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                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  流石兄弟
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  平安ヘボン・リバ・無駄に長いぞ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ Water!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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配布。つ流石フィルター。 これさえつければみな流石。

 渡殿を通る足音で、相手の機嫌がわかる。
 今日は大分いらついている。
 いつもより早くそこを渡りきり、妻戸を蹴たてるように開く。

「弟者、お前わざと行かせたな」
 普段は母屋で着替えてくるのに、今日は珍しく整った直衣姿で、流石に権門の若君らしくあてに華やいで見える。
「……今日はまだ、イかせてませんが、何か」
 答えるほうはくったりと柔らかな生絹(すずし)の単で、しどけなく着込んでいるため、胸もとの膚が冷えた光沢を見せている。
「内裏に決まっているであろう。ひどい目に会った」
 そこに目を奪われながらも、憤懣やるかたなくくってかかる。
「おまえ、いったい何人の女房に手を出しているのだ」
「さあ…数えていませんな」
「午後、4、5人ほどに取り囲まれて体育館の裏…じゃない朝餉(あさがれい)の間に連れ込まれた」
「ほう、なかなか積極的で」
「冗談じゃない。口をそろえて責めたてるのだ、不実な俺を」
「流石兄者。よっ、恋のさすらい人!」
「全部おまえじゃないかっ」

 そしらぬ顔の弟は、しとねの上に身を横たえたまま、土器(かわらけ)の中の濁り酒を呑む。
面憎いほどに表情は変わらない。

「特にあの、左近とか言う女房、実に恐ろしかった。『いえ、私のことは忘れられてもいいのですけれどね、
二人のことを誓ったあなたが神罰で亡くなるのではないかと思うと惜しまれてなりません』って、
脅迫だぞ、あれは。絶対に丑の刻参りかなんかやっている」
「呪われるのはオレじゃん」
「それなら……って名前は俺じゃないかーー」

 年月隔てたその昔、大納言の北の方が産み月を迎えた。
 待ち望まれたはずのその子は、一人ではなかった。その時代、不吉とされる双つ子。
取り囲む女房たちは驚き脅え、その忌み子の始末を語り合った。
 それを静めたのは、たった今産み落としたばかりの北の方自身だった。
 捨てるつもりはない、と彼女は言う。
 内裏はそれを許さないだろう、との声にからからと笑い、生まれたおのこは一人と告げよ、とのたまった。
 流石、検非違使5人がかりで押さえきれなかった賊を、ただ一人、片腕で投げ飛ばしたことのある北の方、
その剛毅さは例えようもない。
 若君は一人とされた。東の対の奥に東北の対が築かれ、そこで密かに育てられた。

「……で、どうやって切り抜けたんですか?」
「尚侍の君が…って姉者だがな、通りかかってどうにか助けてくれた」
「あちゃー」
「どうせ弟者のやったことでしょ、って。明日局に行け。そして叱られろ」
 彼女には、二人ともに頭が上がらない。
「ここしばらく会わなかったが、元気でいらっしゃったか」
「もちろん。変わらないな、主上との仲も」
「たとえ至高の存在であろうと、一人に縛られる方ではないからな」
「そうだな。こっちは?」
「うむ、昼に妹者が泣きながら駆け込んできた」
「なんと。何故に」
「雀の子をイノキが逃がしつる、と」
「イノキって何?」
「今度新しく雇った雑仕だ。母者並に大きいがなんとも不器用な男でな、へまばっかりやっている。
せっかく捕まえた雀を逃がしてしまったらしい」
「ほう」
「だからこちらも、生き物を飼うことは罪深いことですよ、と柄にもなく説教」
「罪深い…かな」
 傍らの円座に腰を下ろし、まっすぐに彼を見る。
「俺はむしろ飼われていたいね、おまえに」
 燈台に点された明かりが揺れる。几帳に、二人の影が映っている。
弟者は兄から目をそらし、その影を振り返った。
「………無理なことを」
「でもないだろう。どうせ誰も気づかない。俺は部屋に籠っていたいのだ」
 ごく身近なものしか二人の面立ちの違いはわからない。元服したころ、兄者が弟をそそのかした。
自分の身代わりになることを。
 最初はおずおずと、次第に大胆に、弟者はその役を楽しみだした。
兄の名を名乗り、兄として、蔵人の職を、いくつもの情事を。
 同時に兄者は弟としての暮らしになじむ。誰にも会わずに一人部屋で、書や絵物語に親しむ姫君めいた生活。
 しだいに互いとしてすごす日が多くなっていく。
 今では5日に1度ほど、強く弟者に促された兄がきわめて義務的に参内するようになっていた。

