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触手くんの夏

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耳を塞いで聞こえるのは、低い地鳴りのような響きと呼吸する音だけ。
胸の鼓動が早まる。
自分はどうしたい? 何をしたい?
はじめて会ったときの事を思い出す。
まだ頼りない体で、ありったけの力を使って僕を見上げた姿。
遠慮がちに腕を伸ばして、僕の指を握った時の感触。

気がつくと布団から起き出して、玄関へと向かっていた。
急いで鍵を開けて外に出る。
グレさんはそこにいた。うずくまったまま。
手を伸ばして持ち上げようとするが、グレさんは地面から離れようとしない。
「もういいよ……いいから!」
両手でグレさんを掴んで僕はそう言った。
グレさんの体が僅かに動き、地面から離れる。
僕はすっかり小さくなってしまった体を抱いて、家の中に入った。

洗面台にお湯をためていく。手を入れて人肌まで冷めるように水を入れて調整した。
僕はグレさんをそっと浸けて表面に付いた泥や汚れを落とし、ガサガサになった表面を撫でてやった。
体を洗って汚れた湯を流して、またぬるま湯の中に浸けてやる。
お湯を吸ったせいか、ほんの少し柔らかくなってきた。
猫に引っかかれた痕も少しずつ塞がっていく。
僕は馬鹿だ。
両手でグレさんを包みながら僕は泣いていた。
自分の信頼を裏切った相手に、何でこんな事をしているんだろう。
ドアを開けたとき、そこにいてくれた事にどうして安心したんだろう。
お湯から半分出ている体に涙が落ちる。
グレさんの表面が波打ち、するりと伸びた触手が僕の頬に触れて涙を拭った。

「だいぶ元に戻ったね」
グレさんは2日間水に浸かって元の大きさに戻った。
ただやはり何かおかしなものに触ってしまったようで、カサブタがまだ完全に取れていない。
それが気持ち悪いらしく、グレさんは無理に剥がそうとする。
「だめだよ、もう少しで取れるだろうから我慢」
本当は僕も、ちょっと剥がしてみたかったけれど。

朝食の準備をして僕はテーブルに着いた。
グレさんはそこへよじ登ってくる。
「どうしたの? グレさん食べられないでしょ」
グレさんには何度か色々な食べ物を与えてみたが、どれも吐き出してしまっていた。
にゅ、と腕が伸びてきて皿の上のソーセージを掴む。
「食べ物で遊ばない」
取り上げようとするとグレさんは、ソーセージを僕の口元に持ってきた。
……食べろって事か?
僕は大人しくグレさんの手からそれを食べる。
次にプチトマト。御丁寧にへたは取ってくれた。
新しい遊びかな。
しかしこんなペースでは食べ終わるのに1時間はかかりそうだ。
あと30分で家を出なくちゃいけないのに。
グレさんの腕が不意に長く伸びてテーブルの下に向かう。
「うわっ!…ちょ」
グレさんは僕の口元に食事を運びながら、股間をトンと叩いた。
僕が驚いていると、更に食べ物を口に押し付け、またトンと叩く。
もう一本別に伸びてきた触手が目の前で管のようになり、その口をパクパクとさせている。
「…………」
これって……まさか。

僕は残りの食事を慌てて済ませると、急いで支度をし家を出て行った。
頭の中は、さっきのグレさんの行動でぐるぐる回っている。
ちょっと待て。それはおかしいだろう。いくらなんでも。
確かにグレさんは僕の家に来てから、水しか口にしていなかった。
でも……やっぱりそれは…ちょっと。

その日、仕事はミスの連発だった。
僕は塚田さんに怒られ、そんなに寝不足ならさっさとクーラーを買えと言われた。
寝不足の方がまだ良かった。もっと深刻な事がいま起きている。
しかしこんな事、誰にも相談できないし。
まてよ。相談……できそうな奴が1人いた。

「あのさ、小野」
僕は帰り支度をしていた同じバイト仲間を呼び止めた。
「んー、なに?」
「おまえ動物とか好きだったよな?」
「うん、家でも色々飼っているし。なに? ペットでも飼うとか?」
おまえ1人暮らしの上に一軒家だろ、飼い放題で羨ましいよと言われた。
「俺も就職したら、職場の近くとかに一軒家借りたいなー。マンションとかだとやっぱ飼える動物も制限あるし、
鳴き声とか臭いとかがなー。いま大型インコが欲しいんだけど、声のでかさがハンパないし……」
そのまま放っておくと、小野は際限なく自宅動物園計画を話し続けそうだ。
「僕じゃなくて実家のやつなんだ。餌が…手に入るものなんだけど、ちょっと用意するのに抵抗があって」
「生餌や丸ごとじゃないとダメなものとかか? あまりペット化されていないもの? 猛禽とか爬虫類とか」
「まあ…そんなものと思ってくれれば」
……確かにペット化されているものじゃない。
「どんなの? 種類は?」
小野の目がキラキラしている。これ以上突っ込まれるとまずい。

