Top/29-78

天然気味な攻×ヤンキーの受

オリジナルの甘い話で高校生カプ
天然気味な攻×ヤンキーの受
本文は全部で6~7レスほど使用させていただきます

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 テレビや雑誌で騒がれるような学級崩壊とは縁遠く、かといって全く何の問題が無いほどに平和というわけでもない、ごくありふれた高校の屋上。
 二時間目の授業開始を知らせるチャイムが鳴ってから既に5分ほどが過ぎており、
多くの生徒は当然ながら教室内で席に着き授業を受けている最中のため、賑やかな気配などはほとんどない。
 ただ一人、フェンスに凭れながら退屈そうに空を見ている男子生徒の姿だけがそこにはあった。
 彼は二年の生徒で、名を和田良太という。
 名字が和田であるため教師が出席をとる際には大概最後に名を呼ばれる彼は、しかしその出席をまともにとられることがほとんど無かった。
『良い子になるように』という願いを込めて両親がつけた”良太”という名に反し、彼はいつの頃からか、いわゆる不良と呼ばれる存在になっていたのだ。
 そんな彼はたびたび、この屋上で授業をサボる。卒業する意思はあるので最低限の出席日数を得るためこうして学校に来ることは来るのだが、
肝心の授業にまともに出ることはやはり少なく、結局のところそれが一番中途半端で無駄だと自覚しつつも、それでも良太は気付くといつも、屋上に足を運んでいた。
 そして彼はここで、いつもある人物と会うのだ。 
「またここにいたんだ」
 不意に、良太の背後で屋上の戸が開く音がした。続いて、そう声がかけられる。ただ良太は、
かけられた声を聞いた瞬間こそぴくりと眉を動かしたもののすぐに表情を戻し、そしてそのまま何を言うでもなく頭上の空を眺め続けた。
 声の主が誰かということ、そしてその人物がこのあとすぐに自分の隣にやってくるということを、彼は既に知っているのだ。
「良太?」
「……下で呼ぶなっつっただろ」
「じゃあ、和田くん」
 屋上にやってきて、そして今、ゆっくりとした足取りで良太の隣までやってきた人物。
 目付きの悪さも相俟って近寄り難い印象を周囲に与える良太とは対照的な幼さの残る顔立ちに柔和な笑みを浮かべる彼は名を吉田といい、
この屋上で良太がたびたび会っているというまさにその相手である。
「鍵、こっちからかけたはずだぞ」
「だから言ったじゃん、僕もここに入れるんだって」
 既に顔見知りではあるが相変わらず無愛想な態度をみせる良太に、吉田はそれでも細めた目を更に細め可笑しそうに笑った。

 吉田は良太のことを”良太”と呼ぶがそのたびに怒られるので、とりあえずは”和田くん”と呼び、
一方の良太は吉田の名字しか知らないので、必然的に”吉田”と呼ぶ。
本当は、自分の名前も知られたくないと彼は思っていた。彼は自分の名前が嫌いなのだ。
「良太は」
「……」
「あ、ごめんごめん。和田くんはなんでそんなに、自分の名前を嫌がんの?」
「なんとなく」
 吉田の問いに、良太はいかにも面倒臭そうな声でおざなりに返事をした。
 本当は「”良”太なのに問題児」などと親や親戚から言われ続けたために嫌になっただけなのだが、それはそれで大っぴらには言い難いもの。
 だから必要以上に素っ気ない態度を彼はとった。
だがそれに対しても吉田は依然として楽しげな表情を崩さずに、ただ今度はどこか面白がるように「ふぅん」とよくわからない声を漏らした。
その声が本当によくわからない類のものだったため、良太はつい、視線を吉田の方へと向けてしまう。
それは一瞬のことだったが、吉田はその一瞬の後にこりと笑い「やっとこっち見た」と嬉しそうに言った。
そのまま、彼は良太との距離を僅かに縮める。控えめに触れる、腕と腕。
「和田」
 ”良太”でも”和田くん”でもなく、和田と名字を呼び捨てにした際に吉田がとる行動も、良太は知っている。
予想でもなければ伝聞知識でもない、経験に基く知識。
 これは、合図だ。
「ざっけんな、お断りだバカ」
「やだよ、だって久々に和田に顔みれたんだもん」
「だもんじゃねーよキメェ!この……」
 良太の文句が途切れ、屋上が静かになる。
見下ろす位置にある校庭ではどこかの学年のどこかのクラスが体育の授業でサッカーをしている真っ最中で、
かなり白熱しているらしい紅白戦の喚声が二人の耳にもはっきりと届くほど。
 それでも二人の意識はそんなものには向かわず、じんと痺れるそれは全く別のものへと注がれている。
口付けあっている互いの唇の感触だ。触れ合う唇と、そして少しだけ深く合わせ隙間から絡めた舌のぬるつき。

