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寄宿舎もの

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                     |  ギムナジウムぽいものでオリジナルです。
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夏の寄宿舎は、暑い。
蜘蛛の巣に朝露の水滴が煌いている。蜘蛛は中央で丸まって動かない。
少年たちは、乾ききった土に水を振り撒く事で涼を得ようとしていた。
湿った臭いがあたりに漂い、陽炎のようなゆらめきが一瞬立ち上がる。
「ぼうっとしているなよ、カイル。暑いんだから」
「……ああ、」
ひとつ年上のブライアンは、手を翳して空を見上げていたカイルを、邪魔だと言わんばかりに肘で小突いてきた。その足元に、ばしゃん、と水が掛かる。
「おい! 気をつけろよ!」
ブライアンは気が短い。
夏の空気に輝くブロンドの微かな乱反射にカイルは眼を細めた。
「スーはどうした?」
「さあ。いつものようにまだ寝てんじゃないのか」
「ブルネットにはこの太陽はきついんだろ」
黒い紙はよく燃えるじゃないか、とレジーは嘲った。カイルは舌打ちをして寄宿舎の窓を見上げる。
水をかけただのかけていないだのと騒ぎ始める4・5人の少年は、皆明るい蜂蜜色の髪をしていた。カイルの髪も少しオレンジの入ったブロンドだ。
と、3階の列、整然と並ぶ窓のひとつに人影が見えた。
「何だ、起きてるじゃないか」
ブライアンはそう独りごちて、口元に手をあてがい声を張り上げた。
「おおい! 降りてこいよ!」
そうだ、遅いぞ、と周りもはやしたてる。カイルは黙って見ている。陽炎がまた立ち昇る。暑さが身体にまとわりついて、やけに重く感じる。まるで下へ下へと引っ張られているようだ。
転がすような音がして、立て付けが古くなった窓をスーが開けた。
「スー!」
「お前も降りて来いよ!」
開けたが、そこから動かずにスーはこちらを見下ろした。
そして一言、言う。
「嫌だ」
それだけ言うと、さっと身を翻して窓から離れた。

「スー!? おい、スー!」
驚いたブライアンが何度呼んでも、奥に引っ込んでしまいそれっきり姿を見せない。
「何だよスーの奴!」
ブライアンが怒り出す。スーは彼の気の短さをよく知っているはずなのに。
「……スーらしく…なかったな」
カイルがぽつりと呟く。それを鋭く聞き止めて、マーシュが妙な顔をする。
「確かにな。何だろ、誰かスーを怒らせたんじゃないのか」
言いながら周囲の少年たちを見回すが、誰も肩を竦めるだけだ。
「とにかく、これは規則だろ。誰かスーを呼んで来いよ」
怒りも冷め遣らぬ、という表情で、しかしブライアンがそう提案する。いくら短気でも彼は最年長なのだ。
「カイル、行って来い」
「……いいけど」
まだ3階の窓を見上げている少年たちから離れて、カイルは重い足取りで歩き出した。
ブライアンがまだ怒っている。

ここは寄宿舎だ。
カイルと同い年か、ひとつ上か、ひとつ下の少年たちがここで暮らしている。
普段は喧しいほどなのだが、最近はすっかり也を潜めていた。
今は、長期の夏期休暇なのだ。ほとんどの少年たちは家に帰っている。
ここに残っているのは皆訳有りで帰れない少年ばかりなのだった。
無論、食事を作りに寮母などが通って来るし、時々は教師たちも彼等の様子を見に来る。だが、やはり大抵においては少年たちだけになってしまうので、色々とやることや規則も存在した。規則を破ることは許されていない。
本来なら、スーは規則を破るような少年ではない。どちらかというと、レジーやマーシュよりもずっと真面目な性格なのだ。模範的とも言えるほど。

日に晒された場所から翳っている寄宿舎の中に入ると、澱んだ空気が僅かに動く。汗が冷やされて、寒気すら感じるほどだ。

  『嫌だ』

そう言った時のスーを思い出す。寄宿舎の暗がりのなかに浮かぶ白い肌、白い顔……。周りも暗いのに、彼の黒髪は艶やかに浮かび上がっていた。
なぜブライアンは、自分でスーを呼びに行かなかったのだろう。
スーとブライアンは親しかったし、ブライアンがスーに好意を抱いていることは、少年達の眼にも明らかだったのに。スーは、……いや。確か本名は、スイ……だったはずだ。
もうずっとスーと呼んでいるので、思い出すのが少し遅れる。
……スイがブライアンをどう思っているかは、解らなかったが。

