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御神酒徳利

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                     |  ナマ ラクGO家 ガッテンシショー ×ショタシショー
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| +昇天の紫&緑
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電話を受けたのは、収録が終わって間もない楽屋で、だった。

シノさんが明け方に帰っていった『あの』雪の日以来、
一度電話で喋ったきりで、特に深い話はしなかった。
狸寝入りしてたから俺の方からあの事に触れられないのもあったけれど、
何時もと変わらぬシノさんの態度にほっとしたのも事実だった。
あの後も、少ししてからさも今起きましたという体を装った俺に、
シノさんは何も問いはしなかった。
本当に眠っていたと信じていたのかどうか。確かめる術はない。
だらだらと話をしながら始発までうちにいて、明け切らない冬の真っ暗な
朝の中をシノさんは足元を気にして白い息を吐きながら帰っていった。
雪はまだ残っていた。
玄関から見送った黒いコートの背中がまだ俺の中では鮮明で、
それはひょっとしたら一生鮮明なまんまかもって気がした。
ほんの僅か、絶妙なバランスにあった俺の中にあるシノさんへの感情の針が
片方に振れた瞬間だったからだ。
遠くにいて浮かぶシノさんのイメージは、煙草に酒に文庫本。
あのオヤジを言い表すには中々的確なアイテムだって自分で思うけど、
そこにあの後姿が加わった。ちょっと猫背気味で、足元を気にしながら遠ざかる姿。
シノさんの用件だった明日時間あるなら会おうという誘いにそれでも
二つ返事でOKを出し電話を切った後に、少しばかりぼーっとしてしまったのは、
多分そのイメージは頭から追い出せなかった所為だろう。

「……どうしたんだい、アンタ」
落ち着いた声が、意識を現実へと向けさせる。慌ててまだ深緑の着物を着たままで
煙草を燻らせている御大の方へと顔を向けた。
「ちょっとぼーっとしちゃってて」
「それは見てたらわかるよ。珍しいねぇ、いい娘からの電話かい?」
「そんないいもんじゃありませんよ。同業者からですから」
「ふぅん」
俺の言葉に疑われる様な部分があったとも思えないけれど、御大は面白そうに
眉を上げる。食えない。ほんっと食えない。骨ばってるからか?
長年世の中を見渡してきた御大の目はやけに澄んでいて、こっちの心の中なんて
軽く見通してきそうだった。
「あんたの同業者の交遊録に、若い女性は載ってたっけなぁ」
「本当に違いますって。ほらぁ」
のんびりとした口調のカマに、だらだらと言い訳をしていても埒が明かないと
携帯を突き出して着信履歴を示す。すると御大の表情が一転して
つまらなさそうに変わった。すぅっと一つ大きく煙を吸い込むと、
灰皿に煙草を押し付けながら言う。
「何だつまんないね。折角からかうネタが出来かと思ったのに」
「そんなに色っぽい電話に見えましたか? 例えば俺がニヤニヤしてたとか」
絶対に有り得ないと分かりつつも、尋ねるのには勇気が必要だった。
万が一ってあるじゃない。
「違うよ。醸し出す雰囲気で分かるじゃないか。まぁ、
アンタと蓼川んとこのとは一緒に旅に行く位仲が良いらしいからねぇ」
「もうラブラブですから。師匠とラク太郎兄さんみたいなもんですよ」

