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numb*3rs 工ップス兄×弟

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  例によってnumb*3rs兄弟ネタだってよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  これで終わりだから安心しろってさ
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヨカッタ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

そんなわけでnumb*3r兄弟ネタです
立て続けに申し訳ないんですが、これで終わりなので見過ごしてやってください
とりあえず前回までと続いてます
今更気づいたのですが、このドラマを観たことない方にとっては複数の
小ネタをばらされていることになりますね。今回もそうです。スマソ…
今回は前・中・後編にわけて投下しようと思います

ちなみに平安兄弟のファンです。いつも笑いつつ萌えてます。トンクス!

 もうずいぶん昔のことだが、チャ―リーが生まれたとき、ト゛ンはこれで相棒ができたと思
った。賢くて強くて信頼がおける、一番の親友ができたのだと。その頃の彼のお気に入りの遊
びは「刑事ごっこ」だった。ト゛ンはじきにその遊びをするときには、この弟が常に傍らに控
え、悪人を(といっても本当は、極悪非道な犯罪者を演じる近所の友達に過ぎないのだが)自
分と一緒に捕まえるようになるだろうと考えた。母親の腕に抱かれてすやすや眠り、そうでな
いときはミルクを飲んでいるちっぽけな赤ん坊を眺めながら、その日が早くこないかと5歳の
ト゛ンはわくわくしながら待った。
 ところが、現実はそうはいかなかった。チャ―リーは3歳になる頃までには既に、ト゛ンが
思い描いていたのとは違う弟になっていた。お絵かきのために与えられたクレヨンでそこらじ
ゅうに数字の羅列を書き殴り、おもちゃの銃になど見向きもしない。もちろんト゛ンが大好き
な野球のバットやボールには、触れることすらない。どうやら半永久的に頼りになる相棒を得
られないことを理解した少年のト゛ンは、その代わりに弟の世話で忙しい両親を助けるために、
誰にも頼らずに一人で何でもできる存在になろうと思った。いわばプランBだ。物語の中の、相
棒のいない英雄たちは大体、相棒がいない代わりに自分だけで何でもできる。そういうふうに
なればいいのだと自分に言い聞かせて、そしてほぼその通りになった。少年時代を一貫して、
彼は自立心の強い子供だった。
 

 自立を心がけたト゛ンが、FBIに入るまで、一番愛したものは野球だった。野球で大学の
奨学金をもらい、マイナーリーグでとは言えプロとして金を稼いでいたこともあるほど、彼は
野球に打ち込んだ。けれどもト゛ンは23歳のときに、それまでで一番愛した野球を捨てるこ
とを決めた。自分のこの才能ではメジャーには行けない。野球を続けたいのなら、マイナーリ
ーグで不安定な生活することになると悟ったときだ。これまでで一番愛した「野球」と、一番
重んじてきた「自立」を量りにかけると、否応なしに「自立」の方に天秤が傾いた。野球は職
業にするにはリスクが高すぎる。若い、ほんの一時しかそれで金は稼げないだろうし、そうす
ることが許されるのは、自分がその一時で一生分の金が稼げる才能の持ち主の場合だけだ。そ
してト゛ンにはそこまでの才能はない。そこで彼はFBIの試験に志願し、難関を見事にパス
した。
 FBIに就職が決まったよと言うと、両親はまず驚き、それから手放しで祝福した。ト゛ンもも
ちろん満足していた。知性体力ともに抜きん出た(と目の高いFBIの試験官に判定された)
人間しかこの仕事にはつけない。やりがいはありそうだし、サラリーもいい。少なくとも表面
的には、欠けたところが見えない存在になれたのではないだろうか?小さな頃、心に決めた通
りに。
 ところがそんなト゛ンに、水を注す人間がいた。もちろんチャ―リーだ。チャ―リーはその
とき17歳で、一年前にプリンストン大の数学科を卒業し、スタンフォードの院に進んだとこ
ろだった。卒業論文として発表した研究が、学会で大変に評価されたらしいということはト゛
ンも両親から聞いていた。だがト゛ンは正直に言うとチャ―リーの業績にそんなに興味もなか
ったし、普段離れて暮らしていたせいもあって、弟自身とさほど親しいわけでもなかった。そ
んな弟が、ト゛ンの就職を祝うために久しぶりに家族が集まったディナーの席でこう言ったの
だ。「野球はどうしたの?」
 

