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八ウスとウィ流ソン やおい未満

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                     | 一度やってみたかった狐CHドラマ「家」フィク  
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  八ウスとウィ流ソン、やおい未満
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 未満カヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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狐CHで放送中の海外医療ドラマ「家」の八ウスとウィ流です
前回までのエピのネタバレ含んでますから注意
受けとか攻めとかそこまで行き着いていません。中年の純情をコンセプトにしました…

 いつものあの痛み。ヴァイコディンを飲む。しばらく痛みが止む。それからまた、より
一層強くなって蘇る。さらにヴァイコディン、ヴァイコディン、多すぎるほどのヴァイコ
ディン、そして結局消えない痛み。
 俺はそういうものを毎日背中に背負って、顰め面で杖をついて病院内を歩き回っている。
痩せこけた顔、萎えた右脚、ぎょろりと剥いた目も大仰な物言いも、すべてがリチャード
3世みたいに醜悪なことを俺は知っている。シェイクスピア劇の悪役よろしく俺は毒舌を
吐き散らし、けれども真実を言い当て、医療と言う舞台の上でその役割を全うする。俺の
周りの人間はみな、俺の無遠慮な物言い、悪趣味なジョークに不快感を覚え、ある者は露
骨に、ある者は礼儀正しく俺を遠ざけようとする。ドクター・グレゴリー・八ウスはこの
病院の嫌われものなのだ。
 けれども俺は診断の際には正しいことを言える。他のぼんくらな医者たちが気づかない
患者の嘘、生活習慣、秘密を的確に探り出し、彼らを治療できる。だからどんなに俺が嫌
なやつでも、仕事のときだけは必要とされる。俺はそれを知っているから、どんなに周り
に嫌われたって気にしない。どのみち、俺自身が人間なんて大嫌いなのだ。彼らが内心俺
を嫌おうと蔑もうと構うもんか、俺だって俺みたいなやつが周囲にいたら絶対に嫌だ。
 でもウィ流ソンは違う。ウィ流ソンは俺を嫌っていない。
 何年も前、この病院に彼が就職したとき、俺ははっきり言って彼に興味なんてなかった。
ライトブラウンの柔らかそうな髪、ハンサムで人懐こそうな顔、清潔な身なり。いかにも
プレップスクール卒業の坊ちゃんという感じで、おまけにユダヤ系の医者。また一人つま
らないやつがやってきたと、内心鼻を鳴らした俺に、ウィ流ソンはにっこり笑って礼儀正
しく握手を求めながら、初めましてと言った。外見にふさわしい、優しそうな声だった。
俺は彼の右手を握り返さずに、また一人ユダヤ系の同僚が増えたのかといやみを返した。
どうせこの坊ちゃんの反応なんてせいぜい眉を顰めるだけだと思っていたら、ウィ流ソン
は涼しい顔で君はこの世界ではマイノリティなのさ、諦めろよ、ピューリタン、と囁くよ
うに――他の人間に聞こえないような声で――答えた。ユダヤ系の同僚が嫌なら別の職業
を選ぶべきだったな、と。

 この年下の同僚が、柔和な外見の下に、なかなか強かな面を持っていることは、しばら
くして嫌というほどわかった。しかもそれだけでなく彼は有能だった。ただのプライドの
高いやつかと思っていたら、病院に来て最初の頃、わからないことがあればすぐに俺に―
―絶え間なく毒舌といやみを浴びせる俺に聞いてきたし、その質問の仕方も洗練されてい
た。覚えも早くて、知らないくせに知っているふりをする他の医者に比べれば、文句のい
いようもなかった。彼は数年であれよあれよという間に、しかも周囲の反感も買わずに出
世し、腫瘍科の部長になり、俺と対等なもの言いをするようになり、けれども決して俺を
ないがしろにしようとはしなかった。彼は部長になってからも、相変わらずわからないこ
とがあれば俺に聞いてきたし、俺以外の人間にも聞いた。彼はとても誠実な医者で、患者
を助けられる人間と方法があれば、それがどんなものであれトライしてみようという姿勢
を持っていた。俺は認めたくないがそんな彼を気に入った。彼はスマートな男だった。い
つの間にか俺たちは病院内ではほとんど常に一緒に行動するようになった。ウィ流ソンは
穏やかな、けれども何を考えているのかわからない表情で、気がつけば俺の隣にいて、俺
のダーティージョークやいやみを聞き流し、時には窘めて、そして最後には周囲と俺との
間を取り盛ってくれた。
 その頃、俺の右脚はまだ健康そのものだった。俺には奇跡的なことだが、美しい恋人の
ステイシーがいたし、俺は毎日のようにスポーツを楽しんだ。ときどきはウィ流ソンを誘
って。俺は自分が変人扱いされていることはわかっていたけれど、今のように自分を醜い
とは思っていなかった。多分、俺は少しばかりうぬぼれていたのかもしれない。変人だろ
うときちがいだろうと、俺が有能で敏腕な診断医であることは確かで、美人の恋人もいて、
どんなときだろうと正しいことを言えるただ一人の人間だと自分のことを思っていたのだ
から。
 だからきっと、俺の右脚がこうなったのは、天からの裁きだったのだろう。
 

