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吸血鬼バルド6

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  オリジナル バルド×クラウス
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|    残虐シーン、血が苦手な方はスルーお願いします
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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蝋燭の火が揺らぐその向こう、細やかな彫刻細工が施された
石の台がある。
何かの儀式に使われる、祭壇のようなその石の上に、
クラウスは横たわっていた。
少年特有の華奢な裸体を白い布が覆い隠している。
瞼が震えた。
生温いまどろみから意識が浮上して、目覚める。
四方を石壁で囲まれた部屋。
壁に設えた燭台の蝋燭の明かりが、どこかチェスティアの
地下室に似た狭い部屋を照らしていた。
体が、熱い‥‥‥。
全身の気だるさに、また、意識が沈みそうになるが
閃光が脳裏に走り、赤い情景が蘇る。
今度こそ目が覚めた。

俺、どうして‥‥‥ここ、どこだろ

クラウスが上体を起こす。白い布がずれて、
上半身があらわになり‥‥気付いた。

傷が、ない。

裂かれた首筋、薔薇で傷ついた皮膚、
手で探ってみるが、傷口に擦らないのだ。
体を確認するその手の爪が、鋭く尖っているのを見て
クラウスが目を瞠る。

思い付いて、震える手首に爪を立ててみた。
皮膚が裂けて、赤い血が盛り上がり、筋を引いて流れていく。
しかし、すぐに血は止まり、傷口が塞がった。
傷跡も、消えた。
手首を見つめたまま硬直していたクラウスの瞳が揺れ、
戦慄いた唇から、荒い息が漏れる。
「う、そ‥‥‥」
ヒュッと大きく息を飲み、先程より深く皮膚を抉る。
が、時間がかかったが、それでも塞がった。
これ以上ない程、目を見開いたクラウスの顔が歪んだ。
痙攣する両手で頭を抱える。
血を吸われた。
ならば、自分は‥‥‥
「吸血鬼」
クラウスの心情を明確に表した声に振り向く。
クラウスの背後、いつの間にか、台の端に足を組んで
座していたバルディンが冷たく微笑んでいた。
「ひっ」
白い布を絡まらせて身を竦めるクラウスに、
つめよって顎を持ち上げる。
「おまえは僕の配下に下ったんだ」
揺れる瞳を捕まえて逃す事なくバルディンは続ける。
青い瞳が妖しく光った。
「このバルディンがおまえの主だ」
バルディンが言い放った瞬間にクラウスの緊張していた体が弛緩した。
しばしの静寂。そして‥‥‥
「バル、ディ‥ン‥」
霞がかったような瞳を細めたクラウスが、うっそりと微笑んだ。

おずおずとバルディンの赤い唇に、自分のそれを重ね、
口付けで忠誠を誓う。
そのままのしかかり、唇を割り、舌を差し込んで貪る。
蝋燭のぼんやりとした橙色にクラウスの肢体が艶かしく浮かび上がった。
バルディンの前に跪いてモノを取り出し、迷わず口に含むと、
欲情を帯びた瞳で見上げる。
バルディンが嘲笑を含んだ視線を返し、腰を動かした。
口で奉仕するクラウスの無防備な背中を、さしておもしろくもなさそうに、
5本の爪で深く傷つけていく。
赤い血が幾筋もの川となって皮膚を滑った。
吸血鬼の再生能力が皮膚を復元していくが、
バルディンは構わず、繰り返す。
「ん、んむぅぅ」
赤に濡れたクラウスが痛みにくぐもった声をあげた。
ーーー忌々しい。
加虐的な感情を膨らませたバルディンが
クラウスを四つ這いにして、後ろから一気に突き立てた。
そのままクラウスの両腕を取り、後ろへ強く引っ張る。
痛みと、それにも勝る、主人に貫かれる喜びに、
のどを反らし嬌声を上げるクラウスの瞳には生気がない。
人形と成り果てた下僕を、バルディンが暗い感情をむき出しに突き続ける。
絶望の儀式めいた行為は続き、夜は更けていった。

「ノウエルの街、あそこもしばらく行けないな。どこのバカがやってるんだか」
夜風をきって降り立ったマーティスがため息をつく。
縦穴洞窟、入り口に近い出っ張り。
いつものようにバルドの隣に腰かける。

バルドがここへ来てから3年が経っていた。
馴れ合いを好まない性格からして、すぐに出て行くと思われたが、
意外にも離れ去る事はなかった。
ここを気に入ったのだろうか。
バルドがどうしたと目線で問う。
「いや、ノウエルでも、かたっぱしから人間を狩った奴がいるみたいだ。
 男、女、子供、見境なしにな」
そう言ったマーティスの脳裏に青銀の髪の同胞が思い浮かんだ。
粗暴なやり方はあいつっぽいが、まさかな‥‥‥
「またか」
「ああ、おかげでどこの街も警戒が厳重だ。ハンターもうろうろしてるみたいだし‥‥
 下手に襲ったら、隠し持っていた銀のナイフで、心臓グサーっもありえるかもな」
吸血鬼の弱点、それは心臓を抉るか、首を刎ねるかだ。
この世に存在するものは必ず死を迎える。
それは吸血鬼も例外ではない。
永遠を生きるとされている吸血鬼だが、例えば、自分の鋭利な爪で
心臓を一突きするだけで、あっけなく終わる。
洞窟の入り口から覗く夜空は曇っていて、月もなく、寂しく感じた。
「血にワインに薔薇か。その辺の水が糧だったら、
 もっと生きやすいのにな。『さあ、極上の水で乾杯だ』」
マーティスがグラスを持ち上げる振りをする。
「吸血鬼の本質は人間の生き血を吸う事だろう」
「おや、意外だな。『人の血は無理』とかほざいた奴が言うじゃないか」
ふと、なんとなく避けてきた質問をしてみたくなった。
「なあ、なんでチェスティアを出たんだ‥居られなくなったって、何があった?」
答えは返ってこないだろうと思われた。が‥‥‥。
「一緒に居たいと思ってしまった。傷つけたくなかったから‥違うな。
 私と同じ者になって傷つくのを見たくなかったからか。自分が傷つきたくなかった。
 彼にだけは否定されたくなかったのかもしれない‥‥‥‥‥」
淡々と語るバルドの横顔に心情は見えない。バルドが目線を上げた。
「すまない、気付かれたようだ」

