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仰天ニウス 奇妙な二人旅

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                     |  仰天ニウス 奇女少な二人旅
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  令受のつもりだが正直どっちでもいいよ
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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「気に入ったかい?」
不意に背後から声をかけられはっとする。
振り向けば思いのほか男の顔は近かった。
彼が貸してくれた本に夢中になっていたせいだろうが、
それでも周囲への警戒を怠らないのは癖みたいなものなのに。
そうすることでしか、俺は生きていけなかった。
近づく人間すべてに疑いの目を向け、隙があればそこへつけ込む。
そうして生きる術を誰に教わるのでもなく覚えていた。
とりわけ近頃はかつての仲間が追ってくるのではないかという不安で気が落ち着かないことが多かった。
なのに偶然彼に声をかけられたあの日から、不思議と不安や警戒を忘れている。
今だって声をかけられるまで、まったくその気配に気付いていなかった。
もう何に怯えることもないのだから当然かもしれない……けれど、こんなのは自分らしくない。
彼の持つ穏やかな空気に呑み込まれていくような気がして怖い。
「熱心に読んでくれて嬉しいよ」
俺が何も言えずにいると、彼は心底嬉しそうに笑う。

男はセールスを仕事にしていると言った。
人の良さそうな笑顔も彼の仕事道具なのだろうか。
それとも違うような気がする。じゃあ何だと問われれば解らないけど。
胡散臭い商売用の笑顔を張りつけた人間はいくらも見てきたけど、そいつらのそれとは違う。
こんなふうに自然に笑う人間を見たのは初めてだった。
だから余計に不思議で仕方がない。
彼は俺を怪しいとは思わないのだろうか?
とてもじゃないがまっとうな職の人間には見えないだろうし、
それがわからないほど世間知らずなわけでもないだろう。
「どこまで読んだ?」
「主人公が、友人の娘のために医者を呼びに行くところまで」
彼が貸してくれた小説。児童文学の短編集。
子どもっぽくてすまないけど僕は気に入ってるんだと、彼は言った。
働き者でお人好しな主人公は、“友人”を語る狡猾な男にいいように利用されていた。
丹誠こめて育てた作物を奪われ、散々に扱き使われ、
それでも主人公は友人のために嵐の中をボロボロになって歩いている。
意識は遠のき、おそらくこの主人公はやがて……
「この男は、死んでしまうんだな?」
「ああ」
「マヌケな男だ」
「そうだな」
親切なのは結構だ。でも相手は慎重に選ばなければいけない事を
誰かこの小説の主人公と、目の前の彼に教えてやってくれたらいいのに。

「君は彼を愚かだと思うか?」
「ああ」
最期まで“友人”を信じて“友人のため”に死んだ主人公。
出会って間もない俺を“友人”だと言った彼と、ついつい重ねてしまう。
「親切をはたらく相手は選ばなきゃいけない」
俺みたいのを拾ったばかりに、その命を奪われんとする哀れなこの男。
「あんたにしたってそうだよ」
思わず溢れた言葉を彼は聞き逃してはいなかったようで。
「僕はちゃんと選んだつもりだ」
また、笑った。
なんて言葉を返したらいいんだろう。
どんな顔をすればいいんだろう。
この旅が終わったら、あんたの人生も終わるってのに。
小説の主人公なんかよりもっと愚かだと思った。
そうやってずっと笑っていたらいいんだ。
あんたにはそれが、よく似合ってると思うから。

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