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オリジナルの高校生モノ

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  オリジナルの高校生モノです。エロはなし
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  コーコーヤキューに萌え過ぎたらしいよ
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ モデル校は作者の脳内にのみあるので気にしないよーに
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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「おうい、飲んでるっ?」
「…ジュースだよ」
 分かってるよ、と白けもせずへらへらした笑顔のまま答えて、トイレから戻ってきたタツは
俺の隣に座った。
 母さんが俺たち用に部屋まで持ってきてくれた夕飯も、さすがにそろそろなくなりかけてる。
飯の全滅よりも先に、来ていた他の二人は家へ帰った。へとへとな俺たちの体を考えれば、当たり前だ。
 甲子園からここまで帰るだけでも、長旅だった。移動中は試合終了直後の疲れから皆口数も少なく、
その重い空気は今日の結果と相まって、故郷に到着するまでどんよりと俺たちの頭上を覆ったままだった。
 負けた。
 ただの事実なのに。その一言を口にするのが、怖いみたいに。
 特に俺に対しては、皆そんな感じだった。
『負けちゃったな』
 そんな風に今日の試合を話してみたい、なんて漠然と思っていた俺の口も、自然と閉じられた。
 けれどその沈黙だけで解散しきれないやつらが他にも3人いて、俺の母さんが「今日はお料理するわ」
なんて気前よく言ったがために、夜遅くに着いたにもかかわらず俺の部屋で飯を食っていたのだ。
俺の家に呼んでおいてなんだけど、正直こいつらはバカだと思う。

 そして中でも極めつけのバカだけが俺の部屋に居残ってテレビゲームをしている。
「お前、疲れてんだから、そろそろ帰ったら」
 時刻はもうとっくに真夜中といっていい。
「うぇー。疲れた仲間をこの時間に追い出す?」
「泊まってく気か?試合当日の晩に?」
「親にはお前んち行くって連絡したもん。別に泊まったって」
「寝る気あんの」
「目ぇ冴えちって」
 ミスってプレーヤー殺されたタツが、リセットを押しながら言う。
 目が冴えているのは俺もだろう。でも体は鉛のように重い。こういう時に「鉛のよう」なんて
言うんだろうな、と実感が沸くくらいに。
 無言でゲームを再開するタツの横で、もう一口ジュースを飲む。暖房をつけていても、むき出しの床に
座るのは冷たい。甲子園は――
「熱かったな」
 急にタツが口を開く。
 心を読まれたようで、思わずびくっとした。
「……何が」
「今日の試合」
「ボロ負けじゃねえか」
「それでもさ」
 ぼうっと見ていた画面がポーズに切り替わる。
「いつも冷たいお前が、今日は、熱かった」
 横を向くと、笑顔のタツの顔が、意外なほど近かった。

 いつも、俺が冷たい?
 訊くと、いい意味で、と慌ててフォローされた。
「ピッチャーは冷静じゃないと」
「今日は、冷静じゃなかったって?」
 自分で言って、背中に氷を押し当てられたような感触が走った。
 今日、だ。太陽が沈む前。
 遠く離れた地のマウンドで、
 俺が放った球が、
 打たれていった。
「今日のお前はさ、」
 何度も試合を経験したって、打たれるたびに心が揺れる。
 球筋がそれたか。気が焦ったか。読みきられたか。
 何が悪かったのか。
 なぜ俺の球が、あんな遠くへ落ちるのかと。
「いつもより、無表情だった」
 熱くなってるとそうなる、とタツは笑う。
 こいつは、いつだって笑う。
 バッターボックスのタツは、剛速球を空振りしても、監督から怒鳴り声が飛んでも、どんな局面でも
笑っている。
 次はどんな球で来るのかと、相手のピッチングを楽しみにしているように。
 わくわくしている子供そのものの顔で、バットを構える。

「…熱くなってたつもりなんて、ねえよ」
「そりゃそうだろ。俺しか知らないもん、その癖も」
「…お前は、笑ってるとき、熱くなってんの」
「俺はいつも熱いよ」
 タツはおもむろに立ち上がった。そして、お前と野球してるときは、と付け足した。
「だってお前の投球見てると、燃えるんだ」
 何て答えていいのか分からない。
「タツは…なんでいつも、笑ってんの」
「ムカツク?」
 冗談めかした返事に下から見上げると、顔をそらすようにタツはベッドの方に向きを変えた。
 声の調子とは裏腹に、珍しく真顔が一瞬チラリと見えた気がして、驚いた。
「タツ、」
「監督とか、みんなに言われる。ヘラヘラしてんじゃねえぞって」
「ちが、俺は」
 ピンチの打順が回ってきても。ツースリーで追い込まれても。
 そして、俺が失点してベンチに帰ってきたときも。
 絶対、こいつは笑顔で迎えてくれる。
 いつからか、それが自然で、そう信じるようになってて、
 それはある意味で俺の信仰ともいえた。
「楽しいから笑ってんだよ。ほとんどそれだけ。強い奴って楽しい。ピンチも楽しい。お前だったら
分かるよね?それに、ピンチで笑わないでどうすんだよ」

