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助っ人団

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                     |  飛翔で大絶壁連載中の助っ人ダンスです
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  睫の人→ゴーグルの人。っぽいもの。
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ あくまでもぽいものになってしまったorz
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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――何となく、けれどどうしようもなく、ムカつく奴がいる。

仮にも品行方正の生徒会副会長にはあるまじき思考だが、だって事実なのだ。
その名前、藤崎、佑助。学園生活支援部、通称助っ人団のリーダー分。
かれと直接関わりあいになったのはついこの間のことだったが、奴を見た瞬間、椿佐介は一目で理解した。
因縁を付け合い顔を飛ばしあう、すきあらば取っ組みかかるべき類の人間、つまり、天敵だ。と。
例の一件依頼、廊下で出くわすたびににらみ合い、愚にもつかぬ罵詈雑言を叩き付け合い、そうしてもう
数日以上が経過していた。

さて、ここで話は本筋へと移る。

お昼時、といえば、購買。購買といえば、買い食いパン。
佐介は日ごろ購買に通いつめるような生徒ではなかったが、誰にでも、普段は気にも留めない方向に気が
向くときはある。
その日はちょうど、かれにとってそういう時だった。
「チョココロネ、と、コロッケパン、それと、焼きそばパン」
佐介は珍しく購買のパン用バスケットの前に立ち、食べたい気分のパンをいくつか注文した。
昼休み開始十分。
たったそれだけの時間で、購買部が用意した昼食用のパンはもはや数えるほどしか残されていない。
一応昼食は弁当持参、もしくは購買で販売されるパンを購入して食べることになっているが、それにしても
弁当を持ってこない輩がこれほどいて、そして購買のパンを求める連中がこれまたこんなにもいるのだとは、
開盟学園において最初に購買システムを生み出した人間は考えなかったものだろうか。
(購買だけでなく、学食も必要なのではないだろうか?)
まあその思考を下手に会計・丹生に伝えようものなら、全力で裏会計の暴走を止めなければならなくなる。
彼女は清純な見た目とは裏腹に派手なことが好きなたちだから、きっと提案以上にスバラシイ学食堂プランを
練り上げてくれるに違いない。
まあそれはともかく、だ。
佐介の注文どおりの二つのパンをおばちゃんは袋に入れ、そしてちょっと困った顔になって、言った。
「……あー、悪いんだけどね。焼きそばパンは売り切れみたいだわ」

焼きそばパン。
何故かどこの学校でも定番の人気を誇る、炭水化物のパンに炭水化物の具を合わせた、魅惑の惣菜パン。
当然入荷量も多いのだが、売れていく量もこれまた半端ではなく多い。売り切れなどざらである。
「そうですか……」
少々肩透かしを食らった気分で佐介が別のパンを示そうとした、そのときだった。

「おばちゃーん、さっき頼んどった分ありますー?」
賑やかな少女の声が、乱暴に鼓膜を震わせた。この訛りのきつい声には嫌と言うほど聞き覚えがある。
佐介が敵視する例の男が率いる助っ人団、その一員、鬼塚一愛。
紙袋と佐介を見ていたおばちゃんの視線は、一気に彼女へと向けられた。
「おー、ヒメちゃん、あるよあるよ。焼きそばパン8個にクリームパン5個、メロンパンが4個、コロッケパンと
チョコデニッシュが2個ずつ、ワッフルとツナマヨパンとカツサンドとホットエビフライドッグとデニカステラと
ホイップコロネとうぐいすパンとウィンナードッグが1つずつ。で、全部で29個。えーと…………」
「3570円ッス!」
注文されたパンの多さに唖然とする佐介と、注文されたパンの多さで計算に戸惑うおばちゃんの耳に
飛び込んできたのは、
「……あらほんと。ボスくんは本当に計算が速いねぇ」
「おばちゃーん、だから俺ボスくんじゃなくてボッスンだってば」
よりにもよって「奴」の声だった。……というか、一愛がこの場にいる時点で予期しておくべきだった。後方には、
当然のようにパソコンをぶら下げた笛吹和義の姿もある。
佐介は苦虫をまとめて十匹程噛み潰したような顔になったが、その場にいる誰もがかれの表情など気にも
止めなかった。
おばちゃんは助っ人団の連中に、満面の笑みでお釣りを渡す。その馴染んだ雰囲気からして、どうやらかれらは
購買部の常連のようだった。

