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洋画「夕ラテガ・十イツ」 主人公&ライバル

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                     | まだ日本公開されてないけど、先日機内で観て
                    | 禿ワロ&思わず萌えちゃった…
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 思わず輸入DVDも買っちゃった…
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 190cmゴエノ オッサンタチノ ホントニ アホナ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) ジコマンゾクss デス…
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※それほど大したネタバレはしてないと思いますが、
 公開前に余計な前情報は仕入れたくない、という方はスルーお願いします※

確かに、彼らナスカーのドライバーにとって、"スピード"というものは必要不可欠だ。
なにしろその"スピード"こそが彼らの商売道具なのであって、彼ら自身のみならず
彼らの愛する者達の生活をも潤す日々の糧の源となっているのだから。
もちろん、速ければ速いほどいい。
かといって、こんな"スピード"は求めていない。

"俺こそ世界一のスピード"を公言してはばからないリッキ一・ボビ一の目の前に、
一目見るなり回れ右してお帰り願いたくなるような男がすまし顔で立っていた。
白い手袋に覆われた左手で白い携帯電話を上品につまみ、左耳に押し当てている。
小指が立っていた。
光沢のある白いスーツが不気味な光を放ち、一見すると玄関先のポーチに
ぼんやりと白く浮かび上がるゴーストのようにも見える。
脊髄反射でドアを閉めようとしたリッキ一を遮るようにして、
目の前の男がいかにも嬉しそうに前歯を剥き出した。
「早かったでしょう、リッキ一・ボビ一」
男の口の動きと全く同時にして、耳に押し当てていた子機から得意げなフランス語訛りが響き渡った。
続いて、携帯電話を持っていないほうの白い手袋を差し出される。
突如けたたましい音を立ててがなり始めた電話を取ってから、ものの20秒後の出来事だ。

「何の用だ」
「言うまでもない事です。親交を深めるために遠路はるばる」
「冗談じゃない。なんで家の番号を知ってるんだ?帰れよ」
閉めようとしたドアの隙間にさっと白い靴が差し込まれる。
力任せにドアを閉めると、甲高い声がぎゃっと非難めいた悲鳴を上げた。
「ひどい!これが鎬を削って互いの力を確かめ合ったライバルにする事ですか。
あなたに会うためにパリから9時間もかけて来たのに…」
白い手袋がドアと壁の隙間にがっちりと食い込んでこじ開けようとし、
リッキ一の方でもそれに負けじと取っ手をつかんで踏ん張った。
ドアを隔てて押せや引けやの格闘がしばしの間繰り広げられたが、じきにリッキ一自慢の
木製のドアから不審な軋み音がし始めた頃合で、引っ張り合いは休戦となった。

「帰れこのクレープ野郎」
「帰りませんよ。クレープがフランスのお菓子だと知らずにモリモリ食べていたくせに」
リッキ一の喉仏がぐいと動き、それと付随していかにも苦々しげな唸り声がうめいた。
「あんなの、ただの薄いパンケーキだ。
貧乏だからあんな薄いパンケーキしか焼けないんだ、可哀想に」
「いい加減認めたらどうですか。大好物のくせに」
「うるさいぞお前」
「なんなら私が作ってあげましょうか。私のクレープは絶品だと評判です」
手にした携帯電話をフライパンに見立てて空想上のクレープを焼き始めた白い男に構わず
ドアを閉めようとすると、男はあわてて薄く開いたドアの隙間に手を突っ込んだ。

