サントリー/ボスのCM(工場篇)から
更新日: 2011-04-29 (金) 21:12:34
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| サ/ン/ト/リ/ー/ボ/スのCM(工場篇)から
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 出てくる人とかほぼ捏造
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| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ イロイロ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) フカクハカンガエズニドウゾ
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この惑星の人間は、疲れることが嬉しいらしい。
「お疲れ」「お疲れ様です」
陽も傾き、工場の中には仕事の終了を告げる音が響いている。
ここでの仕事も今日で終わりだ。
「今日までよく頑張ったな」「元気でやれよ」
そう温かい言葉をかけてくれながら、仮設の休憩場を一人またひとりと出て行く。
ここでの探査中に置かせてもらっていた資料をまとめ終える頃には、いつも私の世話をしてくれていた若者と二人だけになっていた。
27という若さの割りにここでの仕事が長く面倒見の良い彼は、皆にもずいぶんと頼られているようで、
実際、突然雇ってくれとやって来た素性の分からない外国人(ということになっている)に、一から丁寧に仕事を教えてくれた。
「お疲れ様でした」
「お疲れさん、なァ、ほんっとうに今日でジョーソズさん辞めちゃうの?」
「はい、仕事をはじめる時から決まっていましたし。他の探査・・いや、仕事場も決まっています」
「そっかぁ。残念」
夕日が差し込み、部屋の中がオレンジ色に染まる。
互いに無言のまま数分が経ち、そろそろ出ようかと思い荷物に手をかけ、出て行くときにと用意しておいた挨拶を口に出す。
言葉は、ここへ来る前にしっかりとマスターした自信はある。今のところ生活に支障は無い。
が、こういった特殊な状況下で、自分の認識が実際に使用に堪え得るレベルなのかという事は、いざ使ってみないと分からないものだ。
少しの緊張が走る。
「今まで、ありがとうございました」
「な、なんすかいきなり。照れちゃうって」
「仕事といい普段の生活の事といい、あなたにはずいぶんと世話になりました」
「いや、ジョーソスさんは仕事の飲み込み早いから楽だったよ」
「そうですか」
しまった、ここはケンソンするべき場面だったか。何かいい言葉を付け加えなければ。
タイミングを失い、立ち去る事もできずに見詰め合ったまま再び数分が経つ。
これが「気まずい」ということかなどと考えていると、ぼんやりした表情で彼が口を開いた。
「あー、ジョーソズさんほんとイイなァ。その淡々とした感じとかさ。硬そうに見えて急に雇ってくれなんて無鉄砲に突っ込んでくるとことかさー」
「・・・」
これは褒められているのだろうか。こんな場合はなんと言えばいいのだろう。
「いっつも「光栄です」で流されてたけどさァ、オレ、マジでジョーソズさん好きだったんだぜ」
「・・光栄です」
「ほらーまた言った!う~・・分かってんのかなぁ、分かってねーだろうなぁ」
机に突っ伏し、ガシガシと短く切った茶色の髪をかきみだす。
「好き」は人または物事への好意を表す言葉で間違っていないと思うのだが、何か反応の仕方が誤っているのだろうか。
私の言語力はまだまだらしい、少しの落胆と焦燥を感じる。
彼の反応もまったくもって不可解だが、とりあえずこちらにも好意があることを伝えなければならない。
「私も君に好意を抱いています」
私がそう言うと、彼は一瞬驚いたように目を見開き、しばらくして大きな溜息をつきながら再び机に突っ伏した。
やはり、いまいち理解しがたい行動だ。
「好意ねぇ~・・・ありがと、オレも凄く好意抱いてますよ・・・」
右頬を机につけたままこちらに顔を向けそう言う彼の表情は、まだどこか不満そうである。
「なぁなぁ、ジョーソズさん。ここでの仕事は今日でおしまいだけどさ、これからも変わらずオレと会ってくれる?」
「はい、もちろん。住んでいるところは同じです」
彼の方から言ってもらえて良かった。こちらからお願いしようと思っていたところだ。
親切な彼に好感を抱いていたし、何より心強い。トモダチ第一号というやつだ。
いつかこんな風に、この星の住人と我々が交流する時が来るだろうことを考えると、嬉しくなり自然と笑顔になる。
彼は相変わらずぼんやりした表情でこちらをみている。と、思えば、急に真剣な顔になって立ち上がった。こちらに近づいてくる。
「あの、どうかしましたか」
少し恐い。怒らせるような事はしていないはずだが。
「・・・なぁ、ジョーソズさん。目、つぶって」
急な頼みを不思議に思いながらも、言われるがままに目をつぶる。
