パイレーツ・オブ・カリビアン
更新日: 2011-04-29 (金) 21:27:39
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| 映画第二段に先駆けて、某海賊映画モノ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 伏せ切れているだろうか…
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| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ガクブルだな
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
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俺が彼を見ると
彼も俺を見る
どうか かみさま。
―――どうか。
満月の光の中、本来の主を得た黒真珠が、新たな乗組員二人を乗せて進む。
一応客室に当たるらしい部屋の窓からは、ゆるやかな女の歌声が聞こえて
くる。
慣れない繕い物に神経を尖らせていた彼女は、ふと「綺麗な歌だ」と
しみじみ漏らす男の存在に気付いてその美しいおもてを上げた。
「お前さん、前から思ってたんだが、なかなか歌が上手いな」
「―――歌? ・・・って・・・」
黒真珠の船内、ようやく自分の空間になりつつある元は客間であった
らしい一室。気付けば、この船の持ち主であり同時に船長でもある男が、
いつの間にかのっそりと窓に腰掛けているではないか。彼女がこの部屋に
入って繕い物を始めてから随分と経っているのだが、いつものことながら
一体どこから入り込んだのか。
「あ~の~ね~え! 貴方、プライベート・スペースって言葉を知って
いて? 歌がどうとか言う前に、挨拶の仕方を覚えるべきじゃないかしら!」
「まあまあそう怒るな、血圧上げると綺麗な肌に毒だぜ、白鳥さん」
「私はもう白鳥じゃなくってよ!!」
「それは失礼。新婚さんはもっと幸せそうにしてるもんだぜ、お嬢ちゃん」
「~~~~~~っ!」
どこまでも食えない、自らの寝室に不法侵入した男に、彼女は憤懣やるかた
ない様子でどっかりと椅子に座り直した。
「そもそも貴方、どうして私の部屋に何度も何度も何度も『遊びに』来るわけ?
お陰で彼が毎回心配してるんですからね! 私の身にもなってよね!!」
「そいつぁ悪かった、でも愛ゆえだ、許せ、お嬢ちゃん」
「茶化すのはよして頂戴!!」
「茶化してなんか。俺は真面目だぜ、マダーム?」
そう言って下手くそな(本当に下手くそな)ウィンクをよこしてくる相手に一気に
毒気を抜かれ、彼女は溜息をひとつ吐いて繕い物を再開することにした。元々
何処まで本気で何処まで冗談か分からないこの男に、真面目に取り合う方が間違って
いるのだと言うことは、先の一連の事件で行動を共にするうちに嫌という程思い知ら
されている。そしてそんな中で彼女が得た結論はひとつ。すなわち、『基本的にこの
男の言動は無視して自分のすべきことをやる』ということである。
「―――で? 歌がどうしたんですって? 」
手を動かしつつ、それでも律儀に聞き返してくる彼女の様子に、男はほんの少し
驚いたような顔になり、次いで至極満足そうに話を再開した。自分や夫のこういう
真面目なところがこの男にちょっかいをかけられる所以なのだと言うことには、
この生真面目夫婦は未だ気が付いていないらしい。
「いや、あいつも・・・奴の親父もな、歌が上手くてな。お嬢ちゃん、お前よく
歌を歌ってるだろう。さっきだって歌ってたし。あいつもよく歌うやつだった。
俺もよくあいつから、イギリスの古い歌とやらを聴かされたよ。お前さんの歌を
聴いてたら、なんか昔を思い出してなぁ」
「昔を?」
十年以上過去のまだ青年といえる年齢の男の側で、青い海をバックに陽気に歌を歌う
夫と同じ顔の男の姿を思い描いて、彼女は思わずクスリと笑みを零した。顔だけでなく、
