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ラルアル

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  悪魔土成ドラキュラ ラルフ×アルカード10回目だよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  新婚旅行前編ですyo
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 前スレ>>433->>443ノツヅキデスゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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 木立を抜けると、しだいに前が明るくなってきた。小鳥の声が聞こえる。木漏れ日が大きさを増し、前を行く
連れの銀髪の上で、金貨をばらまいたように輝いていた。
「そら、あそこだ。もう見えてきた」
 ラルフ・C・ベルモンドは声をかけた。
「朝早かったからな。着いたらすぐ食事にしよう、とりあえず、一通りのものはそろってるはずだ」
 アルカードは肩越しに振りかえると、ちらりと笑みを見せてまたまっすぐ前を向いた。
 彼には珍しく、いくらか上の空のようだった。行く手にしだいに近くなってくる明るい野原の風景に、すっか
り気を取られているらしい。並足だった馬が、いつのまにかだく足の速さになっている。苦笑して、ラルフは自分
も追いつくために、馬に拍車をいれた。
 木立が切れた。五月の午後の陽光が、さっとあふれてなだれ落ちた。
 木立の出口でアルカードは馬を止め、目の前に広がった緑の草原と、鏡のような小さな泉の風景に、またたきも
せずに見入っていた。
「昔はこのあたりの森番が住んでた小屋なんだが」
 かたわらに馬を止めて、ラルフは言った。
「ベルモンド家が逼塞してしまったので、森を管理するものもいなくなってな。地所はまだうちのものだが、今の
ところは誰も使う者がない。親父が生きていたころはよく、喧嘩しては家を飛び出して、ここで隠れてふくれて
いた」
 木立のなかにぽつんと開けた、箱庭のように小さな野原だった。
 静かな水音をたてる泉の水面に水泡の波紋がゆれ、澄んだ水面にまばゆい陽光が踊る。
 水はいくつかの小さなせせらぎになって、木立の中へと流れ込んでいた。水辺には緑の牧草がいちめんに
広がり、そこここに、白い雪玉のような花をゆらめかせている。

「森番がいたころはここで羊を飼ってたらしいが、今じゃほぼ放りっぱなしだ。まあ、小屋だけは俺が時々隠れ
場所に使っていたんで、寝起きするのに不自由はないと思うが」
「あれはクローバーか?」
 アルカードは、ラルフの話などほとんど耳に入っていないようだった。
 今日はいつものラルフのお下がりではなく、身に合わせて新しく仕立てさせたビロードの胴着と、軽い乗馬靴を
身につけている。黒いビロードに赤い絹で切り込みを入れ、共布で下衣と縁なしの帽子をそろえた姿は、どこから
見ても立派な貴公子ぶりだった。同じく黒ビロードの短いケープに銀髪がふさやかにかかり、帽子の飾りの白い
絹房がその上に垂れかかって、まるで一幅の絵のようだ。
「近くでよく見てみたい。行って、触ってみてもいいか」
「好きにしろよ。クローバー、見たことないのか?」
「本の挿絵で見たことはある。本物ははじめてだ」
「そうか。ほら、行け」
 苦笑して、ラルフはアルカードの背を軽く押してやった。
 大きく目を見開いたまま、彼は馬を下り、吸いよせられるように白い花の咲く野原に向かっていく。
 目が輝いていた。やはり、屋敷にこもりがちな生活は、アルカードにとっても窮屈ではあったのだろう。今朝早く
に屋敷を離れてから、アルカードの表情が目に見えてやわらかくなるのがはっきり感じられて、ラルフは安堵していた。
 やはり、あまり家人とは顔を合わさせないようにしていたとはいえ、多くの親しくはない人間と近くにいさ
せられるというのは、人慣れしない彼にとってはかなりの緊張を強いるものだったらしい。とにかくそれだけで
も、遠乗りに連れだす意義はあったわけだ、と言い訳めいてラルフは自分に呟いた。

