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ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/第/三/の/書/ 冒険者×ヴァンパイア10

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                     | ル/ナ/テ/ィ/ッ/ク/ド/ー/ン/前途シリーズ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| より、冒険者×ヴァンパイアです
 | |                | |             \十回目です。まだ続くorzゴメンネ
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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「聞きましたか?ロウッドさん」
「何がだ?」
ロウッドが酒場でヴァンパイアとともに飲んでいたときだった。
一人の冒険者が、ロウッドを見つけて話しかけてきた。
以前、ヴァンパイアと出会う前、何度か護衛で世話をした人だった。
つれているのがヴァンパイアだとは気づかず、話を続けた。
ヴァンパイアは、目深にフードをかぶって耳をそばだてている。
「夕闇の町の、竜の谷にムシュフシュLv3が現れたそうですよ」
「Lv3」
「そう、Lv1、Lv2はどうにか倒されたんですけど、それよりもっと強いのが現れたとかで、冒険者も兵士も次々に倒れてるみたいなんですよ」
「君は行かないのか」
「勘弁してくださいよ、ロウッドさんですら倒せるかわからないのに。そうそう、最近私に子供ができたんですよ。そいつのためにもまだ死ねませんよ」
 冒険者は、笑いながらムシュフシュのことについて、そして自分のことについて語り始めた。
それに対しロウッドは、何か考え込んだ様子で、話を続ける。
「子供か、おめでとう。しかしムシュフシュか…二人だときついものがあるな」
「そういえばいつもお一人でしたよね、そちらの方は?」
ヴァンパイアは黙った。そしてちらりと目を冒険者に向ける。
一瞬見えたその顔に、冒険者は胸が高鳴るのを感じた。
「や…きれいな方ですな、奥様ですか?」
「いや、男だ。俺と最近旅している。こう見えて結構強いんだぞ」
冒険者は驚いたようで、深々とお辞儀をしながら、ヴァンパイアに謝った。
「あ、それは失礼いたしました。いいパートナーなんですねぇ」
「まあな」
「では、私はそろそろ馬車の時間なので。またあたらお話しましょう」
冒険者は手を振ると、酒場を出て行った。
残されたヴァンパイアとロウッドは、会話はせず、ただロウッドが黙り込んでいた。
「ロウッド…、ムシュフシュは強いぞ?」
先に口を開いたのはヴァンパイアだった。
「知ってるのか、レイン」
「ああ。ムシュフシュのいる竜の谷には行った事があるからな」
ロウッドと出会うずっと前。もしかしたらロウッドは生まれてなかったかもしれない。

光を避けて、いい場所がないか探していたとき、他のヴァンパイアに誘われたのがそこだった。
自分の何十倍もあろうかというムシュフシュがそこにはいて、大変驚いたのを覚えている。地方最強モンスターと呼ばれるだけある大きさと強さ。
思わず身震いしたのを覚えている。
 結局どこかの冒険者の団体によって倒され、ヴァンパイアたちは居場所を変えるほかなかった。というのも、ムシュフシュが死んだと同時に、ダンジョンが崩れてきたからだ。
そしてなくなったと思われたダンジョンが、復活した。
 ヴァンパイアは、そんな危険は冒す必要はないと思った。
あのときですら、六人で挑んで、何人かが死んでいた。
正義感もあるロウッドのことだ、夕闇の町を救いたいと考えているだろう。
「レイン、俺はムシュフシュを…」
「だめだ」
「何故だ?」
ヴァンパイアは、エールを一気に飲み干すと、変わらぬ顔つきで言った。
「ムシュフシュは強い。ただのムシュフシュならともかく、さらに強いとなれば、私たちでは倒せない。兵士に任せておけばいい」
言っておくが、と、ヴァンパイアは鋭い目つきでロウッドを見た。
「私よりもよっぽど強いぞ、ムシュフシュは」
「わかってる。だが、夕闇の街は俺の故郷でもあるんだ」
初耳だった。いつもは都市を住居にしているから、都市が故郷なのかと思っていた。
「それでも…だめだ。…後の話は家で話さないか」
「?ああ、かまわないが…」
二人は酒場を出た。
夜道を歩いて、家路に着く。
その間も、ヴァンパイアは黙ったままだった。

家についてドアを開けたとき、突然ヴァンパイアはロウッドに後ろから抱きついた。
 酔っ払っているという気配はなく、ただ黙って抱きついていた。
「どうした?」
「…私は…」
だがその先の言葉はつむがれなかった。
「入ろうぜ、外は寒い」
十二月だった。雪がちらほらと降ってきた。
うなずいて、ヴァンパイアも中に入る。

テーブルの前に座って、酒を注がれながら、ヴァンパイアはうつむいたままだった。心なしか、顔色が悪い。
「血がほしいのか?」
ロウッドは言った。
「違う」
ヴァンパイアがすぐに言葉を返す。
「私は…私が怖いのは…」
「うん」
「お前がいなくなることだ…」
 ヴァンパイアの手は震えていた。
それほどまでに強いモンスターに挑もうとしているのだから、死と隣り合わせなのは確実だった。
自分はいい。自分は、死んでも蘇るからいい。たとえ何年間かけても。蘇るから。もしも、ロウッドが死んだら?
そう思って身震いをした。
 それでなくても怪我の多いロウッドなのに、死なんてものは身近にありすぎて、ヴァンパイアは嫌だった。
「心配ありがとさん。でもそんなへましねぇよ」
ぐりぐりと頭をなでてやる。でも、ヴァンパイアは真剣だった。
「お前は自信過剰なころがある!本当に死んだらどうするつもりだ、私をおいていくのか!」
「お前…」
「だから私は反対しているのだ、お前があんな化け物にかなうはずがない!!たとえ私を連れていても、私はお前を守りきれない!!」
「…わかったよ、わかった。ムシュフシュなんて倒しにいかねぇよ」
ヴァンパイアは、知らず知らずのうちに涙がでていた。
そんなヴァンパイアに、頬を寄せる。
「本当か?」
「ああ」
「なら…いい」
ロウッドは、ヴァンパイアの頬に軽くキスすると、笑った。
「ありがとな」
「…」