 何気ない一言だったが、ト゛ンの心にそれは妙に鋭く響いた。弟に悪気はないということは
わかっていた。両親が気遣わしげな視線を交わすのを目でやり過ごしながら、ト゛ンはさらり
と答えた。「野球はやめた。FBIで働くんだ」 
 チャ―リーはそれを聞いて瞬きし、それから何か口ごもった。この弟は普段は早口で捲くし
立てるくせに、何か大事なことを言おうとすると上手く話せなくなるらしい。しかもそれは自
分が同席しているときによく起きる現象だと知っていたト゛ンは、見ないふりをして母親が焼
いたリブをほおばった。
 「あんなに、あんなに才能があったのに?もったいないよ、ト゛ン」
 囁くような声でチャ―リーが言う。母親が窘めようとしたのか身を乗り出したが、チャ―リ
ーは巻き毛を揺らしながらそれを手で制した。
 「野球が好きだったんじゃないの?――僕は、僕は力になれるよ。ト゛ンが野球を続けるな
ら……」
 「力になれるって?」
 ト゛ンは苛立ちながら聞き返した。そもそもこの弟に助けなど求めたことは、これまでで一
度もない。ましてや人生の一大事を、任せられるわけがない。一体弟が野球の何を知っている
だろう?ト゛ンがどれだけ野球を愛し、それに打ち込み、どんな思いでそれを捨てたかなど、
この弟は知らない。チャ―リーは小さな頃から数字と戯れ、しかもどうやらそれが職業として
ものになりそうなのだ。彼は諦めるということが、どんなことなのか知らない。ト゛ンの声に
チャ―リーはびくりと肩を揺らしたが、一瞬俯いた後で意を決したようにまた顔を上げた。
 「僕なら有効な打線を読める。数学で試合の展開を読めるよ。確率論を使うんだ。そうした
ら――」
 「そんなことは誰にもできない。チャ―リー、野球はもうやめた。捜査官になるんだ。俺は
満足してる。お前の助けも必要ない」
 そう言い放ってト゛ンは立ち上がり、キッチンの冷蔵庫にビールを取りに行った。テーブル
に戻ってくる頃には、両親が無理やり挿入した別の話題が始まっていた。チャ―リーはまだ何
言いたげだったが、母親に釘を刺されたのかその後はずっと黙っていた。

 自分と似通ったものを人はよく愛する。同じ趣味を持つ友人、同じ価値観の恋人。自分を生
み、育てた両親。そして同一の血が流れる兄弟。そう、兄弟はその象徴だ、とチャ―リーは階
段を駆け上がりながら思った。その証拠に、相手がまったくの他人だったとしても、親しみが
生じたときにはよく「兄弟」と呼びかけるではないか。この世界に兄弟ほど自分に近い存在は
いない。そういうことになっているはずだ。
 ところが同じであることが前提であるがゆえに、違いが際立って見えるという逆の特色もま
たここには見える。カインとアベルのように。自分とト゛ンもその実例だ。ト゛ンと自分はま
るで違う。そんなことを考えながら乱れた呼吸を整え、チャ―リーはアパートのベルを鳴らし
た。腕時計を見ると、12時を過ぎている。今日の午後、仕事を終えて帰宅したら連絡する、
とト゛ンはチャ―リーに電話で約束した。絶対だよ、待ってるから、とチャ―リーは言い、そ
して忠実にそれからほぼ12時間経つ今まで、ト゛ンからの電話を心待ちにしていたのだ。最
後の数時間は待ちきれなくなって、呼ばれたらすぐに駆けつけられるように、ト゛ンのアパー
トの近くのレストランで時間を潰していた。この部屋の鍵を渡してくれればいいのに、とチャ
―リーは思った。不安な気持ちで外で電話を待つのではなく、ト゛ンのアパートで彼が帰って
くるのを待てたらどんなにいいだろう。
 でもト゛ンが渡すことはないだろう、と客観的に考えながら、チャ―リーはもう一度ベルを
鳴らした。「ト゛ン?僕だよ、開けてよ」
 わかったわかった。そんな物憂げな声と共にゆっくりとドアが開く。巻き毛を揺らしながら
チャ―リーはドアの狭間から顔を出した。「自分の誕生日に真夜中過ぎまで働くなんて正気じ
ゃないよ、工ップス捜査官」
 