「ああ、そうそう、今日は特別におまけを付けといたから、よかったら三人で食べなさい」
大量のパンが入った袋と別に、おばちゃんはいくつかパンが入った小さなビニール袋を一愛に渡す。
「わっ、おばちゃん太っ腹やーん。おおきになー、ホンマ」
「おしっ、教室戻るぞー。あ、ヒメコお前半分持てよ」
「何でやねん、そんなんスイッチに持たせたらええやんか」
『俺はもうこのパソコンで重量オーバーだ。重労働はヒメコにまかせる』
「ったく、女の子に力仕事させる男はもてへんで」
『ところでおまけはどれだ? おまけ』
「メロンパンとアップルパイと焼きそばパン。俺焼きそばな」
『じゃあ俺はメロンパンでいい』
「ならアタシはアップルパイな」
三者三様、がさがさと各々のパンの袋を開けて口へと持っていく。

「…………おいッ!」
おばちゃんプラス三人の和気あいあいたる勢いに流され佐介は思わずしばらく呆けていたが、ここにきてようやっと
口を開いた。
「一体何なんだ、貴様らは」
「あー?」
しかも肝心のその三人は、佐介がここにいることそれ自体に気がついていなかったらしい。それがまた癪に障る。
ちなみに二行前の「あー?」は佑助の台詞だが、一愛も和義も同じようにふざけたいらえを返したことを、ここに
記しておこう。
そしてさらに先を続けたのは、やはり佑助だった。
「見りゃ分かるだろ。パン買いに来たに決まってんだろボケ」
佑助の台詞の最後についた「ボケ」が、ともすればスルーでもしておこうとした佐介の寛大な気持ちを逆撫でした。
「……そうじゃない、その量だ。ふざけてるのか?」
「ふざけてませんー。これも立派な部内活動ですー」
『最近考案したシステムだ。……言っておくがかなり評判だぞ』

その後に続いた和義の説明を要約すると、こうなる。
購買のパンを買いたい輩は多い。しかし人ごみにもまれたくないという我侭さんも、これまた多い。そこで
助っ人団が代わりに代金を預かりパンを購入、昼休み中にそれを配達する。画期的、かつベタベタでる。
「そんなことはどうでもいい!」
つまりただのパシリではないか、と佐介は胸中思ったが、それはそれとしておいておくことにした。
けれどどうしても彼らに構わずにはいられないのは、ひとえに佐介の悲しいサガである。
「問題はその量だ。他の生徒が困るとは考えないのか?」
今現在パンを購入しそこなって困っているのはむしろ佐介本人だが、そこは触れないでおこう。それがかれの
ためである。……多分。
ツッコむネタも実はこの数日間でほとんど使い果たしてしまっていて、最後に切り札にして一番の基本の基を、
とうとう佐介は持ち出すことにした。
「……だいたい貴様ら服装からして違反だろう。鬼塚、アクセサリーは禁止、タイはきちんと結べ。笛吹、ノート
パソコンを持ち歩くなどもってのほか。藤崎、そのズボンの丈は何のつもりだ。それから、」
そこで一息。次の台詞に備えて、敵意を出来る限りあらわにするため、息を吸い込む。
「その変な帽子は見ていて特に不愉快だ」
「おまっ……俺の数少ない個性にケチつける気かよ!」
そして佑助は、佐介が予想していた以上に食いついてきた。よほど気に障ったようだった。その様子に佐介は
思わず鼻を鳴らしたが、ところが次の一言が、今度は逆に佐介の気に触れることになった。
「だいたいそんなこと存在自体不愉快な奴に言われたくないね! マスカラ男!」
「なっ……黙れ赤鬼帽子!」
こうなったらもう、犬さえ食わぬ口喧嘩の勃発である。