性格まで夫に似ているという靴紐の男。きっとさぞかし船長とは、でこぼこコンビ
だったのだろう。
「暢気なものね。海賊って言っても」
「いやぁ、そうでもなかったけどなぁ」
何の気無しに言った言葉に、思いもかけない固い声音が返った、気がした。驚いて
男の方を見れば、彼は相も変わらず、窓枠を椅子代わりに外の海を見つめている。
「暢気じゃなかったと思うぜ、実際はな。あいつはすごくいいやつだったから、
とんでもなく青二才の船長にも付いてきてくれてな。でも、俺はとんでもなく
青二才だったから、影であいつがどれだけ俺のやらかした色んなことのフォロー
して、あいつ自身の首を絞め続けてたかなんて、考えたこともなかった。
………ほんとに、いいやつだったんだぜ。誰から見ても、多分。俺なんかの味方に、
付きさえしなけりゃ」
本当なら、誰かから殺されるような目にあわされる人間では、なかったのに、と。
どうしようもない悲しさと、後悔。滅多に感情を露わにしない船長が垣間見せた
剥き出しの悔恨に、彼女は何を言えば良いのか分からずにただ押し黙った。
彼がこんなにも自分を正直に語ることは珍しい。あの事件以来、久々の満月が
もたらした魔力のせいか。それともこれも、彼なりのフェイクの一環に過ぎないの
だろうか。
「どうしたの? あなたらしくもない。不安―――なの?」
「不安?」
思いもかけない言葉に驚いたのか、どこか遠くを見ていた男の両眼が、まるで
はじめてその存在に気付いたかのように彼女の姿を捕らえる。彼女はそっと椅子から
立ち上がり、男の居る窓の側に立って流れゆく夜の雲を見つめた。
「少なくとも、私は不安だわ。当たり前だけど海賊って、ただの船乗りとは違うもの。
お父様や閣下の力の及ぶところなら良いけれど、大洋に出たら国籍なんて関係なくなる。
そうしたら、本当に私はただの海賊だもの。捕まえられて、殺されるかも知れない。
その可能性は、ゼロではないんでしょう?」
「………まあな。すごいな、お嬢ちゃん。ただの愛に突っ走る考え無しかと思ってたら、
結構ちゃんと自分の立場分かってたんだなあ」
「だから、茶化さないでってば!! だって私は彼の妻だもの! 夫が選んだ道には
従うわ」
僅かに震えた、けれども固い決意に満ちた言葉に、男はほんの少し困ったように押し
黙った。
「ねえ、やっぱり……不安、なの?」
―――彼を失うかもしれないのが? という言葉を、彼女はすんでの所で押し
とどめた。
彼………幼少期に鍛冶屋に引き取られた、住み込み従業員の幼馴染。熱血漢で
正義感に溢れた、まっすぐで純真な、父親は貿易船の乗組員だったと信じていた
青年。
何も知らなければ本当は、海賊とは何の関係もない暮らしをして、幸せな一生を
送れたはずなのに。
けれども彼は、真実を知ってしまった。
本当の彼の父親は、……まごうことなき、海賊で。
そうしてその海賊は。
「貴方の、大切な………」
「―――大丈夫だ。お前さんは、この俺様が、この船にかけて絶対に死なせや
しない」
まるで彼女の思考を遮るかのように、男の至極真面目な声がかかる。また茶化
そうとしているのかと文句を言おうと思って目線を上げれば、思いもかけず真剣な
眼差しとぶつかった。彼女は合わせた目線を思わず逸らし、彼女にしては珍しく
歯切れの悪い口調でぶっきらぼうに返した。
「……それってなんだか、告白みたいに聞こえるけど」
「告白じゃない。これは、誓いだ」
真摯な男の声色に、彼女は逸らした目線をもう一度、黒目がちな船長の両眼に
合わせる。彼の表情からは何の感情も伺えはしなかったが、不思議とこの時の
彼女には、まるで男が泣き出す寸前の子供のように思えたのだ。
「……どうして、私にそんなことを?」
「お前さんは、奴の大事な女房だからな」
「彼の、為なの?」
「ああ、そうとも。奴の為だ。あいつのたった一人の息子である、お前さんを何より
大事にしてる奴の為に、お前さんの事は絶対に死なせやせんさ。勿論……奴のことも」