「う、……ぅ」
「……ん、は……和田かわいい」
「っ……かわいい、とか……やめてくれ、マジで。寒い」
「でも本当かわいいよ、ヤンキー顔のくせにかわいいなんて、ホント……キモかわいい?」
 微かに乱れた呼吸の合間、”死ね!”という良太の怒声が吉田に浴びせられた。

 早朝から広がる晴天は時間を追うにつれ更に青く澄んでいき、
屋上でじゃれあう二人の男子生徒を見下ろす太陽はおだやかに光を降らせている。
一区切りついたところで良太は不再びフェンスに凭れて空を仰ぎ、吉田はその隣に腰をおろし同様に視線を上向かせた。
 落ち着きを取り戻すと同時になんとなく会話も無くなり、じっと黙ったままの二人。
気まずさから良太が視線を移した校庭には先ほどの紅白戦も既に終わり生徒達がカラーコーンの回収など後片付けに入っているのが見えたので、
恐らくあともう数分でチャイムが鳴るのだろう。そこまで考えると、彼はまた姿勢を変え視線の行く先を別へと再度移した。
「え、何?」
 向かった先は真横に座る吉田の顔。どうやらこっそりと良太の様子を窺っていたらしい彼は、
相手の視線が急に自分に向けられたことで珍しく驚いた顔をみせた。
それでもすぐに、普段の柔和な表情に戻る。
反射的に顔を逸らした良太は、横顔にひしひしと視線を感じながら考えていた。吉田のことをだ。

 吉田の名を知らず名字でしか呼ばない、呼べない良太。
ただ実のところ、彼は名前だけでなく吉田のことを何も知らずにいた。
屋上で会うぐらいだし、そもそも同じ制服を着ているのだからこの学校の生徒であるのは間違いないだろうが、
例えば上履きやネクタイなどで学年別カラーがあるといったわけでもないために学年の判断はパッと見ではつかない。
なのでもちろん、クラスなどもわからない。何年で何組で下の名前はなんといって、そしてなぜ頻繁に、
授業中に屋上までやってくるのか。良太は口には出さずとも常々そういった点を疑問に思っていた。

 見たところ吉田は自分のように不良といった様子でもないし、
むしろいかにも優等生といった感じなので、そうそう何度も授業をサボるタイプには見えない。
それなのに、授業をサボってばかりいる自分と、こうして何度も屋上で顔を合わせるという違和感。
顔を合わせて、そして通常ではありえないようなことまで
───触れ合うだけの簡単な、時には深く絡みあわせるように、キスを───する。

───俺も、何で大人しくさせてんだ……あんなこと
 いつものように授業をサボり屋上で暇を持て余していたある日、突然やってきて、
そこから何度も何度も顔を合わせるようになった吉田という存在。
なのに未だに、ほとんどなにも知らない存在。
その気になれば生徒名簿を借りるなりして簡単にその正体を知ることはできるが、良太はそれをしなかった。
「和田くん」
「何だよ」
「下の名前、呼びたい」
 良太が見る吉田の顔はいつも優しげに落ち着いてもいて、年上のようだがしかし笑顔は幼くもあり年下のようにも思えるもの。
「……呼びたきゃ呼べよ」
 こんな言い方にすら本当に嬉しそうな顔をするし、かと思えばまるで全てを見透かすような目をしたりもする。
「良太」
 結局はわからないと、良太は思考を打ち切りひとつ息を吐きながら自分を呼ぶ吉田の声に素直に返事をし、
そして少し笑った。今だけは不思議と、この名前も名前で呼ばれるのも嫌じゃないとそう思いながら。