進めば進むほど退化していく口論を止めた救世主は、意外と言おうかやはりと言おうか、購買のおばちゃん
だった。目の前で繰り広がる口先の戦争をものともせず、彼女は佐介に声をかける。
「ちょっとアンタ、パンどうする? 焼きそばパンの代わり、何か買ってく?」
予想外の方向から突きだされた横槍に、佐介は思わず言葉に詰まる。
「えっと……あー……」

「……焼きそば? パン?」
おばちゃんの一言に反応したのは、意外なことに佐介一人ではなかった。
「焼きそばパン」というキーワードを聞き漏らさなかった佑助は、自分の手の中にある、しかも封を切られ、その上
一口齧られた後のあるものをまじまじと眺める。
「……」
そしてその焼きそばパンと佐介を見比べた後、佑助はそれを投げつけるように佐介によこしてきた。
「やるよ。ホントは俺のだけど」
「何言うてんの。おまけもんの貰いもんやんか」
「うっせぇ」
恩着せがましげな台詞に、一愛の絶妙なツッコミが入る。さすがのものである。
いきなり手元に飛び込んできた焼きそばパンにいまいちリアクションを取れずにいる佐介に、佑助はさらに追い討ちを
かけた。
「さっさと持ってどっか行っちまえよ、目障りなんだよお前」
「な……ボクはこんなもの、」
いらない、と言おうとした佐介を、佑助の言葉が遮る。
「言っとっけどな、おごりじゃねーぞ、貸しだ貸し。俺たちは困った学生の味方なの。感謝しろよ馬鹿」
「……」
今回の口喧嘩において黒星がついたのは、どうやら佐介のようだった。

「ほな行くでボッスン、そんなんにかまっとったらアンタまでマツゲになってまうわ」
微妙な空気になってしまったその場を、一愛がようやっと崩す。
「あー……それもそーだな。んじゃーな。馬鹿」
去り際にまで悪態をはさんでくる佑助の態度が、佐介には非常に腹立たしい。思わず言い返した。
「次までにもっとボキャブラリー増やしてくるんだな脳タリン」
「…………うるせーボケ! アホ!」
「はいはい子どもの喧嘩する暇があったらさっさと行くで!」
『とっとと行かないと昼休みが終わるぞ』
どうやら本当に語彙が切れたようだった。佑助は小学生でさえもっとましな切り替えしが出来そうな捨て台詞を放って、
それを一愛と和義がごまかすように引っ張っていく。
手元に収まった食べかけの焼きそばパンを突き返す暇は、ついに佐介に与えられなかった。

購買部で買ったふたつのパンと佑助から放られた焼きそばパンを手に、佐介は釈然としないままとうとう教室まで
戻ってきてしまった。
憤然たる心持のまま、一通りのいきさつを(ただし佑助にパンを恵まれたことは伏せて)クラスメイトに伝えると、そいつは
こともなげに言った。
「あー、そう。でも確かに最近多いんだよな、助っ人団の連中にパンの買出し頼む奴ら。でも実際かなり確実みたいだしさ。
今度おれも頼んでみようかって思ったりしてんだわ」
どうやら、助っ人団という連中は自分の思うところ以上に学生に人気を得ているらしい。それが佐介にとっては、まったくもって
腹立たしいことこの上ない。
そして級友は、ふと佐介が握り締めている焼きそばパンに目を留めた。
「あ、それ。要らないなら残りもらっていい?」
「やらん! これはボクのだ!」
その冗談交じりの申し出をついつい佐介は大声で否定してしまって、それが何故か分からぬまま、手に持ったままだった
食べかけの焼きそばパンに思い切りかじりつく。
天敵たるはずの佑助に情けをかけられた、という事実が、何だか無性に佐介を苛立たせた。
「畜生……あいつめ、……いつか泣かす」

赤い帽子を思い出すたび、心がざわつく。ムカつく。イラつく。
それが佐介には、ある意味、とても不思議だ。
何であんなふざけた奴を相手に、こんなにムキにならなければいけないのか。
天敵だから? だがそれは本当に正しいのだろうか。本当に、それだけなのだろうか。
答えは誰にも分からないのである。佐介本人にも、……今のところは。

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 | | □打ち切りSTOP!!. | |
 | |                | |           ∧_∧ 助っ人ダンスを救えるのは
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )    名無しさんのアンケだけ!
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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