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SIREN2 フリーター&作家

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                    |   和物ホラーゲームシレン2からフリーター&作家
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  百合っぺ6:00デモで阿部ちゃんが作家を連れて逃げてたらというAU話
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ちょっとネタバレかも注意
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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三上に請われるままたどり着いたのは、果たして冥府と呼ぶに相応しい空間だった。
辺りを覆う分厚い闇の中心、赤い液体を湛えた水溜りの中に巨大な"何か"が佇んでいる。
現実感の欠落した光景を、阿部は呆然と眺めた。まるで出来損ないのSF映画だ。
水生生物を思わせる下半身に、不自然な程細くくびれた胴。
数メートルはあろうかという長い首の上に、見慣れた女の顔が乗っている。
(柳子?!…なワケねえか。何なんだよアレは……)
「脩!!」
悲鳴のような章子の叫びに阿部は我に返った。
三上は恍惚とした表情を浮かべ、一歩また一歩と水際へ近付いていく。
ぞっと背筋が冷えた。どう見ても尋常な様子ではない。阿部は走った。
水の中の異形から伸びてきた無数の触手が触れる寸前、辛うじて三上の腕を捉えた。
そのまま力一杯引き戻す。濡れた触手の先が僅かに頬を掠めた。
おぞましさに全身が総毛立ち、生理的な嫌悪感が瞬く間に全身を支配した。
「逃げるぞ!」
こみ上げる吐き気を堪え、弾かれたように走り出す。
何事か喚き続ける三上を引き摺るようにして、阿部はひたすらに地上を目指した。
けたたましい女の笑い声とサイレンの音が何処までも追ってきたが、決して振り返ることはなかった。

「……ったく、どーなってんだよ」
阿部は毒づいた。答えが返ってくるわけもないが、それでも口に出さずにいられない。
際どいところで冥府から帰還を果たしたものの、章子とは再びはぐれてしまった。
他の人間もどうなったのか判らない。夢中で駆けて、いつの間にか森のような所にいた。
瓜生ヶ森の辺りだろうか。こういう事は島の地理に詳しい人間に聞くべきなのだろうが、
生憎と連れはまともな返事を期待出来るような状態にない。阿部は短く溜息をつく。
憔悴しきった目の前の男に、作家三上脩の怜悧な面影は微塵も無かった。
受け答えもまるで要領を得ず、お姉ちゃんがと繰り返すばかりで埒が明かない。
阿部は差し当たって安全そうな物影に隠れ、少し休憩をとることにした。
三上はある種のパニック状態にあるが、そう長くは続かない事を阿部は知っている。
泣くのと同じでひどく体力を消耗するのだ。
刺激せず、時間をおけばじきに正気を取り戻すだろう。柳子のときもそうだった。
「……ん?」
ポケットから煙草を取り出して、ライターが無い事に気付く。軽く舌打ちをした。
いつもこうだ。気付かぬうちに随分と色々なものを失くしてしまった。
すぐ隣に座り込んだまま、三上は沈黙を守っている。
放心しているのか、それとも何か考えを巡らしているのか、阿部にははかりかねた。
(確か三十三とかいったか……)
阿部からみれば九歳年上ということになるが、青褪めた横顔はひどく頼りなげに見えた。
守れるだろうか。ふいに、阿部はそんなことを思った。
他人の視界を利用して物が見えるとはいうが、本来三上は日常生活に盲導犬を必要とするほどの弱視だ。
行動はいかにも覚束無い。遅れず付いて来るだけで精一杯だろう。
足手まといには違いないが、まさかこんな所に見捨てていくわけにもいかない。
見慣れた部屋で、血にまみれて横たわる愛しい女の姿が脳裏に蘇る。
阿部はきつく目を閉じ、頭を振った。
柳子は死んでしまった。どんなに望んでも取り戻すことは出来ない。
しかし三上は生きている。一人が二人に増えただけだ、俺が何とかするさと腹を括った。
二度とあんな思いはしたくない。章子もきっと無事だ。絶対に生きて帰れる。
自分にそう言い聞かせ、呼吸を三つ数えたところで、咥えたままの煙草を勢いよく吐き出した。