 放りっぱなしの馬の手綱を押さえて様子を見ていると、さざ波の寄せる水辺に、おそるおそるというほど慎重
な足取りで近寄っていく。ゆっくりと膝をついてかがみ込み、鼻をすりつけんばかりにして、ちかぢかと白い
丸い花に顔を近づけた。
 とたん、葉陰に隠れていた蜂がぶんと飛びたち、驚いたように身を引いた。
 ラルフは笑いを抑えるのに苦労した。アルカードは飛び去る蜂を大きな目をして見送ると、また身をかがめて、熱心
に観察のつづきをはじめた。
 しばらくは好きにさせておこう。ラルフはアルカードの馬といっしょに自分の馬も連れて森番のものだった小屋に入
り、中の様子をざっと点検した。
 一年近く何の手入れもしていなかったが、壁も屋根もしっかりしているし、扉や窓にもがたつきはない。
 床は土間だが、長年の間に踏みならされて、漆喰で塗ったようになめらかになっている。かまどは灰が
たまったままなので掃除が必要だろうが、薪さえ拾ってくれば、外で石を積んで火を焚くことにしても問題は
ないだろう。
 ベッドはないが、納屋の戸を開けると、家畜用の切り藁と干し草の山がたっぷりと積まれていた。これを
積みかさねて毛布でもかければ、マットレスの代わりには十分だ。
 ひとまず馬を馬小屋に入れて水と干し草をまぐさ桶に盛ってやり、外へ出ると、アルカードはまだ泉のそばに
いた。
 帽子がずり落ちて、踵のそばに投げ出されたままになっている。指先に一輪のクローバーの花をつまんだ
まま、銀髪を乱し、子供のようにぺたりと腰を落として、アルカードは、放心したように泉の上の五月の光を
眺めていた。
 近づいてきたラルフの気配を感じたのか、こちらに視線を向ける。蒼い瞳にはまだ、夢を見ているような遠い色
があった。

「……美しい、場所だ」
 ささやくように彼は言った。
「連れてきてくれて、嬉しい。礼を言う、ラルフ」
「──そうか」
 あまりにまっすぐな視線に、ラルフはまたずきりと胸がえぐられるのを感じてさりげなく視線をそらした。
 もし死後の浄福の地が本当にあったとして、それは、教会の坊主どもがしたり顔で説く栄光につつまれた神
と雀のように飛びまわる天使といった騒々しい場所ではなく、たった今の、この場所、泉が湧き、風が梢をわた
り、せせらぎの音と小鳥の声が聞こえる、この場所に違いないという気がした。そしてそばには彼が、小さな白
い花を手にした美しい青年が、緑の野に座り、澄んだ瞳で笑っている。
 自分が、ひどく場違いな闖入者のように思えた。エデンの園に侵入したはいいものの、そこで見つけたものの
あまりの美しさと無垢にとまどっている、蛇だ。
 あの夜の、昏い夢の断片が脳裏をよぎる。闇の中で蠢いていた白い肢体と、目の前で微笑んでいるこの銀髪の
麗人とを同列に考えること自体、自分が下劣な人間である証拠のような気がしてならなかった。
 魔物のしわざだというのは言い訳にならないことを、ラルフはとうに悟っていた。
 ある程度は誇張し、ゆがめられていたにしても、あれは確かにラルフ自身の心の底から引き出された願望であり、
欲望なのだ。魔物はそれに少し手を加えて、かたちにして見せつけたにすぎない。
 男としての自分が、アルカードに対して欲望を抱いていることはもはや否定しようもない。ただそれを、どう表現
して、どう彼に伝えればいいのかということになると、ラルフはとほうに暮れるしかなかった。
 もともと、そんな駆け引きなどにこれまで興味など持ったこともない身だ。加えて、相手は自分と同じく男
で、しかも、アルカードと来ている。

