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オヤジ同士の恋2

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                    | 前スレ613-620の続き、オリジナルでオヤジの恋です。 
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| どうにも妄想が止まらなかった模様
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 教授視点でお送りします
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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「教授、今日の飲み会も不参加ですか?」
「ああ、すまんね。君から断っておいてくれないか。」
「うるさく言う奥さんもいないくせに付き合いが悪いって、他の教授方がぼやいてますよ。断りに行くたびに愚痴を聞かされる身にもなって下さい。」
困り顔で文句を言う助手を宥めすかして、帰り支度を始める。
彼女には悪いが、この先も私に代わってその愚痴を受け止めてもらう事になりそうだ。

教授室棟の外に出ると、ヒヤリとした風が顔を撫でた。少々暖房が効きすぎた屋内と外との温度差が気持ち良い。        
ここ数日、私の機嫌はすこぶる良かった。そして今日も、その原因である小さな酒店に向かって歩き始める。
他に客がいない時、こちらから意識がそれているのを見計らって近づき声をかける。
あの日以来、私はそんな意地の悪い小さな悪戯を、機会をうかがっては行っていた。
都合のいいことに、彼は一つの事に集中し始めると周りの状況に気がむかなくなるたちらしく、今のところ私の作戦は毎回成功を収めている。
驚いた彼が、立ち上がった拍子に手を机に思い切りぶつけてしまった時は、流石に申し訳ない気持ちになったのだが。

今、彼の中で、私はどれほどの存在になり得ているのだろうか。
気がそれている時に限って声をかけてくる間の悪い常連、といった所か。
それでもいい。彼に私という存在が認識されていると考えるだけで、私の心は喜びで弾む。
もしかしたら、一日に数秒でも、夕方六時過ぎに訪れる間の悪い男の事を思い出してくれているのではないか。と。

今日もうまくいくかな、と店の戸を開けると、らっしゃい、と彼が店の奥から出てくる。
きっと彼自身では「いらっしゃい」と言っているつもりなのだろう、しかし彼の低く小さな声でははっきりと「い」まで聞こえてはこない。
そんな感じも何だか彼らしい気がして良いのだけれど、などと考えている自分に、いよいよおかしくなってきたなと苦笑する。

いつものように奥のビールコーナーへ行き、贔屓の銘柄を手に取る。
さて、と彼の気がそれるのを棚ごしにうかがうのだが、こちら側に向かって座ってじっとしている。
考え事でもしているようで、眉間に皺をよせた彼の顔は相変わらず気難しげだ。
一向に動かない彼に、残念、今日はその機会には恵まれないらしいと諦めてレジへ向かう。
「これ、お願いします。」
もしかしたらこちらに顔を向けてはいても、考え事に集中していたら私が近づいていることに気付かないかもしれない。吃驚しないかな。
そんな仄かな期待をあっさりと裏切り、彼は表情を変えることなくレジを打ち始める。
ここ連日、悪戯を成功させ、もちろん今日もそのつもりで訪れた私には、
彼の表情が変わらないのが物足りず、なんとかして自分に意識を向けさせたかった。

「今日は、寒いですね。」

話しかけていた。あれほど色々と話題を考えては機会を逃していたのに、勢いというのは恐ろしい。
一瞬、驚いた顔で私の顔を見て、また下に目線を戻しビールを袋に入れる。
「そうですね、・・・風邪に気をつけないと。」
やや下の方に目を向けたままそう答え、お釣りを寄越す彼の低い声はやはり心地良い。
お互い健康に気をつけましょうと言って店を出て、ふわふわした気持ちのまま家につく。
持ち帰った仕事を片付け、今日買ったビールを飲みながら、ほんの数秒の会話を思い出す。
なんだ、結構簡単なことじゃないか。あれこれ話題を考えては機会を逃していた自分を思い出し、クスリと笑った。