 だがその日を最後に、吉田は良太の前から姿を消した。

「山下」
「はい」
「吉岡」
「はい」
「和田」
「……」
「和田、おいコラ和田良太」
「……うっす」
「おし、和田もマルと……今日も全員出席だな」
 出席を取り終え、教室内を見回す担任教師は上機嫌のまま授業に入った。
ため息混じりに教科書を出しノートを開く生徒達は、一時間目のだるさを鬱々と醸しだしながらもそれなりに真面目に教師の解説に聴き入りノートにペンを走らせる。
 そんな中で、良太はこれ以上ないほどに上の空だった。
 窓際の最後尾という絶好のポジションである座席に着く彼はぼんやりと分厚い窓ガラスの向こうを眺めている。
広がる空は青く、以前よく屋上で見上げていたものと同じだけおだやかに美しい。
だがそんな空とは裏腹に、良太の心は一向に晴れなかった。

 彼が吉田と会わなくなって、既に二ヶ月が過ぎていた。
 最初は何か用でもあるのだろうと気にしていなかったが、それまで最低でも週一で会っていたのが十日、二週間と姿を見せず、
三週間目に差し掛かった頃にはさすがに動揺し始めた。
だがそれでも平静を装おうとする彼はいつものように適当な時間に屋上で過ごし続けた。
『良太、ひさしぶり!』
 そう言って屋上の扉を開け隣にやってくる吉田を、
それまでと何も変わらない態度で軽くあしらってやろうとそんなことを考えながら、ひたすら普段通りに。
 だが吉田は一度も、屋上にはやってこなかった。
フェンスに凭れて空を眺める良太の耳には、かけたはずの鍵をなぜかものともせずに扉を開ける音も、
その直後に必ず続く優しい響きでそして嬉しそうな吉田の声も、一度も届くことはなかったのだ。

『下の名前、呼びたい』
「……」
『良太』
「……、」
 日常態度にとうとう痺れを切らした教師の説得に負け、とりあえず全ての授業を自分の席で受けるようにはなったが、
気付けばいつもぼんやりと吉田のことを考えている自分に良太は気付く。それ以上に、彼はこの期間で思い知らされていた。
───会いに行ってたのは、俺の方だったか……
 屋上で暇を持て余す自分がいつしか、吉田がやってくるのを心待ちにしていたのだということを。
吉田が戸を開け自分の隣にやってくることを、いつも期待していたのだということを。
 ふざけるように繰り返したキスも、今ならはっきりとその意味を受け止められると良太は思った。
思ったところで、もう吉田はいないのに。

『にがっ、ていうかタバコくさっ!』
 はじめてキスをした時、自分から勝手にしておきながら吉田はそう叫んだ。
そして、その直後に、良太に殴られかけた。
良太としては確実に殴ったつもりでいたものの、吉田は思いのほか優れた反射神経の持ち主だったらしく寸でのところで良太の拳をかわしたのだ。
それが更に良太の怒りを買い、結局は思い切り蹴り上げられることになったのだが。
 だがそれでも吉田は懲りることなく、時に絶妙に時に強引に、良太に口付けを仕掛け続けていった。
 そしてそのうち良太の方が根負けし、彼らのキスはバイオレンスが減った分、少しだけ甘さを含み出す。
『良太さ、』
『良太って呼ぶなって何回言やわかんだよこのハゲ』
『こんだけ髪あんのにハゲ呼ばわりって! んなことより、りょ……和田くんさあ、タバコやめなよ』
『おめーに関係ねぇだろうが、ほっとけ』
『あるよ、だってキスすると不味いから嫌なんだもん』
 そんな理由か、とつっこみかけた良太はこの時、その言葉を実際には口に出さずに飲み込んだ。
吉田が真剣な顔をしていて、本当にキスの時の味を理由に禁煙を勧めているのだとわかって呆れたためだ。
健康だとかそもそもの法律だとかではなく、あくまでもキスの味。つっこむ気も失せてしまったらしい。