男のその言葉に、彼女は形の良い瞳を大きく見開いた。男が言う「あいつ」の
ことを、直接的には彼女は知らない。けれども男が彼の事をどれほど大切に思って
いたのかを知るには、それは十分すぎる一言だった。
「ねえ、やっぱり貴方が好きなのって、私じゃなくて……」
勿論それは………私の夫でもなくて。
悼むように言った台詞に、男は一瞬、微笑ったように見えた。
「……俺は、嘘つきだよ。……いつだってな」
でも、お前さんたちのことは好きだよ、と、呟くようなか細いその声すらもさらい
ゆくかのように、海からの風がふわりとカーテンを揺らす。
男は相変わらず、ぎょろついた大きな鳥のような目でこちらを見つめてきていて
……感情の読めないその瞳の奥の、きっと泣きそうになっているのではないかと
思われる表情がどうしても見たくて、彼女は食い入るように男の瞳を見つめ続けた。
と、室内の空気がわずかに動くのを感じる。姿の見えない妻を案じてのことか。
年若い元鍛冶屋が、彼女の在室を確認するかのように入り口から張りのある声を
投げてよこした。
「―――そこにいるの?」
「あ……」
「どうしたんだい?明かりも付けずに。誰かと話を?」
「ええ、あのね、今―――」
怪訝そうな夫の声に立ち上がりつつ男の居たはずの窓際を見ると、もうそこには
海風に揺れるカーテンと、部屋の中を優しく充たそうとする月光だけが留まって
いるのみで。
「……? 誰かいたのかい?」
(―――あいつも、歌が上手くてな)
何故彼が夫の前で姿を隠したのかなんて、分からない。ただ、あの内面を見せない
海賊の、ほんの少し感傷的な一面に、触れた気がして。
「今―――今ね、わたし、歌を聴きたいと……思ったのよ」
「歌……?」
(―――よく、イギリスの古い歌とやらを、聴かされたよ)
それだけで、こんなにも。
「ええ。歌よ。あなたの、歌。古い歌が良いわ。あなたのお父さんが……
歌ってたみたいな」
「父さんが……?」
「ねえ、聴かせて。お願いよ……」
「………」
胸元に頭を寄せ、甘えるように言う妻に、青年は戸惑いながらも窓際に腰掛ける。
一体急にどうしたのかと問う夫に、彼女は酷く優しい、そして彼女らしくもない
少しだけ寂しげな口調で囁いた。
「なんでもないの。……天の邪鬼な雀が、少しだけ昔を……懐かしんでるだけよ」
「雀……?」
分かったような分からないような表情で、それでも愛する妻の言葉に逆らえる
はずもなく、彼は低く静かに、歌い始めた。
幼い頃父から聴かされた―――懐かしい歌を。
“I see the moon,
and the moon sees me;
God bless the moon,
And God bless me……”
「………小娘め」
二人の部屋の窓のすぐ外で、漸く人ひとり入れる程の隙間に身を落ち着けた男は、
腐れたようにそう呟いた。
深々と帽子をかぶっているので、その表情は窺い知る事が出来ない。
耳に優しく響くのは、遠い昔に聴いた、もう届かない友の歌。
ああそうだ、長いこと……もう長いこと自分は、忘れていたのだ。
本当は月はこんなにも………優しくひとを包み込むものなのだと、言うことを。
黒真珠は、ゆるやかに月夜の海原を進む。
彼らが訪れるべき喧噪に巻き込まれるのは、もうほんの少しだけ、先のことかと
思われた。
“ぼくが月をみると、
月もぼくをみる。
かみさま 月をおまもりください
かみさま ぼくをおまもりください”
END
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ マザーグースうろ覚え
| | | | ピッ (・∀・ ) てか801なのかコレは・・・
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|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
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