文化の調査および円滑な探査のためには、そこの住民に従うのが一番だ。
肩に重圧がかかる。これは、恐らく手だろう。
・・瞼はいつまで閉じていれば良いのだろう。何かの儀式だろうか、この手が離れるまでは、目を開けてはいけないのだろうか。
様々な疑問が頭に浮かび、時間が流れ、えい、と目を開けようとした時、唇にゆっくりと柔らかいものがあたった。
不思議な感触にますます頭の中の疑問符は増えていく。
これは手ではない、手はまだ肩にある。足、は無理がある。柔らかいものやわらかいもの・・・。
肩にかけられた手に少し力がかかり、不安はますます大きくなる。
堪えられずに目を開けると、目の前に彼の瞼が飛び込んできた。ああ、そうか。これは唇だ。
しかしこの行為はどんな意味を持つのだろう。・・・なぜか恥ずかしい。
理解できないまま固まっていると、閉じた瞼が離れていき、ようやく視界がひらけた。彼は笑っている。
「へへ、ジョーンズさんの国でよくやる、親愛の挨拶深いバージョンって事にしといて下さい。・・・じゃっ、また!」
なんだか慌てた様子でそうまくしたてると、勢いよくドアを開け出て行った。
なるほど、口と口の接触は、この惑星で深い親愛の情を表す挨拶なのか。そういえばこの星のどこかではそんなことがあったかもしれない。
原始的ではあるが悪くない。先ほどの感触を思い出し唇を触る。
そうだ、迅速に調査を進めるためにはなるべく多くの人間と友好をむすんでおく必要がある。
それなら、と一人の人物が思い浮かんだ。ここのリーダーを務めるシュニンだ。
彼は人望も厚いようだし、長く生きているだけ経験も多い。これからも彼から教わることはきっと多い。
この挨拶を自分から試してみるのにピッタリである。うん、我ながらいい考えだ。
新しい発見といい思いつきからであろう、胸が高鳴る。足取り軽く、この時間ならいつも工場に残っている彼のところへ向かう。
案の定、彼は難しい顔をしたまま今日の記録をつけていた。
「シュニンさん」
「お、ジョーソズじゃねえか。日本に来たばっかで大変だろうに、今日までよく働いてくれたな」
いえお役に立てませんで、と、今度はケンソンしながらさっきの手順を思い出す。
「あの、少し目をつぶって頂けますか」
「んー?何だ、なんかくれんのか?まさか目つぶってる間に今までこき使った仕返しでもするんじゃねぇだろうな」
まぁそんなことしやがったら100倍返しだけどな、そう言ってガハハと笑う。
目をつぶった彼に近づき、ひと呼吸。息を止めるのには慣れていない。
彼はこちらに手を出しているが、これは握手をしておいた方がいいのだろうか。目をつぶって、かつ握手したまま口を合わせるのは難しそうだ。
時間がかかると不信感を与えてしまうだろうと焦り、考えもそのままに、両手で彼の手を掴み唇をつける。
どうやら彼も硬直しているようだ、先ほどの私の反応は正解だったらしい。
1・2、と時間を計り顔を遠ざけると、物凄い勢いで彼が話し出した。
「なっ、何しやがる!お、お前・・・アレか!そっちのケがあるのか」
「そのけ・・・?親愛の情を表す挨拶・・・です」
間違ったか。まだ自信が無いだけに語尾が弱まってしまう。
「なっ!あー・・・なるほど・・あー。そっか・・そっか・・・ジョーソズさんはアメリカの人だもんなぁ」
なにやらブツブツ呟きながら考え込んでいるが、納得しているようだ。
ただ、先ほどの驚きぶりから見て、私になにか落ち度があったに違いない。
「あの、なにか間違っていましたか」
「うーん・・、間違っては無いんだろうよ。・・だがなぁ、俺みたいなのはこういう挨拶に慣れてねえから、むやみにするもんじゃねえぞ」
そうか、やたらにしてはいけない畏まった儀式なのだ。
先ほどの、突然に感じた彼の行動も、実はなんらかの条件を満たした上でのものだったのかもしれない。
「すみません・・」
「いやいや、謝る事じゃねえさ。親愛の情ってのはありがたく受け取っておくよ」
「またお会いしていただけますか」
順番が違うかもしれないが、彼にならってそう申し出る。
「ん?おう、困った時は助けになってやるよ。ここに電話しな。
・・・いいか、さっきみたいなのは人前でするもんじゃねえんだぞ。いや、確かに今も人はいなかったがよお」
なるほど、人目を避けて行うべき行為なのか。どうりで今まで知らなかったはずだ。
一定の友好度合い以上でなければするべきではないというのもあるし、なかなか決まりごとが多いようだ。
早速報告しなくては。
もう少しこの人と話していたいと思ったのだが、それでは失礼します、と言ってその場をあとにした。
別れぎわにシュニンさんに貰ったコーヒーを飲みながら空を見上げる。夕日は、今日も美しい。
本日の報告
この惑星の挨拶は、少々複雑らしい。鋭意習得中。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 番号抜けまくってスマソ
| | | | ピッ (・∀・ ) 間違ったまま覚える事ってあるよね
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