「従兄弟者は気づいている。あと、たぶん主上も」
「それは一大事ではないか」
「事を荒立てる気はないようだ。ただ、あの方はあなたのことが気に入っているから、
オレが出仕するとほんのちょっとがっかりする」
「気のせいではないのか」
「先日、モララー殿にも言われた。貴殿がやや不調な日に限って主上のご機嫌が麗しいようだ、って」
「うわ、まず」
「と、言うことであきらめて今までどおりで」
「はぁ」
 大きなため息をつく。
「また身に覚えのない理由で、女房にガンつけられたりするのだな」
「なるべく気をつけますよ」
「妹者くらい素直な子ならいいのだが。そういや彼女は落ち着いたのか」
「まあね。夜も来ていいか、と言うから、夜はひちりきの練習をせねばならんのでだめだ、と言っておいた」

 ちょうど口にした酒を盛大に噴く。

「ちょ…おま……」
「笙とまでは言えないしな」
 顔を赤らめた兄者の膝をそっと撫でる。
「で、上?下?」

 からかうような声に、意地を取り戻したらしく、ぶっきらぼうに選択する。

「あんた、外に出ると大抵抱くほうやりたがるな」
「これでも攻撃的になるんだ……静めてくれ」
「OK」

含んだ笑いとともに承諾した。

 すだれ越しに、月の光が射し込む。
 今宵の月はわずかに朱の色を含んでいる。
 先刻、怒りつつ歩いた御所の玉砂利の上で、それを見ながら弟を思った。
 今、腕の中の相手は火影に映えて、その月に似て見える。
 ぬめるような艶を持った袍(ほう)が、無造作に投げ捨てられ、二藍の帯が床に流れた。
 指貫(さしぬき)を脱ごうとして、その紐を絡めてしまう。
 いらついていると、器用な指先が瞬時にそれをほどいてくれる。
 ほどいた弟者は、口もとに苦い笑いを浮かべた。

 ――これじゃ、どんな深窓の姫君も、自分で脱ぐぞゴラァって思ってるな。
 しかし苦情がきた覚えはないので、その後のことはどうにかこなしているのだろう。
 胸が痛む。それもひどく。
 自分のことは棚に上げて、自分以外の誰かに会う彼を恨んでしまう。
 ――全て奪って、閉じこめてしまいたい。
 吐息を感じながら、かすれた声であえぎながら、闇のような感情を抱いている。
 自分から躯を開いて、片足を相手の肩にのせて、腰を浮かせて誘いかける。
 片割れが耐えられずに重みをかける瞬間、多分その相手以外の全てを嘲笑している。
 綺麗ごとで包んで、兄者をいさめる自分が嫌いだ。
 冷静だの、理性的だのと言われて、そんな風にふるまう自分など、さっさと消えてしまうがいい。

 その想いは兄者にはわからない。
 ただ、苦しそうに見えるだけだ。
 「……辛い?」
 黙って首を横に振る彼を、優しくそっと抱きしめる。
 なだめるはずがなだめられて、そのままゆっくり溶けていく。
 夜風が、火影を揺らした。
 重なった影も揺れ、ふいに、固く停まった。

