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笑点 歌丸×楽太郎

昇天出演者の小説です…。

楽屋の中には紫煙が立ち込めている。
しかしこの痩せた老人が入った途端、それは薄くなるのだ。

「ああ、お早うございます」

入ってきた人物に気づくと男は、立ち上がって深く礼をする。
老人は同じように礼をすると、男の横に腰を下ろした。

「何、まだやめられないんかよ」

机の上の灰皿を見て老人が言う。
短くなるまで吸われた煙草が、皿からはみ出そうに積まれている。

「ええ、時々止めようと思って箱を全部捨てちまうんですがね…3時間も持ちませんね」

「ははっ、禁断症状出てごみ箱あさるんかい?
健康にうるさいアンタがそんなんじゃあねえ。いつか肺ガンになっても知りませんよ。」

弟子が慎重に柳色の着物を運んできた。
着替えようと老人が大きめのセーターを脱ぐと、細い手首が露になる。
男はじっとそれを見つめた。

「…そんな師匠こそ、転んで骨3つも4つも折らないでくださいよ」

「なぁに言ってんだよ」

セーターを脱いで薄いシャツ一枚になった身体は薄く今にも倒れそうで、
男は思わず近づき、支えるような手つきをしてしまった。

「何だよ」

「…いえ…何となく、」

男は自分でもその行動の意味がわからずに苦笑いをした。

本当はきっとこの人もわかっているはずだ。
葬式をあげるだの、生きる屍だのと悪態をつくのは
この老人のことが愛しくて仕方ないからだということを。
そしてこの人も、そんな小学生の意地悪みたいなやりとりを
嬉しく思ってくれていることを自分は知っている。

誰よりこの人の傍にいることがいちばん幸せなのを、
ようやく自覚できるようになってきた。

「…ねえ師匠、たまには温泉にでも行きましょうか」

「アンタと2人でかい?
いいねえ、お前さんの黒い腹がじかに見れんのか」

老人はふふっと笑った。
目尻の皺が増えて、喜ばれているのがわかる。
3月の独演会が終わればスケジュールにも少し空きがある。
大体いつ頃にしましょうか、と切り出そうとした時、「出番です」と声が掛かった。
立ち上がり、老人の後に付いて歩く。
廊下には、他の出演者たちが着替えを済ませ立っていた。

バタバタとスタッフたちが走りまわるなか、
老人はゆっくりとこちらを向いて

「桜の咲くころにしましょう」

それだけ言って足早に舞台のほうへ向かっていってしまった。

その後の僕は不謹慎ながら舞台へ上がっている間もずっと、
四月の桜の情景ばかりが頭の中を占領してしまっていた。

_______________________________________
小説なんか普段書かないもんで、
大変稚拙な文章で申し訳ない…__| ̄|○

  • ( ・∀・)イイ!! -- 佐織? 2015-08-25 (火) 13:38:59
  • いいやん -- 2018-01-21 (日) 23:10:47

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