「なあ、ちっとは落ち着いたか?」
「……ああ…すまない。…もう、だいじょうぶだ」
覚えたての言葉を操るようなたどたどしさで三上は返した。
セットされていた黒髪は所々乱れて、疲れきった表情に濃い影を落としている。
とても大丈夫そうには見えないが、阿部は敢えて異を唱えないことにした。
「ところでさぁ、ここどこよ? 何か森っぽいんだけど」
三上は記憶を手繰り、島の全景を仔細に辿った。
「裏門の方から出たなら、ここは瓜生ヶ森で間違いないと思う。東に進めば金鉱の採掘所に、北へ進めば瀬礼洲に出る」
「採掘所ねえ…別に用はねえな。さすがに金とか掘ってる場合じゃねえし。…港は?」
「採掘所を崩谷方面に抜ければいずれは夜見島港に着くはずだ」
「船あんの?」
「さあ。何せこの状況だ、期待はしない方がいいだろう」
「そーだよなぁ。…ま、とりあえず行ってみっか。今から遊園地戻んのヤバすぎるもんな」
阿部は即決した。船の有無はさて置き、島の中心部をうろつくよりも建設的に思えた。
色々な可能性について考え込むよりも、思いつくことを手当たり次第試してみる方が余程性に合っている。
人はそれを短慮と呼ぶわけだが、本人に改めようという意志はない。

「それからアンタは武器持つな。落っこってても拾うなよ。そっちのがかえって危ねえし」
「阿部さん…」
「心配しなくても俺がきっちり守ってやるよ。占い女みっけて早いとこ島から出ようぜ」
阿部の言葉に三上は少なからず驚き、それを悟られぬよう目を伏せた。心が動くのを感じた。
絶えず命の危険に曝されているこの状況下で、自分を連れて逃げるつもりらしい。
言動はラフだが、かなり人のいい青年のようだ。
阿部はちらちらと隣の様子を窺っていたが、やがて意を決したように手を伸ばした。
「!」
思いがけない接触に、今度は三上も動揺を隠せなかった。
「あー…アンタいつの間にかはぐれてるからさ。こっちのが面倒なくていいだろ?」
些か決まり悪そうに阿部が言った。迷子防止の為に手を繋ぐということらしい。
三上は幼子のように手を引かれる自分の姿をなるべく想像しないようにした。
「何というか…さぞかし様にならない姿だろうな…」
「今更ヘンな見栄張ってんじゃねーよ。どうせ見てんのなんてあのゾンビとか白アスパラみてーな化け物ぐらいだろ」
「違いない」
こんな時だというのに、思いがけず笑みがこぼれた。強い手だと三上は思った。
たった今、この手に生殺与奪の権を委ねたのだ。頷き、命の感触を確かめるように握り返す。
「うっしゃ、行くか」
驚くほど暢気な調子で阿部が言う。ふたりは先の知れない闇へと踏み出した。

午前24:00、前触れもなく異変は起こった。
「おいマジかよ!?」
悲鳴のような阿部の声に、切迫した事態を察して三上は身を固くした。
ビリビリと地を揺さぶるように轟くサイレンを合図に、荒れ狂う赤い海が、
上方から借り物の視界いっぱいに迫ってきた。ほんの数秒の出来事だった。
強烈な既視感。波に呑まれる衝撃と、手首に覚えた鈍い痛みを最後に、三上は意識を手放した。

