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飛父飛 寸×おさん

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                     |  飛父飛 寸心×おっさんだモナー。今回で3作目だモナ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  あまりにも長くなったので、前後編にわけたカラナ
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 原作未読のため、映画設定のみだゴルァ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 原作好きの方は注意してください。
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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ずっと一人だった。
仲間が支えになってくれたけど、心のどこかで俺は一人だった。
誰も傷付けたくない。誰にも傷付きたくない。
生まれた時から決まっていた人生だ。
自分の身を守る事が精一杯で、人と深く付き合う事を恐れていた。

初めて会った時は、頭の悪いおっさんだと思った。
3日も続くわけないと思った。
言っている事は立派だけど、俺は嫌というほど知っていたから。
ヒーローなんていつまでたっても来ないって事。
ずっと待ってたんだ。俺を救ってくれるヒーローを。
アホらしい。そんなものはどこにも居なかった。誰も俺を救ってくれはしなかった。
そんなもの待っていたって無駄だ。俺は自分を守るために強くなる事を決めた。
だけどおっさんは来た。
2日目も来た。
1週間続いた時は、頭がおかしいんだと思った。
2週間目には、期待しはじめるようになった。
もしかしたらこのおっさんは最後までやる気なんじゃないか。
もしかしたらこのおっさんは、俺がずっと待っていた…
朝起きると少し不安になるようになった。
今日こそ待っていても来ないんじゃないか、ずっと一人なんじゃないか。
だけどおっさんは来た。毎日約束の5分前にちゃんと来た。
おっさんは家族には内緒で特訓に来ているからいつもここに来てからモニュメントの裏でジャージに着替える。
ジャージに着替えたら身体測定をする。
最初は怯えながら測られていたおっさんも慣れてくると自分から体重計に乗って手をあげるようになった。
どんどん数値の上がる胸囲。ひきしまっていく胴囲。腰囲…は測る意味があったのかわからないけど
屍図の奴らが絶対測れっつーから…。

おっさんは面白いように強くなっていった。娘への思いが強いからだろう。
そういえば、1回約束の30分前に来た事があった。
「あれっい、居る…いつも寸心君が先に居るから今日こそ待ってようと思ったのになぁ…いつ来てるの?」
「いいんだよおっさんは時間通りで。……早く来られても迷惑だから来んな。」
そんなおっさんを見ていたら、3週間目には不安も無くなっていた。
俺はおっさんを信じるようになっていた。
何があっても諦めない、娘の為にヒーローになろうとしているこのおっさんを。
もしかしたら俺がずっと待っていたかもしれないその存在を。
ある日誤解からおっさんに不満をぶつけられた。
真っ向から意見を返すと、おっさんはひどく傷付いた顔をしていた。
だけど、もう来ないかもしれないとは思わなかった。おっさんは来る。このおっさんは、必ず来る。
その日おっさんが俺の為にと買ってきてくれたスニーカー…おっさん曰く「運動靴」は、
山下が自分の物にしようとした所をミナカタが奪って俺に押しつけてきた。
うっとうしくて手で払ったら、「す~ん心!わかってるでしょ?」とか言いながらまた押しつけてきた。
家に帰って開けてみると、それは夕陽色に染まった綺麗なスニーカーだった。
…正直、嬉しかった。ものすごく嬉しかった。
俺がそのスニーカーを笑顔で試し履きしたのは、愛犬のアチョーしか知らない。
次の日、やっぱり約束の5分前におっさんはちゃんと来たのだった。
どんどん積み上がっていく石。回数の増えていくストレッチ。最後まで登れるようになった石段。
とうとう辿り着いた木の上。
俺は初めて逢った時から期待していたのかもしれない。こうなる事を。
だからここを特訓の場所に選んだのかもしれない。ずっと見せたかったんだ。この景色を。
木の上から見える景色はとても綺麗で、おっさんが登り切った時はちょうど夕陽の時間帯だったから
世界が赤と橙と紫とで染まっていた。そこから青が加わる。
俺の足元のスニーカーと同じ色の空だった。
俺はここから見える景色が好きだ。俺しか知らない景色だった。

その景色があまりに綺麗だったから、自分の話をしちまったのかな。
おっさんがあまりにも俺の心に入ってくるから、あんな事言っちまったのかな。
「敵ばかりじゃないよ。」
知ってるけど、知らなかったんだ。俺は俺を守る事で精一杯で、知らなかったんだ。
敵ばかりじゃない。そう言った目の前にいるこのおっさんは確かに俺の敵じゃなかった。
俺の周りに居る仲間達は、確かに俺の敵じゃなかった。
俺を傷付けたりしない。俺が傷付けても受け入れてくれた。わかってくれた。
知っていたのに知らなかった。俺がずっと、ずっと待っていたのは、やっぱり…
「早く強くなって俺を守ってくれよ…」
こんな事、他人に言う日が来るなんて。
おっさんは何も言わなかったけど、拳を握って答えてくれた。
わかってる。あんたは俺のもんじゃない。娘の、家族のヒーローだ。
待っていたって俺の元には来ないヒーローだ。
わかっていたんだ。
特訓最後の日。
おっさんは積み上げてきた小石の最後を俺に渡してきた。
満面の笑顔で嬉しそうに渡してくるから、なんだかすごく大事な物を貰ったような気分になった。
それはただの小石だけど、俺にとってはとても大事な小石になった。
決闘の日。またあのおっさんは俺の心を動かす事を言った。
「僕は君を信じるよ」
俺は自分を信じる事しか知らなかったから、自分だけだ、って、そう言ったのに。
人を勇気づけるだとか励ますだとかは性分じゃない。
優しい言葉なんて一言も言った事は無かった。おっさんが欲しい言葉なんてきっと何一つ。
だけどおっさんは全部わかってくれていたんだ。全部、全部ちゃんと伝わっていたんだ。
俺は何も言えなかった。
どうしてあんたはそうやって自然に、だけど唐突に、俺の心に入って来るんだよ。