 冗談と本気を混ぜ合わせた口調でチャーリは言い、アパートの中に入った。そう、今日――
いや実際は既に昨日なのだが――はト゛ンの誕生日なのだ。ト゛ンはこの歳になれば誕生日な
んてめでたくもなんともない、と言ったが、チャーリはどうしても祝いたかった。ト゛ンの誕
生日に二人きりで祝うなど、今までには絶対に考えられなかったことだ。特に祝わなくていい
なんてぼやきながらも、ト゛ンがチャ―リーの願いを聞き入れて会う約束をしてくれたことが、
彼には嬉しかった。
 「こんなに遅くなるなんて、ややこしい事件なんだね?ト゛ン。力になるよ」
 チャ―リーが振り向きながら、ドアにチェーンを掛けているト゛ンに言った。ト゛ンは肩を
竦めた――そして顔を顰めた。痛みを感じたかのように。ト゛ンは本当に今帰ってきたばかり
なのだろう、まだスーツ姿で、けれどもジャケットは脱いでいた。ト゛ンの白いシャツは右袖
ごと破り捨てられ、その代わりに肩に包帯が巻かれている。ト゛ンは右腕を擦りながら疲れの
滲んだ口調で言った。
 「ややこしい事件“だった”んだ。もう解決した。つい数時間前にな」
 振り向いたチャ―リーはもうト゛ンの言葉など聞いてなかった。彼はプレゼントの入った箱
を小脇に抱えたまま、包帯が巻かれたト゛ンの肩に手を伸ばした。「どうしたの?これ」
 「チャ―リー、大したことない」
 「怪我?深いの?」
 シャツを落ち着きなく見ながら、チャ―リーは問うた。ト゛ンはかぶりを振り、自由な方の
腕を動かしてチャ―リーの肩に触れた。「落ち着け。大したことない。掠り傷だ」
 「――撃たれたの?」
 身体中の血の気が失せていくのがわかった。ト゛ンは構うな、というように手を振って繰り
返した。「弾が掠っただけだ。すぐに治る。チャ―リー、落ち着け」
 「弾って、銃弾?ト゛ン、撃たれたんだね?」
 チャ―リーはそう言って、視線を泳がせた。シャツの襟に微かに血痕が飛び散っている。ト
゛ンの血。ト゛ンは返答に困ったのか、瞬きを繰り返した。「……撃たれそうになったんだ。
撃たれたわけじゃない」

