陸ナビ
更新日: 2011-04-27 (水) 13:12:06
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/ つ◇ ( ・∀・)ミ (` ) ジョブチェンジ!
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└──────│家族が周囲に居るときに流れるとドキリとするヨ!
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陸ナビNEXTCM送別会編があまりにも萌えるのでやっちまいました。
10レス消費予定です。
ttp://www.recruit.jp/cm/index.html<送別会編>参照。
「俺、転職するつもりでいる」
俺はその言葉を放つ加藤を、信じられないといった面持ちで見ていた。
いつも通り仕事を終え、帰路に着こうと
エレベータに乗った時に加藤の口から突然飛び出した言葉だ。
俺と加藤は同期だった。
そこそこ名のある広告会社で、俺は本当にこの会社に入社したくて必死に勉強し、
高い倍率を勝ち抜いてやっと就職ができた。
加藤はといえば入社したてで戸惑う俺に対して
「本気で仕事はするけど、居座るつもりはないね」と言っていた。
その時の俺は、加藤の言葉に対して怒りなど少しも感じなかった。
その代わり、『ああ、彼はここに収まる器じゃないんだ』と感じた。
それから仕事を始めて、何事も体良く覚えてこなしていく加藤の背中が、
とても大きく感じたのを覚えている。
転職の話しは、日々の仕事に追われて漠然と過ごして、
彼の言葉を忘れかけた4年目に投げつけられた突然の告白だった。
エレベータが1階に到着すると、乗り込む女子社員が笑顔で
「お疲れ様、もう帰れるの?」と声をかけてきていた。
俺はそれに対する返事も上手く出ないまま、
加藤だけがいつもの調子で楽しそうに笑いながら「頑張れよ」と女子社員に手を振っている。
黙ってエレベータを降り、首から社員証を外して黙々と歩く俺を、加藤が追いかけてきた。
「おいおい、俺に何か言うことねぇの?」
加藤が俺の肩を掴んで引きとめようとする。
それを振り払い、俺は加藤を睨んだ。加藤が驚いた顔で俺を見ていた。
なんだその驚いた顔は、と俺は思った。
「お前に向かって何も言う事なんかないけど?」
「えぇ?だって、俺、いなくなっちゃうよ?」
「別に・・・・だってお前入社の時からそういう適当な態度だったしな」
睨みながら言う俺の言葉に加藤が苦笑した。
入社したての初々しい会話を覚えているのだろうか。
少なくとも、俺はしっかりと覚えている。
そして、その言葉を一度たりとも『適当な態度』などと認識したことはなかった。
彼の飄々としていながら、繊細な、そして裏では必死の努力と勉強を欠かさない姿勢を
『適当な態度』などと言える者がいたら大馬鹿者だ。
俺は今その大馬鹿者に、自ら進んでなってしまった。それ以外に言える言葉が無かった。
「お前厳しいなぁ」
ぼやく様に加藤が言って、歩き出した俺の隣に並んでくる。
「今な、転職サイト見て結構絞り込んできてんだ」
「ふーん」
「俺のやってきたことが間違ってねぇって、誰かにわかってもらいたいよなぁ」
「そうか」
曖昧な返事を駆使して、俺は加藤の言葉を避けようとした。
転職に関する会話を避ければ、加藤が転職することはないのだとまるで信じているように、
さも興味なさ気に答える。
誰よりも彼の努力を見てきた。誰よりも彼の悩みを感じてきた。
誰よりも彼の行いを信じてきた。誰よりも彼の意思を尊重した。
一人で裏切られたヒロイックな世界を演じようとしたが、
実際加藤が起こしたのは裏切りでもなんでもない。
当初からの目的通り、転職という行動を起こしただけだ。
それを今、俺は『彼の意思を尊重する』という自己の規律を逸して、
エゴで動いている。それが堪らなく悲しく、情けなかった。
だらだらと歩く二人は会話が途切れ始める。そしてやがて、そこを静寂が支配する。
会社の最寄の駅に着くと、加藤は苦笑いをしながら俺に手を振った。
俺は黙ってその姿を見つめていた。
それから約2ヶ月後、加藤は上司に仕事を辞める事を告げた。
今の加藤直属の上司は納得したらしいが、前の上司だった女性係長が、
階段で加藤と会うなり呼び止め、罵倒してきたそうだ。