 俺が、投げれるのは。
 投げるからには、失敗するかもしれない。でも。
 打たれても、大丈夫。そう信じられるのは。
 一人で守ってるわけじゃない。外野も、内野も支えてくれる。
 サードに転がれば、タツが。
 きっちり抑えて、俺に、笑顔を向けてくれるはずだから。
 もし点を取られても、その笑顔は変わることがなくて。
 次の回で、俺たちが取り返してやるから。そう言ってくれる。
 そう信じているからこそで。
「ピンチで、それでも最後には勝利掴んでる自分たち想像して笑えないで、どうすんだよって」
 最後には、勝利。
 窮地に立たされた打者が、それを信じて。とりあえずでも塁へ出て、イメージへの確信を仲間に
与えるために。それは――
 願い、だ。
「誰かを責めたって、始まらない。試合中は、そう思ってたんだ」
 負けが確定したその瞬間でさえも、泣き崩れた後輩を励ますために、タツは笑顔を引っ込める
暇がなかった。『もう行くぞ、大丈夫夏がある』
 やっぱり、こいつの笑顔が、願いそのものなんだ。
 歪むことのなかった笑顔を思い出した瞬間、向けられている背に、今見えないタツの表情に、不安になった。
 タツは俺のベッドに勝手に飛び込んだ。
「おいタツ、」

 俺を責めたいなら、今責めてくれれば。
 それでもいいから、こいつの価値を伝えたい。俺は突っ伏したタツの方に身を乗り出した。
 お前にどれだけ救われたか。俺も、皆も。いや――俺が。
 今伝えたい。
「…ごめんな、守れなくて」
 思ったより大きい声が出た。言った瞬間に、涙が出そうになった。
 本当は帰り道、バスの中で、大声で叫びたかったんだ。
「…ッ、お前は絶好調だったじゃんか!」
 ばっと顔を上げたタツは、そう叫んで唇をかみ締めた。
 ――こんな顔、するのかよ。
 薄く涙が滲んだ目に、何と言っていいか分からなくなる。心臓が早い。
「タツ…」
「お前は思わなかったのかよ、うちの守備とか、あいつらボロボロ落として!お前がどんなに
綺麗に投げても」
 取り乱したところなんて、見たことなかったのに。
 思わずタツの肩を押さえて、宥めるように見つめる。つられて泣きそうだった。そんなことできない。
 いつも、顔をしかめた俺を救ってくれる側だったんだ。
「タツ、俺はみんなが一緒に頑張って練習してきたのを見てるし、」
「でもお前が一番練習してただろ!」
 タツへ伸ばした俺の手が、きつく掴まれる。
「俺は知ってる。お前はなるべくしてうちのエースピッチャーだった。なのに今日のあいつら」
「やめろってタツ!」
「だって今日のお前――」
 俺の手をとったまま、タツは急に体を起こした。
「ほんとに、綺麗だった」
 タツは真面目な顔をしていた。でもその目は、あの笑顔の目。敵の次の球を期待してる目で。
 まっすぐな興味と尊敬が、俺の目に直接注がれている。
 一瞬、何も考えられなくなる。
 痙攣したように唇が一度震えた。

 本当は、
「…俺、調子良かったよな?」
 それでも守りきれなかったとしても。
「…もち。うちのエースの、ベストコンディションだった」
 本当は、それを誰かに認めてほしかった。
 負けた。その結果の後では、とても口に出して言えることじゃなかったのに。
 一度開いてしまった俺の口は、訥々と愚痴のように言葉をこぼし始めた。
「相手の打線、覚悟はしてたけど凄かったよな」
「うん」
 タツはそっと相槌を打ってくるだけ。
「コントロールはいつもより決まってるとは思ったけど、それだけじゃ防げなくて」
「うん」
「打線も、うちがふがいないわけじゃないのに」
「相手のピッチャーも凄かったしね」
「守りは、」
「…うん」
 …うん。
 あそこで落とすかなあって、一回だけ、思った。
 正直に言ってみた。
「うっそ、一回だけかよ、優しすぎだろお前!俺四回は思った」
「いやだって基本は俺が打たれなきゃいい話で」
「ありえねー…真面目すぎ!」
「そんなボロクソに言うなよ…」
 ついたしなめるように言ってしまうと、不貞腐れたように
「分かってるよ、俺だって。あいつらが頑張ってたことくらい」
 それからタツは、やっと笑った。
 珍しく苦笑いだった。
「ただ」
「ただ?」
「ユウが、めっちゃ頑張ってた分、悔しいなぁって」
 タツの手が伸びてきて、俺の目を擦る。

 いつのまに。
「泣くなって」
「泣いてねーよ!なんでお前が俺の分悔しがってんだよ」
 一度自覚したせいか、ぼろぼろと零れ出す。
「それはお前」
「何だよ!」
「…もっかい言おうか?」
 結構さっき、思い返せば恥ずかしかったよな、とタツが視線をそらす。
「は?」
「はい、前向いて」
 頬を手で挟まれて、ぐいっとタツの方を向かされる。
「今日投げてたお前、ほんとに綺麗だった」
 今度は、いつもの満面の笑みで、言われた。
 フォームの話だろうか。そう思っておこう。
 でないと、なんか、あれ?何だろ?でもなんか、とにかくアレな感じ。
 よくわかんないけど、俺がもたないカンジ。
「…気持ちわりーよ」
「わりーなぁ、うん。本音って気持ちわりーんだよきっとみんな」
「バーカ」
 タツの手を振り切って、不自然に突然、床の皿を片付けてみたり。今日やっぱ泊まってく、と今更
俺の背に言うタツに枕を叩きつけて、それから、二人分ジュースをついだ。
 夏は、負けない。
 投げる俺を、お前が見ててくれるから。
 今日は祝杯にはならなかったけど。この乾杯で誓おうか。
 振り向くと笑顔があった。俺は、つられて笑うと、グラスを上げてみせた。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 長くてごめんね。ホントハエロクシタカッタノニ…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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