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デビルサマナー ライドウとゴウト

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )前スレ>>602-608姐さんに魅せられライドウ購入したよ
十四代目とにゃんこ

 白いシャツを肘まで捲り上げ、剥き出しの白い腕を腰にあて、帝都の平穏を守るデビルサマナーである少年、十四代目葛葉ライドウは重々しく嘆息した。
 足下にはブリキのバケツがたゆたう水中に雑巾を泳がせ鎮座している。開け放した窓枠には洗濯物が翻る。探偵社とは教えられても信じえぬのどかな光景だ。
 人中に紛れた悪魔の害意を防ぎ、悪しきと戦うのがライドウの使命である。
 しかして現在彼のおかれた状況はその任からかけ離れているとしか言いようがない。
 戦場と変わらぬするどい眼光でライドウが見据えるのは、塵ひとつなく清められた室内を居心地悪そうに眺め回す黒猫だ。
「……おい、」
 低い声が磨き上げられた床上を滑りゴウトの耳朶を叩く。黒猫は三角耳をそば立て目を丸くした。愛らしいその仕草に、けれどライドウはちらと微笑むこともせず仁王立ちしている。
 ゴウトは人間であったならば肩を竦めたい気分でそれを見上げる。このふてぶてしい子どもが意外と愛らしいものを好む傾向にあることを付き合ううちに知り、
ゴウトも己の外見を利用してライドウをからかっていたものだが、さて本日の怒りは深刻らしい。

 切れ長の瞳をさらに細め、ライドウは顎をしゃくった。
「どこをほっつき歩いて来たんだか知らないがな、もう少し気を遣ってくれてもいいだろう」
「なんだよ、何を怒ってる?」
 真実わからないゴウトはライドウの足下へ近寄ろうとする――常のように。けれど剣閃のするどさで振るわれたモップがその動きを阻んだ。
 薄汚れた床拭きを眼前に突きつけられ、ゴウトは喉で低く唸る。
 ライドウがモップを支えにするすると膝を折り背を曲げる。ゴウトと近しい視線の高さをつくってから、大仰に項垂れた。

「鳴海さんが帰ってくるまでに、事務所と台所と風呂と私室の掃除を終わらせなきゃならないんだよ。
 洗濯物もまだあるし、師範学校の論文も提出期限が迫っている」
「お忙しいことだな書生どのは」
「小生意気なお猫さまの飯も作らないといけないしな。……まったく、仕事を増やしてくれてありがとう」
 とうとう舌打ってライドウが指さしたのはゴウトの背後か。振り向いたゴウトは言い逃れを取り繕うための沈黙を選ぶ。
「まさかおまえ、私室のほうも歩き回ってくれたのか」
「……まあ、な」
「感謝の言葉もないな」
 窓のひとつから始まり、鳴海の仕事机、来客用テーブル、椅子、そして床に至るまで点々と、しかし黒々と残る小さな足跡はゴウトのものに他ならない。
 猫の体をここぞとばかりに生かした細い隙間にまでも残るそれを拭き清めるのはライドウなのだった。

 ライドウが掃除をする間、ゴウトは邪魔扱いされるのが癪で外に逃げている。
 今日もその例に漏れず散策を楽しんだ上での帰宅であったが、そういえばぬかるんだ裏通りを歩いていたかもしれない。
 いっそ客観的にゴウトは思う。――これは俺も怒る。
 声を凍らせたゴウトを見、ライドウはのろのろと腰を上げた。泥まみれの黒猫の首をつまんで持ち上げる。
 にやり、とそれは愉しそうに唇を歪めた。
「……これはつまり、風呂に入りたいと、そういうことだな?」
「バ――馬鹿な! そんなわけがなかろう!」
 猫の毛皮は水気を厭う。咄嗟にゴウトは暴れたが、所詮は猫と人間の勝負である。軍配の示す勝者は決まっている。

「おまえを綺麗にしなきゃ何もできない」
 やすやすとゴウトを腕に抱き、シャツが泥に汚れるのも構わずライドウは事務所を後にする。
 向かう先は、今更間取りを脳裏に描く必要もない。ゴウトは心胆から恐怖した。普段は容易くあしらってみせる子どもが、今は鬼神にすら見える。
 その鬼神が淡く笑った。
「遠慮するなよ。とびきりの男前にしてやる」
 逃げることも、言いくるめることも、もはや不可能だ。ゴウトは絶望とともに思い知る。
 ライドウの職業意識の高さに負けた。四肢が力を失い、抵抗を諦める。

 末世の断末魔のような猫の悲鳴が鳴海探偵社から響き始めるのも、時間の問題である。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )書生さんの仕事を勘違いしているよ

とにかく前スレ姐さん萌えをありがとう!休日をライドウに費やしたよ


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