  『スーを呼んで来いよ』
  『カイル、行って来い』

ブライアンは何故、自分を指名したのだろう。――いや、あれは適当にだろう。たまたま眼についたのがカイルだったに違いない。ブライアンにとっては“自分以外が”スイを呼んでくるなら誰だって一緒の筈だ。
カイルはスイを真っ直ぐには見ない。時々ちらりと盗み見て、その面影を頭で大切に何度も反芻するだけだ。ブライアンがエスパーでないなら、これはただの偶然。
……それなのに、妙な胸の痞えが取れなかった。
寄宿舎の空気が重苦しい。
一歩一歩、歩くたびにじっとりと汗が染み出してくる。息が切れて、荒くなってくる。
2階の階段の踊り場で、カイルはいったん立ち止まった。手摺に寄りかかり、汗を拭う。
まだ2階へも行っていないのに、何故こんなに疲れるのだろう?
日射病か何かかもしれない。それなら、スイに伝言だけ頼んで部屋へ戻ろう。
カイルは再びゆっくりと階段を上がった。2階に辿り着く。
ずらりと並んだ廊下に、同じくドアが並んでいる。そのどれもが、今はほぼ無人だ。
重く深い溜息をつき、カイルは3階へと続く階段を見上げた。
――…と。
「カイル……!?」
そこに、スイがいた。

今から降りるところだったのだろうか。丁度良かった。
「ス……」
声をかけようとしたカイルは、スイの顔が酷く青ざめている事に気が付いた。
「ブライアンが、来いって言ってるけど……」
気分が悪いのだろうか? スイは青い顔色のまま、ゆくりと首を振った。
「僕は行けない」
「……? 何でだよ?」
「僕は、まだ行けない」
「スイ……?」
呼ぶと、ふとスイが顔を上げた。
「その名前……」
「うん?」
「覚えていてくれたんだね……」
「あ……まあ……」
思い出すのに、だいぶ時間がかかったが。少々気まずく思い髪をかき上げる。
「カイル……カイルは、上がって来れたんだ……」
「……? 上がってって、ここに?」
スイは固い顔で、頷く。
寄宿舎の2階が、どうだと言うのだろう? それを言うなら、自分たちは今までずっと、3階で暮らしていたではないか。
そう言おうとした時……。
窓の外から、苛立ったようなブライアンの声が聞こえた。
「カイル! スーはいたのか!?」
「おーい、降りて来いって」
レジーもマーシュも、呼んでいる。
「スイ。とにかく行ったほうがいいよ」
ひとまず返事を返そうと窓に近寄ったカイルの腕を、スイが掴んで止めた。
「!?」
しかし次の瞬間に、スイは驚いて腕を離す。いや、驚いたのはカイルも同時だった。
「スイの手……なんか、熱くないか……?」
顔も青いし、熱があるのだろうか。しかし、スイは、ゆっくりと首を振った。

「違う……カイルの腕が、冷たいんだ」
「僕の腕が?」
何を言っているのだろう。自分はいつも通りだ。
遣り取りをしている間も、外からの呼び掛けは続いている。
「スイ……ブライアン、怒ってるよ」
スイは青ざめたまま俯く。
「ブライアンと喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩……じゃない。そんなんじゃない……」
「? じゃあ何で……」
「カイル」
突然、スイが真正面からカイルを見上げてきた。
「きみはここまで来れた。それに……僕を力づくで連れて行こうとは、しない。僕は君も同じかと思っていた。まだ君達は誰も見つかっていなかったし……」
「スイ、何の話……」
「もう一週間、だ。一週間も、毎日、僕だけがいる時に皆現れて……僕を降ろそうとする。僕は気が狂いそうだった……でも上がっては来ないから、きっとこの中には来れないんだろうと思ったんだ」
「スイ?」
おかしなことを真剣な顔でとつとつと語るスイ。だけど、彼の話すその内容がカイルには理解出来ない。
スイはこの暑さで、どうにかしてしまったのだろうか。
そんな危惧に眉を寄せるカイルを、スイはまた見上げた。
「でも、君は来れた。それが、僕にはよく解らない……」
「スイ? さっきから、何を……」
「静かに。……よく、聞いて」
押されたようにカイルは口を噤む。咽に柔らかな石を詰め込まれたような沈黙。
外からの呼び掛けは続いている。
カイルは、そこで、やっと気付いた。
スイは怯えている。
何に?