それから私は、店に行くたび彼に話しかけるようになった。
意地悪な悪戯に彼が慌てるのを見るのも好きではあったが、やはり彼の声が、思考が自分に働きかける嬉しさには勝てない。
今日の天気、最近のニュース、お互い独り身の生活で大変ですね。会計を済ませながらポツリポツリと話す。
彼から話し掛けてくる事は無かったが、話しかければ嫌そうな顔をせずに応えてくれたし、
私が店に入ると、知り合っている相手にするような、「客」としてではなく「私」個人を認識した目をして迎えてくれた。少なくとも、私はそう感じていた。
過度な期待はしてはいけないと自分に言い聞かせながらも、
彼の目に、店主と客という関係から一歩進めた気がして、私の気は大きくなっていった。

話しかけるようになってから一週間が過ぎ、いつものように店の戸を開く。
洗い物でもしていたのだろうか、奥から出てきた彼の手は濡れていて、少し赤くなっていた。
会計を済ませながら他愛もない世間話をする。彼は、少し困ったような、はにかむような、そんな笑い方をする。
商品を受け取りながら彼の手を見ると、私がビールを持ってくる間に手は拭いたのだろう、乾いてはいるのだがやはりまだ赤い。
ここ数日、私の話に笑顔を見せてくれるようになった彼に勢いづいていたのだろうか、気付くと私は彼の手を握っていた。
「・・・暖かくなって来たといっても、まだ水仕事は辛いでしょう、手も冷えて。」
そう言って手を包む。ゴツゴツした彼の手は、思ったほど冷えているわけではなかったが、そんな事は彼に触れてみたいがための口実だ。

バシ

払われた手にハッとして、彼の顔を見る。

先ほどの穏やかな空気とは一転して、戸惑ったような表情。違う、そんな顔をさせたかったわけじゃない。
「・・・おっと、気分を悪くしたならすまない、そろそろ失礼するよ。」
できるだけ動揺を隠して、気まずさから逃れるように店を出た。ちゃんと笑顔で言えていただろうか。
彼があんな反応をするのも当然だ。自分と同じくらいの年のオヤジに、手を握られても気持ち悪いだけだろうに。
歩きながら、さっき彼に払われた手を見つめ、あまりに大きく育っていた自分の欲望に恐ろしくなった。

そのうち、自分の気持ちを打ち明けてしまいたくなるかもしれない。
一日中彼の頭の中に私が存在することを、彼の手を握る権利を、全てを、欲してしまう日が来るかもしれない。もしかしたらもう既に。
気持ちを打ち明けたとしても、きっと叶えられないであろう自分の欲望に、泣きたいような気持ちになり空を仰ぐ。馬鹿だ。
店主と客という関係以上になった、知人、それだけで満足ではなかったのか。多くを望んではいけないと分かっていたはずだろう。
自分の小さな悪戯に驚く彼を見るだけで、彼の目に店主と客以上の親しみを見出して、それだけで満足していた頃に戻れるなら、私はそれを選ぶだろうか。
いや、戻れたとしても、結局は先延ばしにしているだけで、いつかは恋人という関係を求める時が来てしまうのだろう。
はじめは、姿を見るだけで満足だった。店に通ううちに色々な顔を見たくなった。話がしたくなった。触れたくなった。そして、今では全て欲しい。
人間は欲深い生き物だ。
そして自分のあまりに大きな欲望に気付いた瞬間に、拒絶される恐さに体が竦み、身動きが取れなくなるのだ。
今、私がこうしてウジウジと考えている事は、世の幸福な恋人達からしてみれば些細な事なのだろうか。

喉の奥が熱い。見上げた空が、滲む。

もうあの店へは行けない。彼には会えない。
部屋に帰ったらいつだったかに貰ったウィスキーを開けよう。酔って、酔って、そして全て吐き出してしまおう。この行き場のない欲望と感情全て。

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 | | □ STOP.       | |               
 | |                | |           ∧_∧   恋は人を臆病に・・・しすぎだろ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・;)  続くと思います、長々と誠に申し訳ない。
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