「爬虫類…かな。……蛇。種類は詳しくないんでよく分からないけど」
「蛇かあ。俺の所は家族が反対しているから飼えないんだよな~。理解があって羨ましい」
「ええと、それで餌なんだけど…」
「あ、そうだな。蛇だと大型種じゃなければ、大体冷凍物のマウスを使うよな。
ネズミ丸ごとだから、確かに慣れないうちはかなり抵抗あるだろうなあ」
「……そうなんだ。抵抗があって、困っている」
冷凍ネズミなら、その方がずっとマシだ。

でもな、と小野が続ける。
「人間だって動物殺して食ってるんだぞ。ペットだって食わなきゃ死ぬんだ。
こっちの我侭で一緒に暮らしてもらっていて、そいつはそれしか喰えないのに、
やれないっていうのは酷いだろ。飼った以上は責任もって世話すんのが俺らの義務。
鷲とか鷹を飼っている奴は、生きた鳥を買って来て自分の手で捌いている。
店で売っている切り身なんかじゃ、病気になったり、調子を崩して落ちるからだ。
特殊な餌のいる動物飼う時は、そういう覚悟も必要だよ」
「そうだよな……死んじゃうよな」
小野は言い過ぎたと思ったのか、
「どうしても無理っていうなら、愛好家のコミュとかをネットで探してみるってのもあるぞ。
もし本当に駄目なら俺も心当たり探すよ。蛇、かわいそうだから」
次からは珍しさだけで飼うなよと言われた。
「うん……ありがとう。家族にはそう伝えておく」

……とは言ったものの。

僕はグリルで魚を焼きながら、小野の言葉を反芻していた。
確かに自分だって、こうして食べて生きている。
魚の油が火にはぜる。僕は菜箸で魚をひっくり返した。

「グレさん……」
今朝と同じようにグレさんはテーブルの上に鎮座している。
テーブルの上の献立は、ご飯に味噌汁、塩鯖、惣菜コーナーで買ってきた青椒肉絲。
これを食べさせられるのは嫌だな……。
体の上でうねうねと触手が踊っている。やる気だ。
「これは、自分で食べるからいいよ…。ベタベタになるし」
グレさんはしょぼんと触手を垂らす。がっかりしたようだ。
僕は食事をしながらグレさんを見た。
グレさんは時々腕を出したり引っ込めたりしながら、僕の食事を観察しているようだった。
「……あのさ、グレさん」
僕は諦めて話を切り出す。自分だけが食事をしているという事に、さすがに引け目を感じていた。
「グレさんのご飯って…その……この間、僕が眠っていた時にしたような事なの?」
グレさんはお辞儀をするように体を二つ折りにした。
「………………」
その返事、聞きたくなかった。
「……ちょっと、考えさせて」
僕はそれだけ言うと食事に戻った。

一昨日そう答えたが、僕はまだ決心がつかなかった。
でもこうしている間にもお腹をすかせているのかと思うと、なんだか申し訳なくなってくる。
いずれは……あげる事になるんだよな。
あげなければグレさんは死んでしまうのだろうか。それは……嫌だ。
2ヶ月一緒に暮らして情が移ってしまっている。
人の言葉を理解して、ちゃんと意思の疎通ができるからよけいに。
この大学を受けたいと思った時だって、こんなには悩まなかった。
死なせてしまうくらいなら。
僕は腹をくくることに決めた。

その夜、僕は風呂からなかなか上がれなかった。
どうしよう、このあと。
いざその時になると腰が引けてしまう。
僕はじっと自分の体にぶら下がっている物を見た。
自分でした事はある。でもしてもらった経験はない。
湯船に浸かり、僕は考えていた。
1分…2分…3分。
ああもう、こんな事いつまでもうだうだ悩んでいても仕方ないだろう!
僕は湯船から上がった。半ばやけくそだったのかもしれない。
風呂場から出ようとしたけど、足を止めてもう一度戻る。
「……もう一回、洗っとこう」
我ながら往生際が悪いと思った。

なんで僕はパジャマをきっちり着込んで、布団の上で正座しているんだろう……。

すぐ目の前には、リビングから這って来たグレさんが、ちょこんと同じ布団の上に乗っかっている。
僕はグレさんに、ご飯あげるからこっち来てとだけ言って、寝室へ逃げ込んでいた。
なんかこれじゃ、時代劇とかであるような『不束者ですが、どうぞ宜しくお願い致します』って
三つ指つくみたいな感じじゃないか。馬鹿だ。僕は本当に信じられないくらいの大馬鹿だ。
グレさんはそんな僕の態度を感じ取ってか、大人しくしている。