 「でも怪我してるじゃないか!ト゛ン、撃たれたんだね」
 悲鳴まじりの声を手で制し、ト゛ンはゆっくりと言った。「チャ―リー、犯人はもう捕まっ
た。……死んだんだ。終わったんだよ。落ち着け」
 そう言ってト゛ンはため息をついてみせた。だがチャ―リーはそんな兄の様子に構うことは
なく、うろうろと彼の周囲を歩き回ってから言った。落ち着いていられるわけがなかった。「
どうして僕を呼ばなかった?解決まで何日かかったの?包囲網の人数は?FBIが投入した人
数が少なかったの?だからト゛ンが……」
 「チャ―リー、終わったんだ」
 子供相手にするように繰り返され、チャ―リーは思わず声を荒げた。「怪我してるんだよ!
ト゛ン、あともう少しで死ぬところだったんだ!わかってるの?」
 ト゛ンはうんざりしたように眉間を指で擦った。そして言った。「こんなことはよくあるこ
とだ。チャ―リー、知ってるだろ?」
 それが嫌なのだ、とチャ―リーは思った。こういうことがト゛ンの生活に織り込まれている
ことが。ト゛ンがやっている仕事は素晴らしいとは思う。人々を助け、彼らの生活を守ってい
る。そのことは誇りに思う。だが撃たれたり切り付けられたりすることが日常であってもらっ
ては困るのだ。だからこそチャ―リーはもっと確実に、迅速に事件を解決されるために、方程
式を使う。ト゛ンを助けるために。よりスマートで安全な方法を採るのだ。
 「僕が捜査に参加してたら、こんな――怪我なんてしなかったかもしれない!ト゛ン、何故
僕を呼ばなかった?事件は何?何だったの?」
 震える声で言うと、ト゛ンは目を眇めてみせた。チャ―リーは苛立ちながらそれを見返した。
 「……幼児誘拐事件だよ。チャ―リー、今回は犯罪社会学者と幼児性愛専門の心理分析官が
協力して、迅速に……」
 「僕の方が役に立てたよ!絶対だ!どうして僕を呼ばなかった?」
 繰り返される問いに、ト゛ンはしばし沈黙してから答えた。「今回はお前より彼らの方が必
要だと思った。居場所の分析パターンも確立しつつある。それにお前も忙しそうだったじゃな
いか」
 

 数日前までチャ―リーは学会での発表を控えていて、そのためにずいぶん時間を割いていた。
そのこともあって、ト゛ンは今回チャ―リーを捜査に呼ばなかった、とト゛ンはあっさりと言
ってみせた。
 チャ―リーはそれを聞いて思わず引きつった笑みを浮かべた。「――学会?僕はポイントカ
ードにスタンプ押してもらえるくらい学会に出てるんだよ!10代のときから何度も出てるし、
発表してる。そんなの問題ない。ト゛ンに協力できた。彼らって――彼らってその何とか学者
?社会学?馬鹿にしてる!僕は犯人像を予想したりはできないけど、犯人を効率的に探す方法
は知ってるんだよ!僕の方が役に立つ。ト゛ンを助けられる。居場所の分析パターンなんて、
僕の思考の劣化コピーじゃないか。笑わせないでよ」
 わざと険のある言い方をしてやるとト゛ンは眉を顰め、感情のない声で返した。
 「お前は役に立つが、お前以外にも役に立つ人材はいる。数字以外のアプローチの方が有効
なこともある。現に今回は州警察から事件を引き継いですぐに、それ以上犠牲者を出さずに解
決した。……最後に誘拐された女の子は助かったんだ」
 チャ―リーはそれを聞いて唇を動かし、それから手を口のあたりに押し当てて俯いた。最近
はほとんどそんなことはなかったのに、久々に自分がコントロールできなくなりそうな気がし
た。上手く話せず、無理に話そうとすると舌が震える。子供の頃よくそうなったように。ト゛
ンはやはり子供の頃よくそうしたように、そんなチャ―リーに対して何も言わず、落ち着いた
態度のままでいる。呼吸を鎮めて平常心を取り戻そうとし、話せる程度には落ち着くと、チャ
ーリはそれでも震える声で言った。「僕の方がト゛ンを助けられた」
 「チャ―リー」
 「どうして言わなかったの?手伝えって、どうして――」
 唇が戦慄き、チャ―リーは必死で考えた。ト゛ンが自分に助けを求めなかった理由を。ト゛
ンがさっきまでよりは少し苛立ちを含んだ声で言った。
 「もうやめろ、チャ―リー」
 これがプレゼントか?怪我をしていない手でチャ―リーが大事そうに抱えている箱を取り上
げると、ト゛ンは軽く眉を上げてみせる。チャ―リーはそれに答えずに主張した。「僕の方が
役に立てたんだよ。ト゛ンを守れた。どうしてわからないの?」

