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銀魂 空知&大西INジャンプ作家でバトロワ

空矢口は山を駆け下りていた。
道など存在しない原生林の中、打ち切りに怯えてひたすらに走った。
・・・なんでこんなことになったんだ。クソォ、チーズ蒸しパンになりたい!
疲労と恐怖で足がもつれ、派手に倒れこむ。
膝に痛み。着古したジーンズに血が滲んでいた。
「痛え~」ムクリと体を起こす。
「やっぱ早過ぎたんだ、オレに連載なんてよォ」
一人ごちて、そのまま座り込んだ。
空矢口英秋。
デビュー作、だんでらいおんがWJに掲載され、新人としては異例の人気を博した若手作家。
しかし、この稀な才能も、サバイバルゲームの中で生き抜くには未熟過ぎた。
「ちょっと転んだくらいで、情けないなぁ。」
背後から声がした───それは聞き慣れた声。
担当編集者、オオニシが立っていた。初めて顔合わせをした時と同じ、好青年風の笑顔だ。
「おまっ・・・何で編集部の人間が!?」
「キミって真っ先に殺されそうだからさ。助っ人に来たんだよ。案の定、早くも諦めムードだし・・・。」
爽やかに笑いながらオオニシがキツイことを言う。
「・・・だってオレ、戦いなんてわかんねーしよ~」
「戦い方は僕が教えるから、一緒に行こう。キミは生き残るんだ。」
打ち合わせを・・・51Pを3週間で描けと言われた時を思わせる、有無を言わせぬ口調でオオニシが言った。
「えっ・・・でもよォ、オオニシさんだって立場ヤバいんじゃないか?いいのか?」、
「僕も、読者も、まだまだキミのマンガが読みたい。それだけだよ。」
言って、さっさと山を下っていく。
「待って、オレ疲れて動けない」
「あと5キロくらい歩けば山小屋がある。さっ、行くよ、空矢口くん!!」
「つーか何でそんな元気なんだァァァ!!」
「ハハハ、週刊の編集を舐めないでね!!」
非常時にあってハツラツと輝く、オオニシの後ろを追う空矢口だった・・・。

「もういい・・・疲れた。休ませてくれ。ゆっくり休ませてくれ・・・。」
山小屋に到着と同時に、倒れこむ空矢口。
オオニシは汗1つかいていない。小さな山小屋の中をゴソゴソと物色しながら言う。
「不摂生な生活してるからだよ。それよりキミのスタンドを確認したい。『金良魂』出してくれるかい?」
「本当元気ですね、そして容赦ないっすねェェ!・・・金良魂(シルバーソウル)。」
空矢口のスタンド、銀髪の剣士のビジョンを持つ、『金良魂』が現れた。

画力・・・E ストーリー・・D 演出・・・D オリジナリティ・・・C
キャラクタ・・・B  同人人気・・・C 成長性・・・A 
能力・・・空矢口節。セリフ回しで読者を翻弄する。特にギャグ、説教を得意とする。
射程年齢層・・・小学校高学年~20代後半
人種射程・・・ちょっぴりヲタ~重度ヲタ

「お、同人人気が前より高くなってるね。」
「最近は美形キャラを覚えたからなァ。」
「だが、このままでは勝ち抜けないよ、人種射程が一般人層に届いていない。原因は、画力が大きいね。」
「『金良魂』は『キャラ・ネーム型のスタンド』だから、絵は仕方ねぇべ。」
「仕方ない、じゃないだろう。このままじゃいずれ打ち切りだよ。」
あくまで厳しい担当に、新人が不満げに返した。
「なんだよ、オレだって精一杯やってんだよ?」
「それは分かる。でも、キミは順調に来すぎたせいか、必死さが足りないんだ、マンガが上手くなりたいという、必死さが。」
「なこと言われても、どうしたらいいんだよ!?オレは

瞬間

鼓膜を打つような爆音で会話が中断した。
火は立っていない。ただ、山小屋の屋根から壁面にかけてが消失し、その向こうに男が立っていた。
えりあしの長い落ち武者のような頭、万年睡眠不足のような覇気の無い表情。
ただ、その瞳だけがさえざえと冷たい男、富樫義博が・・・

オオニシがつぶやく。
「富樫先生・・・。」
空矢口は息を飲んだ。初めて見た・・・これが、あの『青汁富樫』・・・
オオニシは空矢口をかばうように一歩進み、それを見た富樫が口を開いた。
「それが、オメーが育ててる新人か?」
「そうです」
「で、オメーなんでいんの?まさか、新人が心配で付いてきたとか?」
「そうです」
「へ~、随分入れこんでんね?もしかして、オレよりもその新人に情熱傾けてる?」
「・・・そうです」
富樫の細い目が、一層細くなる。奴隷を見る、支配者の目。
「最近オレん家来なくなったのは、そいつがそれが原因か・・・。オオニシちゃんさ、そんなヤツ捨てて、またオレの専属になれよ。
空矢口だっけ?そいつの連載第一話読んだけど、ショボイだけじゃん。」