決闘が終わって、おっさんを見送った後、俺の元には小石だけが残った。
だけど俺は知れたから。この世にヒーローは居るんだと。
おっさんは確かに俺のヒーローでもあったんだと思う。

感傷に浸っている暇は無かった。
仕事で一段落ついたおっさんがたまに俺達の元にやって来るようになったからだ。

ある日の事、その日は俺の誕生日だった。
誕生日なんて誰にも言った事がない。いつもと変わりない日だ。何も特別な事なんて無い。
母親は相変わらず仕事で帰りは遅いし、俺は家に帰ったって一人だった。
なのにその日、たまたまおっさんが学校にやってきた。
何も知らないおっさんはいつも通り手土産を持って来て、屍図に囲まれて振り回されていた。
そんな中、おっさんが話しかけてきた。
「寸心君!ちょっといいかな」
俺は自分の胸が高鳴るのを感じた。何喜んでんだ…。
「あのさ、やっぱり君には一度ちゃんとお礼がしたいんだ。今日、ご飯でもどう?御馳走するよ。」
山下が「俺達もすーさんの為に色々してやったんですけどォ?!」と文句を言ってミナカタに叩かれている。
ミナカタが俺に断るなとでも言いたげな目線を向ける。
いつもなら断っていただろう。
俺は家で一人で飯を食う寂しさをよく知っているから。
飯は家で食うもんだと言って追い返していただろう。
でもなんだか、誕生日プレゼントでも貰ったような気分になっていたかもしれない。
こんな我が儘は今日だけだから、と自分に言い訳して、心の中で家族の人に謝って、
俺はおっさんと飯を食いに行く事にした。

何が食べたいかと聞かれたからファミレスを指定した。
おっさんに任せたらこじゃれた高そうな店にでも連れて行かれそうだったから。
向かい合って座った途端になんだかおかしくなって笑っちまった。
おっさんもつられて笑う。
「良かった!嫌々来てるかなってちょっと思ったから。」
「…嫌な所には行かねーよ。」
おっさんは嬉しそうにいろんな話をしてきた。
人と晩飯を食うなんて、何年ぶりだっけ?
ファミレスだから周りは家族連れが多い。本当なら俺は今頃家で一人で飯を食っていたはずだ。
なのに今俺の目の前にはおっさんが居る。
その事実がなんだかものすごく嬉しかった。
出来ることなら少しでも長く、このまま一緒に居たい。
…今日だけでいいんだ。
俺達はもう話す事が無くてくだらない話になるまでファミレスに居た。

「寸心君、もう今日は…結構夜遅いよ。帰らなくていいいの?」
「帰りたいかよおっさん。」
「そんな事ないよ!こうして寸心君がずっと一緒に居てくれるの初めてだから、嬉しいよ。
でも、寸心君のお家の人が心…」
「…いいから、一緒に居ろよ。」
おっさんが驚いた顔をするのを一瞬見て、目を伏せた。
とても目を見て話せる事じゃなかった。
「うん、じゃあちょっと家に電話してくるね。」
おっさんは携帯を取り出すと、外に出ていった。
…まじで言っちまった…俺は顔を覆った。
電話を終えて帰ってきたおっさんは、そろそろここは出ようか、と言った。

俺達は特訓に使っていた公園に来ていた。夜の海は真っ暗でどこか恐かったけど、
遠くに見える街の明かりがキラキラしていて綺麗だった。
芝生に座ると、しばらく心地のいい沈黙が続いた。
「…寸心君、なんかあった?僕で良かったら話を聞くよ。」
「…なんもねぇよ。」
じゃあ何故今こうしているのか、おっさんは不思議なんだろう。
俺が思っている事なんか、考えもつかないんだろ…。
「……おっさん、家族にはなんて言った?」
「ん?寸心君と居るよ、遅くなるから先に寝てていいよって」
「そうか…悪い事したよな…」
「いいよ。たまにお父さん居ないのも楽しいんだよ女の人たちって。寂しいけどね~」
そんなもんなのかな。俺にはよくわからないけど。
「おっさん…終電無いだろ?この後俺がすぐじゃあなって言ったらどうするんだ?」
「ん?大丈夫、ホテルでも泊まるよ。」
「…俺も行っちゃ駄目か」
「え?」
「ホテル」
「え?!…あ、あ、うん。いいけど…なあに?本当に何かあったんじゃないの?」
「…………誕生日だから…今日」
こんな我が儘を言うのは本当に初めてだったから。
手が、震えた。
「そうなの!?もっと早く言ってよ~!!何も用意してないよ~!」
「別に何もいらねぇよ。そういう事になると思ったから…言うつもりも無かったし。」
ただおっさんがあんまり不安そうだから…俺、ずるいな。
俺とおっさんは近くのビジネスホテルに泊まる事になった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  早々に後編を投下予定です。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )  よろしくお願いします。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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