったことで、ショーゴは自分の行動に対するテレの極致に至ったのか、
慌てた声でそう告げると、そそくさと立ち上がって俺の部屋を出て行った。
どかどかどか、と足早に階段を下りていく音がし、慌しく玄関のドアが開閉される
音が続いた。

「……このオマジナイは…、逆効果、じゃね…?」
俺は片手に小皿、片手にスプーンを握ったまま、熱っぽい声で一人ごちる。

――たぶんこの時、俺の熱は40度を越えたに違いない。

               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 出汁巻き卵のくだりは
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < 専スレで拾った萌えから妄想
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 原作ショゴも早く幸せになれと
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!    願いつつ書いたネタでした
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´ おわり。
 |         | ./
 |_____レ"


このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP