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のーうぇいあうと

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  ナマモノネタを投下しますが構いませんねッ!
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  飴プロ(VVVVE)のメダルと今日中でひとつ。
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 注ネタバレ!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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先日現地でやってた「のーうぇいあうと」の結果ネタバレを含みます。
殆ど独白でアレですが、心の広い方ドゾー。

「おめでと」
太い声に似合わない朗らかな調子の声に、現実に戻された。
「……お前か」
意識的に訝しげな目を作って声の方向を見る。レスリングギア姿のカ一卜が、にこにこしながら世界王
座のベルトを肩に抱えて歩み寄ってきた。
「……ラソディとのプロモは撮り終えたのか」
「終わったよ。とっくの前にね」
舌を出して、残念でした。と見事に俺の気持ちを汲んだ答えが返ってくる。
もう少しだけ一人でいたいという俺の望みは、一番望まない相手によって、あえなく潰された。もとも
と近づきがたい印象を与えるであろう顔を更に顰めて、このふざけた男に判りやすく不快感を伝える。
「…だったら最初からここに来るな」
「共用のロッカールームにいつ来ても僕の勝手でしょ」
さも不思議そうな顔を作って、堂々と横に腰掛けてくる。…何か言えば必ず嫌味ったらしい答えが返っ
てくる。だからこいつと話すのは嫌なんだ。深く溜め息をつき、前屈みになってベルトに視線を移す。
カ一卜は……同じように前屈み気味に腰掛け、多分こっちを見ている。ハゲ頭の向きが正面と違うのが、
なんとなく視界の隅で見える。

俺は視線を端から無視して、ベルトを見ていた。
俺はベルトに注視して、意識的にこいつの顔を見ないようにしていた。早く飽きて立ち去ってくれれば
いい。
「2度目でしょ、そのベルト」
「…ああ」
…視線がベルトに逸れてくれた気がする。
「…しばらくは、俺の物だ」
1番手のベルトでないとはいえ、これが強さの称号であることに変わりはない。
会社がそれを俺の目の前にぶら下げることで、俺というレスラーに価値を置いているのなら、俺は会社
が望んでいるものを見せる。俺はこのベルトに対して責任がある。易々と他の人間に譲る気はない。
……本当に欲しいのは、今隣の男が持っているものだ。そこまで考えて、やめた。
ん~…と軽く唸り、カ一卜は不満げに言葉を漏らす。
「僕、復帰してからU/S獲ったことないんだよねえ」
親に何か強請るガキの台詞か、それは。
時々、無邪気な子供を彷彿とさせるようなこいつの口調は、気分をザワザワさせる。だからなるべく聞
きたくない。もともと、一人で居て、物思いに耽っている時間のほうが好きだ。…少なくとも、試合を
終えたばかりの今は、一人で居たかった。

放っておいたらずっと喋り続けるだろうその口を、閉じさせたい。
「欲しいなら俺を倒せ」
呟き、俺は横目でカ一卜を睨んだ。確かに会話は止まった。
しかし、目が合った瞬間に、まずい、と思った。
青い双眸。
少しの表情もなく、カ一卜は真剣な眼差しで、微動だにせず、こちらをじっと見据えている。じっと俺
の目を見ている。
……この青い眼が、いやだった。
胸のうちの動揺は見ない振りをする。目を逸らすのは悔しいから、俺は睨み続ける。口の中に唾が溜ま
る。
覗き込むように首が傾げられ、奴の分厚い唇の片方が歪む。
「いいの?ヘツワ」
意味もなく、内緒話でもしてるかのように低められた声が、恨めしい。
「当たり前だ」…畜生、声が少し掠れてしまっている。
「素敵だね、二冠の王者も悪くない。メダルもあるから三冠かな?」
「ほざくな」
カ一卜の唇のもう片方が歪んだ。しかし視線は鉄のように緩まない。
こういうときに限って、時間が経つのがやけに長い。一秒一秒がやけに間延びしたものに変わってしま
う。

ふ、とカ一卜の表情が緩み、時間の流れを正常なものに戻した。
「じゃ、ピンスとクリエイティブチームが乗り気になったら、今度ね」
さっきと同じガキのような悪戯っぽさで、口に出して言わなくても良い事まであっさり言って、カ一卜
は前を向きなおした。そのあまりのあっけらかんとした切り返しに、そしてこいつが目を逸らしたあと、
自分の目線が前を向きなおしたカ一卜の顔を追っていることに気付き…一気に脱力した。
溜め息は押し殺し、気付かれないように少しずつ吐き出して、後ろの壁によしかかった。
駄目だ、こいつといると調子が狂う。俺じゃなくなりそうになる。
焦るままに、俺はとにかくカ一卜をこの部屋から追い出すための台詞を思いつくままに口走っていた。
舌が回らなくてもいいからとにかく喋った。
「こ、こんな所で油を売ってていいのか、試合の準備は…」
「……それもそうだね」
今度こそ伝わってくれたか。緩慢な動作でカ一卜はベルトを肩に掛けなおし、立ち上がった。右肩の鷲
のタトゥーがちらりと覗く。
……このタトゥーはこいつそのものだ、と思った。鷲のように傲慢な男。鷲のように、揺るがない瞳の
――

