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隆起の朝倉北丘

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北丘は目を開けた。開けても何も見えないのだが。
彼は自分がベッドかソファーか何かの上に寝ているらしいことに気付いた。
体を動かそうと試みてみたが全く動かなかった。
今や彼は死にかけていた。
一度は止める決意をしたとはいえ仮にも鏡の国の戦士である彼にとって布団の上で死ぬと言うのは甚だ不本意な事であった。
彼としては王者に瀕死の重傷を負わされた後カッコよく王者を道連れにするとか、そうでなければ王者の腕の中で消滅するとか、そういうカッコいい死に方がよかったのだ。

死ぬ間際に思い出すのは朝倉武の事ばかりである。
彼は朝倉武に責任があるのだ。

北丘修一は年収6000万円の弁護士である。
黒を白にするスーパー弁護士と半ば陰口を叩かれつつ、横領大好き、贅沢大好き、お金が大好き、人間の欲望が大好きな30歳である。

朝倉武は凶悪脱獄犯である。
13歳の時に家に火をつけ両親を殺し、その後は中学高校と進学するも問題を起こし退学、自動車工場に勤めるも問題を起こし退職、その後は犯罪人生まっしぐらの25歳である。

全く共通項の無さそうな二人には接点があった。
裁判の被告人と弁護士である。朝倉は「無罪にできる弁護士」というから北丘にした。北丘は「ヒマだったから」弁護を引き受けた。
結果は懲役10年であった。この結果を朝倉は逆恨みした。
朝倉の精神が異常であると訴えればもっと罪状を軽くする事もできたが朝倉はそれを拒んだ。
北丘は朝倉は明らかに精神がおかしい人間だと思ったが、依頼人の機嫌を損ねるのもよくないのでとりあえずその方向は主張しないで終わった。
地裁の判決が出て、北丘は朝倉の弁護士を降りた。
それで終わったと思った。
しかしその後、接点のあった二人には共通点が出来た。
同じライ夕"―だという事である。
北丘は既にライ夕"―であった。朝倉は脱獄して、ライ夕"―になった。
二人とも相手がライ夕"―である事はライ夕"―になった後始めて知った。
朝倉は北丘を追いかけた。単純に逆恨みの感情からである。
しかし北丘は強かった。
朝倉は今まで「イライラするから」と言う理由で人を殴ったり殺したりしてきた。
殴られるのは自分でもよかった。
要するに、誰でもよかったという事である。
しかしここで初めて朝倉は誰かに拘るという事を覚えた。
朝倉は北丘を追いかけた。特に何事も無く夏は過ぎた。

夏が終わって秋になり、朝倉は北丘のせいで逮捕され刑務所に入れられた
。ライ夕"―バトルでイライラの減っていた朝倉は再びイライラを覚えた。
間抜けな森元弁護士を罠に嵌め、朝倉は脱獄した。もう秋も深まっていた。
北丘は朝倉が脱獄したのを知り、ああ、またか、しつこいな、と思った。
北丘は朝倉が自分を追いかけてくるのは単純に逆恨みの感情からだと思っていた。しかしそうではなかった。

それは晩秋の事だった。
いつものように共鳴音に呼ばれて鏡の中に入り、そこで王者と出くわして戦いを挑まれ、9分ぐらい後に鏡から出てきた。
そこは埃っぽい倉庫である。北丘は疲れたのでその場に座り込んだ。
凶悪脱獄犯の前で座り込むなんて不用意な、と思われるかも知れないが、朝倉武というのはいつもイライラする、と言っている割に生身のライ夕"―を殴る事が無い。
殴るのは変身後のライ夕"―か、通りすがりの一般人である。
生身のライ夕"―の言動に腹を立てたときは相手では無くそこら辺の物を殴るのだ。
しかし今日の朝倉は普段の朝倉とは違っていた。
別に生身の北丘を殴ったわけではない。
ただ北丘に口付けをしてきただけである。

朝倉は座り込んでいる北丘の前にしゃがんで、口付けをした。
北丘が特に抵抗もしないでいると再び口付けをしてきた。
口を離した後朝倉は北丘をじっと見た。北丘の出方を伺っているようである。恐らくここで北丘が止めろと言えば朝倉は止めるのだろう。
そしてそれきり二度と北丘にこのような事はしてこないだろう。
それでいい筈である。その方がずっと北丘にとって望ましいはずである。

しかし北丘はそうしなかった。
単純な好奇心でもあったし、またそれ以外の感情もあった。

しばらくは朝倉にされるがままにしていたが、朝倉が北丘の上着を全部脱がせて砂だらけの床に倒そうとするのでそれを止めさせようとした。
しかし朝倉は情事の時には服を全て脱ぐもの、という妙な拘りがあるらしく従おうとしない。
しばらく押し問答を続けているうち北丘の視界の端に工事用の青いシートが写った。
あれを敷くなら何も無いよりはマシという物である。
無言で朝倉をその方向へ促した。

上から下まで脱がされた北丘は北丘の服をいちいち畳んでいる朝倉を見て、妙に几帳面なのを薄気味悪く思った。
しかも自分の服は全然畳んでないところからして、おそらく北丘は金持ちだから服が汚れたら困るだろう、という考えが根底にあるのだろう。
服が汚れるより俺の体の心配をして欲しい、と北丘は思った。
もう秋も終わりに差し掛かっているというのに何故倉庫内の固い床の上で全裸で情事をしなければならないのだろう。
もう自分は病気で免疫力が低下して風邪を引いたら命に関わるのだし、
大体服を着たままなら朝倉に襲われたとの言い訳も立たないではないが、
裸でしかも服が畳んで隅に積まれた状態で、襲われたんです、と言っても白々しい事この上ない。
行為自体は気持ちよかったが、痛かったのはシート越しに床に擦られた後頭部や背中である。
シートを敷いても痛いのにはかわりが無かった。
終わって服を着る北丘を、服を着ていない朝倉がニヤニヤしながら見つめている。
みっともないから早く着ろ、と促すと朝倉も服を着だした。
服を着て、丁寧に揃えてあった靴を履くと朝倉が口付けしようと顔を近づけてきた。

北丘が目を閉じようとすると北丘の携帯電話が鳴った。
五郎からである。朝倉が大変面白く無さそうな顔をした。
適当に言い訳をして電話を切ると、朝倉の顔が面白くないを通りこして無表情になっていた。
そして、今度から電話は切っとけ、と言った。北丘は、お前こそちゃんと風呂入れ、と言った。
そして北丘はその場を去った。それでその場は終わった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )お目汚しスマソ


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