 「事件が解決したのにお前はどうしてそうこだわるんだ?」
 答えの代わりに鋭い問いが返され、チャ―リーは不意に不安に襲われた。ト゛ンの苛立ちが
強まってきているのがわかる。こうなると口論するのが怖くなるのはいつもチャ―リーの方だ
った。言いたいことが言えなくなり、口を閉ざして頷いてしまう。何故かト゛ンに本気で歯向
かったり立ち向かったりすることができないのだ。もう子供ではないというのに。今夜はそう
なってはいけない、とチャ―リーは自分に言い聞かせた。これはとても大きな問題だからだ。
 「……もっといい方法があるのに、黙って見過ごすことなんてできない。一般の人が、子供
が、――ト゛ンが危険に晒されているなら、ベストの方法を……」
 完全に正しい方程式を使わないといけない。危険と労力を最小限に留めるようなやり方をし
ないと、ト゛ンは守れない。そうしたときでさえト゛ンはたびたび銃を持ち、犯人を対峙する
のだから、推論だけで動いたときにはどれほどの危険が待っているのか。チャ―リーはそう説
明しようとしたが、例によって上手く言えなかった。
 「彼らのやり方も知らないのに、何故自分の方が優れているとわかる?」 
 ト゛ンの尋問するような言葉にチャ―リーは口ごもった。「……ただ、ただ、わかるからだ
よ。僕は……」
 「違うな。お前は個人的な感情から言ってる。チャ―リー、これは仕事なんだ。いつもお前
と組めるわけじゃないし、それを優先するつもりもない」
 開けてもいいのか?ラッピングされた箱を軽く振ってみせるト゛ンに、チャ―リーは違う、
と呟いた。チャ―リーは真っ青になって、違う、と繰り返した。ト゛ンの傷を見ながら。
 ト゛ンの言っていることにはどこか嘘がある、と思った。漠然と彼はそう感じ、過去の記憶
を探った。彼の言うことは確かに筋が通っている。ほころびはほとんどない。だが、彼の態度
はどうだろう。ト゛ンはいつも自分が窮地に陥っても、チャ―リーに関らせない。FBIの捜
査で協力を要請するときも、お前はお前がやれることだけをやればいいと言って、ト゛ンが何
をしているのかは教えようともしない。今度もきっとそうなのだ。ト゛ンは怪我をしており、
そしてそれをチャ―リーとの話題にしたくないのだ。
 

 「違うよ。個人的な感情なんかじゃない。それだけじゃない。単に僕は、事実を……」
 「いいや、お前は個人的な感情から意見してる。――この話はもう終わりだ」
 ト゛ンの宣言にチャ―リーはまた口ごもった。そして何秒かのちにやっと口を開き、感情的
になっているのは僕だけじゃない、と言い返そうとした。
 けれどもそれはできなかった。何故ならト゛ンがキスをしてきたからだ。宥めるように。
 「開けていいんだろ?」
 耳元で囁き、プレゼントの入った箱を軽く掲げるト゛ンに、チャ―リーはただ頷いた。こん
なのはおかしい、という気持ちはまだ燻っていた。だが、ト゛ンはそれを見透かしたようにも
う一度キスをし、チャ―リーを簡単に篭絡した。ト゛ンはチャ―リーをソファに座らせ、自分
も隣に腰を掛けてプレゼントをありがとうと言った。チャ―リーは何も言えずにまた頷いた。
 「いいネクタイだな」
 器用に箱を片手で開けたト゛ンが目を細めて言う。チャ―リーのとても好きな表情で。だが
チャ―リーはその顔を見ても、いつものように幸福にはなれなかった。誤魔化されたことが彼
にはわかっていたし、自分がそれに対抗できないのが空しかった。黙り込んでいるとまたキス
が振ってきて、ベッドへ誘われた。
 その夜、望んだ通りにト゛ンのベッドで彼と一緒に眠り、誕生日の夜――実際はそれはもう
過ぎているのだが――に彼を独り占めしたというのに、チャーリは不安だった。いつまで経っ
ても傷を負ったト゛ンの肩を直視できなかった。そしてト゛ンに対等に扱われていないという
ことにも気づいて、彼は孤独を感じた。チャ―リーは自分では、事件を通してト゛ンの相棒に
なれたつもりだったのだ。

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 | |                | |
 | | [][] PAUSE      | |
 | |                | |           ∧_∧ 前編オワリ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 

そんなわけでまた後日。いつも長々と占領して申し訳ないー


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