「……というかね、ヘツワ」
そのまま去っていってくれるかと思ったら立ち止まり、ダンスでターンするかのように軽い動作で、こ
ちらを振り向きぴたっと止まる。今度は何だ、クソガキ。
「U/Sぐらい君なら当たり前だろ」
そう言ってカ一卜は、肩にかけていたベルトを分厚い掌でバン、と一回叩いた。
「これ。君に獲りに来てもらわないと困るんだけど」
遠まわしに忘れ物を指摘するような、ふざけた台詞――しかし、声色と表情は少しもふざけた色を含ん
でいない。
ともすれば真摯さを含んだこいつの嫌味に、一瞬、全ての疲れと煩わしさを忘れた。
顔を上げ、真正面から睨み付ける。本当は立ち上がり詰め寄りたい衝動を、その憎たらしい眼にぶつけ
る。
声は自然と、押し殺した感情の波によって低くさざめいた。
「…大した自信だな」
「僕を誰だと思ってるんだい?」
「テイ力一に勝ってからそういう台詞を言ったらどうだ」
「大丈夫だよ。僕は負けないさ、絶対にね」

「誰が勝とうが関係ない、それは俺が必ず奪い返す」
「心配しなくても、しばらくは僕の物だよ」
「……俺が奪う」
カ一卜は口元に静かな笑みを作ったが、その青い目は少しも焦点をずらさない。頭の奥までずっと突き
通すような、その眼差し。

――不意に試合の空気を思い出した。
こいつと試合したときの…こいつとリングで対峙しているときの、あの純粋な感覚。自分の居る空間が
じりじりとした緊張で埋まり、ただ戦うことだけが意識を、体中の血を占領する、あの静かな高揚。
そういえばリングの上で気付いたんだ、こいつの眼は誰より貪欲で鋭く、蒼く澄み切っている。そして
こいつは、彼に尻尾を振る者も、嘲り罵る者も全て、試合で黙らせる。

「君こういうときはちゃんと僕の目を見てくれるよね」
小首をかしげ、少し困ったような笑顔で、カ一卜は肩をしかめる。
「……は?」
今こいつ何ていった?言葉の意味を取れず目を丸くしていたら。
大股一歩で突然俺に近づいたカ一卜が、一瞬身を屈めたと思ったら、眼前いっぱいにハゲ面が広がり。
ハゲ面が上側に少し傾き、額に一瞬何か触れたと思ったら、カ一卜は間髪入れず立ち上がって「じゃあ
ね、久リス」とにこやかに手を振り、スッと背を向けて振り向かず去っていった。

パタン、と乾いた音を立ててドアが閉まる。
頭が…頭が事態に追いついてくれない。俺は一度息を吸って吐き、たっぷり3秒数え、動かない思考を
どうにか元に戻そうとした。
しかし思考がリピートしたのは、さっきのカ一卜の台詞だった。君こういうときはちゃんと僕の目を見
てくれるよね。
そしてその直後に額を掠めた、奴の……

「――――……!!」
カッと、一気に耳まで赤くなるのを認めたくなくて、俺はベンチを両の拳で叩き付けそうになったが、
他の誰かがドアの近くにいたらという不安が頭を掠め、結局両手を中途半端に宙で握り締めていること
しかできなかった。
これは怒りだ。怒りだと言ったら怒りだ。からかわれた事に対する純粋に怒りなんだ。本当だ。
そう言い聞かせば聞かせるほど、胸の片隅に違和感のような気持ち悪さを感じる。
………だからあいつは、嫌なんだ。

『君に獲りにきてもらわないと困るんだけど』
心の底から、思っている訳でもないくせに。
いつまでベルトを保持するのが許されているか、知れたものじゃない。ましてやベルトを賭けて試合す
るかどうかなんて判らない。全ては会社の利益のためにストーリーは進むし、役者が決まる。ここはそ
ういう造りをした世界なんだ。そういう造りをした世界の中で、俺は全力を尽くす。
しかしカ一卜は、時々そういう世界のルールをまるで無視した事を平気で言う。そして、それが稀に真
実味を帯びて聞こえることがある。こいつはそれをしれっとした顔でやってのけそうな怖さがある。
だから一瞬、そのふざけた言葉を真に受けてしまいそうになる。
もしかしたら心底、俺と戦うのを心待ちにしているのではないかと……

目を落とした先にある、世界王座のそれより少し小振りなベルト。
鮮やかな赤と青が、一瞬カ一卜の姿を思い起こさせた。
…いまだ混乱気味の自分の思考に呆れ、俺は顔を逸らした。

*****

僕はベストでありたいんだ。
ブレッ卜・ハ一卜じゃないけど、過去・現在・未来において、最高の存在としてみんなの記憶に留まりた
い。そうじゃないと気が済まない。
そのためにはレジェンド扱いされている存在、スターダムにのしあがってきたルーキー、そんな連中全
てと手を合わせる必要がある。そのチャンスが巡ってきたら、決して逃す訳にはいかない。
だから、一度手を合わせた相手と何度もやるのは、得られるペイが少ない気がして、余り気が進まない。
でもね、ヘツワ。
時々、初めて君と一対一で試合したときの、全てがブッ飛ぶような圧倒的な感覚を、思い出す。

そして、もう一度君と戦えればいいな、どうせベルト落とすなら君相手がいいなって、この業界で見る
にはちょっぴり愚かな夢を、ごくたまに考えたりもするんだよ。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ もう今のベルト保持状況だけで萌えてね
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

昔メダルタンはハウスで「今日中相手ならベルト落としても構わない!」って
実際に言い放っちゃってるからね(ノ∀`)


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