隙間から鋭く睨みつけるリッキ一の片目を目ざとく見つけ、いかにも愛想の良さそうな
笑みを浮かべてドアの隙間に顔を密着させる。
至近距離の片目同士が睨み合う。

「あなたが私の別荘にいらっしゃった時は、私はちゃんと紳士的にふるまってあなたをエスコートしましたよ」
「何が紳士だ、勃起してたくせに。それに俺の腕も折ったろ。人の腕を平然と折る紳士なんかいるか」
「勃起は生理現象です。あなたの腕の件は、確かにやりすぎたかもしれません。
でもあなたがそうしろと言ったんですよ。それに私の国をひどく侮辱しました」
「お前だってアメリカを小馬鹿にしてるくせに」
小さな隙間から人差し指をつきつけてやると、白い男は眼前につきだされた指に
吸いついてやろうと素早く顔を近づけた。
あわてて手を引っ込めたリッキ一に対して、白い男の甲高い高笑いが浴びせかけられる。
スランプ中に何度も耳にした、なんとも耳に障る高笑いだ。
この男が活躍し出してからというもの、TVのみならず今ではレーシングゲームにさえ
この男の高笑いがはびこっている。
ゲームに負けた瞬間この男の高笑いが大音量で襲いかかってきた時には、
矢も盾もたまらずゲーム画面を破壊して回ったものだ。

青筋も露わに改めて玄関先の白い男を睨みつけると、男はいかにも不似合いな
小娘ぶった仕草で小首をかしげてみせた。
「……で、いつになったら帰るんだ」
「用件も言わせてくれないのに、帰るに帰れないですよ」
ドアにかけられた白い手袋がおだてるようにドアを優しく叩く。
噛みついてやろうかとも思ったが、かえって相手を喜ばせてしまいそうだと危惧して思いとどまった。
結局、大人げない意地の張り合いは白ずくめの男が勝利した。
ドアと壁の間の小さな隙間が開いてゆくにつれ、白男の得意げな顔が露わになってゆく。
リッキ一の険しい表情がますます険しくなった。
「クレープなんか、もう二度と食わないぞ。絶対だ。あんな薄いパンケーキの出来損ない」
「"おいしいクレープを作ってください"と泣いて私の足元にすがりつくあなたの姿が目に浮かびますよ」
その後およそ12分間に渡って、再び大人げない攻防戦が繰り広げられた。

ボビ一家の戸口に立ってからおよそ30分後、ようやく白ずくめの男――ジ一ン・ジラ一ド――は
リビングのソファに腰を落ち着ける事ができた。
白い手袋を勿体ぶって脱ぎ、小さくたたんで白スーツのポケットに忍ばせている。
「ダージリン、もしくはウバ……それらがなければアールグレイをお願いします」
「そんな銘柄のビールは置いてねえよ。あるもんで我慢しろ」
目を見張るジラ一ドの目の前に、リッキ一は憮然とした表情で缶ビールを差し出した。
「どちらかと言えば私はワインが好みです」
「嫌ならクレープでも食ってろよ」
リッキ一が勢いよくプルタブを引くと、小気味いい発砲音と共に泡が溢れた。
釈然としない表情で缶ビールを見つめているジラ一ドの真向かいに腰を下ろし、挑発するように首をかしげる。
結局手をつけないまま缶ビールをテーブルに置き、ジラ一ドは大真面目な顔をしてひとつ空咳をした。
「さて、用件ですが」
「もう一度勝負したいってんなら、受けて立つぜ。今度こそ俺の圧勝だ。
スタートと同時に、ヒュン!もうお前の視界に俺はいない」
"ヒュン!"の声と同時に天空へ滑らせたリッキ一の手を目で追いながら、ジラ一ドはゆっくりと首を振った。

「もちろんそれも近いうちにお願いしたいですが、それとはまた別に用件があります」
手に持った缶を手持ち無沙汰にぶらぶらさせているリッキ一の手に、ジラ一ドのいやに熱い手が重ねられた。
なんだか嫌な予感と怖気がして手を引いたが、ジラ一ドは意に介さず宙に浮いた手を
小芝居めいた動きで胸にあてる。
やっぱりこいつを家に入れたのは大失敗だった、とリッキ一は人知れず心中で呟いた。