それから、夕闇の町を通って、ほかの町へ行くことがしばしばあった。いったん夕闇の町に入ると、ロウッドの表情は曇った。
 天を見上げてみれば、暗雲が立ち込めている。ムシュフシュは、まだ健在なのだ。
ヴァンパイアから見れば、今すぐにでもムシュフシュ討伐に行きたいといった様子だった。
 ギルドに入ると、いろんな依頼が出されていた。
探索、捜索、討伐、退治、護衛、宅配。
「レイン、見ろよ。スフィンクスの討伐依頼が出てるぜ。受けてみるか」
「え、だが宅配は。引き受けたじゃないか」
別の町で、暗殺ついでに宅配をいくつか引き受けたのを、レインは指摘した。
「まだ時間があるって。な!盗賊の隠れ家」
「仕方ない…、お前ほどなら大丈夫だとは思うが…」
何せヴァンパイアを負かした男だ。
スフィンクス一体くらいどうってことはないだろう。
「ギルドの親父、引き受けるぜ、この依頼」
「おお、討伐以来ですね、助かります。ロウッドさんならきっと成功させてくださるでしょう。任せましたよ」
元締めは大喜びで依頼を任せた。
この町でも、ロウッドは有名らしい。
ロウッドは基本的に依頼に関して雑食だ。
 基本は悪人だが、殺しの依頼を引き受けたと思ったら、救出の依頼を引き受ける。
向かってる先が同じなら、そして戻る予定があるのなら、宅配や護衛、逃亡だって気軽に引き受ける。
一部では何でも屋のロウッドと呼ばれているみたいだが、本人は至って気にしていないみたいだ。
「レイン、道具屋行こうぜ」
「あ、ああ…」
久々の討伐かダンジョンもぐりが楽しみなのか、ご機嫌の様子で、ヴァンパイアの腕を引っ張って道具屋へと向かった。

「…いやな予感がする」
ダンジョンに入っての、ヴァンパイアの第一声だった。
「おいおい、そういうことは言うなよ、なんかあったらヤだろ」
「そうだが…戦闘では気をつけてくれ」
ヴァンパイアは、入り組み、ところどころにトラップの仕掛けられたダンジョンを進んでいった。

たまにグールなどを殺していると、自分の仲間を殺しているような気分になる。
自分もこの死体たちと同類なのかもしれない。
 ちら、とロウッドを見やる。
彼は人間と同じように、自分を愛してくれた。
ならば自分は、死体たちとは同類ではないのだろう。
 ヴァンパイアは、精霊の槍をぐっと持つと、グールの頭をかちわった。
グールの攻撃は軽いステップでかわす。
その反動で、グールの胸を貫いた。
「レイン、うまくなってきたじゃねぇか」
「…甘く見ないでもらおうか」
こうしてグールやマミーなどのアンデッド軍を蹴散らし、トラップを避けながら、最深部にたどり着いた。
 そこには巨大な体をした、金色のスフィンクスがいた。
寝そべった体を起こし、ギラリとこちらをにらみつける。
「人間か…。人間の力、見せてもらうぞ…」
スフィンクスは、言った。
堀の深い女の顔立ちが、怒りに変わり、鋭いつめがヴァンパイアを襲う。
ヴァンパイアは、わき腹を引っかかれたが、大事になる前によけた。
ぱっと、血煙が舞う。
今度は、ヴァンパイアが精霊の槍を振るった。
スフィンクスの足を貫通する。スフィンクス動じることはせず、目を閉じてその場にいるだけである。
「ほほう、なかなかやるではないか…」
次にロウッドの鞭がしなる。
斜めに、スフィンクスの堀の深い顔に傷が入り、同時に体力を吸収した。
顔から血が滴り落ちる。
それを見て激高したのか、ロウッドを狙って鋭いつめが繰り出された。
「うおっ!!」
「ロウッド!!」
ロウッドが弾き飛ばされる。そのつめの威力はなかなかのものであった。
ロウッドの首と頬に、深い傷が作られる。だら、と、血が流れ出てきた。
「って、油断した、レイン、攻撃続けてくれ」
 心配するヴァンパイアをよそに、重いよろいをものともせず、起き上がった。

大したダメージにはならなかったらしい。それでも首元と頬から流れ出る血は、ヴァンパイアを焦らせた。
「わ、わかった!」
 ヴァンパイアは、今度はスフィンクスの硬い胸を貫いた。引き抜くと、ゴポっと音を立ててスフィンクスの血が床を汚した。
ついで、よろよろと立ち上がったロウッドの鞭が炸裂する。
長い鞭は、しかしスフィンクスに避けられて、届かなかった。
「ちっ」
「ロウッド、これを使え」
そういったヴァンパイアから手渡されたものは、キュアパウダーだった。
「悪いな」
粉を、傷に塗りこむと、血は止まった。止血剤である。
「首、狙うぞ」
「おう」
二人はスフィンクスの首めがけ、武器を振り下ろした。

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