 思えばその箱入りぶりと世間知らずには、旅の途中からさんざん苦労させられてきた。こうして今でも、
ありふれたクローバーひとつに熱心に見入るようでは、それもまるで改善されていないと思うべきだろう。
 自分に向けられる視線の意味もわかっていないようだったあの始末では、ましてや、人間の色事に関すること
などとうてい理解できまい。しかも互いに男であることを考えると、余計に。
 考えていると目の前が暗くなってきた。人の気も知らずにアルカードは膝の上にクローバーの花を置き、鞠のよう
に寄りあつまった小さな花弁の一つ一つをほぐして並べて、熱心に数を数えはじめている。
「ちょっとその辺で薪を集めてくる」
 いたたまれなくなってラルフはその場を離れた。
「すぐ戻ってくるから、そこで待ってろよ。いいな」
 アルカードは夢中でクローバーを調べつつ、こくりと頭を頷かせただけだった。

 剣の練習をしようと言いだしたのは、アルカードからだった。
 クローバーに対する知的好奇心を満足させてしまうと、今度は身体が動かしたくなったらしい。やはり一日
部屋に腰をおろして古書をめくる毎日は、いくら好きでもどこかに鬱屈する部分があったらしい。ラルフが捜して
きた薪の中から適当な枝を見つけ出し、削りをかけて手際よく二本の木剣を作りあげる。
「本当にやるのか?」
 ラルフとしては弱気な発言だった。いつもなら、自信満々で勝負を口にするのはラルフのほうだっただろうが、胸の
中に口に出せないもやもやを抱えていてはつい腰が引けるようにもなってしまう。
「おまえらしくもない言いぐさだな。剣が使えないわけでもなかろうに」
 自分の木剣を軽く一振りして、アルカードはけげんそうな顔をした。

「それとも、鞭を使うか? 持ってきているのだろう」
「……いや。剣でいい。そうだな、久しぶりに、剣の試合も悪くはないか」
 思いきり汗を流せば、このもやもやも洗い流せるかもしれない。ラルフは投げわたされた剣を受け取り、アルカード
と相対して、構えをとった。

 すぐにわかったのは、たとえ擬闘とはいえアルカードの剣技にみじんの手抜きもないということだった。初めて
会ったときの、あの頭上から崩れおちるシャンデリアを一刀のもとに両断した恐ろしいばかりの剣の冴えは、
たとえ得物が木でできていようとまったく変わらず、むしろ、厳しさを増しているように思われた。
 ほんの少しのラルフの意識の乱れをついて、すさまじく鋭い突きが飛んでくる。あやうくはね除け、距離を詰め
ようとしても滑るように後退されて、逆に、思いもよらぬ方向から、今度は胴へ横殴りの一撃が来る。
 木のぶつかりあう音と、荒い息づかいが静かな森の空気を乱した。荒い息はほとんどラルフのものだった。アルカード
はほとんど呼吸すら乱すことなく、蒼い瞳をひたりと据えて、重さを持たない影のようにラルフを翻弄する。
 やけになったラルフが無謀な打ち込みを入れようとした隙を、アルカードは見逃さなかった。短い気合いとともに、
下からほとんど目にも止まらぬ速さで刃を切り上げる。
 もし真剣だったとしたら、同時に首まで持っていかれていたろう。腕が折れたかと思うほどの衝撃を受けて、
ラルフはのけぞって腰を落とした。
 手を離れた木剣が高々と宙を飛び、どこかの茂みに飛びこんでがさりと音を立てた。ラルフは身を起こそうとした
が、とたん、鼻先に尖った木剣の先をつきつけられて、再度のけぞった。
「参った」
 苦笑して、ラルフは両手をあげた。

