FQ:クレトラ
更新日: 2011-04-29 (金) 16:49:40
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| ラノベのフォーチュン・クエストで妄想……
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| クレトラ(クレイ&トラップ)です。
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*ラノベスレにはSS貼る空気じゃないので、こちらにコソーリ投下。
*クレイ&トラップ:お互い、自分の気持ちに気づいてない、幼馴染冒険者カポー。
クレイ: 黒髪に鳶色の瞳も凛々しい戦士様。
トラップ: 赤髪に薄茶色の瞳、口の悪い華奢な盗賊。
穏やかな午後、町から町への移動中のことだった。
木漏れ日の中を、談笑しながら歩いていたクレイとトラップ。
幼馴染であるところの2人は、お互いを庇い合い、また助け合いながら、着実に冒険者としての修練を積んでいた。
「なぁクレイ、まだ着かねえの? 俺腹減った」
少し前を歩いていたトラップが、首だけ振り返って問いかける。
手入れした形跡がないのに絹糸のような赤毛が、やわらかな光を反射してきらめいた。
「お前、さっき食ったばっかじゃないか」
どことなく甘ったれた口調に、呆れたように答えるクレイ。
「だってよぉ、昼飯ったってシケた乾パンじゃん? 今日の晩飯はうめえモン食おうぜ! 空揚げとさ、フライとさ、串焼き。あとビールなっ!」
「肉ばっかじゃないか」
無邪気に指折り数えるトラップに、クレイは我知らず顔がほころばせた。
一心に今日のメニューを考える幼馴染。
その子供じみた表情をついからかいたくなり、背後から派手な帽子を取ってやろうかと大股に近付いた時だった。
2人の前に横っとびに現れた、獣人の群れ。生意気にもソードだのアックスだのを手に手に構えている。
戦士としての本能を発揮し、咄嗟にトラップを背後に庇うクレイ。
望んだ戦闘ではないが……モンスターに喧嘩を売られたら、即買いするのが冒険者の心得だ。
よく手入れされたロングソードを構える、逞しい腕。
クレイは顎を引いて、鳶色の目を鋭く光らせた。
しかし。奴らのレベルは相当に高く、2人は否応なく苦戦を強いられていた。
ぶつかりあう刃の音が鋭く耳に突き刺さる。
息詰まる戦いの末に、ようやく最後の1匹を追い詰めたクレイ。
打ち込まれたソードを身を引きながら払いのけ、返す刀で袈裟に振り下ろそうとした瞬間。
背後から強化パチンコで援護していた、トラップの絶叫が響いた。
「クレイ!危ねぇっ!!!」
目の前を、真っ赤なものが飛び散った気がした。
衝撃。激痛。悲鳴。
――後は静寂。ただただ、無音の世界。
瞳を塞がれたような、平坦で塗りつぶされたような、闇の中で。
目の前に差し出されたのは、鍛えられてはいるが、男にしては細身の腕。
繊細な指先が強張ったように、自分を助けようともがいていた。
……トラップ……お前は……無事か?……
声にならないつぶやき。
逞しい腕が伸びて、その細い手を引き寄せ、力の限り握り締めた。
微かな鳥の声が聞こえる。
ぼやけた視界に苛立ち、何度も瞬いて強引に目をこらすクレイ。
ようやく焦点が合った目に映るのは、木々をほんのりと包む薄闇。
……俺はどれだけ気を失ってたんだ?
「気がついたか?クレイ」
顔のすぐ傍で、ほっとしたような声がした。
覗き込んでいるのは、トラップ。薄茶色の瞳が心配そうな表情を物語る。
「いて……」
クレイは呻きながら身を起こした。
首を廻して痛む肩口を見やると、そこには包帯が巻かれ、薄く血が滲んでいる。
しかし、この程度の痛みならば、たいした傷ではないだろう。
そんな風に楽観的に考え、傷の具合を確かめようと、恐る恐る腕を動かしてみるが……その太い腕は思うように動かせない。
まずい、そんなにひどいのか、俺の傷。
唇を噛んだクレイ。しかし、すぐに気付く手首から先の不自然さ。
「なんで俺達、手をつないでるんだ?」
今気づきましたと言わんばかりのクレイの言葉に、トラップは一瞬にして真っ赤になった。
「なあ、トラップ?」
相棒の顔色の変化にも気付かず、重ねて問いかけるクレイ。
まだぼけっとしている鳶色の瞳が、心底不思議そうにトラップを見つめた。
「……覚えてねえのかよ」
「は?」
「握って離さなかったんだろーが!」
鼻先につきつけられた指。
反射的に寄り目になりながら身を引き、自分を指差して首をかしげるクレイ。
「俺が?」
「他に誰がいるんだ、あほ!!」
トラップの怒鳴り声に思わず首をすくめ、空いている方の手で頭をわしわしと掻く。
「とりあえず……お前が助けてくれたんだよな?」
「当たりめえだろ。……おめえさ、目の前の獣人切り捨てた瞬間、残ってた奴の弓矢くらっちまったんだよ。そいつは俺が片付けたけどな」
……そうだったのか。
最後の1匹は倒したつもりだったが、隠れていた奴がいたのには気付かなかった。
己の戦死としての修行不足と、気絶までしてしまった情けなさを恥じながら、クレイは傍らの幼馴染に深々と頭を下げる。
「すまなかったな」
「い……いけどよっ。おめえ、重すぎ。ここまで引きずってくんの、大変だったんだからなっ」
一瞬口ごもった後、早口に文句を言い並べるトラップ。
言われてみればここは、戦闘の場からは随分離れているらしい。
周囲に獣人の死体はなく、あと一歩で森を抜けられそうだ。
「そりゃ、伊達に鍛えてないからな。なんにしても、お前がいてくれてよかった」
クレイは精悍な頬をゆるめ、ゆっくりと微笑んだ。
それを見たトラップは、照れたようにあさっての方向に顔を向ける。
ぼそぼそと口の中でつぶやいたのは。
「ていうか、いいかげんその手離せよ」
「……あ」
いつまでも握ったままだったトラップの手。
……道理で汗ばんでると思った。
クレイは短く逡巡すると、細い手をきゅっと強く握り締め、手を離した。
目を泳がせているトラップの頭を、ぽんと軽く叩いて立ち上がる。
一陣の風がその首元を吹きぬけ、艶やかな黒髪をなびかせた。
「行こうか。空揚げにビールだろ?」
まばらになった木立の向こうに目をやる。
淡い夕闇の向こうに、暖かそうな街の明かりがふんわりと浮かんでいた。
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