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ヌプー×801ちゃん←シモンちゃん

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ヌプー×801ちゃん←シモソちゃん

 もう終わりにしよう、なんて。
 そんな悲しいこと言わないで。

 気付いたのは、新月の夜しか逢瀬をしてくれない彼が満月の夜に急

いでどこかへ行っているのを見たからだ。
 彼はなぜか自分の姿を恥じているようで…、明るいうちに外に出る

事はない。満月の夜だって、自分の姿がはっきりと見えてしまうから

、と、わたしからの逢瀬の誘いを承諾してくれたことはなかったのに


 (なにを急いでいるんだろう)
 なのに、どうしてこの明るい月光の下、こころなしか嬉しそうに…

走っているのだろう。
 好奇心に駆られたわたしはそっと彼の後を追う。
 それはただ、無邪気に、彼のことが知りたかったからだ。
 数分後に、やめておけばよかった、なんて思うとも知らずに。
 …わたしの金色の髪が月の光に照らされて、笑うかのようにきらき

らと光った。

 「…どうし、て」
 目の前に広がる光景に、思わず声を上げてしまう。
 その声に気付いた彼と、そしてその逢瀬の相手…801ちゃんとヌプーは、驚いたように目を見開いた。
 ヌプー。最近、このおいでよ801の森にやってきた新しい住人。小さい子が好きで、それでも恐がらせてしまう、と悩んでいた繊細な愛すべき隣人。その彼が、どうしてわたしの…恋人と?
 「どういうことなの、801ちゃん…」
 好きだったのに。君が。君だって、わたしを好いてくれていたでしょう、なのに…何で?
 悲しくて、涙が零れた。涙に月の光が当たり、光る。
 それを見て801ちゃんが、きれいだ、と、呟く。
 「やっぱり、あなたと僕は住む世界が違うんだヤオイ」
 それは、もう諦めきったような響き。
 わたしは驚いて、801ちゃんを見詰めた。
 わたしの視線から隠れるように、801ちゃんはヌプーに身を寄せて…。
 「これ以上あなたと一緒にいても、801ちゃんが傷つくだけだプー」
 ヌプーが、力強く言った。
 「あなたと一緒にいることで、801ちゃんが森の住人達から何て言われているか、知っているのかプー?」
 「え…?」
 そんなこと、全然しらない。わたしのせいで801ちゃんに何か、よくないことが?
 わたしは驚いて801ちゃんを見る。801ちゃんは少し、身じろぎをした。
 「ヌプー、それは言わなくていいんだヤオイ。そのことは、シモソちゃんの責任じゃ、ない…んだヤオイ」
 「いいや、責任はないとしても、知らない事は罪なんだプー」
 「ヌプー…」
 「住む世界が違うということを、知っていて欲しいんだプー」

 きらきら光る太陽の下で、なんのてらいもなく笑って生きることができるシモソちゃんには、夜の闇の中でしか生きることのできない自分たちの事はわからない。それは仕方ないけれど、それを知らないで愛しいものを傷つけることだけはしないで欲しい。
 ヌプーは、わたしを見つめてそう言った。

 わたしは、知らない間に801ちゃんを傷つけていたのだろうか…。そう思うと、わたしの胸は張り裂けそうだった。
 (そうだ、わたしが夜に外に出るのは、彼との逢瀬の新月の晩だけで、わたしはいつも太陽の下、笑って暮らしていたのだ)
 (その間、801ちゃんが何を思い生きていたなんて、考えもしないまま)
 今日外に出てきたのは本当にたまたまで、きれいな満月の下を散歩したいなんて思わなければ、ここに居ることもなかった。
 わたしはぎゅっと目を瞑る。
 そうすると、今までの彼との思い出が溢れ出す。
 ああ、しあわせだった。すきだよ。でも、傷つけたくなんてなかった。好きになった事が、間違いだとは思いたくないけれど…。

 「801ちゃん」
 わたしはいっそ切なげに愛しい彼の名を呼ぶ。
 「シモソちゃん…」
 震える801ちゃんの声に愛しさが増す。
 抱きしめたい想いが胸中を渦巻くけれど、それでも彼をしっかりと支えているヌプーがいる。
 わたしは一度深呼吸をして、そして言った。
 「すきだ、よ」
 「ヌプーと幸せになってください」
 そう言うと、耐え切れなくなって、わたしは羽を羽ばたかせて帰路へと急いだ。
 残されたのは、801ちゃんと、ヌプーと…

 「ほんとうに、これでよかったプー?」
 「うん…、僕なんかとは別れた方が、シモソちゃんの幸せになるんだヤオイ…」
 俯いた801ちゃんに、ヌプーは抱きしめたい衝動に駆られた。
 震える体、いとしい。こんな形相の自分を見ても、やさしく笑いかけてくれた…そして確かに惹かれ合った。それは所詮傷の舐めあいなのかもしれないけれど。けれど二人はまだ恋仲ではなく、ヌプーは801ちゃんからの相談に乗っていただけで。
 それを勘違いしたシモソちゃんに、別れを切り出してしまった。
 それは良かったのか悪かったのか…。
 801ちゃんが望んだことではあるけれど、心から望んだことではないはずだ。シモソちゃんを光の国へ返す為に、それはどれだけの苦渋の決断だったのだろう。

 (こんな彼を慰めようなんて、そしてできればこっちを向いて欲しいなんて…、本当に、化け物なのかもしれない、自分は)
 抗いがたい誘惑に、ヌプーはそっとその耳を801ちゃんの角に絡めた。801ちゃんは顔を上げ、そして笑って…。
 二人は満月の下、暗い巣穴に帰って行く。
 二人のよりそう影が、月明かりに落ちていた。

 「…バーーーーカ」
 木の上に、影がひとつ。
 自分の寝床の下での修羅場に、望まないにも関わらず、一部始終を聞いてしまった。
 後味が悪い、と、住職は思う…。
 だって、誰も救われないじゃないか。
 このあと801ちゃんとヌプーが付き合うことになったとしても、二人の間のしこりがなくなることは難しいのだろう。
 シモソちゃんだって、とうてい801ちゃんを忘れることなんてできない…。
 本当に、バカだ。

 お互いを思いすぎて、想いすぎて、ばかだ。

 住職は明るすぎる月に、おまえのせいだと責任を転換して、眠ることにした。
 月は、何も言わない。
 

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

分割まちがえました。これでおわりです。


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