「やはり、剣ではおまえにはかなわないな。完敗だ」
「──何を考えている、ベルモンド」
 アルカードは、ラルフの言葉など聞いてはいなかった。
 凍るような瞳が、ラルフを貫かんばかりの強さで光っていた。手にした剣がもし鋼だったとしても、今のアルカード
の目ほど鋭くはなかったろう。
「ベルモンドはよせと言ったろう。それに、何を、とは、どういう意味だ。俺は何も」
「嘘をつけ」
 きっぱりとアルカードは言った。
「何も思うところのないものが、あんな無様な戦い方をするはずがない。ドラキュラ城で見せていた身のこなし
はどこへ行った。たとえ、武器が鞭から剣へ変わっても、気の持ち方に変わりはないはずだ、それに」
「それに、なんだ」
 一瞬口ごもったアルカードに、ついラルフは尋ねた。
「私の目を、見ようとしない」
 しばらく間をおいて、ぽつりとアルカードは応えた。
 我にもなく、ラルフはうろたえた。自分では変わりなく接しているつもりでも、聡いアルカードには通用していなか
ったということか。
 確かに、戦闘中に相手から目をそらすようなことをしていれば、戦いにならないのはあたりまえだ。それを
わかっていて、アルカードは剣での勝負をラルフに挑んできたのだ。ラルフの気の乱れを確かめ、また、ラルフ自身にも自覚
させるために。
「前にも言ったはずだ、ベルモンド」
 こちらを見つめるアルカードの蒼い瞳に、ふたたび不安の色がまじりはじめているのを見てとって、ラルフはうろたえた。

「私に何か悪いところがあるなら言ってほしい、黙っていられてはわからない、と。
 屋敷を出たときからずっとそうだった。笑って話していても、おまえは私の目を見ない。のぞき込もうとする
と、ふと視線をそらす。なぜだ。私は、何かしたか。言いたいことがあるなら、言ってくれ。頼むから」
 耐えきれなくなったように、声が震えた。長い睫毛がつと降りて、揺れる瞳を隠した。
「……私に何も言わずに、目をそらすのだけは──やめてくれ」
 ──ああ、畜生。
 どうやら、覚悟を決めるしかないようだった。
 ラルフは大きくため息をつくと、わかったよ、と呟いた。
「言う。言うから、起こしてくれ。どこかで脚をひっかけたらしい。力がはいらん」
 片手をアルカードにむかって差し出す。アルカードはラルフの真意をはかるように少し目を細めてそれを見たが、やがて
木剣を置くと、そろそろと身をかがめてラルフの手をつかもうとした。
 もう少しで指が触れようという瞬間、ラルフはいきなり腕をのばしてアルカードの手首を捉えて思いきり引いた。
 不意打ちをくらったアルカードはよろめき、倒れこむようにラルフの胸に収まった。
「ラルフ!」
 しっかりと両腕で抱きこまれて、怒ったようにアルカードはもがいた。
「私はふざけているのではない。どういうつもりだ? ちゃんと話をしろと、言って」
 急に言葉がとだえた。
 唇をふさがれて、アルカードは大きく目を見開いていた。
 またたきもしない、その吸いこまれそうに蒼い瞳の奥深くを見つめながら、ラルフはそっとその小さな頭に手を
伸ばし、銀髪に指を通した。

 重ねた唇から、アルカードの体温と、その身体のおののきがじかに伝わってきた。角度を変え、驚きのあまり
開いたままの唇からすべり込ませた舌をそっとかすめると、腕の中でアルカードがびくりと身を縮めるのがわかった。
 視線は一度もはずさないまま、ラルフはゆっくりと唇を離した。アルカードはまだなにが起こったのかもわからない
ようすで、茫然と目を見開いている。
「……嫌か?」
「え?」
 まばたいて、アルカードはようやくラルフの顔に視線をもどした。また目をそらしてしまいそうになったが、なんとか
こらえる。
「俺に、こういうことをされるのは嫌か、と訊いている」
 質問の意味がよく理解できていないようだった。アルカードはこぼれんばかりの目をしたまましばらく黙っていた
が、やがてうつむいて、囁くように答えた。
「嫌なら、今、ここでこうしてじっとしてはいない」
「そ、そうか」
 それなら少なくとも、まだ嫌がられてはいないわけだ。
 喉にからむものを咳払いで追いはらって、かすれがちな声でラルフはつづけた。
「……もっと、してもいいか?」
 アルカードは問いかけるようにラルフを見あげた。
 欲望と焦燥がじわじわとラルフの中でわき上がり、同時に、どうしようもない羞恥心と恐怖感が立ちあがってき
た。エデンの蛇のことがまた頭をかすめた。

