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numb*3rs 工ップス兄×弟

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 昨夜のnumb*3rsスラの続きだよ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 相変わらず兄弟やおいだってよ 
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

そんなわけで後編です。相変わらず痛いです
ここをきっかけに狐に加入してくれた人までいるとは…嬉しい!
原作そのものがホモホモ兄弟エピソードで構成されているので
こんなフィクなんかよりずっと萌えるはず。楽しんでください。

 

 まずはト゛ンのように携帯の電源を切り、チャ―リーはひたすら海辺の通りを歩き続けた。
たまにト゛ンが追いかけてきているかと思って振り向いてみたり、似た外見の人間を見かけ
ると足を止めてみたりしたが、ト゛ンはいなかった。帰りたい、とチャ―リーは思った。カ
リフォルニアのあの家に帰り、ガレージにこもって数式を解き、すべてを忘れたかった。
 この関係を続けることをト゛ンは望んでいないのは、もちろんわかっていた。数ヶ月前、
ガレージでト゛ンと寝た直後から、ずっとそれは理解していた。でも続けることが自分にと
って必要なのも事実で、だからこそチャ―リーはこの数ヶ月一番苦手な種類の努力を重ねて
きた。ト゛ンにキスやセックスを強請り、みっともない脅しを掛け、懇願までした。そのた
びにプライドも傷ついたし(相手が自分を必要としていないとわかっていて、自分から身体
を差し出すことの苦痛をト゛ンは理解していないだろうといつも思う)、何より嫌なのはト
゛ンが困惑した表情を毎回向けることだった。
 だが、その苦痛を差し引いても、ト゛ンと身体を重ねる時間は素晴らしかった。ト゛ンの
手のひらや唇が肌をさ迷い、名前を耳元で呼ばれると、あまりに幸せですべてを忘れた。た
まにト゛ンが見せる微笑、そのときに目尻に浮かぶ皺、誠実で愛情に満ちたあのまなざしが、
チャ―リーにとってはすべてで、ほかのものなど必要なかった。それなのにト゛ンはアミー
夕や、あまつさえト゛ン以外の男との――ト゛ンはチャ―リーが男性への欲望に耐えかねて、
一番身近な若い男としてト゛ンを選んだとでも思っているのだろうか?――との関係を勧め、
チャ―リーをひどく傷つけた。
 

 自分が無神経だということをわかっていない、と今またチャ―リーは、街灯に照らされた
砂浜を歩きながら思った。ト゛ンは確かにいつだって「まとも」だ。しかしそうではない人
間について、理解できているとは思えない。チャ―リーにだってト゛ンが望むような存在に
なりたいという思いはある。小さな頃からずっとある。でもなれないのだ――ト゛ンが望む
ような弟には未だになれない。だがト゛ンはそれでもチャ―リーは唯一無二の弟で、代わり
はいないと言ったではないか?それなら何故ありのままのチャ―リーを受け入れようとしな
いのだろう?せめてその在り方を認めるくらいはするべきではないか?
  チャ―リーは苛々しながらにぎわっている通りを見た。この街にはビーチの他にカジノが
ある。そしてチャ―リーは賭け事が得意だった。当たり前だ。彼は賭けるのではない。計算
するだけだ。馬鹿げている、とチャ―リーはいつものように大勢の人間が夢中になる賭け事
について思った。ギャンブルにあるのはスリルではない。単なる統計だ。
 

 財布に入っている金額を確かめてから、小さなカジノに入ると、チャ―リーはまっすぐル
ーレットのテーブルに向かった。ポーカーやクラップスでは簡単すぎる気がした。彼はテー
ブルの側で、まずはディーラーがルーレットを回すのを何度か観察し、そのディーラーの癖
や戦略を見抜いた。そしてテーブルに参加し、注意深く賭け始めた。
 一時間経つ頃にはト゛ンと二人で地球の裏側に旅行できるほどの金額が手元にあった。チ
ャ―リーはその成果にではなく、自分の理論が正しいことに満足をしながら、ふと顔を上げ
た。テーブルから少し離れた席で、チャ―リーより少し年齢が上に見える男がじっと彼を見
つめている。ト゛ンのようなダークヘアではないが、ト゛ンのように短髪で、筋肉質の身体
をしており、ト゛ンみたいに清潔で誠実そうに見える。FBIでよく見かける、ト゛ンやト゛ン
の同僚のような、学者とは違う種類の知的な面立ち。チャ―リーは数秒彼を見返してから、
すぐに目を伏せてテーブルのコインを換金するために寄せ集めた。
 換金を終えてカジノを出るとき、チャ―リーはもう一度さっきの男がいる場所を振り返っ
た。彼はまだギャンブルに参加せず、チャ―リーの方を見つめていた。チャ―リーは躊躇っ
てから足を止めた。すると彼はゆっくりと歩み寄ってきた。