「スー! 早く来いって!」
ブライアンも、レジーも、マーシュも呼びかけている。
カイルが遅いからだ。しかし、ならどうして、誰もここに来ない?

  早く来いよ!
  降りて来いよ!

呼び掛けは続いている。執拗なほどに。

  ここにこい!
  おりてこい!

何故ここに来ないのだろう。
じっとりとした汗が、額を流れた。
スイが青い顔で、震える声で言う。
「降りて来い、じゃない」
その囁きがきっかけのように、聞こえる呼びかけが、変化していく。

  ここにこい!
  おちてこい!

  おちてこい! おちてこい! おちてこい!

だんだんと身体が冷えていく。歯の根が合わなくなってくる。
呼び掛けは続いている。今はもうひとつにしか聞こえない。
「スイ……なに、これ……」
スイが身体を強張らせた。そして、ゆっくり口を開く。
「カイル……手、見て……」
ぎくしゃくと手を動かす。両手の平を、眼の前に掲げて――カイルは、愕然とした。
カイルの手は血の通いがないように青く、そして……濡れている。
手だけではない、全身が濡れそぼっている。汗ではない、異様な生臭いにおいが途端に鼻をつく。

「スイ……」
呼びかけたカイルの口からくぐもった声と共に、ごぼ、と汚れた水が溢れた。
黒い粘質的な水……泥は、ばたばたと滴り板張りの床を汚していく。
「ス…イ……!」
青ざめて叫び声を上げ、スイが逃げようとする。その手を捕らえて引いた。もがく身体を捕まえて、しがみつく。抱きすくめる。抱き締める。締める。

  おちてこい!
  おちてこい!

そうだ、水の中だ。ひどく汚れた水の中。沼だ。寄宿舎から少し離れた場所にある沼。あの時、ひとりだけいなかった。スイはいなかった。皆で遊びに行こうと言ったのに。寝込んでいたのだ。だからいなかった。だから助かった。
全員落ちた。濁った水の中に落ちた。もがいた。足掻いた。手を伸ばすと、共に溺れている少年たちの身体に当たった。彼らはしがみついてきた。掴まったら諸共に溺れてしまう。
しがみついてくる手を振り払った。振り払って、水上に上げてくれる手を捜した。だがそんなものはなかった。少年達は、皆足掻きながら溺れていった。
残った少年はひとりだった。ひとりだった。
溺れてしまう。“自分達”以外の者に掴まらないと、溺れてしまう。
カイルは夢中でスイの身体を捕まえる。スイの身体は温かい。この冷たい水の中に、汚れた水の中に浸かって冷え切った自分をも暖めてくれるだろう。その熱を逃がさないように。更に強く抱き締める。

外から復唱が聞こえる。
共に連れて来いと復唱が聞こえてくる。

  嫌だ。

スイが必死で足掻く。悲鳴を上げる。その口を唇でふさいだ。汚れた水が口を伝って、スイの中へ流れ込む。舌を絡める。逃がさないように。
いつの間にか世界は輪郭を失い、寄宿舎の中だったはずのそこは澱んだ泥水に浸されていた。
足元から膝へ、膝から腰へ、腰から胸へ、水は音を立てて溢れていく。もうそこは沼の中なのか建物の中なのかの区別もつかない。輪郭の綻びから泥は流れ込んでくる。
ずぶずぶと、水の中へ落ちていく。スイの艶やかな黒髪が水に濡れて美しく光る。揺れる。髪を撫でて、更に強く抱き締める。柔らかい、暖かい、愛しい……。

復唱は続いている。
復唱には次第に怨みの色が濃くなってくる。
スイにではない。カイルに、だ。
諸共に落ちた癖にスイを連れて来ず、こうして一人で暖かな身体を占めているカイルに。
復唱は怒りを孕んで忌む言葉に変化し、重なり重なり繰り返される。
だが、もうそれも構わない。
抱き締める。溺れていく。スイは抵抗を止めた。溺れていく。

スイの絶望に染まった眼と、ブルネット――…。

大事に……抱き締める…………抱き締めて……………………落ちた。

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 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 外人名考えるの苦手…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 意味ワカンネな話でスマソ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
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