 東の対にも自室がある。
 ちょうど渡殿の手前の場所だ。そこには二人して行くことはない。姿を現すのはどちらか一人だ。
 そこに消えていく弟者を見送り、昨夜の会話を思い返している。
「主上の羹(あつもの)が凍らなければいいが」
 故事に絡めて軽口を叩いたのは自分だった。
 允恭天皇の時代、同母の兄妹がただならぬ仲となり、そのためにそんな変事が起こったという話である。
「あの方なら、そういう料理だと思って気づかないだろう。それに……起こるわけがない」
 皮肉な声の色。
「どうして?」
 つい、尋ね返してしまう。
「………オレは存在しないのですよ」
「いるではないか」
 傾いた月を遠目で探し、見つけられずに杯を空けた。
「いない。だからこれは、あんたの一人遊びだ。羹が凍るわけがない」
 ――抱いているときも変だった。
 いつもと違って頼りなげな風情で、それこそ月の光のように消えてしまいそうだった。
 そう考えて、兄者は少しおかしくなる。
 行動的でひねくれて、けっこう切れ者の弟は、はかなさの対岸に住んでいる。
煙じゃあるまいし消えやしない。桜に襲われたって余裕で闘いそうだ。

 

 香木の枕に頭をのせて、弟者の面影を浮かべてみる。
 瞳の色素は相手のほうがやや薄く、鼻梁はいくらかこちらのほうが尖り気味だ。
 そして指先。見た目は変わらないのにずっと器用で、いつだって彼を翻弄する。
 昨夜のその軌跡をたどりなおしているうちに、かなり不埒な気分になって、唐櫃の中をあせりだす。
 唐渡りの『楊貴妃ぬれぬれ萌え絵巻き』にするか『天子はあたしの虜なの・実録妲己の酒池肉林!』にするか、
はたまた和物の『裏伊勢物語・淫虐の宴・獣たちは東国を目指す』にするか、
まじめな顔で検討する。
 結局、『戦慄の美乳・ああっ西施さまっ・傾国の美女の人形(ひとがた)付き』を取り出して、
いたらぬ行為に及んでみる。そこそこ悪いわけではないけれど、夜の濃密さとは較べようもない。

 ―― 一人遊びであるわけがない。
 想像上の昨夜の弟者に反論する。
 体を重ねたときのあの気持ちは、妄想なんかじゃ補えない。第一、一人じゃキスは出来ない。
 そうつぶやくと、夢想の相手は問い掛ける。
 ――女に不自由する立場じゃないだろう。
 同じ問いを返してやる。
 ――じゃあ、おまえは?
 あまたの美女を渡り歩き、湯殿のたきつけにできるほどの文を集めて、
それなのになぜ、俺を誘う。

 絵巻物を巻き戻して、角盥で手を清め、もう一度朝寝と決め込むことにする。
 ――目が覚めたら、妹者と遊んでやろう。
 彼は再び眠りについた。

 渡殿を通る足音で、相手の機嫌がわかる。
 今日は大分悩んでいる。
 長くもない渡殿で時たま止まり、しきりに考え込んでいる様子である。
 御簾ごしに覗くと着替えてきたらしく、浅黄の単の上に白の袿(うちき)を重ねていた。
 目が合っても微笑まない。

「……どうしたのだ。何かあったのか?」
「いや……」

 内裏には世を退いた古老が幾人か招かれており、思い出話に花が咲いていた。
 そのころの記憶を持たない弟者は小さくなり、目立たぬようにふるまっていたが、
最近の事柄についての問いがあり、とうとうと説明し奉った。
 その様を誉められ、つられた同輩が文武に優れ政にたけた選良として讃えてくれる。
「そういえば、殿上童として昇った際なども、特に利発な若君でしたな」
 古老の一人のつぶやきに、賛同する幾人もの年寄りたち。
 弟者は呆然とそれを聞いた。

 兄者が参内するおりは、公務の仕事も適当で、次の日処理に困ることもある。
館にただ一人、することもなく学問と武術に励んだ自分と違い、
在ること自体を認められた彼は、お気楽で間抜けな天然キャラで、向学心などかけらもない。

 そのはずだった。
 幼い彼の武勇伝が語られる。
 ――ちがう。それはオレじゃない。
 適当にかわして、早めに退出する。
 重い音を立てる玉砂利の上で、苦い気持ちで兄を想った。

 ――いつから、ヤツはああだった?

