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銀事件 澄→鉄

銀事件 澄夫→鉄さん
数日前にプレイしてがっつりハマった

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

花見に行こうと言われたのは午前二時を少し過ぎた頃だった。
面倒だったヤマが終わり、数日ぶりに落ち着いて眠ることができると仮眠室でゴロゴロしていた時だ。
外は静かに雨が降っている。事件は最終的に内部の人間が関与しているものだった。硝煙の匂いがまだ鼻に残っている。
あんなに疲れていたのに、上手く眠ることができない。眠すぎると案外素早く眠ることはできないのは、あの人も同じだったらしい。
薄暗い部屋に目が見える。窓から差し込む車の光で、一瞬全身が映し出された。
「四月だな」
「そうですね」
「花見でも行くか」
「いつ?」
「今」
「今?」
俺は疲れているし、多分あの人も疲れているだろうし、夜中だし、しかも雨だ。
何を言っているのかと俺が起き上がると、あの人も起き上がって首をコキコキ鳴らして、
「行くか」
と言った。
多分、嫌がることはできたんだろうが、俺はなぜか「はい」と返事をしてしまっていた。

傘をさして出かけたのは、署からそう遠くない小さな公園だ。
東屋に入る。少し水が漏れていたが、大した問題ではなさそうだ。
一応桜はライトアップされている。しかし雨のせいで不安定な軌道を描いて散り続けているので、あと三日も保たないだろうことは分かってしまった。
「寒いな」
「ですね。でも酒はあるし」
ワンカップを開けると、鉄さんがそれを軽く持ち上げた。俺も同じように持ち上げる。
「乾杯」
「おう、乾杯」
「何に乾杯してるんですか」
「事件解決と、あとまぁ、桜だな」
無言で飲みながら桜を見た。元々そんなに飲める方ではないから、段々と酔いが回ってくる。
しっとりとしたテーブルにべたりと張り付いて、二本目の瓶を開けた。鉄さんが何か言っているのは見て分かるが、ああ、とか、うん、とか生返事をするだけになっていく。

…ミクモに、桜は、あっただろうか。
あったような気がする。いや、あった。ただ枯れていた。俺が生まれる前は立派なものだったらしい。
だから人工の桜を植えたんだ。俺達はあの桜を見るのが大好きだった。
秘跡と冬樹と理留と一緒に登った。理留は可愛いサンダルなのにひょいひょいと登ってた。あの時パンツ見えたのは今でも覚えてる。
ピンク色の世界で、あの時、僕らは確かに、幸せだったんだ。

ふいに小突かれた。その方向を見ると、鉄さんが何か言っている。
「すいません」
「お前、そういや前から弱かったもんなぁ」
ああ、心配してくれているのか。
真っ暗だし、雨だし、寒いし、二人だけだし。でもなぜか悪い感じはしない。
それは多分、鉄さんが本当に僕のことを大事に思っているのが分かるからだ。
大概のことは目を見れば分かる。鉄さんはあまり嘘を言わないし、言ったとしても僕には分かる。
だからたまに悪態をついても、僕のことは心底では大事なんだ。
鉄さんの手を握り、目を閉じる。脈拍が聞こえて、何か嬉しかった。
多分驚いたのか一瞬身を引かれたけど、僕は気にしないで言った。
「普通、絶対耳になんか音って入ってくるでしょう。でも僕には入ってこないんです。不安定なこの鼓動しか分からない。
 だから、人の脈を聞くと、安心します」
引き込んで勝手に腕枕にする。温かいと思った。思えたことが嬉しい。
「手にキスしたら怒りますか」
顔を伏せたまま訊いた。答えなんか見たくない。鉄さんに嫌がられたら耐えきれない。
答えの代わりに、余った手で頭を撫でられた。

肘から布の上を滑り、ガサついた手の甲を口唇でなぞった。ひっくり返して、木の水分を吸って少し湿った手首を吸う。スーツの裾で隠れるかどうかギリギリの場所だ。
口唇の内側に、鉄さんの速くなった脈を感じる。雨の匂いと、慣れた煙草の匂いが混じる。
衝動的に強く引き寄せて鉄さんの口にキスをした。逃げてほしくないから両手首を掴んでテーブルに押し付ける。嫌がった顔を見たくないから目を閉じる。
キスというより密着しただけの行為だ。それでも、顔を振って嫌がったりされないのをいいことに、口唇を舌でなぞって確認する。
顔を離すと、椅子に座って目を開ける。鉄さんが頭をぽんぽん叩いてきたので、泣きそうになった。
「酔いすぎだ、お前」
雨は一層強くなり、酒の残りももう少ない。それでも、俺は確実に今幸せなのだと思った。
「うるせぇよ、ジジィ」
まだ笑っていられるから。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
この二人が大好きだ。


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