 フィラデルフィアのホテルに戻るころには、夜明けも近くなっていた。ドアの前でベルを
鳴らすと、すぐに扉が開き、やりきれない表情のト゛ンに迎えられた。「携帯電話の電源を
切ったな」
 「ト゛ンだって切ってるんじゃないの?」
 そう言ってチャ―リーは兄の側を通り抜けて部屋の中へ入った。ひどく疲れていたし、ト
゛ンに会うのが怖かった。だが一方でト゛ンがちゃんとホテルにいてくれてよかったと思っ
た。もし自分を見限って先に帰られたりしたら、本当に傷ついていただろう。
 話さなければいけない、とチャ―リーは思った。ト゛ンはTシャツにボクサーという姿で、
寝るための準備はしていたようだが、寝ていないことは顔をみればわかった。まぶたの辺り
が落ち窪んで、疲れが伺える。
 ベッドに腰を掛けて、ト゛ンを見上げると、彼はため息を吐きこめかみを揉んでから、少
し離れたところにある椅子に座った。そして弱弱しい声で言った。「一体一晩中どこへ?―
―もう四時だぞ」
 「カジノに行ってたんだ……」
 チャ―リーは小さな声で言ってから、ちらっとト゛ンの表情を伺った。ト゛ンは頷き、そ
れからまた息を吐いた。「心配する」
 「ごめん」
 「もういい。寝ろ。ひどい顔してるぞ」
 ト゛ンはそう言って手を振り、立ち上がってミニバーにある酒を手に取った。そして小さ
なウォッカの瓶を一気に開けると、ごみ箱に投げ捨てて繰り返した。「寝ろ」
 「ト゛ン、ごめん」
 不安になってチャ―リーは腰を上げかけた。するとト゛ンは顔を顰めてそれを遮った。「
――どうしろっていうんだ?!俺はお前の兄なんだぞ!お前のことを放っておけない。チャ
―リー、お前にはわからないかもしれないが、俺はお前に対して義務がある。幸せになって
ほしいんだ。間違った人生を歩ませたくない」

 「――他の恋人を見つけろっていうから、僕だって努力してる」
 チャ―リーは震えた息を吐きながら言った。ト゛ンが驚いた顔でチャ―リーを見た。それ
を見返しながらチャ―リーは続けた。「ちゃんと、言われたとおりに努力してる。アミー夕
ともいい感じなんだ。前は彼女のこと、なんとも思ってなかったけど、そういうのも悪くな
いって感じてきた。昔は恋人なんてもう必要ないって思ってたんだ。これからの人生は研究
に捧げたいって。でも、ト゛ンとFBIの仕事に関るようになってから、少しそういうことの価
値がわかってきた。友達も増えた。――僕の側にいるのは、前は学者や研究者ばっかりだっ
たんだよ。例えばデイヴィッドみたいなFBIにいるようなタイプなんて、全然周りにいなかっ
た。ああいういかにもタフガイっていうか、実際的なタイプはね。でもああいう友達もいい
なって思うようになった。数学的な話をできない友達も。ちょっとずつ世界は広がってるん
だ。全部ト゛ンのおかげだよ」
 チャ―リーが一気に言うのを、ト゛ンはぽかんと口を開けて見ていた。そして暫くしてか
ら頷いた。「……それはよかった」
 ト゛ンはよかったと繰り返し、またミニバーに手を伸ばして酒を取った。そしてウィスキー
を舐めながら、まぶたを手の甲で乱暴に擦った。 
 チャ―リーはじっとそれを見つめた。小さな頃から何度も繰り返したように、兄を注意深
く観察し、疲労しきった表情の中から感情のかけらを探し出そうとした。ト゛ンはこめかみ
を揉みながら言った。
 「……お前はいい人間だよ。賢いだけじゃなく柔軟性があって、思いやりもある。友達だ
ってもっとできるし、恋愛だってまだまだこれからできる。わかるか?俺を最終点にするべ
きじゃない。もっと広い世界があるんだ」
 それを聞いてチャ―リーは喉元が熱くなるのを感じた。きっと一生自分たちはわかりあえ
ない、と思った。でもやはり、目の前で疲れと困惑を持て余しているト゛ンが好きだとも。
小さな頃と同じように、いやむしろ一層強く、ト゛ンのことを愛していると思った。チャ―
リーは泣くまいとしながら、視線を下げて言った。
 