 俺は傲慢のペナルティを払った。嫌というほど払った。絶えず右脚が痛むようになった
とき、俺はあらゆる可能性を疑った。確かに、最初に俺が掛かった医者は無能だった。俺
の右脚に血栓ができていることに気づかず、適当な治療で俺を追い払った。でも俺は最初
から俺以外の医者なんて信じていなかった。ようやく血栓を発見され、右脚の切断を同僚
のカディに勧められたとき、俺はこの女は馬鹿だと思った。右脚を切断した変人なんてし
ゃれにならない。哀れすぎる。いかに有能だろうとそんなことは誰も気にとめなくなるだ
ろう。俺は別のやり方があるはずだと思い、かたくなにそれを通そうとした。その結果が
これだ。
 俺は自分の右脚に固執し、そのせいで命すら危うくなった。あのとき、朦朧としたもし
かしたら死ぬかもしれない、という予感はあった。だけど俺は自分の考えを曲げることな
どできそうになかった。何故なら正しいことを言えることだけが、俺の存在理由だから。
どんなに嫌な人間でどんなに変人だろうと、正しいことを言いさえすれば周りは振り向い
てくれるから。俺は自分が正しくなかったことを認めたくなかった。だから自分の命を犠
牲にしても、自分の考えに、治療方法に固執しようとした。血栓をなくし、すべてをなか
ったことにする治療に。多分あのままなら俺は死んでいただろう。事実俺は死に掛けた。
 けれど、ステイシーは俺が昏睡している間に、妥協策として血栓のために壊死した周囲
の筋肉を取り除く手術を行う同意書に勝手にサインした。目が覚めて俺が直面した事実は、
俺は間違い、俺は騙され、そして俺の右脚は役立たずになったということだ。俺は杖なし
では歩けなくなり、しかも一生痛みを抱えていかなければいけない。傲慢さの代償はそれ
で、俺は見るも滑稽な変人になった。脚を引きずり、口汚く周囲をののしり、痛みに耐え
続ける道化師に。醜悪で滑稽な役柄だ。
 

 ステイシーは何度も泣きながらあなたを愛しているからこうしたのと訴えた。死んでほ
しくなかったし、脚を切るのは嫌だというあなたの意思を最大限考慮したのだと。俺だっ
てそれはわかっていた。でも俺は裏切られたと思ったし、存在理由を消されたとすら思っ
た。俺の正しさを信じなかった彼女を許せなかった。そのうちに彼女は俺から離れた。俺
は前にもまして気難しくなり、辛らつになった。正しさにさらに固執するようになり、他
人を詮索し、人の秘密を暴くのがますます好きになった。真実を握っているのが俺である
限り、俺はただの滑稽な脚萎え男ではなくなったから。
 ウィ流ソン。そうだ、ウィ流ソンに話を戻そう。彼は俺の治療に関らなかったし、俺が
ステイシーと別れたときも、彼女を許すべきだと何度も言ったものの、結局最後には黙っ
て俺の親友としての役割を演じ続けてくれた。ウィ流ソンは鎮痛剤の――ヴァイコディン
の――処方箋を俺のために書き続けてくれ、俺をハンディキャップのある人間として扱わ
ず、前と同じように接し、くだらない皮肉やジョークに答えてくれた。そのうちに俺は彼
にだけは嘘をつかないことを決めた。俺にはもう仕事と彼くらいしか残っていなかったか
ら、その二つにだけは誠実であろうと決めた。馬鹿げたことかもしれないが、それぐらい
の純情は俺にも残っていた。
 「俺はいつも嘘を吐くし、すぐに他人を騙すが、君にだけは嘘は吐かない」
 いつか俺がそう言ったとき――俺にとってそれは愛の告白にも近い、勇気のいる言葉だ
った――、ウィ流ソンは眉を上げてそれはどうもと返した。そんな軽々しい反応に俺は少
し傷つき、そして同時に安堵した。誰かと深すぎる関係を結ぶのはもうごめんだった。も
しかしたらウィ流ソンは、そんな俺の内心すら見越していて、あんな態度を取ったのかも
しれないとも思い、ますます彼といることに安らぎを感じた。口で何と言おうと、普段の
彼が俺をとても気に掛けてくれていることはわかっていたから、彼にないがしろにされた
とは思わなかった。