動揺を誤魔化したくて口から出たのが方向性の間違った単語。ラブラブってなんだよ!
それじゃぁ駄目じゃんっと背中に冷たい汗が流れる感じがする。
一瞬妙な間が開いたものの、師匠は平然と「あぁ、そうだね」と呟いた。
「要するに、御神酒徳利みたいなもんだろう? ラブラブってぇのは」
「そうそう、そうです」
うわー、食いつき過ぎだよ俺!
でも流石に御大。年の功というか噺家だからか、喩えが洒脱だ。
一対であるという説明に御神酒徳利を持ってくるんだもんなぁ。
御大と我らが団長との関係を喩えのなら、その言葉はよく似合った。
座布団の上での貶し合いというのは信頼関係がないと出来ないもので、
御大は腹黒団長を『公私』の『私』の方でも可愛がっている。付き合いが長いから、
弟子みたいなもんだろうって勝手に思っているけれど、それもあながち
間違いじゃないみたいだし。
御大が二本目の煙草に火を点け様としたけれど、ライターが見当たらないらしく
辺りをきょろきょろと見回した。
「あたしのライター見なかったかい?」
「先刻はどれで火を点けたんですか?」
「自分のでだよ。その辺に置いたと思っていたんだけどねぇ」
捜すお手伝いをしようと灰皿の近くに手を伸ばしかけた時、背後からすっと
伸びた手が灰皿の向こう側の湯呑みの裏にあったものを掴んだ。
座ったままの上体で首を捻ると、団長が何処か余裕を感じさせるにぃっって笑いで
俺を一瞥してから御大へと向き直る。ぐっと握った手の平を仰向けにしながら
御大の見易い様に突き出すと、茶目っ気たっぷりにゆっくりと一本一本指を解いた。

「はい、師匠。お探しはこれでしょ」
「あぁ、よく分かったね、ラクさん」
御大は手品みたいに現れたライターに薄く笑いながら、ちらりと団長に
上目遣い気味に視線を投げた。
先刻まで少し離れた所でタイちゃんと話してた筈なのに、良く気が付く人だなぁ。
「そりゃぁ、まぁ」
言いながら団長はそのままライターを握ると、しゅっと音を立てて火を
起こしてみせる。自然な動作で御大は骨ばった指から唇へと煙草を移し
火に近付けて目を細めると美味しそうに煙を吸い込んだ。
紫煙が吐き出されるのを確認してから、団長は首を少し曲げ御大の顔を
覗きこみながら柔らかいトーンの声で尋ねる。
「やめる筈だった煙草、美味いですか?」
「あぁ美味いよ。あんたに点けてもらうと、美味さ倍増だね」
「師匠が禁煙を失敗されたのは、俺の所為じゃありませんよ」
「悪いもの程やめられないもんだね。あんたも俺を早死にさせたきゃ、
せっせと火を点けてくれればいいよ」
「じゃぁ今後一生点けません。っていうよりも、早死にって歳ですか」
「そりゃそうだ」
珍しく素直な団長の言葉に頬を緩めながら御大がフィルターを吸う度に、
煙草の先が仄かに赤くなる。
蛍みたいだった。
いつぞや飛行機の禁煙席で目の前にある背もたれの向こうは喫煙席なのにと
、目隠しの毛布を被ってまで喫煙をしていたシノさんの不機嫌そうな
しかめっ面が思い浮かんで、一瞬頬が緩みそうになった。

あれはもう、面白いというか可愛いというか、絶妙だったね。
御大なそんな俺を素早く見咎める。
「何笑ってんのさ」
「いやいや、仲良き事は美しきかな~って思いまして」
「そりゃもう仲良しですよ」
当たり前の事を口にする団長の言葉を引き継ぐ様に、御大が唇を笑みの形にして
言い放つ。
「あんたとシノ介さん位にはラブラブですからね」
意趣返しの意味が分かったのは勿論俺だけで、突然のラブラブ発言に団長は目を
丸くして俺達二人を交互に見た。
この状況で俺に出来る事はと捜して、肩を竦めて苦笑を零して見せる。
「あぁ、御神酒徳利ですからね」
俺の返しは非常に弱くて、それがまたツボに嵌ったらしく勝ち誇った様に
声を上げて御大は笑った。
俺が年を取ってじぃちゃんになったとしても、この人みたいにはなれそうにない。
親指が無意識にさっきまでシノさんと繋がっていた筈の携帯のディスプレイを
つるりと撫でた。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ひょっとしたら後2話ほど
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )  お付き合いお願いするやもしれません
 | |                | |       ◇⊂    ) __   その時はよろしくお願い致します
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