 まるで初めて女に接した時のようだ。いや、その時でさえ、ラルフにはまだ余裕があった。今は余裕など、どこを
捜してもかけらもない。
 アルカードが欲しい、だが、無理やり奪って傷つけたくはない。この綺麗なものを自分が汚すかもしれないと
考えただけでもぞっとするが、その半面、あの夢の中のように、思うさま嬲りつくしてすっかり自分のものに
したい、無垢な肌に自分の所有の烙印を押して、永久にどこかに閉じこめてしまいたいという凶暴な欲求が
腹の底で身じろぎする。
「する、とは、何をだ?」
 暖かな息が頬をかすめて、ラルフは全身が粟立つような感じを味わった。
「その、もっとキスしたり……身体に触ったりとか……色々なことを、だ」
 説明させるなこの馬鹿が、と八つ当たり気味に考えた。
 アルカードはひたすら大きな目をしてこちらを見あげている。ラルフにとってはいたたまれないほどの沈黙が、しばし
続いた。
「──そういうことは、男女の間でするものだ、と聞いている」
 やっとアルカードが口を開いた。
 ああそうか、それくらいは知っててくれて助かった、と自棄になってラルフは思う。
「ラルフは、男だ」
「そうだな」

「……私も、男だ」
「わかってる」
「その上、なかば人間ではない」
「それも、知ってる」
 だんだんひどく間の抜けた会話をしている気分になってきた。
「ラルフは、それでもいいのか?」
 ぐっと顔が近くなって、鼻先が触れるほどアルカードが間近にいた。かぐわしい吐息が再び頬をかすめ、ラルフは
ほとんど気の遠くなりそうな思いを味わった。
「おまえなら、いくらでもほかの、ちゃんとした人間の女性が受け入れてくれるだろう。
 私は、男だ。しかも、なかば人間ではない。
 それでも、ラルフは私がいいのか? ──女性ではなく、人間ですらない、私が?」
「それがな、アルカード」
 肩に手を回し、強く抱き寄せる。細い身体はあっさりと両腕に収まった。
 銀髪に見え隠れする貝殻のような白い耳朶に、声を落として囁く。
「俺はどうやら、おまえでなければ駄目らしいよ」
 アルカードはかすかに身を震わせた。
 もうそれ以上の言葉は見つからなかった。ラルフはやわらかな髪に顔を埋め、荒れ狂う欲望と恐怖心を抑えつけ
ようとしたが、うまくいかなかった。今すぐに目の前の獲物を喰らってしまいたい、すぐに、今すぐにと、
吠え猛る自分の中の獣を呪った。

「なら……それな、ら」
 胸の中から、かぼそい声がした。はっとして、ラルフは腕をゆるめた。
「それなら、私も、ラルフがいい」
 アルカードが顔をあげていた。白い頬がうすく上気し、髪からのぞいた耳が桜草の色に染まっていた。
 だが、瞳の色に揺らぎはなかった。しっかりとラルフを見据え、ラルフの目を、心を、貫きとおすように蒼く美しく
澄みとおっていた。
「私も、ラルフがいい。他の者には、さわられたくない。
 ──ラルフでなければ、嫌だ」
 もはや、声も出なかった。ラルフは全身の力をこめて、アルカードを抱きしめた。
 細い指が強くラルフの腕を握りしめる。いきなりきつく抱き寄せられて、アルカードが小さな呻き声を立てる。
 その声にさえ、煽られた。アルカードを抱きしめたまま、もつれるようにその場に身を倒す。白い花が咲く緑の野
に、長い銀髪が波のように広がる。
「目を閉じろよ」
 この期に及んでもまだ大きく目を開いているアルカードに、ラルフは笑った。
 アルカードは一度まばたいて、おとなしく、長い睫毛をそっと落とした。

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