夏の夜
更新日: 2011-04-29 (金) 20:48:39
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「ここは…?」
赤木が目を覚ましたのは真夜中。
目を開けるなり飛び起きて「痛…」とか呟いてるあたり、どこかしこで無茶なことしてるんだろうと思われる。
自分が赤木を心配してることを自覚して、そんな義理はないと思い直し何故か気恥ずかしくなった。あまり喋らないようにしよう。
「工藤?」
赤木の意識は割としっかりしているようだった。ひと安心、て、それも違う。
俺の密やかな葛藤と一人問答をぼうっとした目つきで1秒ほど見たあと、赤木は再び問うた。
「ここ、どこ」
俺ん家。とは言いたくなかった。別に恥かしくて偽るようなことでもないのに、何故か告げるのが躊躇われた。
「工藤ん家…」
当の赤木は洞察力がたいそう鋭いようで参った。尋ねるのではなく自分で呟いて納得しているだけだ。
「どこかヤバイとこはないか」
素気なく…を装って無機質に尋ねた。が、そろそろ無駄なんじゃないかと暗に気付いている。
「ヤバイ?うん、大丈夫」
そして途切れる会話。俺は元々無口で、赤木も多くを語らないタイプのようなのに、何故か気まずく感じられる。
「聞かないの」
沈黙を破ったのは赤木の方。
「俺が聞くことじゃねえだろ…それは」
こないだは磯の香りを漂わせて、今日はどこか体に痛みを訴えて、だいたいどんなことかは想像がつく。
「ふうん」
また赤木は「ふうん」を繰り返す。俺はこれがなんとなく苦手だった。それがどういう反応なのか、具体的に解らないから。
「体が平気なら帰れよ、次が最後だからな」
「次?」
これは俺のつまらないモットーみたいなもので
「3度までなら助けてやるが、それ以降はくどいだろ、4度目はナシ」
赤木の方に3本指を立てて言った。
「ククク、ふうん…。じゃあさ、そのラス1、今使う」
赤木は小さく喉で笑ったあと続けた。
「今?」
「泊めてよ、今夜。それで3度。それっきり。」
意外なことを赤木は言った。帰れよと言ったら帰るだろうと思っていた。
「俺はランプの魔人やそんなじゃないんだ。それは違うだろ」
3度願いを叶えるなんて、そんなこと俺がやったら可笑しいだけだ。
「じゃあ、俺今右肩が痛む」
じゃあ、なんてわざとらしく赤木が言った。
こう言ってるんだ、他に仕様がない。
「わかったよ、わかった。それでいいだろ、泊めれば…」
言い終わってから、何だか自分を一瞬だけ言いくるめるための口実に思えてきた。
「ありがとう。ククク…」
赤木はまた、喉で笑った。
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