 「――もしそうなれたら、それは全部ト゛ンのおかげだよ。わかる?ト゛ンがいるからな
んだ。ねえ、僕はこの先、ト゛ンが望むとおりに恋に落ちるかもしれない。ト゛ン以外の誰
かと恋愛して、研究と家族のほかの人生もあるって知るかもしれない。友達もたくさんでき
て、いろんなことを理解して。でもねト゛ン、それはト゛ンがいるからだ。ト゛ンを基点に
しているから存在する可能性なんだ。もしト゛ンを失ったら、僕はもうきっと……何もでき
ない。一番最初にあるのはト゛ンで、最後もト゛ンなんだ。わかってよ……」
 嗚咽が零れ、チャ―リーはそれを押さえようと手のひらで口を覆った。変われない、と思
った。この先何があっても、ト゛ンより大きな存在は自分の中には現れないだろう。ト゛ン
がどんなにそれを望んでも、永遠に。
 「……子供じみてるかもしれないけど、それが僕なんだ。ごめん」
 「チャールズ」
 ト゛ンがウィスキーの瓶をテーブルに置き、ベッドに歩み寄ってきた。傍らに腰を下ろし、
硬い、鍛えられた手で肩を擦る。チャ―リーはその手のひらの温かさに促されるようにして、
何度もト゛ンの名前を読んだ。
 「チャ―リー、もういい。泣くな」
 「――僕は変われない。変わることを望むなら、振ってくれたほうがいいんだ。応えられ
ないのは仕方ない。……傷つくけど、それはト゛ンの意思だろ?でも、受け入れるふりをし
て変わることを望むのはやめて」
 そう言ってから、チャ―リーはふっと息を吐き、間近にある兄の顔を見上げた。「我侭言
ってるかな?」
 ト゛ンがその言葉に微かに目を細め、苦笑した。「そうかもな。――いや、お前が言って
ることは筋が通ってる。正しいよ」
 「ト゛ン、僕を振る?」
 小さく問うと、ト゛ンが視線を泳がせるのがわかった。「……いいや」
 「弟だから?」
 チャ―リーの言葉にト゛ンはまた苦笑した。そして彼の巻き毛を撫でてから、肩を竦めた。
「そうかもしれない」
 「……一生振られないなんて、弟に生まれて得だよね」
 冗談めかして言うと、ト゛ンは目を伏せた。「俺が悪い。お前を傷つけたくない。何でも
してやりたい。でもそれがお前の人生に傷を与えてる。わかってるのに、お前が大事だから
手放せない」

 「――傷じゃないよ、ト゛ン」
 呟くようにチャ―リーは言った。ト゛ンはそんな弟を見つめてから頷いた。「わかった」。
チャ―リーは頷き返してから、ホテルの広い窓を見つめた。高層ビルの群れの向こうに、日
の出を迎える水平線がかろうじて見える。チャ―リーは掠れた声で言った。
 「……ピタゴラスがね、無理数を隠したんだ。知ってる?古代ギリシアにいた人だよ。彼
は偉大な定理をいくつも発見し、数字によって世界は支配されていると考えていた。そして
世界の理を読み解くためには数字が鍵となるとも思った。そんな彼にとって、無理数の存在
はあってはならないものだったんだ」
 「……無理数?」
 訝しげにト゛ンが問う。チャ―リーは頷き、微笑んでから説明した。「πみたいな……ほ
ら、円周率だよ。ああいう、分数でも表せない数字。同じパターンが繰り返されることもな
く、永遠に少数の羅列が続く数字のこと。それをピタゴラスの弟子があるとき発見したんだ
けど、ピタゴラスはそれに動揺して、その弟子を殺してしまったんだ。無理数は彼の世界観
を覆すものだったから」
 ト゛ンは肩を竦め、そして黙った。チャ―リーはそれを見てまた微かに笑った。こうやっ
ていつまで経っても数学者との会話に慣れないト゛ンが好きだと思った。彼は会話を続けた。
「僕はね、無理数が好きなんだ。無理数って、すごくたくさんあるんだよ。有理数――分数
で表せるような数字のことだよ――より多いんだ。この世界にはたくさんそういう数字があ
って、例えば黄金比だってそうだし、とにかく謎めいていて素敵だと思うんだ。だって無限
に続くんだよ!まるで数字が生きているみたいじゃない?世の中が有理数だけで成り立って
いたら、つまらないよ」
 「――読み解けないものが好きだなんて意外だな」
 ト゛ンの呟きにチャ―リーは首を傾げた。「そうかな?」
 「もっと明確に答えが出るものが好きだと思ってた」
 「――逆に言えば、もしかしたら僕が一番最初に謎を解けるかもしれない。それって素敵
だろ?……それに間違いという現象はないって考えが、僕は好きなんだ。人の解釈に誤りが
あっても、現象自体には常になんらかの意味があると思いたいんだ。しかも終わりがないん
だよ。……理解しがたくても、永遠に続くんだ」