規則的に打ち寄せる波の音が、やけに遠く聞こえる。
「…いてて…チクショ、口ん中しょっぺえ……」
身を起こした阿部は恐る恐る辺りを見回してみた。周囲は明るく、まるで別世界だった
死臭に満ちた悪夢の夜を忘れたかのように、世界は柔らかな色彩で溢れかえっている。
静かだ、阿部は思った。ここは静かで、眠たくなるほどに穏やかだ。
「…んぁ?」
自分が何かを握り締めていることに、阿部はこの時初めて気付いた。
見ると、すぐ隣に横たわる男の手首をしっかりと掴んでいた。
すっかり我に返り、慌てて手を離す。真新しい痣がくっきりと赤く残った。
「おい、生きてっか?」
揺すると三上は呻き、いかにも大儀そうに薄らと目を開けた。
(ここは……?)
コンクリートの確かな感触を背に受けて、緩やかに意識は覚醒した。
疲労のためか、全身がひどく重い。指一本動かすことさえひどく億劫に感じられた。
思考は鈍く、温かな蜜の中でもがいている心地がする。
「ああ…何とか。一体…何が起こったんだ? たしか、津波が…」
そう、津波にのまれたのだ。夜見島港を目指している途中だった。サイレンが聞こえて、それで――――
「皆、消えちまったのか……?」
ぽつりと阿部が呟く。予感を肯定するように、他人と視覚を共有するあの奇妙な能力が消え失せていた。
自分の無実を信じてくれた章子、漁船に乗り合わせた眼鏡の雑誌記者、柳子に似た雰囲気を持つ不思議な女。
皆、津波に巻き込まれて死んでしまったのだろうか。

「……っ」
阿部は泣いた。自分でも説明のつかない何かが、抑えようもなく溢れ出して止まらなくなった。
三上はじっと耳を澄まし、彼が抱えた傷の深さを思った。
掛けるべき言葉は何処にも見当たらない。途方に暮れてそっと手をのばした。
背を丸め、子供のように嗚咽する男を、遠い昔加奈江がしてくれたようにただ抱きしめてやった。
両手が三上の背を探り当て、溺れる者の無心さで縋り付く。
腕の中で泣き崩れる阿部は怪異から自分を守り続けた男とは別人のようで、何故だかずきりとした。
三上はその感覚を知らないわけではない。覚えのある、懐かしい痛みだ。
目の前に広がる凪いだ海を眺めながら、三上はすべてが終わったのだと感じていた。
混乱した頭はそのことをどう受け止めていいのか決めかねていたが、
少なくともこの世界に一人取り残されたわけではない。今はそのことを感謝せずにはいられなかった。
朝の光は、触れるものすべてを金色に染めて音もなく降り注いだ。

低木の葉陰から、一対の黒い眸が浜辺の様子を見詰めていた。三上の相棒ツカサである。
聡明すぎるのも考えもので、姿を現すタイミングはかっているうち、出るに出られない雰囲気になってしまったのだ。
彼女は軽く鼻を鳴らし、仕様のない、といった態でその場に座り込んだ。そうして、傷付いた男に寄り添う主人の姿をしばし眺めた。
彼が自分から他人に触れようとするのを、ツカサはこれまで見たことがなかった。
空白の過去だけを見つめ、もう長いこと独りで生きてきた彼が本当に必要としているのは、同じ痛みを共有出来る"誰か"ではないのか。
失ってきたものの代償として、彼はそれを手に入れたのかも知れない。
そうならばいいとツカサは思う。主人の幸せを守ること、
それは盲導犬としての彼女の使命であり、絆を育んできたパートナーとしての願いでもあるのだから。
決してひとりきりにならないように、彼を導く光のあるようにと、いつも願っている。
ツカサは姿勢を崩し、揃えた前肢にゆったりと頭を預けた。
瞬きの感覚が次第に狭まってゆく。傷付き、暗闇の中を駆け続けた体が休息を必要としているのだ。
もう少し二人の様子を見守っていたかったが、本能の欲求に逆らうことが出来ずにまぶたを閉じる。
暖かなモノクロームの夢に守られて、彼女は束の間の眠りについた。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 位置関係方角その他色々とアレなのは勘弁してください
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) …あと特に801というほどのことが起こらなくて申し訳ない
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

そして阿部ちゃんはジェントルマソの魂をもつチンピラだと信じて疑わない


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