バルドの視線の先を追う。
一羽の蝙蝠が洞窟の丸い入り口付近をヒラヒラと飛んでいた。
‥‥‥‥‥来るんだろうな。気が滅入る。
「はあ‥いいよ。で、彼ってのはやっぱり‥」
 
「人間」

マーティスは軽く目を見張った。
蝙蝠から目を離してバルドは続ける。
「血が飲めないのは、人間に触れると彼を思い出しそうになるからだ。 
 私は、自分が吸血鬼である事を悲観しているわけではない。
 ただ、人間の倫理感で私達の位置付けを考えた時、
 やはり、彼をこちら側へ連れてくる事は出来なかったよ。
 ‥‥‥自分が弱いだけの話だな」
自嘲めいた笑みを唇にのせ、バルドが金の目を伏せる。
静かな告白が終わったのだ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥俺達が人間の倫理を考えてどーするよ‥‥‥。
 ま、ちょっと驚いた。おまえは人間に興味を持ったわけだ」
そいつの事を忘れられる日が来たなら、大丈夫なのだろう。
だが、そんな日はきっと来ない。
『「もう」飲めない』これが答えなのだろうから。
それでも俺達はここに在る以上、「本質」を抱えたまま生きていくしかないのだ。
吸血鬼の存在意義など考えた事もなかったが、
俺もバルドも結局最後まで「吸血鬼」でしかない。
追われて、襲って。殺され、殺す。
「理性と感情の掛け合いか。難しいな」
俺達にとって何が善で何が悪かなんてのは知らないが‥
感情のままに突っ張れたら、もう少し楽なのかもしれない。
そこで、マーティスは思考を閉じた。

来た。

ゴウッ。
唸る風が洞窟に反響する。
入り口から入り込む暴風が、立ち上がったバルドと
マーティスの髪をなびかせた。
夜空を背景に風が渦巻いて収縮していき、人影が現れる。
「マーティスと一緒だったとはね。いくら捜してもわからないワケだ」
トンっと、バルドとマーティスの前に降りたバルディンが、顔を上げた。
先程の蝙蝠がバルディンの周りをくるくると飛び回っている。
「やっぱり‥!ノウエルの街をやったのはおまえか」
バルディンの体にまとわりついている錆びた鉄の
匂いの激しさにマーティスが片眉をあげた。
「喉がかわいて仕方なかったんだ」
青い瞳がマーティスを一瞥して、バルドを見た。
その顔に氷の微笑が張りついている。
「バルドを捜してたら疲れちゃったからね」
黙然と静かに佇むバルドにバルディンが歩み寄り、その頬に手を伸ばした。
陶磁のように滑らかな白い肌。その目元を、顳かみを、口元を、
同じように冷たく白い指がゆっくりと這う。
「バルド‥」
冷たい微笑を和らげて、バルディンが愛しげに名前を呼ぶ。
「おい、外でやれ」
思わず声を上げたマーティスを見る事もなく、
バルディンが背を伸ばしバルドの唇に顔を近付ける。
やんわりと、バルドの手がそれを制した。

「‥‥‥」
愕然と瞠目したバルディンの顔が、急激に怒りの面持ちに変わり、
瞳に赤を宿し、バルドを睨みつける。
「‥僕を、拒むんだ。あいつには許したのに」
怪訝な顔をしたバルドに、バルディンが口の端を上げて呪いの声を吐いた。
「バルド、僕の屋敷で預かってるから。チェスティアでの「忘れ物」」
瞬間、閃光が走る。
バルドが薙いだ爪の斬撃を躱してバルディンが空中に舞う。
それを追わずに、バルドが夜空に舞い上がり、疾風となって消えた。
「バルド!‥‥‥おいっ、どういうことだ!?「忘れ物」ってまさか‥」
バルドが言っていた「人間」か。
空中のバルディンが鼻の先でせせら笑いマーティスを見下ろした。
「ベネディ、バニス、アティス」
全て、吸血鬼による殺戮があった街の名前。
「そしてノウエルの街、襲ったのは僕一人じゃないって事さ。ハハハッ」
腹を捩って哄笑するバルディンの声が、広い洞窟内の隅々に行き渡り、
闇に眠る鬱蒼とした森にも木霊が響いた。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ツヅキマス 次で最後です
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