俺は、その係長が加藤を可愛がっていた事も考えると、
彼の才能を見抜いていた数少ない人の一人だと思っている。
だからこそ彼女は裏切られた気持ちが大きかったのかもしれない。そして罵倒したのだと思う。
俺は、罵倒することすらできない。
真実から必死で逃げようとし、加藤の話しをマトモに聞こうとすらしない。
とうとう俺は、加藤の事を考えると頭が真っ白になるという症状に見舞われた。
そして胸の奥が押しつぶされるように痛むのである。
病院に行こうか本気で迷っていた頃に、部署で加藤の送別会をするという知らせを貰った。
「お前来れるんだろ?」
遠いデスクから、デスクチェアに座ったままガラガラと動いて寄って来る加藤の姿を、
俺は一瞥した。
「わかんない」
「え?なんで?金曜の夜だよ?なんかある?」
「わかんないって言ってんだろ」
俺は面倒くさそうにパソコンのディスプレイに視線を移した。
加藤が若干イライラとした様子で声を上げる。
「お前なに怒ってんの?」
「怒ってねぇよ」
「怒ってんじゃん、なんかすっげぇどうでもよさそう」
「・・・・行けばいいんだろ」
俺は言い放つと、ノートパソコンをバタンと閉めて立ち上がった。
本当は用事など一つもないのに、俺はまた逃げている。
そして金曜日の夜が来た。
部署の皆、総勢23人が男女入り混じって参加している。
加藤がこんなに人気あったのかと思うほどの出席率だ。
加藤はやけに皆から酌をされ、そして酌をし返している。
主人公然とした加藤の姿を見ながら、俺は酒を煽った。
加藤は俺に一度も酌をしに来ない。俺は一人手酌で、何本ものビールを空けた。
遠くから加藤の姿を眺め、やがて彼の横に立つであろう上司を想像する。
新しい上司はどんな風に加藤の姿を評価するのだろう。
きちんと俺のように、彼を認めてやってくれるだろうか。
もし彼に酷い評価があった時には、俺は黙っちゃいない。俺だって、その会社に――・・・・。
俺、何言ってんだろう。
俺の意識が朦朧とし始めた頃、送別会はお開きになった。
ネクタイをだらしなく緩め、座卓横にある柱に寄りかかったままの俺は、
皆に挨拶をして送り出している加藤を見つめていた。
「おい、帰ろうぜ」
加藤が俺の二の腕を掴んで揺さぶる。俺はまた曖昧に返事をして、
先を歩く加藤の後ろを付いて行った。
店を出ると早朝5時の景色が広がっていた。空が白んでカラスが鳴いている。
空気はひんやりと、火照った頬に触れている。
早朝のタクシーが、忙しそうに走っていた。
迷い無く歩く加藤の背中は相変わらず大きく見える。
左手に持った大きな花束をぶらぶらと下げて、普段の様にダルそうに歩いている。
二人の間に会話は無かった。
あの自信に溢れた加藤が、先ほどまで笑顔で皆に接していた加藤が、
すっかりだんまりを決め込んで、左手に持った花束をそっと顔に当てたのを見た。
俺は思わずカッとした。
なんか神妙にしやがって、いつもの加藤は花束なんてガラじゃないくせに、どんな顔して歩いてるんだ。
黙るな。喋れよ。俺の気持ちを揺さぶるな。
俺は体当たりをするように加藤に近づき、胸倉を掴むと力いっぱい引き寄せた。
加藤が眼を白黒させて「なに」と言って俺を見る。
「・・・・っがんばれよ!」
そう言った俺は加藤の顔を、2ヶ月ぶりにまともに見た気がした。
俺の口調は悪態そのものだったから、加藤も多少腹が立ったのだろう、
俺の胸倉を逆に掴み「お前もがんばれよ!!」と言い返してきた。
二人の距離が一気に近づいた。頭が真っ白になり、胸の奥がぎゅう、と縮こまる。
目頭が熱くなり、唇が震えた。
加藤の唇も震えている。
俺は何か言おうと思って唇をやや開いたが、
涙の貯水量が限界を超えそうだったため、振り切るようにその手を離した。
加藤はバツが悪そうに服を調え、俺を見つめている。
気付かれないように涙をぬぐって、俺はもう一度「頑張れよ」と言った。
終わり
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ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
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ご静聴ありがとうございました。
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