──結局、タバコの本数は減ったけどな
 吉田と自分とのくだらないやりとりを回想しながら、良太はそこで微かに笑った。
初めて会ったのはたかだか半年前のことだが、もう随分と昔のことのように彼には思えた。
それもこれも、全ては吉田と会うことが無くなったため。
 我慢できなくなり、意を決して職員室に全校生徒の名簿を借りにいったこともあった。
だが”吉田”という名字は全学年で思った以上に多く、虱潰しに探すのも難しい。
更に覚悟を決めて担任に外見の特徴を説明したうえでそういった風貌の吉田という生徒はいないかと尋ねてみたりもしたのだが、
なんでそんなこと訊くんだという当然の疑問にうまく答えられず逃げてしまったため結局は見つからず終い。

──……っと、マジで……何なんだよあいつ
 良太は内心で小さく毒づく。相手は記憶の中で相変わらず人のよさそうな笑顔をみせる吉田。
───勝手に消えてんじゃねーぞクソ!
 人の気も知らねえで、と心の中で吐き捨てる彼はきつく唇を噛みしめた。

「和田、あとでちょっと職員室きてくれ」
 そんな日々を送る中、良太が担任から呼び出しを受けたのは吉田と会わなくなって二ヶ月と更に二週間が過ぎた日のこと。
どうせ授業態度の説教だろうと思った良太は適当に返事をしつつも無視を決め込むつもりでいたのだが、
それを察したのかはたまた偶然か担任が口にしたある言葉によって、彼は先の考えを一瞬のうちに捨てることになる。
 良太は、はっきりと聞いた。
「こないだお前が言ってた吉田って生徒だけどな、───」

 空はこの日も晴れていた。朝の天気予報では降水確率0%の洗濯日和だと若いお天気キャスターが笑顔で伝えていた。
この晴天は来週まで続くらしく、週末のお出かけには日差し避けの帽子も忘れないで下さいね、と気遣いの言葉まで付け加えて。
そんな明るい様子を暗い気分で眺めたあと重い足取りで登校してきた良太は今、
すれ違う生徒が驚くほどの速度で廊下を駆け抜け、
廊下を走るなという教師の怒声を背中で受け流しながらひたすらにある場所を目指していた。
 今朝までの気分とは真逆の、軽い足取り、跳ねる心臓は全力疾走のせいだけではない。
良太の足はそのまま階段を駆け上がる。
『こないだお前が言ってた吉田って生徒だけどな』
『! な、何、わかったんすか吉田のこと!』
『下の名前が不明っつーから確信は無いけどな、お前が言ってた見た目とか考えると多分、三年の──』
『いんの!? まだ学校いんのかよ!?』
『最後まで聞け。あとタメ口はやめろな。まあこないだまで休んでたけど、今日から来るぞ。
俺もそれ聞いてお前が言ってたこと思い出したんだけど……ってオイ、どこ行くんだ和田!』
『っ俺、腹いてーから次の時間、休む。……ます!よろしくセンセー!』
 ついさっき、交わした会話が脳裏に蘇る。
そして、鉛色のようだった視界が急速に色を取り戻していく感覚も思い出す。
良太は走った。自分の教室から、人をすり抜け時に押しのけ、どうしたんだという同級生の声に答える余裕すらなく、まっすぐに。
 息を切らしながら彼が駆け上がった階段、その先には扉がある。重いそれを開くとそこは屋上。
良太は迷わず手を伸ばし、勢いよく戸を開けた。

「───吉田ぁ!」
「良太! 久し振り! 実は家の階段から落ちて骨折しちゃってさあ」
 良太の視線の先には、間違い無く吉田がいた。
この二ヶ月と二週間と十数時間、ずっと見たかった顔。
全治二ヶ月だったんだぞ!と、明るくない話を明るい笑顔で話す彼。
 聞きたいことも言いたいことも、今の良太には山ほどあった。が、彼はまず叫ぶ。

「……ッ笑ってんじゃねーアホ! とりあえず……っ下の名前教えろバカ野郎……!」

 治ったばかりで少しぎこちないながらも吉田は飛びつくようにして良太に駆け寄り、
そして今までで一番嬉しそうに笑いながら、自分よりほんの少しだけ背の高い良太の体をぎゅっと抱きしめた。
お互いのことこれから色々知っていこうと、それぞれが思っていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
勝手がわからなくて改行とかgdgdになってしまい、すみませんでした


このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP