Top/28-640

家舗×入江

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                     |  少年周波数 家鋪×入江
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  捏造しまくり注意
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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その日の仕事は一風変わった趣向だった。
新人アナウンサーの私は夕方のニュースで話題の人物にインタビューする
コーナーを預かっている。普段はホテルの一室で行っているその撮影を
今日は有名な庭園で散歩しながら行おうというのだ。
相手は将棋のプロ棋士。多くのタイトルを獲得してきた人物らしく、
今回はその一つである覇王位の防衛に関する取材を兼ねている。
高校生棋士からスタートした実力派だという彼はインタビューや密着取材に留まらず
CMなどにも進んで出演しているため将棋に明るくない私でも簡単に顔と名前を
一致させることができる。あと何年かすれば中年と言われるような年齢の割に若い女性からも
人気が高いようだ。私自身はそんなに注目したことはなかったけれど。
積極的にメディア露出をする棋士、と言ってしまうとただの出たがりのように思えるが
テレビなどで見る印象はむしろ控えめだ。一体どんな人なのだろうか。
そんなことを考えているとスタッフが一斉に挨拶する声が聞こえてきた。
そちらの方に視線を投げると羽織袴姿の男性がこちらに向かってくるのが目に入る。
「おはようございます、入江です。今日はよろしくお願いします」
入江裕貴。なるほど、世間の女性がうっとりしてしまうのも頷ける。顔立ちが綺麗な
だけでなく、どこか浮世離れした雰囲気を持つ人だった。
撮影の準備を完了し、インタビューは円滑に進む。
「入江先生は覇王戦に強いと伺ったのですが、理由がおありなんですか?」
「そうですね…初めていただいたタイトルが覇王位でしたから、やはり特別な思いはあります」
「ああ、確か若くして覇王位になられて将棋ブームの火つけ役と言われていましたよね」
「あの時は随分たくさん若い人が来てくれました。今ではその人たちに追われる立場で…恐いですよ」
淡々と答えていた入江先生に一瞬笑顔が浮かんだ。それだけで場が華やぐのを感じる。
本当に…不思議な人だ。

「そう言いつつ、楽しそうでいらっしゃいますよ」
「棋界が活気づくのは喜ばしいことです。そのために尽力しているわけですから」
「テレビなどに多く出演されるのも、もしかしてその為に?」
「少しでもPRになれば、と…棋士としての範囲を逸脱しないように気をつけてはいますけどね」
「こんな言い方は失礼かもしれませんが、本当に将棋がお好きなんですね」
「…僕には将棋しかありませんから」
真面目くさった調子で彼はそう答えた。ああこの人は、将棋以外を知らないのだ、と思う。
棋界の、そして棋士のために動き将棋のことだけを考えて生きている。
それはきっと充実した人生といえるだろうし、大半の人が素晴らしいことだと讃えるに違いない。
だとしたら彼に感じるこの寂漠たる気配はなんだろう。
「ありがとうございました。では最後に覇王位防衛戦への意気込みを…」
僅かな違和感を残したまま、インタビューは終了した。
「今日はありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
カットがかかった後で再度礼を述べると入江先生は深々と頭を下げる。
私はそんな彼の柔らかそうな髪を見つめながら続けた。
「あの…最後に一つだけ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「何です?」
「先生は今の生き方を選んで、幸せですか?」
彼は一瞬虚を突かれたというような顔をし、気まずそうに微笑む。
「昔…20年近く前、同じことをある棋士の方に言われたことがあります。
幸せなように見えない、とも言われました」
私が感じた印象を入江先生自身が口に出したのでぎくりとすした。
「あの時、僕はその問いを無視しました。答えてはいけないと思ったから…」
彼は懐かしそうに目を細める。