空矢口は苦笑した。ショボイだけか。『集英社のドル箱富樫』から見れば、その程度だよな・・・
オオニシさんだって、オレなんかに力入れるより、『赤松健に、あの人オーラ出てますよと言わしめた作家富樫』専属になった方が絶対・・・

しかし、オオニシは首を横に振った。
「申し訳ありませんが、お断りします。実は、編集長には空矢口専属になるよう要望を出している。僕は空矢口くんに賭けてるんです。」
「オオニシさん?」
「オイオイ勘弁してよ~オオニシちゃん。オレはそのショボ新人以下っつーこと?
・・・じゃ、オレオオニシちゃんが担当じゃないと、描く気しないんだ~・・・つったらどうする?」
「僕より優秀な担当を、紹介しますから・・・」
オオニシは一歩も引かない。
富樫の怒気が空気を満たしていく。
「・・・そうか、オレの言うことが聞けないなら、オオニシ、お前死ぬぞ?」
富樫の周囲の空間が歪み・・・黒髪の元気そうな少年が現れた。
富樫のスタンド『ハンター・ハンター』である。

『ハンター・ハンター』
画力・・・C ストーリー・・・A 演出・・・A オリジナリティ・・・A
キャラクタ・・・A  同人人気・・・A 成長性・・・C 
能力・・・マジでヤバイ面白さ。どんくらい面白いかって言うとマジヤバイ。
射程年齢層・・・小学校低学年~40代後半
人種射程・・・マンガほとんど読まない人~超重度ヲタ
※画力は測定不能になることもある

圧倒的な実力差に、空矢口が呻く。凄まじい能力・・・!天才だ、あの人は本物の天才だ・・・。
だが、「死ね」ってどういうことだ?スタンドでは殺せるのは同業者である漫画家だけだ。
編集者であるオオニシさんには攻撃できないはず・・・

しかし、オオニシは毅然と言い放つ。
「富樫先生。僕は今死ぬ訳にはいかないんだ!」
それが最後の後押しとなった。
「そんなにこのオレより、つまんねぇ新人がいいのか!?」
『ハンター・ハンター』の指に光が点り
「休載休載休載休載休載休載休載ィィィ!!!」
無数の念弾がオオニシを打ち抜く。オオニシの体が紙屑のように吹っ飛び、山小屋の壁にぶつかった。
「オオニシさんーーーーー!!!どうして・・・!?」
空矢口は母親を求める迷子のように、オオニシに駆け寄った。

「オオニシさん、大丈夫ですか!?」
「・・・大丈夫だよ、この位慣れてるさ。」
倒れたまま、、笑う。初めて会った時と同じ、青年風笑顔だ。
気力、体力共に消耗しているが、、意識ははっきりしているようだ。
「あの念弾は何なんです!?」
その発言に呆れ返った富樫が答える。
「オイオイ、知らないの?オレのスタンドの、もう1つの能力・・・『編集殺し(エディター・キラー)』
『編集殺し』を発現できるヤツは業界でも数人だし、、公式にも認められていない能力だが、
WJ作家がこれを知らないってのは、どうなんだろうなァ。お前ホントに漫画家か?」
富樫が続ける。
「休載・断筆によるダメージを、オレ自身ではなく担当に与える、これが『編集殺し』だ。
オレはいくら休載しても切られることはなく、ただの一度も減給されない。故にオレの連載は休載でできている。
わかったー?じゃ、行くぞ。」
「休載休載休載休載休載休載休載休載休載休載休載休載ィィッ!!!」
オオニシを更なる念弾が襲う。
「がっ・・・は・・・ぁあ」
オオニシの体力が、気力が、給料が、そして編集部内での地位が急激に低下していく。
「オオニシさん!!」
空矢口がオオニシを念弾から庇うように抱きしめる。しかし、念弾は空矢口の体を通過し、オオニシを攻撃する。
「だから、『編集殺し』は対担当用の能力だから、漫画家には効かねーの。」
止めろ、止めろと、狂ったように空矢口が叫ぶ。
押しつぶされる絶望の中、空矢口の中で何かが芽生えつつあった・・・。

無限とも思われた念弾の雨が止んだ。
「オイ?オオニシ生きてるよな?もう一度選べ。オレか、この技術も経験も知識も無い空矢口か、どっちの専属になるんだ?」
「・・・確かに、空矢口くんには技術も経験も知識も無い・・・でも、面白い。それが・・・才能なんです・・・」
「・・・」
「最後に、お願いです・・・空矢口くんにだけは、手を出さないで下さい。」
富樫の目を見据えて、オオニシが懇願した。
「分かった。」
ハンター・ハンターがペンを投げ捨て・・・『最強奥義・オレはいつ連載辞めてもいいんだよ?』を発現させた。
オオニシの体が弓の様に反り返り──崩れ落ちた。そのまま動かなくなる。

オオニシ、(担当していたドル箱作家の機嫌を大きく損ね) リストラ

  • 今は銀魂のが同人人気高いと思うな -- 2014-01-09 (木) 16:06:10
  • 数年前に書かれたものだし、そりゃ人気度は変わってるさ。今の作家さんたちでのバトロワも読んでみたいね -- 2014-01-14 (火) 19:00:24

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