「えー……その、これはご飯だから」
なに言っているんだ僕は。
「グレさんだって食べなきゃ死んじゃうよね。だから…であって、別に変な事をするわけじゃ…」
じゅうぶん変だ。この状況は。
それまでじっとしていたグレさんが、ぬっ、と腕を伸ばしながらずりずりと近づいてきた。
僕は思わず身を固くする。
「え……」
腕は上に伸びていき僕の顔や頭を触っていった。
それはいつものつるっとした感触ではなく、さらさらとしていて柔らかい当たりだ。
そのうちの一本を掴むと、それは更に伸びて僕の腕に巻きついて手を撫でた。
「あの……あんまり無茶をしないでくれれば…」
もう観念しよう。グレさんは、ここまで我慢してくれたんだ。
膝の上に乗ってきた姿を見て、いいよ、と答えた。

顔に伸びていた触手が下がり、僕の腰にまわる。
下着ごとパジャマを下げて、足を伸ばした。
グレさんの体色が仄かに赤く色づいてくる。伸ばされた触手が肌の上を辿っていった。
「……う」
声を出すのが恥ずかしくて、僕は必死でそれをかみ殺す。
触手がペニスに絡みついてきた。
思わず膝を立てて足を閉じようとするのを堪える。
茎にらせん状に絡みつき、波打ちながら下から上へと登っていく。
その刺激に僕のペニスは徐々に立ち上がっていった。

腕から粘液が滲み出し、動くたびに粘りのある音がする。
触手に巻かれて見えるのは先端部分だけだ。与えられた刺激で透明な液が零れ出てきていた。
グレさんの体色はあの時と同じように赤黒くなっていて、別の生き物みたいだった。
充血した僕のペニスと長虫のようにうねる触手が絡んでいる様は、
いやらしさと背徳感をいやがうえにも増していく。
グレさんが僕に何をするのかを見ておきたかったけど、
その光景はあまりにも淫靡で本来の目的を忘れてしまいそうだ。
内腿を撫でていた触手が形を変えて僕の袋を包み込み、やんわりと揉みしだかれた。
「ん……」
力が抜けて鼻にかかったような声が漏れてしまう。
もう上体を支えているのが難しくなってきた。
腕のだるさに負けて、僕はひざを立てたまま仰向けになった。

上がった息は熱を持ってきて、体もうっすらと汗をにじませている。
足に絡まったパジャマが邪魔だった。僕は手をのばして片足を抜く。
シーツを握り締め、足の先まで力が入っている。
自分でするのとは全然違った。
いつどこに触られるかわからないのと、自分で触っている感覚が無いのが心許なくて、
どうすればいいのか切なくなってくる。
「…ふ……ぅ」
そこはもう痛いくらい張り詰めていた。
力を入れていた足が腰をわずかに浮かせる。そこへ触手が滑り込んできた。
「ぁ…そこは……」
駄目だと声にならなかった。
触手はその先端で僕のお尻の穴を撫で回している。
皺を確かめるようになぞり、かたく窄まったそこをつついてこじ開けようとした。
僕は息を荒げながら、グレさんの動きに意識を集中してしまう。
「あ…っ」
先端が潜り込んだ。そのまますぐに引き抜かれる。
僕がほっと息をつくと、再び先端だけを挿入された。
グレさんはペニスを扱き上げる動きに合わせて、先端を穴の中へ出し入れする。
圧迫感と快感が交互に襲ってきて、僕は頭を振りながらそれに耐えようとした。
うしろなんて、そんな風に触ったことも無い。なのにどうして。
「……っ…う」
触手が潜り込むたびに背中が疼く。
もういかせて欲しかった。これ以上何かされたら、おかしくなってしまう。
穴がヒクンと僕の意思に関係なく収縮した。
それが合図のようにグレさんは腕の先を亀頭にかぶせて、一気に僕のペニスを扱きあげる。
穴に挿れられたままの触手が細かく震え、僕はそのまま射精した。

結局僕はその後も、数日毎にグレさんのご飯になっている。
まだ恥ずかしさはあったけど一度してしまったせいだろうか、あんまりじたばたはしなくなった。
食事モード以外の時は今まで通りで、その辺を這い回りながら飛び込んできた虫を捕まえてみたり、
ソファの上で体を膨らませて眠っている。
水槽は庭に置いたままだ。もう必要ない。

僕は縁側で丸くなって日向ぼっこをしているグレさんを見た。
なんつーか…色といい、形といい、発酵させたパン生地みたいだな……。
僕はその体を指でぎゅっと押してみた。
気のせいだろうか、なんだか少し弾力が出てきたような。
触った感じも前よりツルツルしている。それになんとなく……大きさが。
僕はその現実からあえて目を逸らす。

これからどうなるんだろう。
僕はグレさんの隣に座り、秋の気配を纏いはじめた空を見上げた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) こういうタイプは、壺や羽毛布団を買う羽目に陥るよね。

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