 ウィ流ソンは俺の内面にいつも深入りしない。いつも軽口を叩き合えるような、適度な
距離をとってくれる。ウィ流ソンはとても優しい男だ。もちろん、彼は誰にでも優しい。
そしてすぐに女に惚れる。大体はブロンドの美人。一見完璧そうに見える彼は女にだけは
弱くて、何度か結婚と離婚を繰り返している。俺は彼に運命の女が未だ現れないことに少
しほっとする。でもそれが何故なのかわからずたまに不安になる。ウィ流ソンは多分それ
を知っていて、でも知らないふりをしてくれている。俺にはそれが心地いい。
 右脚の痛みがひどいとき、ヴァイコディンが効かないほど痛むとき、ウィ流ソンはいつ
もふらりと俺の側にやってくる。俺が脚が痛むとは言っていないのに、それを察したかの
ように、けれども知らない顔でやってきて、俺の隣にいてくれる。そうすると俺の痛みは
少しだけ和らぐ。彼は俺をくだらない冗談で笑わせてくれる。遠慮のない、気持ちのいい、
誠実な言葉で俺をほっとさせる。そんな人間はほかにいない。多分、俺には彼が必要なの
だと思う。ヴァイコディンよりもずっと。
 でも俺はそれを言わない。ウィ流ソンも俺にそれを言わせない。それを言わなければな
らないほど、俺たちの距離が縮まってしまったら、俺はきっとウィ流ソンの存在自体に苦
痛を感じるだろう。彼をそれくらい愛し、彼なしでいられないと認めざるを得なくなり、
彼の裏切り、ステイシーのような裏切りを耐えず恐れなければいけなくなったら、きっと
俺は彼の存在に痛みを覚え始める。それを知っているからウィ流ソンは俺と適切な距離を
保ち続けてくれる。彼はとてもスマートな男だから。
 ときどき俺は考える。この右脚の痛みは、俺が正しくなかったことの代償なのか?それ
とも傲慢さの?それともステイシーを許せなかったことから来るのか?俺が彼女を許せれ
ば、この脚はこんなに痛まないのだろうか?
 考えてもせんのないことだ。しかも医学的に見て、この脚は俺がどんな人格だろうと痛
み続けることくらいはわかる。俺は変われない。今更変われない。俺は右脚を引きずって
歩く、傲慢で気難しい、不恰好な医者だ。恋人もいないし、友達もいない。ただ一人、ジ
ミー・ウィ流ソンくらいしか。 
 それが現実だ。

 変われない俺を知っていて、ウィ流ソンは何も言わずに俺の側にいてくれる。そうする
と少しだけ脚の痛みが和らぐ。自分自身を、ステイシーではなく、血栓を発見できなかっ
た無能な俺の主治医でもなく、俺自身を許せる。何故ならウィ流ソンが俺を許してくれて
いるから。右脚は相変わらず機能しないし、杖なしでは歩けないけれど、俺には親友がい
る。そう思うと少しだけ呼吸が楽になる。
 きっと彼はそれを知っている。彼はとてもスマートな男だから。そんな彼が側にいてく
れる理由は俺にはわからない。俺はいつも本当に真実を知りたいときに限って、そこに近
づけない。多分俺はそれほど有能ではないのだと、脚の痛みが和らぐたび、ウィルソンの
横顔をこっそりと伺い見るたび、いつも俺は思う。穏やかで苦い気持ちで。

 終

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 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ マジデヤマモオチモイミモネーナ
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 | |                | |       ◇⊂    ) __
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ここ数ヶ月書いてみたかった二人を一年の最後に書けてハッピー。
この二人は自分たちはもうオサーンだから見苦しいことはやめよう、と
心に決めて純情を胸に秘めてる印象でした。そのまんま書き散らかしたよ。
今年一年ここにはいろいろと世話になった。スレの皆さんもよいお年を。

あ、平安兄弟楽しみにしてます。佳境に入りましたね。

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