 「……なるほどな」
 言わんとしていることが伝わったのが、ト゛ンが静かに頷いた。チャ―リーはほっとして
ト゛ンの肩に頭を預け、数時間ぶりの彼の匂いを感じた。温かい肌や呼吸を感じていると、
髪をまた撫でられ、続いて指先が頬を掠めていく。視線を上げると、ト゛ンは穏やかな目を
していた。チャ―リーはそれを見て、躊躇ってから言った。「――今日のことだけど――こ
こに帰ってくるまで、知らない男といたんだ」

 「……何?」
 頬を撫でていた指先が止まり、ト゛ンの身体が強張ったのがわかった。チャ―リーは冷や
汗が浮かぶのを感じながら繰り返した。「知らない男と過ごしてたんだ。カジノで会ったん
だよ。声を掛けてきて……」
 ト゛ンが勢いよく立ち上がり、こぶしでテーブルを叩いた。「どういう意味なんだ?」
 チャ―リーは乱暴な仕草に肩を一瞬揺らしたが、落ち着くように自分に言い聞かせた。「
わかるだろ?……ト゛ンが、ト゛ンが言ったとおりに努力しただけだよ。他の男とデートし
ろって言った。だから……」
 「四時までデートしてたっていうのか?知らない男と?チャ―リー、正気なのか?」
 もう一度ト゛ンがテーブルを叩き、チャ―リーもまた肩を揺らした。ト゛ンはファックと
呟き、それから天井を見上げ、すぐに視線を戻した。「寝たんだな?」
 チャ―リーは躊躇ってから目を逸らした。「どうして怒るんだ?ト゛ンが望んだことじゃ
ないか」
 「――くそっ!」
 ト゛ンは怒鳴り、それからうろうろと歩き回り、テーブルにあったウィスキーを飲み干し
た。そして繰り返した。「くそっ」
 「……怒るのはおかしいよ」
 小さな声で指摘すると、ト゛ンは大げさに頷いた。「ああ、そうかもな。だけど、なんだ
ってお前は――自分がやったことをわかってるのか?チャ―リー、俺の目を見ろ。お前は本
当に……」
 ト゛ンに肩を掴まれ、無理やり視線を重ねられた。チャ―リーが怖くなってすぐに目を逸
らすと、ト゛ンはもう一度目を見ろと言った。チャ―リーはそれに従わずに、ト゛ンの腕を
宥めるように擦った。「ト゛ン、怒らないで」