 自分だけが残された幼い日々、弟者はそれを恨んだ。無理に引き剥がされていく兄は、
連れて行かれることを恨んでいた。
 そのころの彼が自分とそれほど違っていたとは思えない。
 けれど彼が私塾で学んでいたころは、課題を仕上げるのも、四書五経を叩き込むのも、
全て自分が手伝った。

 ――本当にそれが必要だったのか。

 身内に弟の優秀さを吹聴していたのは、常に兄者だった気がする。
 そのためもあって身代わりは、推奨はされなくとも容認された。

 ――そういや手跡は。
 あれほど不器用なのに、筆跡はぴたりとあわせてある。いつでも二人が代われるように。

 ふらふらと、部屋の中に踏み込んだ。

「…………施すつもりか」
「なに?」
「オレに、施すつもりなのか」

 ふいに豹変した弟者の剣幕に、兄者は驚いて彼を見つめる。
「さぞ気分がいいことだろうよ。何も持たない憐れな弟に、職を恵み、女を恵み、
立場を恵んで上から見下ろすのは」
「弟者?」
 伸ばした手は振り払われた。
 心底傷ついた顔で。
「おまえは、オレを、怒らせた」
 区切りながら言う。泣きそうに。
「いらねぇ」
 我を忘れた怒りが彼を叫ばせる。
「いらねぇよ!おまえの物など何一つ!」

 力を込めて御簾を殴った。
頼りない生地はあっさりと裂け、その脆さは気持ちを微塵も抑えてくれない。
 黙って聞いていた兄者は、静かな声で話しかける。

「ならば聞こう。俺のモノは何一つ要らないとおまえは言う」
 常ならぬ態度で、揺るぎもせず。

「俺は、俺自身はいらないのか?」
 一瞬、息を呑んだ弟にたたみかける。

「答えろ、弟者!」
 聞いたこともないほど強い声で、強い目で。

 
 いつのまにか月が昇った。
 今宵の月は銀の光で、冴え冴えと夜を照らしている。
 にやっ、と笑った兄者が、その目の光を和らげた。
「……俺は、おまえが必要だ。そのためだったらどんな手だって使う」

 上に向けた掌の先を軽く動かして、弟者を招く。
 蕩けるように甘い唇づけ。
 時が止まる。
 月影さやかな夜のほとりに、互い以外は存在しない。
 離れた後も気を呑まれたまま、普段は賢しげな弟が立ち尽くしている。
その腕を引っ張って、几帳の影へ身を移す。

「籠っていたい、ってのは作り事じゃないぞ。充分本気だ」
「オレは……」
「あのな、おまえがいなかったら俺もいない。でも俺はいるわけだし、ならばおまえもいるのであろう」
「…………」

「後はなんだ、他人か?……例の羹の木梨軽皇子の歌、二つ目のを覚えているか。笹の葉のやつだ」
 黙ってうなづく。
「――かまうもんか、おまえと寝ることができるのなら。まわりの奴が離れようと知ったこっちゃない、っての。
拗ねやすいおまえに贈ってやろう」

 さらり、と言ってのけた兄に、弟者は耳まで赤くなる。
 その様子を余裕で楽しんで、赤い耳元に口を寄せる。

「……で、上?下?今夜は抱かれたい気分なのではないのか」
 意地を取り戻したらしい弟者が、その言葉を否定する。
 すんなりとした腕が伸び、相手の躯を引き寄せる。
 綺麗な長い指先が、体の線をなぞっていく。
 その道すじが熱を生む。
 ひんやりとした月の光の下で酔いしれて、他の事は何も見えない。
 惑溺の、あの手におえない焔が執拗に燃え上がり、静めることはもはや出来ない。
 熱に浮かされた片割れが相手の名を呼んだ。
 悦楽の深い底で、途切れた声がそれに答えた。

                                      了

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ミスガアチコチニ・・・
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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