「覚えていますか、リッキ一……リッキ一と呼んでも?」
「嫌だ」
「リッキ一……あの日、私は戦慄を覚えました。あの日の……忘れがたいあの日の熱いキス!」
そこで感極まった様子で目を閉じるジラ一ドとは対照的に、リッキ一は尚いっそう表情を険しくした。
急にビールがまずくなったような気がして、そっと缶をテーブルに置く。
しばらく目を閉じたまま胸を押さえていたジラ一ドは、やがてゆっくりと息を吐いてから
うっとりとリッキ一の目を見つめた。
「あんな……あんなレースをした後であんなキスをするなんて、あなたはずるい人だ」
「吐き気がしてきた。悪酔いしたかな」
「思い出すだけで胸が熱くなって……ふと気がつくと勃起している私がいます」
「いちいち勃起してんじゃねえよ!気持ち悪いな」
「心配しないで。以前も言いましたが、"これ"はあなたには何もしませんよ。
私に似て紳士的ですからね……少なくとも、今のところは」
意味ありげな目線を送るジラ一ドに言いようのない寒気を感じ、
リッキ一は部屋のエアコンのスイッチを入れた。

「風邪ですか?こんなに暖かいのに」
「あのな、あれはその……言うなれば、お前に対する餞別だよ。そう、俺に負けちゃって
ミジメで可哀想だったし、それなりにいいレースだったから気分も良かったし、
だからお前に対する同情心とか、まあ、そういうのだ。嫌な勘違いをすんなよ」
「あの熱いキスが?まさか。この逞しい腕で私を押し倒さんがばかりに抱き締めていたのに」

また過ぎたる過去に思いをはせているのか、ジラ一ドはうっとりと目を閉じて胸に手を当てた。
「……で、何なんだよ。"俺のキスが良かった"って事を伝えるためだけに来たってんなら、
帰るついでにすれ違う人間みんなに宣伝してくれよ。女限定で」
「むろんそれだけを伝えに来たわけではありません。それに率直に申し上げれば、
テクニックという点に関して言えば、それほど……。
私はこれを伝えに来たのです。こう言えばあなたにもわかりやすいでしょうか?
"愛してるぜ、相棒!"」
ご丁寧にも最後の台詞をアメリカ英語の発音で―――決めたつもりなのだろうが、
やはり大部分はフランス語訛りにしか聞こえなかった―――ジラ一ドはリッキ一達の口調を真似てみせた。

「そう、私は恋に落ちました。夫の隣で眠っていても、見るのはあなたの夢ばかり……
おかげでストックホルムで犬や猫たちのためのカフェを経営するという夫夫共通の夢は崩れ去りました」
「ちょっと待て、じゃああんたの旦那の……なんだ、グリズリ一とかいう奴は?」
「グレゴリ一です。……彼は理解してくれました。ああ……グレゴリ一……愛しいグレゴリ一」
沈痛な面持ちで胸を押さえるジラ一ドに、リッキ一はなすすべもなく肩をすくめた。
缶に少し残っていたビールを喉に流し込み、胸の悪い気分を一掃しようと試みたが、
むしろぬるいビールは胸焼けじみた胸悪さをよりいっそう悪化させるだけにとどまった。

「あのレース……久しぶりに私を奮い立たせ、燃え立たせたあの熱いレース……!
あの大クラッシュの後、共に汗を散らしながら走ったあの高揚感……!
あなたは宣言どおり、私を破ってくれました……そして……そして興奮が
最骨頂にのぼり詰めると同時に私の唇に押し付けられた、あなたの熱い唇……!
汗濡れのあなたの匂いに包まれて、私は気が遠くなるような興奮を……」

「ひとついいか?」
リッキ一が釘を刺す。
「まさかその……イッてはいないよな?」
「幸運な事に、パンツは濡れていませんでした。しかし私は、肉体的にも精神的にも
これ以上ないというほどの高揚感を味わいました」
「それを聞いて少しだけ安心したよ」
ジラ一ドの熱い両手がリッキ一の手を握る。
"紳士的"と自身が称するだけあって、その手付きは異様なほどソフトだった。
むしろあまりにもソフトすぎて気持ち悪いくらいだ。

「私にも故郷があります。こちらに住まいを構えるとしても、今すぐには難しいでしょう。
それに、あなたがまだ私に恋していないという事も理解しています」
「そう、残念だけどこれから先も恋する事はないと思うよ」
「私はしつこい」
ソフトなジラ一ドの手付きに少しだけ力がこもる。決意表明に際して力んでいるのだろうか。
いたずらをする子供をたしなめる母親のような仕草で
―――とはいえ力の強さは母親のそれと比べるでもないが―――
ジラ一ドに握られていない方の手でジラ一ドの手を何度も叩いた。
少しも動じる気配もない。
「それに私は魅力的だ」
ジラ一ドが微笑むとき特有の、前歯がぐいっと剥き出しになる表情が現れた。
己の魅力を確信している自信に満ち溢れた表情だ。リッキ一の大嫌いな表情でもあった。
ホワイトニングしすぎな真っ白い歯の輝きも不愉快極まりなかった。