 ト゛ンはその手を振り払いながら言った。「怒ってなんかいないさ。だけど答えてみろよ。
昨日俺たちがしたようなことをしたって言うのか?知らない男と?」
 チャ―リーは俯いた。ト゛ンの手のひらは熱く、吐息に酒の香りが混じっている。答えが
ないことに苛立ったのか、ト゛ンはチャ―リーの肩をもう一度掴み、ベッドに押し倒した。
チャ―リーの脚の間にト゛ンの身体が滑り込み、それに驚く間もなく耳をきつく噛まれたの
で、思わず声を上げると、ト゛ンが名前を読んできた。「チャ―リー」
 ト゛ンの目には怒りとそんな自分への戸惑いが滲んでいて、それを見たチャ―リーの胸に
は罪悪感が浮かんだ。彼は手を伸ばし、ト゛ンの短髪を撫でてから言った。
 「……怒ってる?」
 「怒ってるわけじゃない。ただ……ただ……」
 ト゛ンの手が震えている。チャ―リーは唇を引き結んでから、すぐに開いて言った。「好
きだよ。怒らないで。……嫌わないで」
 そういってチャ―リーはト゛ンを抱き寄せた。ト゛ンの唇がじれったげに頬や首筋を掠め、
それからチャ―リーのそれに重ねられる。舌が咥内をかき回し、チャ―リーは場違いにもト
゛ンはやはりキスが上手いと思った。乱暴に服を脱がされ、いつもよりずっと恥ずかしい姿
勢を取らされ、貫かれたときにはチャ―リーも極度の興奮でわけがわからなくなっていた。
ト゛ンの太く、引き締まった腕に羽交い絞めされるような姿勢で揺さぶられ、そのくせト゛
ンは手でチャ―リーが達するのを妨げて焦らした。チャ―リーは何度もプリーズと言い、声
が掠れる頃にやっと許された。しかもその後も身体の隅々まで観察され、他の人間の痕跡が
ないかを探られた。まるで捜査されてるみたいだ、とチャ―リーは思ったが、事件の捜査な
どよりずっと性的な快感があることは確かだった。
 何度も行為を繰り返すうちに、いつもより乱暴だったト゛ンの手も次第に穏やかな動きを
取り戻し、チャーリは前の晩にもそうしたようにト゛ンの上に跨ってキスを繰り返した。繋
がったままで自分から腰を揺らし、名前を呼ぶと上半身を起こしたト゛ンにきつく抱きしめ
られた。

 「ト゛ン、僕が他の人間と寝ると、嫉妬する?」
 行為が終わったあとで抱き合いながらチャ―リーは聞いてみた。チャ―リーはそのことが
知りたかった。だがト゛ンは腕を自分のまぶたの上に落とし、呻いてみせた。「どうしてお
前はそうなんだ?」
 「……答えてよ」
 言うと、ト゛ンが眉を上げてみせた。事件が行き詰ったときによくそうするように、指先
で眉間を擦り、ため息を吐いてみせる。
 「知りたいんだな?チャ―リー」
 「……そうだね、知りたい」
 小声でチャ―リーは肯定した。例えばチャ―リーはト゛ンが他の誰かと寝るのを想像する
と、何も食べたくなくなる。胃が痛み、ト゛ンをどこかに閉じ込めてしまいたいとすら思う。
そういう感情がト゛ンにもあるのか、知りたいと思った。
 ト゛ンは長い息を吐き、それから頷いた。「嫉妬する。これで満足か?」
 「――自分にとってそれが苦痛なのに、僕にそれを勧めるのは何故?」
 弟の言葉にト゛ンはまたため息を吐いた。「お前のためになると思うからだ」
 でもそれは決して、会ったばかりのやつと簡単に寝ることじゃない。それは違う。わから
ないのか?心配になるんだ。苦い声で言われ、チャーリーはせわしなく頷いて受け流した。
 「僕のことを思って我慢してるの?僕は僕のためになるはずのことをすると、ト゛ンに苦
痛を与えるってこと?」
 「――黙れチャ―リー。もう話したくない。あと数時間でホテルも出なきゃいけない。昼
近いんだぞ。もう俺は……とにかく眠りたいんだ」
 ト゛ンはそう言って目を瞑った。長年の経験から、これ以上話しても無駄なことはわかっ
ていたので、チャ―リーは話しかけるのをやめた。その代わり眠らずに、ずっとト゛ンを眺
めていた。ドンは何度も寝返りを打った。チャーリーは彼もまた眠っていないことを知っていた。
 ト゛ンには悪いと思ったが、チャ―リーは幸せだった。彼は少し泣いた。

