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Jr×小鉄

じ.ゃ.り.ン.子.チ.エの猫2匹

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

オレが戻ってきた頃には、花見の季節は終わっていた。
オヤジに挨拶をしようかと思ったが、それよりオレは、一人で持病のノイローゼを克服したことを、奴に自慢したくてならなかった。
だがどこに行っても奴は居ない。チエちゃんの店、ひょうたん池、オバアはん家、花井のオッサンの家やカルメラの店、果てはレイモンドのものだった持ちビルまで行った。それでも奴の姿は見なかったし、見たという噂も聞かなかった。
オレはただざわざわしていた。こおゆう胸騒ぎは当たりやすい。父さんが死んだ時もこんな気持ちになった。だが奴に限って、そこらの与多猫にやられることはないだろう。そお思っているからこそ、腑に落ちない気持ちになる。
だからオレが奴を探し始めて三日後、オレと奴のフナの保管場所に奴が現れた時は、かける言葉もなくなっていた。

「ジュニア…」
「何しとったんじゃ、お前」
春の夜の風は、肌寒い。小鉄は漬物石の上に立って、どこかを見ていた。いつもの場所のはずなのに空気が違うと思ったのは、多分気のせいじゃない。
「ちょっと面倒ごとを処理しとってな。それよりオマエこそ、ノイローゼ治ったんか」
「オレはもう一人でもノイローゼを治せるんじゃ」
ただ山に行って暴れてきただけだ。だがもう小鉄にぐちぐちと絡まずに治すことができるとゆうのは、確実にオレの自信になっていた。
小鉄は「そおか」と言って、なぜか嬉しそうな顔をした。そんな表情のちょっとした差も分かるぐらい、こいつの顔は見飽きている。
「面倒ごとてあれか、月の輪の雷蔵のことか?」
「あぁ…」
「…なんや、オレかてそんな毎回詳しく聞く気はないで。そない不機嫌そうな顔せんでも」
「オマエに話があるんや」
遮るように言われた。小鉄がオレの方を見る。いつもの寝ぼけたような雰囲気はどこにもない。
「わしは旅に出る。もうこの町には帰って来ん」
「な、なんでや」
「飼い猫が出てく理由なんか一つしかないわ」
思わず一歩踏み出していた。その足が何か水のようなものを踏む。どけてみると、それは血だった。オレのやないし、小鉄は血の出るような戦いはしない。

「若い頃に無茶しすぎたんやろうな。そうでなくとももお年や。病院なんか行きたくないから、そお長くはやれんよ」
「…お前、」
「せやから、オマエが雷蔵を倒したっちゅうことにせえ。わしも最後はのんびりしとう思とるからな、ヨボヨボのとこに与多が現れたらかなわんわ」
ゆっくりと石を下りてきた。なんだかんだ頼りがいがあると思っていたその背中が、今は弱々しく見える。
「じゃあな」
なんてことない、見慣れた笑顔。だけどこれは意味が違う。オレの横をすり抜けて、小鉄が歩いていく。
「チエちゃん、悲しむやないか」
オレは思わず振り返って言った。小鉄は立ち止まるが、振り返らない。
「遅かれ早かれ、いずれはこおなるモンやろ。なんも今じゃ駄目ちゅうこともないし」
「テツが調子づくで」
「そらわしが何年おっても同じことじゃ」
「今更どこで死んだかて一緒やないか」
「飼い猫には飼い猫の領分があるんや」
「それに、…それに…」
何か言わなければ。そう思っても言葉が出てこない。ノドがカラカラになって、声を出すこともむつかしい。
「…はじめはなぁ、なんじゃこのジャリ猫と思うてたよ。勘違いでタコ殴りにされるしな。まぁ主人同士の付き合いやからと優しくしとったら、つけあがってノイローゼなんちゅうもんになるしな」
胸が
「でもなぁ、野球も、メンコも、ベーゴマも、相撲も、カブも、遊ぶ為だけにやるちゅうのは、なかなかおもろかったで。釣りも散々やったしな」
ざわざわする。
「釣りちゅうたら、覚えとるか。ここで与多猫が三味線の為に猫を売ってたやんか。あれで皆で大阪湾まで走った時、オマエ調子づいてヤクザ猫ボコボコにしとったな」
その倍以上ボコボコにしてたのは誰や、と言おうとして、オレは口を開けた。

「行くな」

するっと出てきた言葉に、オレが驚いた。だがなかばヤケクソでオレの口は勝手に続ける。
「どこにも、行くなや。ずっと居れ。領分なんぞ気にするな」
「…わしは…」
「また野球もメンコもベーゴマもしようや。釣りも、パチンコも、水泳もしょう。お好み焼きも食お」
「…そんな風に遊んどって、わしが死んだら、辛いのはオマエやないんか」
思わず蹴り飛ばした。少なくとも、そのつもりで踏み込んだはずだった。だがオレは足についた血で理性を取り戻した。
考えてもみなかった。小鉄が、死ぬことなんて。考えてもみないほどにオレ達は呑気にしていた。オレの生活から小鉄を取り除くことなんか、想像もできない。
振り向いた目の疲れた色に、今度こそ本当に言葉を失う。
「行くな」
そお言うのが精一杯だった。
「勝手やな」
「勝手や。勝手なオマエの弟子なんやから」
「弟子やったっけ。オレはオマエのこと、友人やと思てたけど」
オレ、と言った。小鉄がそお言うのを聞いたことがない。
ふっと笑う。それはオレが今まで見たことないような優しい顔だった。
「しゃあないな。友人の頼みとあったら断れんわ」
「…ほんなら」
「おるよ。泣かれたらわしが悪いみたいやんけ」
「泣いとらんわ」
なんとかいつもみたいに冗談を言う元気も出てきたようだ。さっきみたいに頭が真っ白な状態ではない。
だけど、オレにはまだ気がかりなことがあった。

「オマエ、こそっと出てこうとか、思っとらん?」
「思っとらん。なんや、信用ないんか」
「じゃあ、なんでこないに胸がざわざわするんや」
まだ胸がざわざわするのだ。しかもさっきのざわざわとはなんか違う、かゆいところに手が届かないようなざわざわだ。
これには覚えがある。確か、姉さんと会っていた頃のような、そんな…
「…いや、それはないな」
「なんやオマエ、一人で納得してからに」
いくらなんでも小鉄はない。それだけはない。そおゆうことにしたい。
「とにかく今日は寝ようや」
「おお。…ほれジュニア、星がきれいやで」
少し肌寒いから、少しぐらい近づこう。そお思いながらオレは寝た。朝起きた時には、小鉄の胸に頭を押し付けていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

関西方面でないので方言はおかしいと思いますが許してください
こいつらの萌えキャラっぷりはとても異常

  • 素晴らしい…! -- 2012-07-24 (火) 03:49:33

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