「絶対にいつかあなたは私に恋をします」
「残念だけど永遠にないよ」
叩きすぎてピンク色になっているジラ一ドの手がようやく離れ、恨みがましげな目がリッキ一を睨んだ。
痛いのを我慢していたようだ。
「いいえ、します。甘くとろけるクレープのように、あなたの心をつかんで離さなくなりますよ」
「いい加減にしないと、クレープの具にして犬に食わせるからな」
叩かれ続けてピンクになった手の甲をさすりながら立ち上がり、ジラ一ドは不敵に微笑んだ。

前歯を剥き出しにして喜ぶ表情とは違う、また別の意味でむかつく表情だ。

「あなたも疲れているでしょうから、今日のところは帰ろうと思います。想いも伝えましたから」
ジラ一ドの言葉に飛び上がらんがばかりの晴れやかな表情を浮かべたリッキ一の目の前に、
素早く白い手袋を付け終えた手が差し出される。
反射的にそれを握ろうとしたリッキ一の鼻先で、人差し指が挑発するようにチッチと左右に揺れた。
なんとも神経を逆立てするのがうまい男だ。

「でも一つだけ。それが済めばすぐ帰ります」
白い手袋を付けた手がそっとリッキ一の腰に回され、間近に迫るジラ一ドの
いけすかない顔がふふんと笑った。
反して、リッキ一はジラ一ドの眼前でいかにも不愉快げに顔をしかめた。
「そうそう、これは些細な事ですが、もう一つありました」
以前もそうしたように自身の鼻先をリッキ一の鼻先に擦りつけ、片頬を吊り上げる。
リッキ一はしかめ面でジラ一ドの鼻を押し返した。

「あなたとのキスなら、私は首を曲げずに済みます」
「はあ?」
「憧れていたんです。背伸びをしてのキスに……それがこの身長のおかげで、
背伸びをするのはいつも私のパートナー。グレゴリ一もそうでした。
背伸びをして私の唇に吸いつこうとする姿はとても愛らしい、でも私だって
背伸びをしてパートナーの首にしがみついてみたいんです。
あなたとなら、背伸びとまではいかなくても、首を曲げる必要がない」
確かにこうして二人並んで立つと、ちょうど同じぐらいの背丈だった。
リッキ一にはそれがいまいち気に入らず、心持ち爪先立ちになる。
ジラ一ドはそれに対してはっと目を見張り、次いでうっとりした目でリッキ一を見つめた。

「首を曲げる必要がない?まさか。俺の方がずっとデカいぜ」
「……私のために背伸びを?……これなら私も背伸びができますね。なんて優しいんだ、リッキ一」
待ちに待ったキスに際しての背伸びをしてみせたジラ一ドに対して、リッキ一はあわてて対抗した。

「おい馬鹿っ、卑怯者!背伸びすんなよ」
「リッキ一、私のためにこんな演出を……もしやすでに、あなたは……私を」
「俺のほうがデカいんだから!無理して背伸びしてんじゃねえよ!」

その後およそ4分間に渡って、彼らは互いに抱き合いながら爪先立ちになって部屋中をふらつき回った。
最後にようやく軽いキスをして、満足した白い男が去る頃には、既に夜中の3時を回っていた。
結局、リッキ一は明日の朝、ろくに眠れぬままナスカーレースに駆り出されるはめとなった。

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                     | 本編の愛すべきアホさ加減がうまく表現できなかったorz
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 二人して図体でかくてアホで密着しすぎな二人が可愛すぎる!
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 | | |□ STOP.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ オソマツサマデシタ
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※作品中、クレープをバカにするような表現が出てきますが原作の雰囲気に似せる名目です※
※私自身はクレープ大大大好きですとも!ノシ※


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