 夕方に飛行機に乗る前に、ト゛ンとチャ―リーは踊った。郊外の小さなレストランで。誰
か見てるかもよ、とチャ―リーは言い、ト゛ンは誰か見てるかもな、と弟の言葉に頷いてみ
せた。二人のステップはちぐはぐで、決して息が合ってるとは言えないものだったので、ト
゛ンは顔を顰めた。「これはもう既にダンスじゃない」
 「いいだろ、別に。僕は楽しいよ」
 そう言ってターンをすると、ト゛ンが苦笑したのでチャ―リーもほっとして笑い返した。
ダンスは確かに不恰好で、チャ―リーもこれだったら二人で事件を解決する方がずっといい
と思った。お互いの足りないところを補い合え、やはりちぐはぐに見えるときはあるかもし
れないが、最後には息の合ったところを周りにも見せられる。FBI捜査官のト゛ンと数学者の
チャ―リー。こんなコンビは他にいない。まるでドラマのヒーローたちのようではないか?
 踊りながらト゛ンがチャ―リーを見る目には、やはり悲しみとぎこちない愛情が見え隠れ
し、チャ―リーはきっと自分がト゛ンを見るときもそうなのだろうと思った。お互いへの愛
ゆえに負い目を感じ、これは正しくない形の愛なのだとも思い、相手のために正しさを追求
しながらも、お互いへの愛も捨てられない。だが何が正しいかなど、誰にわかるだろう?普
通の兄弟がどんなものかを決めるのは誰なのか?ト゛ンとチャ―リーがその規範に収まらな
いことを責められる人間などいるだろうか?
 自分たちは兄弟で、お互いに代わりはいない。そして少なくとも今この瞬間は、二人とも
幸せなのだ。
 

 そうは言ってもト゛ンが自分のために苦しむ要素は、少しでも減らしたいと思ったので、
帰りの飛行機の中でチャ―リーは思い切って勇気を出した。「ねえ、ト゛ン」
 「なんだ?」
 眠たげに雑誌を読んでいたト゛ンに問われ、チャ―リーは躊躇ってからわざとらしく微笑
んだ。「あの、実は言わなきゃいけないことがあるんだ」
 「おいおいおい、何なんだ?もうやめてくれ」
 ト゛ンが悲鳴まじりの声を上げ、周囲の乗客が彼に視線を向けたので、チャ―リーは慌て
て声を潜めた。「悪いニュースじゃないと思うよ」
 「嘘を吐け。お前に良い報せをもらったことなんてほとんどない」
 チャ―リーはその言葉にむっとして顎を上げた。「何それ」
 「いつもそうだろ?お前はいつもトラブルをもちこんでばかりで……」
 「――トラブルなんて持ち込んでない!むしろ解決してあげてるだろ」
 思わず声を上げると、また周囲の視線が集まり、近くにいたフライトアテンダントがうず
うずと身体を動かしたので、チャ―リーは我に返ってまた声を潜めた。「――とにかく、悪
いニュースじゃなくて、むしろいいニュースで、でももしかしたらト゛ンが怒るかもってこ
となんだけど……」
 ト゛ンはそれを聞いて雑誌を伏せ、目を眇めた。
 「いいニュースなのに俺が怒るのか?怪しいな」
 「……っていうか最終的には喜ぶと思うよ。ただ衝撃を受けるかもしれないってだけ。だ
から約束してほしいんだけど、怒らないって」
 ト゛ンの片眉が意味深に上がるのを見ながら、チャ―リーは繰り返した。「……怒らない
って約束してくれる?」
 「……聞いていないのにどうやったら確約できる?」
 尤もなことを言われれ、チャ―リーは苛立ちを覚えた。「いいから約束してよ」
 ト゛ンがため息を吐く気配がした。数秒して、彼は言った。「わかった。約束する。だか
ら言ってみろ」
 チャ―リーはごくりと喉を動かしてから、ト゛ンの顔に自分の顔を近づけ、一層声を潜め
て告白した。「昨日の話、嘘なんだ」

