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クラウン夫婦

去年四月に解散した某clown(要二重翻訳)の夫婦です。

ライヴDVD見て泣きながら妄想。

携帯から5レスお借りします

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

理由なんてない、ただ暇だったから。
なんとなく部屋を片付けていたら昔のCDを見つけて、
高い所苦手なのにブックレット撮影でビルの屋上に上ったなあとか、
なんとなく懐かしくなって、ふと、思い立っただけ。
だから、これは偶然以外の何物でもない。

「何してんのあーた…」
呟きが風に溶けた。目の前には、大の字になって眠る元リーダー。
アナタだって、高所恐怖症の癖に。
彼の眠る其処が、俺と彼が空に近付ける、限界点。
俺は彼の右隣にそっと腰を下ろした。
彼の隣に並ぶのは、どれくらい振りだろう。
もう何十年も会っていない気がする。
そんなことは、ないのだけれど。
会いたかった、ずっと、会いたかった。
何処にいても、何をしていても、左側が物足りなくて、
淋しくて、寒かった。
彼の右に立つ権利を自ら捨てたのは紛れも無く俺自身で、
それについて後悔なんかしていない。
俺は、彼の右と同等以上の可能性を見つけたから。
けれど、彼に会うには、その行為は後ろめたいもので、
だから、会えなかった。
居合わせて、気まずい部分もあるけれど、
それ以上に満たされるのを感じた。
彼が隣にいるだけで、心が潤っていく様な感覚がする。
(その名を冠する俺が、潤される側なのか!)

目を閉じれば鮮やかに浮かび上がる、あの時間。
会場を埋め尽くす人の波、彼が腕を振り上げれば、昏い海から
無数の腕が生え、波が揺らぐ。
瞬間、痛い程の光が差し、無数の笑顔が照らし出される。
銀色のテープが舞い、俺は上手へと――
ふと我に返り、苦笑いする。
後悔は無いけれど、未練はあるのかもしれない。
あの空間は、俺のすべてだったから。
耳の奥で鳴り響く唄をなぞる。
跳びはねるような、かつてアンコールラストの定番だった曲。
毎日が灰色な訳でも人形みたいに操られている訳でもないけれど。
目の奥がつきりと痛んだ。
目を閉じる。
左を向けば、あの頃の四人がいて、寂しがりやの相方がわざわざ
コーラスを同じマイクで歌う為にこちらに走ってくるのが見えた。
笑いあって、コーラスパートを口ずさみ――
重なる歌声に、はっとして目を開けた。
隣で寝ている人物に目を向ける。その瞼は閉じられた侭だ。
けれどその唇は小さく蠢いていて、その隙間から懐かしい声が
零れていた。
俺は、あの頃と同じ様に、彼の歌に声を重ねた。

歌が途切れ、少しの沈黙があった。
「おはよう」
声を掛ければ、無言の侭、膝に頭を乗せられた。
もごもごと程良いポジションを求めて動き、結局は俺の腹に顔を
埋め、腰に腕を廻してきた。
「どうしたの、あーたが甘えるなんて珍しい」
「……寒い」
聞けば漸く返される、たった一言。
俺は彼の髪に指を入れて、言った。
「こんな所で寝てるから。また喉痛めるよ?」
すると今度はまたしても言葉の無いままに、首を横に振られた。
「何、嫌な夢でも見た?」
髪を指先で梳きながら問えば、今度は返事があった。
「…逆」
「逆?」
「…幸せな、夢、見た。…幸せ過ぎて、目覚めたくなくなる位に」
両腕が、あるんだ、と。呟く声に手が止まる。
彼から、右腕を奪ったのは、俺。罪悪感に目を伏せた。
「……ごめん」
「どうして謝るんだ」
死ぬ迄この五人で、と、高らかに宣言したアナタの言葉を
嘘に変えたのは、紛れも無く俺だから。
でも、
「でも、さ、勝手だってわかってるけどさ、」
もう、そんなこと思う権利なんて無いのかもしれないけど、
「両腕を失っても、それでも、
アナタの唄がまた、この世に生まれてくる事が、嬉しい」
例え、それを聴く場所が、アナタのすぐ隣でないとしても。

ふと、彼の腕が腰から離れた。
目を向ければ、彼もこっちを見ていて、
目が合えば、その手が伸びてきて――
「痛っ!」
デコピンをかまされた。
これも懐かしい、懐かしいけれど本気で痛い。
「なっ、何すんですかアータ!」
「ばーか。馬鹿タレ目!」
タレ目言うな。
「腕無くした位で歌う事を止めてたまるか。
お前は俺がそんな軟な男だと思っているのか!」
言う彼は、あの頃と同じ顔で笑った。

「じゃあ俺そろそろ帰るわ」
30分位休憩のつもりだったんだけど、とぽつりと零れた声に、
今もなお彼に振り回されているのだろう二人に、胸中でこっそり
十字を切った。
「うん。二人によろしくね」
「おう」
立ち上がり、扉を開け立ち去ろうとする彼に、
「……じゃあね」
寂しさを押し込め笑って別れを告げれば、
「…またな!」
にやりと意地の悪い笑顔で返される。
ばたん、と音をたてて扉が閉じた。
青空の下、宛の無い再会の約束。
まるで誰かさんの唄みたいじゃないか。
今の俺には、もう一度彼等と歌う可能性は無い。
けれど、人は不変じゃないと彼は言った。
ならば長い長い時を経て、いつかまた俺が変わったならば、
再び彼の右隣に立つ事もあるのだろうか?

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

まだ立ち直れてないんですけどね。


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