「確かに将棋は僕にとって呪縛だったのかもしれません」
妙にはっきりと耳に届いた呪縛という言葉は、すとんと胸に落ちて私を納得させた。

「そんな生き方で、幸せなんですか?入江くん」
色素の薄い瞳に憂いの色を浮かべて家鋪は言う。
遠征先のホテルで、家鋪の部屋に二人集まって飲んでいたときのことだった。
「今の君は、北村さんの望みを忠実に叶えているだけに見えます」
北村の名が挙がり、入江の肩が僅かに揺れる。今でも鮮烈に残るあの存在感。
「そんなことないですよ。別に自分を殺して仕事をしているわけじゃないし、
僕は僕の好きなようにやっているだけで」
なるべく落ち着いた素振りでソファに深く座りなおしながら言う入江に、家鋪は言い募る。
「だったら幸せですか?私にはそうは見えません。君の将棋はまだ何かを
問いただしているように感じる」
責めるような口調が琴線に触れた。先の見えない話しをする家鋪にイラついたのかもしれない。
入江は怒りを逃がすようにグラスを強く握りしめた。
「ならどうしろって言うんですか?あの人の将棋を知らなかった頃には戻れない!
あの一手を聞く前には戻れないのに…」
「そういう葛藤を、誰かにぶつけろと言ってるんです!」
突然立ち上がった家鋪は入江の手からグラスを奪い取り、肩を押さえつける。
「や、しき…先生?」
「できるなら、私に…っ」
圧し掛かってきた家鋪から逃れるため体を引こうにも背もたれが邪魔をする。
手足を封じられて大した抵抗もできないまま口づけられた。家鋪の唇の柔らかさに眩暈が
しそうになる。思えば、キスは酔った北村にされて以来だった。また北村。
こんなときでも北村の存在は入江の中から消えてはくれない。

「好きです。君が好きだ…」
優しい告白と共に家鋪が入江を抱きすくめる。温かくて、泣きそうになった。
沸き上がる感情を抑え付けて入江は家鋪の身体を押し戻す。
「だめです」
言い切ったつもりが声は震えていた。家鋪の綺麗な目に映った自分を見る。
こんな、すがるような顔をしているのか。
ぼんやり眺めているともう一度唇が重ねられた。
「ぅ…ん…」
家鋪の舌が上顎を撫でて奥へ進む。舌を絡めとられて思わず鼻にかかった声が漏れた。
その声の高さに愕然として入江は家鋪を突き飛ばし彼の腕から抜け出す。
「部屋に戻ります」
「入江君」
「忘れましょう」
「入江君!」
「身勝手ですみません。ごめんなさい、本当に…」
言い捨てて入江は部屋を後にする。自室に走り込み、勢いよく閉じたドアに背を預けて
座り込むと、せり上がってくる感情に押されて涙が落ちた。既視感を覚えて原因を探り
北村との覇王戦だと思い至ってまた涙腺が緩む。
部屋に残された家鋪はただ立ち尽くし、どこまでも付き纏う北村の影を呪っていた。
翌朝、ラウンジで朝食をとっていた入江の元に連盟の職員と共に家鋪がやって来る。
「入江先生!ここいいですか?」
無邪気に相席を求める相手をつっぱねることができずに頷くと職員は入江の隣に、
少し躊躇っていた家鋪も向かい側に腰を下ろした。
「おはようございます」
昨夜を引きずって何も言えずにいた入江に家鋪は笑顔で声をかける。

いつもどおり振舞う彼の優しさに安心したと同時に胸がつまる思いがして、入江は昨夜
家鋪の背に回してしまいそうだった手をぎゅっと握り締め、弱々しい笑みを返した。

「図星を指されて、腹が立ってその人を突き放しました」
人に冷たくする所など想像もつかない穏やかな横顔を見つめながら、私は入江先生の
言葉を聞いていた。
「本当のことを言われて手をさしのべてもらって、楽になるのが怖かった」
風が吹いて彼の髪がさらりと踊る。額に古い傷跡が垣間見えた。
「怖くて…とても嬉しかったんです」
話題を逸らされたような要領を得ない彼の話しぶりから、それでも問いの答えは
もらったような気がする。
「すみません、つまらない話しをしてしまって」
「いえ、こちらこそ立ち入った質問をして申し訳ありません」
謝る入江先生を制してこちらから頭を下げた。
「応援しています。覇王戦」
「ありがとう…なんだか嬉しいです。あなたは少し、昔の母に似ていて」
若い頃の母は僕の将棋を全て認めてはいなかったから、と彼は続ける。
入江先生の母親がアナウンサーだったと知ったのは彼が覇王位防衛を成し遂げた後のことだった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 1~3の名前欄変換ミスった…すいませんorz
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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