 「――は?」
 大声で問われ返され、チャ―リーは無意識のうちに身を仰け反らせた。するとト゛ンが素
早く腕を掴み、すぐ側まで引き戻して言った。「嘘?」
 「嘘っていうか、よく思い出してほしいんだけど、僕は言わなかっただろ?セックスした
って。ほら、例の知らない男のことだよ。ト゛ンは誤解、そう誤解してたみたいだけど……」
 ひそひそ声で弁解すると、ト゛ンは信じられないものを見るような目つきで弟を見た。「
誤解?」
 「――悪かったよ。でもほら、知ると気が楽になるかなって思って、やっぱり言わなきゃ
なって……」
 語尾が怪しくなり、チャ―リーはやがて口を閉ざした。隣のト゛ンがじっと見詰めてくる。
彼の眉間にはくっきりと皺が浮かんでいた。
 「ごめんね」
 小声でチャ―リーが言うと、ト゛ンは顔を引きつらせた。「――あれは嘘だっていうのか
?」
 「嘘っていうか、誤解というか」
 「騙したんだな?」
 低い声で問い詰められ、チャ―リーは躊躇った後頷いた。「そう、騙したんだ。ごめん」
 ジーザス。ト゛ンが呻き、飛行機の狭い天井を睨んでからすぐに頭を振った。「何故そん
な馬鹿なことを?お前、俺がどれだけ――くそっ、どうりで跡も何も……」
 「カジノで知らないやつに声を掛けられたのは事実なんだ。だから捏造ってわけじゃない。
ちょっとした演出……」
 「それを言うなら脚色だろ!……信じられない。信じられない!」
 ト゛ンは繰り返し、それから舌打ちをした。「チャ―リー、お前がやったことは馬鹿げて
る上に不誠実だ」
 「ト゛ン、ごめん。でも……でも不安だったんだ。ちゃんと求められているかどうか、ど
うしても知りたかったんだ。僕は……そう、あの男に声を掛けられて、ちょっとだけ考えた
んだ。……つまり、ト゛ンが誤解したようなことを。彼はト゛ンに似てて、感じもよかった
し、なんていうか……誰かに優しくされたかったんだ。わかるだろ?……ト゛ンに似てたん
だ」
 

 ト゛ンは黙ってそれを聞いていた。チャ―リーは手のひらで座席の肘置きを落ち着きなく
握ったり話したりしながら、話を続けた。「……でもすぐにやっぱり嫌だって思った。だっ
てト゛ンじゃないし。だから結局、朝になる前にホテルに帰ったんだ。他に、他に代わりは
いないんだもの」
そう言ってからチャ―リーは乾いた唇を舐め、それから呟いた。「……ごめん」
 返事がないことに不安を覚えて、チャ―リーは肘置きから視線を上げた。ト゛ンはまだじ
っとチャ―リーを見詰めていた。
 「……怒ってる?」
 その言葉にト゛ンが呆れた様子で瞳をくるりと回した。「当たり前だろ」
 「だけど、他に確かめようがなかったんだよ」
 「――チャ―リー、お前は本当にガキだ。どうしようもない子供だ。信じられない、あん
な……」
 鋭くそう言い、それからト゛ンは唐突に喉の奥から笑いを零した。「本当にお前はガキだ
よ。信じられない」
 身を折り曲げるようにして、くつくつと笑う兄を、チャ―リーはただ眺めていた。チャ―
リーにはどう反応すればいいのかわからなかった。ここで兄が笑うとは思っていなくて、や
はりト゛ンのことはなかなか理解しきれないと思った。
 もっと簡単にト゛ンの行動や感情のパターンを読めたらどんなにいいだろう。チャ―リー
はそう思った。いつかはそういうものを見つけられるだろうか?
 

 「……僕なりの背理法的証明だったんだけど」
 チャ―リーの弁解にト゛ンは冷たく返した。「言ってろよ」
 「……怒ってる?」
 「当たり前」
 「あのさ、じゃあどうして笑ってる?それって、それって――おかしくない?」
 「おかしいのはお前だ」
 「……嫌いになった?」
 チャ―リーが問うと、ト゛ンは目を細めた。目尻に皺が浮かび、チャ―リーが好きなあの
表情になる。ト゛ンは笑いで涙が浮かんだらしいまなじりを乱暴に擦り、それから言った。
 「自分で考えろ」
 チャ―リーは言われたとおり暫く真剣に考えた。そしてともかくト゛ンが笑っているとい
うことは、嫌われていないだろうという結論を出す頃には、カリフォルニアへの到着も近づ
いていた。その間ト゛ンはずっと、本気で頭を悩ませる弟のことを、笑いながら見つめてい
た。

 終

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ マタテンプレズレチャッタヨ…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ;)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

暗くて生ぬるい内容になっちゃいましたが
原作のこの二人の視線が絡み合うとき、
特にチャーリーは妙に思いつめた感じの表情のくせに、ドラマ自体は
家族団らん・ほのぼのムードでいつも終わるのが好きなのでした…
長々と失礼!

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